2006年12月23日

240 “視神経乳頭陥凹拡大や乳頭周囲脈絡網膜萎縮“で緑内障視野検査といわれた方へ

“視神経乳頭陥凹拡大“で視野検査をお奨めするといわれた患者様へ:                      清澤眼科医院 清澤源弘 (管理頁
(患者さんへの手渡し用にこの文の要旨を242に作りました。⇒リンク


122102コンタクトレンズを希望して来院された近視の患者さんの眼底を拝見しますと、かなりの頻度で近視に関連した網膜や視神経の変化を見つけることが有ります。そこには、ジャパンプロブレムという言葉があります。




122350それは、日本に多い近視性緑内障に注目して,近視眼を取り上げてみますと、わが国特有の正常眼圧緑内障も近視眼に出現することが多く,国際的にも近視に合併した緑内障が多いことは、日本人に特異的な異常性として指摘されるという問題です。

122201その様な眼に見られる変化となぜ私が視野検査をお奨めするのかを簡単に説明して見ましょう:

緑内障と聞くとびっくりしますが、岐阜県多治見市で行なわれた住民調査では、40歳以上の人口の約6%が何らかの緑内障でした。

現在は優れた点眼薬も開発され、失明に至ることは稀で、正しい診療が始まれば、緑内障を恐れすぎる必要はありませんが、緑内障がある患者さんには早くその病気に気づいて治療をしていただく必要が有ります。

122303従来は、慢性に眼球内の水圧(眼圧)が正常より高く、視神経が循環障害で神経線維脱落をきたして、視野欠損を訴えるものを(開放隅角)緑内障としてきました。しかし、最近では開放隅角緑内障のうちでも眼圧が高くない、正常眼圧緑内障と呼ばれるものがとても多いことがわかっています。日本人の緑内障ではこの正常眼圧緑内障が実に62%もいます。

そして、緑内障患者の8割は、自分の緑内障に気付いておられず、治療もなされていません。

112304ではその緑内障にどうやって気付き、どう診断すればよいのでしょうか?







緑内障カップ視神経乳頭部陥凹:視神経は眼球の底(眼底)のものを見ている中心から約15度鼻側に寄った部分に現れます。正常な人でもその多くには軽い陥凹が存在します。その上下方向での直径は視神経の長径の30%程度です。しかし、緑内障などで視神経の線維の脱落が進みますとこの陥凹が大きくなり緑内障が疑われる事になります。
この場合、眼科医の客観的判断により、緑内障を除外するために視野検査が勧められることになります。私の診療で何も見難いという自覚がないのに視野検査を進められた患者さんも居られると思います。私が緑内障の除外をお奨めする患者さんの多くがこのタイプです。


12122このような場合、もっとも鋭敏に緑内障であることを確定できる手段がハンフリー視野計による視野の検査です。私のところで、本人に視野欠損の自覚が無く、眼底所見から視野を検査させていただいて、緑内障が見つかるのはおそらく3〜4人にひとりくらいでしょうか?多くはないですが、決して少ない数字ではありません。

さらに、視野が変化するまでには視神経の残存線維数が50%以下になることが必要であることがわかっていますので、緑内障が隠れて始まっていても精密な視野検査で視神経の機能低下が検出されずボーダーラインや正常範囲内と判定される視野である恐れはあるのです。

12123このほかにも近視や緑内障に関連した網膜や視神経のいくつかの変化が知られています。





12124乳頭周囲脈絡網膜萎縮(peripapillary atrophies: PPA)と乳頭コーヌス(miopic conus):視神経乳頭の周りに現れる乳頭周囲脈絡網膜萎縮や乳頭コーヌスもその変化のひとつです。近視の変化として眼球の前後軸が伸びると、眼底に見える視神経乳頭の周囲(ことに耳側)では網膜が引き伸ばされて薄くなります。その結果網膜の外側にある脈絡膜や強膜が透見され、三ヶ月状の形をります。コーヌス自体はさほど病的なものではないのですが、ごくまれですが、そこの網膜に穴があいて網膜剥離が起きることがあります。萎縮がはっきりして来ますと、網膜に酸素や栄養分を与える脈絡膜も萎縮してしまいます。



PPAgla緑内障で見られるPPA(乳頭周囲網脈絡膜萎縮のゾーンαとβの図:出展リンク






傾斜乳頭傾斜乳頭:近視の進行に伴って眼球が伸びると、本来眼球に垂直に入るべき視神経が眼球の接線方向に近づいて傾いて入り、視神経の線維に無理な力をかけるようになります。傾斜乳頭の目がすべて緑内障である訳では有りませんが、近視性視神経乳頭の脆弱性が緑内障性障害の原因としても,注目されています。この傾斜乳頭の視神経は強い乳頭周囲網脈絡膜萎縮を伴っています。


傾いた皿式の弁(この皿が傾いたtilted discという表現は図に示す皿状の隔壁を持つ流体用のバルブでも用いられる表現です。)







12125近視性緑内障様乳頭(myopic glaucomatous discs):この言葉も解説が難しいのですが、近視がある眼で視神経乳頭の形が緑内障のある眼の視神経のように見えるというものです。その中に、本当に緑内障としての視野変化を示すものが含まれて居ますから、精密検査をお奨めします。

12126乳頭出血とNFLD:視神経の表面から周りの網膜にかかる微小な網膜層での出血は緑内障の初期のサインであるト考えられています。よく見ますとその辺りを通って網膜に伸びてゆく神経線維の層が薄く萎縮していて神経線維層の欠損(nerve fiber bundle defectまたはnerve fiber layer defectと呼びます)を示し、精密な視野検査では底に対応する視野欠損が見つかることが有ります。
  
12127さらに緑内障の変化が進んで来ますと、視神経のノッチング(上下方向への視神経陥凹の縁の掘れ込み)、リムのひはく化(縁の部分がカップに侵食されて薄くなります、sharpened rim)、皿状陥凹(緑内障に特有な深い陥凹は無くても、視神経が萎縮すれば視神経全体が皿状にくぼんできます)

122301検査項目:

緑内障では、1)眼圧の上昇、2)視神経の形態の変化、3)視野の欠損が起きます。

従って、緑内障が疑われる場合には、1)眼圧の測定、2)眼底検査、3)視野の測定、4)隅角検査を行なうのが標準的です。

このうち、眼底検査では、視神経乳頭の陥凹の評価(cuppingカッピング)や、神経線維層の欠損(nerve fibe bundle defect: NFBD)などを見ましたから、つぎに行うのはハンフリー視野計による視野の測定なのです。

緑内障では視神経線維数が減少し視神経の働きが弱り視野欠損が起きます。視神経には100万本の線維がありますが、その50%がなくなるまで視野欠損は起きません。ですから、視野欠損は緑内障が進行した証拠です。視野検査で正常と診断されても、翌年の検診で緑内障疑いと指摘されたら、視野検査は再度行なうのが良いでしょう。

122303私は緑内障検査の後次のようなサマリーをだします。

本日の判定の要点: 緑内障の有無; 右(有、無)、左(有、無) :有りが異常
○視力右    (  )、左    (   )、
○眼圧 右(   )、左(   )
○隅角の狭細化 右(有、軽度、無)、左(有、軽度、無)  :有りが異常
○視神経乳頭陥凹 右(  )、左(  )。  :0.6以上が異常
○ハンフリー視野の緑内障性変化 右(有、境界、無)、左(有、境界、無)、:ありと境界は異常
○治療の要否(有、無)、  再検要否(有、無) その他(         )

現在、年末であることもあって当医院の少ないキャパシティーでは視野の検査が多少込み合ってしまってご迷惑をおかけしています。不安を掻き立てておいて大変申し訳ありませんが、自覚症状がない乳頭陥凹拡大に対する視野測定にはあまり緊急性はあまりありませんので暫時お待ちいただきます。そのような訳で、大変恐縮ですが視野の検査は原則予約とさせていただいています。

今日も最後まで眼を通してくださりありがとうございます。
緑内障疑いといわれた患者様へ(⇒リンク)もご覧ください。

清澤眼科医院通信最新ページへ(⇒リンク)します


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kiyosawaganka at 22:12│Comments(0)TrackBack(0)視神経、視路、視野 | 網膜、硝子体、ぶどう膜疾患

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院長 清澤源弘
”すべては患者さんのために”を目指す江東区南砂駅前の眼医者です。眼科知識普及に役立つブログの作成が趣味。緑内障、小児眼科、花粉症などの眼科疾患を治療し、コンタクトレンズにも注目。眼瞼痙攣のボトックス治療、複視や視野障害の治療が専門でPETでの脳機能評価も手がけます。東京医科歯科大臨床教授(07年4月-、現在も毎水曜の外来を担当)、順天堂大非常勤講師。2006年国際神経眼科学会副会長。
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