2009年03月07日

801 清澤眼科の眼瞼痙攣患者調査結果

眼瞼痙攣の患者像 
そして眼瞼痙攣治療を成功させる10のコツ

患者さん、そしてそのご家族も一緒に最善の治療を考えましょう。
1、男女比は
眼瞼痙攣が 男31%、女69%
片側顔面痙攣が 男35%、女65%
と女性が男性の倍くらい多い。
男女比BS











2、発症年齢は
眼瞼痙攣でも片側顔面痙攣でも40歳代、50歳代、60歳代が20%ずつで50歳代にその分布のピークがある。
発症年齢










3、眼瞼痙攣の原因は
眼瞼痙攣でも片側顔面痙攣でも原発性が多く、眼瞼痙攣では79%、片側顔面痙攣では92%が原発性である。原因BS















原発性のほかにベンゾジアゼピン系薬剤 clonazepam (リボトリール) 等または、チエノジアゼピン系薬剤 etizolam (デパス) 等を長期投与中に眼瞼痙攣を発症した症例が少なからずある。(=遅発性ジスキネジアに相当)。
薬剤性のものは眼瞼痙攣で21%、片側顔面痙攣で8%を占めた。

ここから、10のコツについて説明してゆく。

◎コツその1、患者の眼瞼痙攣の程度を的確に評価し把握する必要がある。
訴え








(図はクリックすると拡大されます。)
○自己評価表では軽症眼瞼痙攣例はその判定が難しいが、眼瞼痙攣での若倉の各 10問への是認頻度は 高い。眼瞼痙攣は片側眼瞼痙攣より症状が重い。
(眼瞼痙攣 n=207, 顔面痙攣 n=116)
次の項目で、自分であてはまると思われるものに○を付けた頻度は次の通りであった。

1まばたきが多い。(眼瞼痙攣49%、片側顔面痙攣32%)
2、外に出ると、または屋内でもとてもまぶしい。(眼瞼痙攣62%、片側顔面痙攣35%)
3、目を開いていられない、目をつぶっていたい。(眼瞼痙攣69%、片側顔面痙攣34%)
4、目が乾く、しょぼしょぼする、痛いなど、いつも目の事が気になる。(眼瞼痙攣66%、片側顔面痙攣40%)
5、人ごみでも人や物にぶつかる、またはぶつかりそうになる。(眼瞼痙攣40%、片側顔面痙攣1%)
6、 電柱や立木、停車中の車ぶつかったことがある。(眼瞼痙攣20%、片側顔面痙攣1%)
7、 太陽や風、階段の昇降が苦手で外出を控えている。(眼瞼痙攣26%、片側顔面痙攣9%)
8、 危険を感ずるので車や自転車の運転をしなくなった。(眼瞼痙攣34%、片側顔面痙攣10%)
9、 手を使って目を開けなければならない時がある。。(眼瞼痙攣37%、片側顔面痙攣20%)
10、片目をつぶってしまう。。(眼瞼痙攣41%、片側顔面痙攣39%)
○来院時の軽瞬、速瞬、強瞬の疾患別痙攣重症度
軽瞬、速瞬、強瞬の個別評価が有効である。殊に眼瞼痙攣で速瞬が侵される。
3種の点













合計点数で軽症(1-2点)、中等症(3-5点)、重症(6-9点)を分ける。(経過観察では、合計が4点位になると次回の注射を希望して来院することが多い。)

軽瞬は眼瞼痙攣で1.6点、片側顔面痙攣は1.2点
速瞬は眼瞼痙攣が1.9点、片側顔面痙攣は1.3点
強瞬は眼瞼痙攣が1.4点、片側顔面痙攣は1.3点であった。

○疾患別うつ病(抑うつ状態)重症度
CES−D























眼瞼痙攣は25%が、片側顔面痙攣は4%がCES−Dでの16点以上を示し、抑うつ状態と判断された。しかし、これは本当の精神疾患ではなく、眼症状が治療で解消すれば、この点数が容易に低下する場合が多い。
抑うつ状態BS















◎コツその2.涙液の質と量の評価を行い、ドライアイ例には涙点プラグで涙液を補う
質の評価:フルオレセイン染色テスト
量の評価:シルマーテスト


キープティア
















○コラーゲン涙点プラグ等で涙液を補う:
・シリコンゴム涙点プラグ:従来型で永続的効果があるが、時に違和感があり、脱落も少なくない
・コラーゲン涙点プラグ:キープティア、違和感も脱落もない。有効期間は2-3か月とされるが、3か月で効果が消えてしまうわけではない。冷所保存には注意。

○疾患別涙点プラグ併用状況
プラグ併用状況BS














スーパーイーグルプラグ

















調査の時点で眼瞼痙攣症例の約30%には涙点プラグをすでに併用していた。
眼瞼痙攣はシリコンプラグ23%、コラーゲンプラグ5%、両者併用1%、未使用71%
片側顔面痙攣はシリコンプラグ14%、コラーゲンプラグ2%、両者併用0%、未使用84%であった。

○眼瞼痙攣を増悪させるドライアイへの対策
ドライアイを示す諸所見
 瀰漫性表層角膜炎がある。
 涙液メニスカスが浅い。
 シルマーテストで涙液分泌の減少。
 涙液層破壊時間が短い。
涙液貯留を増やす対策
 コラーゲンプラグ(初回、3-6週有効)
 シリコンプラグ(スーパーフレックス、イーグルプラグほか)
 
◎コツその3. MRIなどの画像診断を駆使すべし。
MRIなどの画像診断も未済なら行う。血管による顔面神経圧迫以外に腫瘍等が見つかることがある。

◎コツその4.“眩しさ ”や“痛み“も治療を要する重要な症状である。
“眩しさ ”や“痛み“も眼瞼痙攣の主要な愁訴。
サングラスや薄い点眼麻酔薬が時に有効である。
ボトックスで痛みも除くことができる。
眩しさに対応する脳の部位は?


眩しさの場所BS
○眩しさに関与する部位を示すPETF
DG-PETで、眼瞼痙攣で羞明のある群と、コントロール群の脳局所糖代謝を比較した。
眩しさを訴える群では、視床、特に視床枕を含む領域で、有意に糖代謝の異常亢進を認めた。(江本博文ほかのデータ)

ボトックス瓶











◎コツその5、眼輪筋へのボトックス投与
ボトックス投与は最有力な治療法で重症度と反応を見て量を増減する。(私は2.5-5.0単位を使用)
2009年2月23日、50単位瓶発売で薬価が3割負担で3万から1.7万に下がった。
10-20%の無効症例がある
 有効率は 
 眼瞼痙攣83%、
 片側顔面痙攣92%、
 痙性斜頚51% とされている。

○ボトックスの副作用
副作用発現症例率は、
眼瞼痙攣10.3% (6149例中)
  兎眼155例(2.5%) 、眼瞼下垂153例(2.4%)、流涙78例(1.3%)
片側顔面痙攣7.6%(8354例中)
  兎眼197例(2.4%) 、 流涙増加83例(0.9%) 、 筋緊張低下82例(0.9%)

○ボトックスの用法
用法・要領など(要点を清澤が要約)
ヾ竄栫框察┰蕾1.25−2.5単位/部位、1眼あたり眼輪筋6部位。再投与は初回の2倍までを用いる1か月累計45単位を超えない。
∧丗Υ虧戻框察Ы蕾鵑蝋膩10単位、症状再発時には30単位を上限に再投与。2か月以内の再投与は避ける。
(今後さらに使用法は検討議論されると考えられます。)

◎コツその6 経口薬の併用も考えられます
経口薬併用















リボトリールやアーテン併用時には薬剤依存にも留意する。
  リボトリール:活発になりすぎた神経の働きにブレーキをかける。
  アーテン:鈍くなった神経を刺激する。
次回ボトックス投与までの期間を延ばす効果。ボトックスとの併用が有効。
副作用:眠気、集中力の減退。
眼瞼痙攣:アーテン2%、リボトリール7%、療法2%、使用せず87%
片側顔面痙攣:アーテン0%、リボトリール4%、療法2%、使用せず87%

◎コツその7 クラッチ眼鏡 も上手に使うべし
クラッチ眼鏡で開瞼が維持できる症例がある。
水泳帽を有効に使った患者さんもいた

◎コツその8、眼輪筋切除も、重症の眼瞼痙攣ではそのコントロールに持ち込むよい方法である
眼輪筋切除併用BS




















最重症例には眼輪筋切除や眼瞼下垂手術の依頼を検討する。この手術に多数の経験のある医師を選び、個別に依頼する。
調査時点で当医院の患者さんのうち、眼瞼痙攣で7%、片側眼瞼痙攣の2%に施行してもらってあった。

○眼輪筋切除-挙筋短縮術併用例を提示

◎コツその9、患者さんへの積極的働きかけと定期的観察が重要である
患者には積極的に働きかけ、定期的観察を継続する。
評価には若倉表での点数評価が有効。(9点法での評価は受信の旅に毎回行っている。)
1週と1か月、以後1か月ごと。
ボトックス注射の間隔表
投与間隔生データ







眼瞼痙攣:3月ごと22%、4月ごと12%、5月ごと5%、6月ごと4%、再投与なし29%
片側顔面痙攣 3月ごと25%、4月ごと21%、5月ごと8%、6月ごと5%、再投与なし17%

◎コツその10. 眼瞼痙攣患者のニーズを考えよう
再投与BS

















常に患者のニーズに合った対応を模索する。
このような点に留意し治療を展開すると患者満足度の増加が期待されるだろう。
眼瞼痙攣 2−6月ごと56%、7-24月ごと8%、再投与なし36%
片側顔面痙攣:2−6月ごと67%、7-24月ごと14%、再投与なし19%
ーーーーーーーーーー

さて本日は清澤眼科医院での患者さんのカルテを調べてみた結果から患者さんのプロフィールを交えて、私の考える有効な治療法についてお話してみました。患者さんが自らの病気の状況を知る手がかりになればと思います。




kiyosawaganka at 07:24│Comments(1)TrackBack(0)眼瞼痙攣、片側顔面けいれん、ボトックス 

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この記事へのコメント

1. Posted by かな   2009年03月10日 14:55
3 非常に素朴な疑問なのですが、若倉先生の質問表にはどうして瞼がピクピクするという項目がないのでしょうか?
お答え:非常によくできた質問表なのでうが、各項目が従属して居ているかなどの検討はされては居ないと重います。今度若倉先生に聞いてみましょう。

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プロフィール
院長 清澤源弘
”すべては患者さんのために”を目指す江東区南砂駅前の眼医者です。眼科知識普及に役立つブログの作成が趣味。緑内障、小児眼科、花粉症などの眼科疾患を治療し、コンタクトレンズにも注目。眼瞼痙攣のボトックス治療、複視や視野障害の治療が専門でPETでの脳機能評価も手がけます。東京医科歯科大臨床教授(07年4月-、現在も毎水曜午後の神経眼科外来を担当)、2006年国際神経眼科学会副会長。日本眼科医会学術部委員
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