2009年06月29日

945 眼瞼痙攣治療を成功させる10のコツ(眼瞼痙攣友の会会報原稿)

眼瞼痙攣・片側顔面痙攣友の会会報に載せる予定の原稿案です。先読み用として掲示致します。このブログのほかの部分にある元の文章よりも短縮されて読みやすくなっています。いつも同じお話で恐縮ではありますが。

ーー引用開始ーーーーー


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眼瞼痙攣治療を成功させる10のコツ

   清澤眼科医院院長 清澤源弘

患者さん、そしてそのご家族も一緒に最善の治療を考えましょう。今回私がボトックスを使って治療している患者さんのカルテを調べてみました。


929  
1、男女比は
 眼瞼痙攣は、男31%、女69%
 片側顔面痙攣では男35%、女65%
 と女性が男性の倍くらい多い。



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2、発症年齢は
 眼瞼痙攣でも片側顔面痙攣でも40歳代、
 50歳代、60歳代が20%ずつで50歳代にその分布のピークがある。

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3、眼瞼痙攣の原因は
眼瞼痙攣でも片側顔面痙攣でも原発性が多く、眼瞼痙攣では79%、片側顔面痙攣では92%が原発性である。
原発性のほかにベンゾジアゼピン系薬剤 clonazepam (リボトリール) 等または、チエノジアゼピン系薬剤 etizolam (デパス) 等を長期投与中に眼瞼痙攣を発症した症例が少なからずある。(=遅発性ジスキネジアに相当)。
薬剤性のものは眼瞼痙攣で21%、片側顔面痙攣で8%を占めた。

ここから、10のコツについて説明して行きます。


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◎コツその1、 患者の眼瞼痙攣の程度を
的確に評価し把握する必要がある。
○自己評価表では軽症眼瞼痙攣例はその判定が難しいが、眼瞼痙攣での若倉の各10問への是認頻度は高い。眼瞼痙攣は片側眼瞼痙攣より症状が重い。
(眼瞼痙攣 n=207, 顔面痙攣 n=116)
 
眼瞼けいれん自己診断(治療前用)(若倉)
( )瞬きが多い
( )外に出ると、または室内でもとてもまぶしい
( )眼を開いていられない、目をつぶっていたい
( )眼が乾く、「眼がしょぼしょぼする、痛いなどいつも目のことが気になる
( )人ごみで人や物にぶつかる
( )電柱や立ち木、停車中の車などにぶつかったことがある。
( )太陽や風、階段の昇降が苦手で外 出を控えている。
( )危険を感ずるので車や自転車の運 転をしなくなった
( )手を使って目を開けなければならないときがある。
( )片目をつぶってしまう。



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次の項目で、自分であてはまると思われる
ものに○を付けた頻度は次の通りであった。
1、まばたきが多い。(眼瞼痙攣49%、片側顔面痙攣32%)
2、外に出ると、または屋内でもとてもまぶしい。(眼瞼痙攣62%、片側顔面痙攣35%)
3、目を開いていられない、目をつぶっていたい。(眼瞼痙攣69%、片側顔面痙攣34%)
4、目が乾く、しょぼしょぼする、痛いなど、いつも目の事が気になる。(眼瞼痙攣
66%、片側顔面痙攣40%)
5、人ごみでも人や物にぶつかる、またはぶつかりそうになる。(眼瞼痙攣40%、片側顔面痙攣1%)
6、 電柱や立木、停車中の車ぶつかったことがある。(眼瞼痙攣20%、片側顔面痙攣1%)
7、 太陽や風、階段の昇降が苦手で外出を控えている。(眼瞼痙攣26%、片側顔面痙攣9%)
8、 危険を感ずるので車や自転車の運転をしなくなった。(眼瞼痙攣34%、片側顔面痙攣10%)
9、 手を使って目を開けなければならない時がある。(眼瞼痙攣37%、片側顔面痙攣20%)
10、片目をつぶってしまう。(眼瞼痙攣41%、片側顔面痙攣39%)
○来院時の軽瞬、速瞬、強瞬別での疾患別にみた痙攣の重症度
軽瞬、速瞬、強瞬の個別評価が有効である。殊に眼瞼痙攣では速瞬が侵される。
合計点数で軽症(1―2点)、中等症(3―5点)、重症(6―9点)を分ける。(経過観察では、合計が4点位になると次回の注射を希望して来院することが多い。)
軽瞬は眼瞼痙攣で平均1.6点、片側顔面痙攣は平均1.2点
速瞬は眼瞼痙攣が平均1.9点、片側顔面痙攣は平均1.3点
強瞬は眼瞼痙攣が平均1.4点、片側顔面痙攣は平均1.3点であった。
○疾患別のうつ病(抑うつ状態)重症度
眼瞼痙攣は25%が、片側顔面痙攣は4%がCES―Dでの16点以上を示し、抑うつ状態と判断された。しかし、これは本当の精神疾患ではなく、眼症状が治療で解消すれば、この点数が容易に低下する場合が多い。

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◎コツその2、 涙液の質と量の評価を行い、ドライアイ例には涙点プラグで涙液を補う
質の評価:フルオレセイン染色テスト
量の評価:シルマーテスト
調査の時点で眼瞼痙攣症例の約30%には涙点プラグをすでに併用していた。
眼瞼痙攣はシリコンプラグ23%、コラーゲンプラグ5%、両者併用1%、未使用71%
片側顔面痙攣はシリコンプラグ14%、コラーゲンプラグ2%、両者併用0%、未使用84%であった。
○眼瞼痙攣を増悪させるドライアイへの対策
ドライアイを示す諸所見
 瀰漫性表層角膜炎がある。
 涙液メニスカスが浅い。
 シルマーテストで涙液分泌の減少。
 涙液層破壊時間が短い。
涙液貯留を増やす対策
 コラーゲンプラグ(キープティアⓇ、初回、3―6週有効)
 シリコンプラグ(スーパーフレックスプラグⓇ、イーグルプラグⓇほか)

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◎ コツその3、 MRIなどの画像診断を駆使すべし。
MRIなどの画像診断も未済なら行う。血管による顔面神経圧迫以外に腫瘍等が見つかることがある。

◎ コツその4、 「眩しさ」や「痛み」も治療を要する重要な症状である。
「眩しさ」や「痛み」も眼瞼痙攣の主要な愁訴。
サングラスや薄い点眼麻酔薬が時に有効である。
ボトックスで痛みも除くことができる。
眩しさに対応する脳の部位は?
○ 眩しさに関与する部位を示すPET、FDG-PETで、眼瞼痙攣で羞明のある群と、コントロール群の脳局所糖代謝を比較した。
眩しさを訴える群では、視床、特に視床枕を含む領域で、有意に糖代謝の異常亢進を認めた。(江本博文ほかのデータ)


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◎ コツその5.眼輪筋へのボトックス投与
ボトックス投与は最有力な治療法で重症度と反応を見て量を増減する。(私は2・5〜5・0単位を使用)
2009年2月23日、50単位瓶発売で薬価が3割負担で3万から1・7万に下がった。
10〜20%の無効症例がある
 有効率は製薬会社データで 
 眼瞼痙攣83%、
 片側顔面痙攣92%、
 痙性斜頚51% とされている。
○ボトックスの副作用
副作用発現症例率は、
眼瞼痙攣10・3% (6149例中)
  兎眼155例(2・5%) 、眼瞼下垂153例(2・4%)、流涙78例(1・3%)
片側顔面痙攣7・6%(8354例中)
  兎眼197例(2・4%) 、流涙増加83例(0・9%) 、筋緊張低下82例(0・9%)
○ボトックスの用法
 用法・要領など(要点を清澤が要約)
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 部位、1眼あたり眼輪筋6部位。再投与は初回の2倍までを用いる。1か月累計45単位を超えない。
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 症状再発時には30単位を上限に再投与。2か月以内の再投与は避ける。
(今後さらに使用法は検討議論されると考えられます。実際はもう少し多め。)


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◎ コツその6、 経口薬の併用も考えられます
リボトリールやアーテン併用時には薬剤依存にも留意する。
 リボトリール:活発になりすぎた神経の働きにブレーキをかける。
 アーテン:鈍くなった神経を刺激する。
次回ボトックス投与までの期間を延ばす効果。ボトックスとの併用が有効。
副作用:眠気、集中力の減退。
眼瞼痙攣:アーテン2%、リボトリール7%、両方2%、使用せず87%
片側顔面痙攣:アーテン0%、リボトリール4%、両方2%、使用せず87%

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◎ コツその7、 クラッチ眼鏡も上手に使うべし
クラッチ眼鏡で開瞼が維持できる症例がある。
水泳帽を有効に使った患者さんもいた

◎ コツその8、 眼輪筋切除も、重症の眼瞼痙攣ではそのコントロールに持ち込むよい方法である
最重症例には眼輪筋切除や眼瞼下垂手術の依頼を検討する。この手術に多数の経験のある医師を選び、個別に依頼する。
調査時点で当医院の患者さんのうち、眼瞼痙攣で7%、片側眼瞼痙攣の2%に施行してもらってあった。
○眼輪筋切除-挙筋短縮術併用例を提示


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◎ コツその9、患者さんへの積極的働きかけと定期的観察が重要である
患者には積極的に働きかけ、定期的観察を継続する。
評価には若倉表での点数評価が有効。(9点法での評価は受診の度に毎回行っている。)
1週と1か月、以後1か月ごと。
ボトックス注射の間隔
眼瞼痙攣:3か月ごと22%、4か月ごと12%、5か月ごと5%、6か月ごと4%、再投与なし29%
片側顔面痙攣 3か月ごと25%、4か月ごと21%、5か月ごと8%、6か月ごと5%、再投与なし17%

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◎コツその10、 眼瞼痙攣患者のニーズを考えよう
 常に患者のニーズに合った対応を模索する。このような点に留意し治療を展開すると患者満足度の増加が期待されるだろう。一度ボトックスを始めたらずっと打ち続けることになるという認識は誤りです。
眼瞼痙攣では2〜6か月ごとの投与は56%のみである。再投与なしも3分の一は居る。
片側顔面痙攣でも2〜6か月ごとの投与は67%のみで、再投与なしが5分の1いた。
ーーー引用終了ーーーー
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というわけです。次回の会報の発行が楽しみです。






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今日も最後まで眼を通してくださりありがとうございます。


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プロフィール
院長 清澤源弘
”すべては患者さんのために”を目指す江東区南砂駅前の眼医者です。眼科知識普及に役立つブログの作成が趣味。緑内障、小児眼科、花粉症などの眼科疾患を治療し、コンタクトレンズにも注目。眼瞼痙攣のボトックス治療、複視や視野障害の治療が専門でPETでの脳機能評価も手がけます。東京医科歯科大臨床教授(07年4月-、現在も毎水曜午後の神経眼科外来を担当)、2006年国際神経眼科学会副会長。日本眼科医会学術部委員
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