2009年10月04日

1059 眼瞼痙攣 (”明日から役立つ神経眼科 その2)

眼瞼痙攣は不随意的な瞼の痙攣で、目を閉じていたいとか目を開いているのがつらいとかといった訴えをします。私たちはこの疾患をボトックスを中心とする薬剤で治療していますが、今回、原著(明日から役立つ神経眼科 打倒!解決!不定愁訴・不明愁訴)に眼瞼痙攣についての現状をまとめました。そこでこの報告のうち眼瞼痙攣に言及した部分をアップしてみます。
(図は貼り付けの準備途中です)

(携帯での記事はここまでです。このブログ記事の全体を記載したページにリンク(⇒リンク)しますので興味のある方はPCでご覧ください。)

ーーー引用開始ーーー

1) 眼瞼痙攣

症例は、サングラスが手放せない65歳男性。 痛みと眩しさ、開瞼困難を訴えて来院した。視力は良好で、表層角膜炎とドライアイを合併している。眉間には皺が多い。
眼瞼痙攣は、眼周囲の筋が不随意に収縮する局所ジストニアであり、「目が乾く」とか、「視力が低下した」とか、訴えは様々である。
われわれは、初期評価に眼瞼痙攣自己診断(治療前用・若倉)という自己評価表を用いている。

(1)  自己評価表:眼瞼痙攣自己診断(治療前用)3
この内容は、次の項目で、自分であてはまると思われるものに○をつけよという簡単なものである。この患者の答えは以下のようであった。
(○)まばたきが多い。
(○)外に出ると、または屋内でもとてもまぶしい。
(○)目を開いていられない、目をつぶっていたい。
(○)目が乾く、しょぼしょぼする、痛いなど、いつも目の事が気になる。
(○)人ごみでも人や物にぶつかる、またはぶつかりそうになる。
(○)電柱や立木、停車中の車ぶつかったことがある。
(  )太陽や風、階段の昇降が苦手で外出を控えている。
(○)危険を感ずるので車や自転車の運転をしなくなった。
(○)手を使って目を開けなければならない時がある。
(  )片目をつぶってしまう。
○の数は0個が正常、1〜2個は眼瞼痙攣の疑い、 3個以上は眼瞼痙攣の可能性が高いとし、 ○が1個以上あれば(2)に進む。この患者の場合、自己評価は ○8個で眼瞼痙攣の可能性は高い。

近年、清澤眼科を受診した眼瞼痙攣患者(n=207)と片側顔面痙攣患者(n=116)の自己評価表を統計処理した結果は図1の通りであった。    図1挿入部分

図1







軽症眼瞼痙攣は、その判定が特に難しいが、眼瞼痙攣患者では、若倉の各10問への是認頻度は高い。眼瞼痙攣は片側顔面痙攣より訴える症状が重かった。

(2)、軽瞬、速瞬、強瞬の自己評価及び医師による評価
眼瞼痙攣自己診断の質問で眼瞼痙攣疑いとなった患者に軽瞬、速瞬、強瞬の自己評価、及び医師による評価を行う。瞬目を軽瞬、速瞬、強瞬の3つに分類し、下記のように評価する。本症例での結果を示す。左が患者自身の評価で、右は医師の評価である。( )の数字が得点であり、A、B、Cの合計点を求める。
A:眉毛部分を動かさず、軽い、歯切れの良い瞬き をゆっくりする。(軽瞬)
(○)( )できた。 (0点)
( )(○)眉毛部分が動く、強い瞬きしかできない。(1点)
( )( )ゆっくり歯切れの良い瞬きが出来なかったり、余分な細かいピクピクした運動が混じる。(2点)
(  )( )瞬きが出来ず、目をつぶってしまう。(3点)

B:出来るだけ早くて軽い瞬きを10秒間してみる(速瞬)
( )( ) 10秒間に30回以上の軽い瞬きがほぼリズムよく出来た。(0点)
( )(  )途中でつかえたりして30回は出来ないが、大体出来た。(1点)
( )(  )リズムが乱れたり、強い瞬きが混入した。(2点)
(○)(○)早く軽い瞬きそのものが出来ない。(3点)

C:強く目を閉じ、すばやく目を開ける動作を10回してみる。(強瞬)
( )( )出来た。(0点)
( )( )すばやく開けられない事が1、2回あった。(1点)
( )( )開ける動作がゆっくりでぎこちなかった、出来たが後で閉瞼してしまった。(2点)
(○)(○)開けること自体に著しい困難があるか、10回連続で出来なかった。(3点)

評価尺度は0がごく軽症例、1〜2点は軽症眼瞼痙攣、3〜5点は中等症眼瞼痙攣、6〜9点なら重症眼瞼痙攣と判断される。この患者の場合、自己評価は6点で医師の評価は7点であり、重症眼瞼痙攣と判断された。

清澤眼科で治療を行った眼瞼痙攣患者の重症度評価を図2にまとめた。 図2挿入部部位

図2






軽瞬、速瞬、強瞬の個別評価は患者の重症度の評価に有用で、殊に眼瞼痙攣では速瞬が侵される。外来経過観察中に合計点数が4点位に上昇しくると、次回のボツリヌストキシン注射を希望して来院することが多い。

(3)、眼瞼痙攣に関するその他の質問
体系的に病歴聴取するために、以下のような質問項目を用意している。本例での結果を示す。

A:常備薬がありますか?
       ある(○)         なし ( )
 何科のお薬を飲んでいますか
       神経内科     その他
       ( )デパス     
       ( )リボトリール
       ( )レンドルミン
       ( )ワイパックス
       (○ )ハルシオン

薬剤性の眼瞼痙攣の可能性があれば、抗精神薬、抗不安薬などの薬剤名を確認する。
清澤眼科で治療をおこなった眼瞼痙攣患者では、原発性が79%、薬剤性が21%であり、片側顔面痙攣患者では、原発性が92%、薬剤性が8%であった。この結果を図3、図4にまとめた。図3、図4挿入位置

図3






図4




ベンゾジアゼピン系薬剤 であるclonazepam (リボトリールÒ) 等または、チエノジアゼピン系薬剤 であるetizolam (デパスÒ) 等を長期内服中に眼瞼痙攣を発症した症例が珍しくない。これらは遅発性ジスキネジアの一種と考えられる。その点を考慮し、次のような質問も行う。

B:精神科もしくは神経内科に通院している。 もしくは、過去に通院したことがありますか?。
      ある(○)   なし ( )
      その時どんなお薬を服用していましたか?
C:痙攣の症状はいつ頃から気になりましたか?
     答え: 2年前頃から
D:ボトックスは初めてですか?
     初めて     ( )
     初めてではない いつ頃:
      病院名:xxx病院     何回 :3回
      その時の効果(満足度) :良い  普通 悪い○

  以上の結果より、本例の患者は薬剤性重症眼瞼痙攣と診断されて、次に眼科的評価を行う。

(4)眼科的な診察
眼科的評価としては、視力などの他に、フルオレセイン染色テスト(図5)及びシルマーテスト(図6)が大切である。涙の定性評価としてフルオレセイン染色テストを行い、定量評価としてシルマーテストを行う。  図5、図6挿入部分

図5





図6


(5)眼瞼痙攣の補助的治療としての涙点プラグの利用
ドライアイを合併している症例に対しては涙点プラグで涙液を補う。シリコンゴム製涙点プラグは従来型で永続的な効果があるが、時に違和感があり、脱落も少なくないという弱点がある。一方 、コラーゲン涙点プラグ(商品名:キープティア)は、違和感も脱落もない。有効期間は2か月程度とされるが、3か月で効果が消えてしまうわけではない。最近発売されたごく柔らかいシリコン製のイーグルプラグも安定性がよく、使いやすい。

(6)うつ症の検討
うつ病(うつ症、ないし抑うつ状態)の評価にはCES-Dが有効である。 これは、質問形式の自己評価尺度である。普段は何でもないことがわずらわしいか、食欲が落ちたか、など、20の質問で構成されている。この評価法では0〜16点で正常群、16〜60点では気分障害群となる。気分障害群の結果が出た場合、精神科でうつ病と診断される確率は正常群の8倍である。 本例 は23点であったので気分障害群とされた。
当医院を受診した眼瞼痙攣患者のCES-Dのデータを図7に示した。図7挿入部分

図7







(7)ボツリヌストキシン治療の説明及び投与
診断が確定すると、ボツリヌストキシン治療を考慮する。ボツリヌストキシン治療は現在のところ、最も有効な治療法で、重症度や治療に対する反応を考慮し、量を増減する。私は一ヶ所あたり2.5-5.0単位を使用している。ボツリヌストキシンの有効率は高く、眼瞼痙攣で83%、 片側顔面痙攣では92%、そして痙性斜頚51%とされているが、眼瞼痙攣でも残念ながら10-20%程度の無効例がある。その説明はあらかじめ十分に行なっておかねばならないし、治療費も高価なので痙攣患者のニーズを十分に考えて、注射の施行は本人が強く希望する者に限定するのが良い。

眼瞼痙攣(図8)と片側顔面痙攣(図9)の患者が実際にどの程度の間隔でボツリヌストキシンの注射を受けているかを調べてみた。 (図8、図9挿入部位) 眼瞼痙攣では2−6か月ごとに注射を受けていたものは56%であった。7-24か月の間隔で受けていた者の8%を加えても、複数回の投与を受けたのは64%に過ぎない。再投与を受けていないケースは36%とほぼ3分の1を占めており、他医に移って行った患者が若干名いたとしても、注射後に小康状態を保てたものも少なくはないようである。
図8






図9



また、片側顔面痙攣でも2−6か月ごとに注射を受けていたものは67%であり、7-24か月の間隔で受けていた14%を加えても、複数回の投与を受けたのは81%に過ぎない。再投与を受けていないものが19%と、ほぼ5分の1を占めていた。“ボツリヌストキシンの治療効果は一時的であって、3-6月ごとに注射を繰り返す必要がある“というのは、この結果を見る限りでは、必ずしも正しくはない。

眼瞼痙攣や片側顔面痙攣の治療では、常に患者のニーズに合った対応を模索する必要がある。このような点に留意して治療を行うと、患者の高い満足度が期待できる。眼瞼痙攣では、瞼がふくらはぎのこむらがえりのように痙攣するわけではない。瞼の動きが悪いことを患者自身に理解してもらえれば、たとえ軽症であってもボツリヌストキシン治療に同意は得やすいであろう。

補助検査としてわれわれはPET(ポジトロンCT)を用いている。大脳ブドウ糖代謝に対する眼瞼痙攣の典型的なPET画像を示す。原発性眼瞼痙攣でも薬剤性眼瞼痙攣でも同様に、視床と尾状核で糖代謝の亢進を認めた(図10)。  図10挿入部位
図10





ーーーーー引用中断  その3へ続くーーー
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今日も最後まで眼を通してくださりありがとうございます。


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プロフィール
院長 清澤源弘
”すべては患者さんのために”を目指す江東区南砂駅前の眼医者です。眼科知識普及に役立つブログの作成が趣味。緑内障、小児眼科、花粉症などの眼科疾患を治療し、コンタクトレンズにも注目。眼瞼痙攣のボトックス治療、複視や視野障害の治療が専門でPETでの脳機能評価も手がけます。東京医科歯科大臨床教授(07年4月-、現在も毎水曜午後の神経眼科外来を担当)、2006年国際神経眼科学会副会長。日本眼科医会学術部委員
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