2015年12月22日

7298:視力検査「正常」なのに目がぼやける、服薬歴を聞いてみると…

視力検査「正常」なのに目がぼやける、服薬歴を聞いてみると…

 前回とりあげたベンゾジアゼピン眼症の特徴は、眼球そのものに原因がないにもかかわらず、目の痛みや眩まぶしさが持続し、日常生活にも支障が出るというものでした。

こうした重篤といえる自覚症状のほかに、ベンゾジアゼピン系薬物やその類似薬によると思われる、一時的な「目のぼやけ」もしばしば経験します。そのような訴えで来院した患者さんに視力検査をするとほぼ正常なのですが、それでも、ぼやけると訴えるのです。

 事実なのでしょうか。

ここで、眼科医清澤のコメント:若倉先輩またまた冴えています。この記事ではベンゾジアゼピン関連の調節障害まで見つけてしまいました。視神経から視中枢での伝導障害は考えにくいので、ボケの原因は有るとすれば、「調節の異常」かと思われます。調節微動を見る機械でこのような患者さんを調べれば、調節微動の異常が見つかるかもしれません。

ちなみに、GABAとは「γ-アミノ酪酸」
γ-アミノ酪酸(ガンマ-アミノらくさん)または4-アミノ酪酸(IUPAC名 4-aminobutanoic acid)は、アミノ酸のひとつで、主に抑制性の神経伝達物質として機能している物質である。アミノ酪酸にはアミノ基のつく位置によりα-、β-、γ-の3種類の構造異性体が存在するが、γ-アミノ酪酸は、そのうちのひとつである。英語名の γ(gamma)-aminobutyric acid の頭文字をとった略称 GABA(ギャバ)が一般的に広く用いられています。

ーー元の記事の続きですーーー

私、実はベンゾジアゼピンで薬剤性眼瞼痙攣は多数みてきましたが、それで視界がぼけるという訴えをした患者さんには出会ったことが有りません、

 以前、話題にしましたように、眼科での視力検査はCの字の開いている方向がわかればパスするので、そのCの字がぼやけて見えてもいいのです。見え方の質は問いませんから、日常視で「ぼやけ」を感じていることは視力検査に反映されるとは限りません。

 こうした訴えをする方々に、安定剤や睡眠導入剤の服薬歴を聞いてみると、しばしば「使っています」ということになります。

 そうした時、「では、1回だけ薬を抜いてみてください。その翌日にもぼやけが出るか試してください」と注文します。

 「先生、びっくりしました、朝すっきり見えていました。おっしゃる通り、原因は確かに薬でした」

 再診の時、そのように報告してくれる患者さんたちは、この薬物の減量中止に同意してくれる場合が多いものです。

 なぜ、このようなことが生ずるのでしょうか。ベンゾジアゼピン系やその類似薬は「GABA」受容体を作動させます。この作用は、神経活動を抑制する作用です。簡単にいえば、神経活動を抑え込んで睡眠を招いたり、興奮している神経を落ち着かせたりするものです。

 ところが、目的以外の神経活動も抑えますし、繰り返し受容体を作動させているうちに、不適切な神経活動が生じてくる可能性がある。それが、ぼやけであったり、痛みや眩しさであったりするのだろうと私は推定しています。

 しかし、まだ詳しいメカニズムはわかっていません。

 製薬会社も、これらの薬物を処方している医師も、このことを重大視していないからでしょう。

 ある製薬会社の調査で、神経系に作用する薬物を処方された患者さんが、内服後、自分勝手に中断してしまうきっかけとして、「ふらつき」「吐き気」などに続いて「目の症状」というものが出ていました。実感として理解できることです。

 「目の症状」とはいったい何か、眼科医からみると随分と大雑把で、非学問的表現だと思うのですが、これは添付文書にも書かれていることがある表現です。 にもかかわらず、処方する医師も、製薬会社もその「目の症状」を追求する姿勢は見えません。視力低下さえしなければ、目の症状などとるに足らないと、彼らは考えているのかもしれません。


kiyosawaganka at 01:26│Comments(0)TrackBack(0)

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プロフィール
院長 清澤源弘
”すべては患者さんのために”を目指す江東区南砂駅前の眼医者です。眼科知識普及に役立つブログの作成が趣味。緑内障、小児眼科、花粉症などの眼科疾患を治療し、コンタクトレンズにも注目。眼瞼痙攣のボトックス治療、複視や視野障害の治療が専門でPETでの脳機能評価も手がけます。東京医科歯科大臨床教授(07年4月-、現在も毎水曜午後の神経眼科外来を担当)、2006年国際神経眼科学会副会長。日本眼科医会学術部委員
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