12/6木曜日


いつものように名前を呼ばれ、診察室で「上むいてくださ~い。」と始まり、診察が終わると、覚悟しながらも怖れていたことを切り出された。 

「目の状態がとても安定しているので、個人病院に移ってください。」キターッ!覚悟していたとは言え、優しい優しい入山ドクターと離れるのは悲しい。それでも落ち着いたフリで「奈良の井上先生の所に行きます。」用意していた気持ちを伝えた。すると意外、反対されたのだ。

「遠くから来てくれる患者に、ドクターは喜びと心配があるものです。医者はいつかは辞めるときがあり、患者さんの状況も変わります。20~30年後も奈良まで連れて行ってもらえるとは限りませんし、出血しただの 炎症を起こしてすぐに診て欲しいとき、近い所が絶対良いですよ。ドクターとしても、ずっとその患者さんを診たいという気持ちと闘って手放すんですよ。」    力説した。

聞いているうちに、段々その気になって来た。近くで探そう。

入山ドクターとの別れは悲しいが、それだけ 目の状態が安定している証拠。何とか気をとりなおして廊下に出ると、私の名前を何度も呼ぶ声がする。それもフルネームで。声の方をじっと見ると、子どもたちが通った保育園の園長夫婦だった。

園長の白内障で来院したのだとか。 

何十年も、園児の名前ならともかく、母親の名前を覚えていてくれるなんて。私はさっきの悲しさも忘れ、つい懐かしさのあまり、話しこんでしまった。

神様は、悲しいことの 一方に、嬉しいことも用意してくださるのだ、と思った眼科待合の出来事でした。