シャルルは雨が降り始めたからわざわざ迎えに来てくれたのね。私は急ぎ足でシャルルの元へと向かった。

「もう、急に雨が降るなんて聞いてないよ。来てくれてありがとう。おかげでそんなに濡れずに済んだわ。」


私は息を弾ませながら駆け寄るとシャルルは眩しそうに私を見つめ、傘を差し向けてくれた。

「お役に立てて良かった。」

その声を聞いて私は思わず「えっ?」と声を上げてしまった。

それはここにいるはずのない…

ミシェルだった。


「オレがここにいるのが信じられないって顔だな。」


ダークグレーのシャツに雨粒が一つ二つと吸い込まれてシミを作っていく。ミシェルは自分が濡れる事なんて全く気にしない様子で私にだけ傘を差してくれていた。


「ミシェル…。」


孤島に連れて行かれたとばかり思っていたミシェルが目の前にいた。


「あんた、こんなとこにいて平気なの?!」


ミシェルはきっと逃げ出してきたんだ。
でもなんでこんなところにいるの?
私は辺りをキョロキョロ見回しているとミシェルは私の頭をポンポンと撫でて笑いかけた。

「心配無用だ。これはアイツの意思だからな。」



私はキョトンとしてしまった。
ミシェルを連れ戻したのはシャルルの意思なの?

「どういうこと?」

「それは本人に聞くといい。
とにかく本邸まで送るよ。君とこうしているとオレは今度こそ孤島送りになる。」


ミシェルは自嘲的に笑いながら私をリードするように歩き始めた。
雨の中ミシェルと肩を並べて歩いた。
しばらくすると通りの向こうから数人の人影が見えた。その中にはシャルルの姿もある。


駆け寄ってくるシャルルの後に警備の人達も慌てたように私たちの方へと向かってきた。
物々しい雰囲気が漂っている。
二人でいる所をシャルルに見られてしまった。私は立ち止まりいつしかミシェルの袖をギュッと掴んでいた。
ミシェルは袖口にチラッと視線を向けてさりげなく私の手に触れるとそっと離した。



「少し離れていろ。」
ミシェルが小さく呟いた。
あ、そっか。
何となく気まずい雰囲気になった。

「そうよね。」

私はミシェルから一歩離れた。
シャルルが私の前まで来て傘を差し向けてくれると同時にミシェルは自分の役目は終わったと言うかのようにすっと私から離れた。

「マリナ、君は雨に打たれるのが好きなのか?」

うぅ…。
シャルルの辛辣な言葉が私に飛んできた。ついこの前にもあったわね。
雨の中シャルルが迎えに来てくれたこと。あの時はミシェルを追いかけて屋敷を飛び出して突然の雨に濡れたんだった。

シャルルはサッと自分の上着を脱いで私に羽織らせてくれた。それまで特に寒いって感じていなかったけどこうして上着を掛けてもらうとやっぱり温かい。
濡れた服が知らないうちに私の体温を奪っていたのかもしれないわね。


「マリナ、とにかく本邸に戻ろう。
ミシェル、お前も来い。」


シャルルはミシェルにチラッと視線を向けて一言だけそう言った。
シャルルとミシェル、こうして二人同時にいる所を見るのは久しぶりだった。
でもなぜシャルルはミシェルを孤島に送らなかったんだろう。


つづく