オプションは売りが少し有利かもしれないと前篇で書きましたが、これとて超長期的には真実かどうかはわかりません。
だとすれば、売りにエッジがあると考えるのは、自分はとんでもないイベントには絶対遭遇しないと信じるバイアスや願望が大前提だといえます。

結局なにがしのエッジがない限り、オプションはそれ自体が期待値を上げてくれるものではなく、リターンの出方を変えてくれるものに過ぎないということです。 

上げ相場では(パイが増えるので)儲かり易く、下げ相場では損をしやすいのは、結局現物とほとんど変わらないといえます。

では、オプションで長期間儲けている人たちはどうやっているのでしょうか?

上場のバニラオプションで儲けるためにはそんなに難しい数学的な知識はいりません。
BSの前提とする条件と
標準偏差の正確な意味

が分かればほぼ大丈夫です。
これをさらに掘り下げて得られるエッジは、努力の割にはそんなに大きくはありません。

最終日の損益線で勝負するなら、数学も無用です。

長期間上場オプションで儲けている人の特徴(全部そろっているということではありません)を整理しますと

(1)相場観は人並みにはいい
(2)常に大儲けすることは狙っていない
(3)たまにしかオプションはやらない
(4)リスク管理がしっかりしている
(5)細かくマーケットのゆがみを拾いまくる
(5)運がいい

逆に退出する人の特徴は

(1)買いオプションの爆発力にはまってしまい、儲けすぎの罠にはまる
(2)売りの勝率にはまってしまい、過大なリスクを取りすぎてしまう
(3)儲かる手法を追求しすぎる=高いリターンを安定的に生むことに幻想を持ち続ける
(4)運が悪い

なんともいえない特徴は

(1)数学の高度な知識
(2)モデル運用・シグナル運用


以上をまとめてもう少し場合分けすると

  • 普段は、儲けすぎない
  • 通常は、多少オプション売り過多で多少のバッファー(遊びの部分)を少しもらいながら、常に冷静に相場に向かえる状態を維持する→デルタやガンマのリスクはとりすぎない→いつでも出動できる余裕で構える
  • 最悪時の展開になにがしかの備え(心の準備、逆指値、オプションによる保険)をしている
  • 最後に弱気になったり、最後に強気になったりすることを絶対避ける
  • たまに勝負どころでは勝負する
  • イベントで大儲けできる仕掛けを相場の節目で用意する

これらの一つや一つ以上を満たす戦術を自分のスタイルとして身に着けている人が勝ち残っていると私は考えています。
これらを、個別具体的な手法として教えることは難しいのですが、いくつか定石的なやり方は存在します。