九条清隆 相場観と金融工学

株式・先物・オプション・FX・仮想通貨など、投資・投機を通じていろいろ考えるブログです。






 「日経平均の値動きは一段とおかしくなった」

 

最近こう感じている投資家の方が多いのではないかと思います。もともと日経平均は癖のある指数でした。そんなことは十分わかってはいるものの、最近の値動きは一段とおかしくなっているようです。

投機家にとっては、おかしな動きをすること自体悪いわけではありませんが、おかしな動きが続くことで参加する投資家が減り流動性が落ちてしまえば、投機家の参加者も減ってしまいます。

 

日経平均は、今その瀬戸際にいるのではないかと思います。

 

日経平均はもともと単純平均という計算方法でスタートしました。単純平均のメリットは採用銘柄の「値幅の値動き」が直接指数に影響を与えるわかりやすさにあります。指数が動いた要因が、とてもわかりやすかったわけです。ところが、純粋な単純平均では、採用銘柄が変わったり増資や分割で株数が変わったりすると、指数の連続性に問題が出てきます。それをカバーするために、いろいろと改良が加えられてきました。

 

そもそも単純平均の指数を指標にすること自体無理がありますが、日経平均は度重なる計算方法の変更でこの無理筋を乗り越えてきました。これまで何回か日経平均に代わる指数を生み出そうという動きがあったものの、日経平均は根強いファンに支えられることでことごとく難局を乗りきりました。

ところが、生き残りの代償としてこれまで行ってきた改良が積み重なって、いつの間にか日経平均は何を表す指数か全くわからないものになってしまいました。指数の連続性だけは保たれていますが、改良前後で数字をただ繋ぎ合わせているだけといってもいい状態です。 

指数の計算方法が当初の単純平均から大きく変わっているので、過去の日経平均と今の日経平均を比べてもほとんど意味はありません。それにもかかわらず、いまだにバブル崩壊前の39,000円レベルが史上最高値として意識されるのは、多くの人が覚えているからという同調圧力から簡単には抜け出せないということだと思います。

 

本改訂版では、日経平均の終わりが始まった可能性を整理し、改めて日経平均をトレーディングすることについて考えてみたいと思います。

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ウクライナ情勢はロシアが軍事作戦を開始したことで戦時モードとなりました。

日経平均は昨年来安値を抜け25000円台へ突入しましたが、それにもかかわらず、日経VIは30ポイントを一瞬超えただけの鈍い動きとなりました。オプショントレーダーにとっては、違和感のある日経VIの動きとなっています。


日経VIの持つ致命的な弱点

日経VIは期近(現在は3月限オプション)と期先(現在は4月限オプション)を使って計算します。

3月限オプションから3月VI(満期まで13日)
4月限オプションから4月VI(満期まで41日)

をそれぞれ計算し、3月VIと4月VIを残存日数で案分して満期まで30日となるように合成したものが日経VIです。現在4月VIのウエートは81%です。

VIは正式に設定されたオプションを使って計算します。
4月限の正式に設定されたオプションの下限は23000円で、それ以下の行使価格はオンデマンドで設定されたものなので、いっさい計算対象となりません。

正式に23000円以下のオプションが設定されるためには日経平均が25000円を割れなければなりません。直近3限月のオプションは125円刻みで2000円下までしか正式には追加設定されないためです。

現在4月P23000の価格は300円台です。そこで日経VIの計算は打ち止めとなります。23000円以下のオンデマンドで設定されたオプションがいくら上昇しても、4月VIおよび日経VIの計算には含まれません。


通常戦時モードになれば、玉突き状態でOTMプットがとんでもない価格(いわゆるあほボラ)になり、VIおよび日経VIを加速度的に押し上げますが、今回はそうした状況にはなりません。



限月によって計算対象が全く異なる日経VIは指数として致命的な欠点をもっているのです。
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「SQ週の水曜日は荒れる」
「SQを節目に相場が変わる」

明日メジャーSQを迎えます。

特に6月12月は、オプションが8年前から上場されているので、とりわけビッグなSQとなります。

ちなみに、3月9月のオプションは1年半前からの上場なので、同じメジャーSQでも少し規模は小さくなります。



SQ週の水曜日は相場はあれる

今ではあいさつ代わりに交わされる言葉ですが、それでも昔は一応荒れる理由はありました。

昔は
限月間スプレッド取引がなかった
HFTがなかった
のでSQ週の月火水は、確かに先物の需給が不安定になっていました。


今はこの2つがそろっているため、相場が荒れる合理的な理由はなくなりました。
昔の名残で「SQ前の水曜日が荒れる」が、いまだにあいさつ代わりに使われているようです。


先物の投資家は、満期が近付くと決済するか翌限月に乗り換えるかを選ばなくてはなりません。
満期が近付き決済する人が増えると思わぬ乱高下をするかもしれません。
でもそれが、たまたま水曜日に集中する根拠は今も昔もありません。

SQが近付いた時に先物が乱高下した原因は、実は決済の動きではなく、翌限月に乗り換えるロールオーバーの動きです。

ロールーオーバーは、期近の先物を買って期先の先物を売るか、期近の先物を売って期先の先物を買うだけの需給的には中立な取引です。中立ですが金額が大きいので、それぞれの限月がうまく売買できないと一時的に需給が大きく偏ってしまいます


限月間スプレッド取引がなかった時代は、それぞれの限月で別々に売買する必要がありました。枚数が巨大なので、成り行きでポンポンと執行するわけにもいきません。指値で丁寧に執行することになりますが、これはなかなか大変です。できない指値が必ず残ってしまいます

そもそも、需給的には中立なはずなのに、意図せずポジションが残ってしまい、それが大勢の参加者の間であちこちに発生し、やむを得ずどこかで反対側を一気に買う売るということが起きてしまいます。

昔は悪いことに、期近と期先の出来高がある程度同じになる期間がSQ週の前半しかありませんでした。ロールーオーバーはこの3日間に集中して行う必要がありました。昔は荒れる理由がちゃんとあったのです。


今はHFTが1年ぐらい先の先物は自動的に指値を出しているので、期先の売買はいつでも可能です。
スプレッドは1発で1000枚単位で乗り換えが可能です。完全にマーケットに対して中立です。

スプレッド取引とHFTが存在するおかげで、
SQ週の水曜日に相場が不当に荒れることはなくなったのです。




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