九条清隆 相場観と金融工学

株式・先物・オプション・FX・仮想通貨など、投資・投機を通じていろいろ考えるブログです。

カテゴリ: 金融工学

ブログのタイトルにもかかわらず、あまりにも金融工学的な話題が少ないので、ほんの少し。

金融工学とは
将来の不確実なキャッシュフローの計算とそれを制御する学問です。

ポートフォリオ理論はリスクとリターンを扱い、キーワードは相関です
オプション理論はボラティリティ(=リスク)を扱いキーワードはランダムウオークと複製です

確実にできることは
リスクとリターンを交換することで手の内を最適化すること
同じものを複製することで、買値(ビッド)と売値(アスク)のさやをとることです

それを越えるものは、すべて、トレーダーの主義主張が入ります。
トレーダーの主義主張をモデルに落とし込むのが金融工学の役割です。

ただ、こちらは確実な成功は約束されません。

過去と同じパターンが再現したり、今後のシナリオが当たらなくては成功しません。

要するに「一見高級そうな相場観」が必要なわけです。

金融工学的な運用は

運用の失敗を数理的に説明できる
数理的な素養さえあればすぐに一人前づらできる

という大きな特徴があります。

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多忙な経営者が数字一本でリスクを把握するのにとても便利なVAR。
しかも、金額で出てくるので直感的にわかりやすいのが最大のメリットです。

えらーい人「今日の相場はあれたな。ポジションは大丈夫か?」
部長クラス「今VARは〇〇なのでその範囲内です」
えらーい人「そうか。しっかり頼むぞ」

金融機関におけるリスク管理では、リスク事象が発生した場合の損失金額とその発生可能性(確率)から、リスクを計測する。VaR(Value at Risk)とは、将来のある期間(保有期間)のうちに、一定の確率(信頼水準)で発生し得る最大損失額のこと。

金融技術に詳しくない文系上司にたいへん便利な経営情報なのですが、
いったん経営トップがVARの盲目的な信者になると、
現場は非常にやりやすいのです。

しかし、VAR計算の重要なねっこである
ボラティリティと相関係数は
非常に不安定で観測期間によって大きく変化するわけです。
また、信用リスクやオペレーショナルリスク(現場がチョンボして損失を出すリスク)などもむりやり確率分布にする必要があります。

特に複数資産を持つ場合、相関係数次第で結果はどのようにでもなります。

サブプライムローンを束ねたCDO(債務担保証券)のリスクが低く見積もられたのもそういうことです。

VARにしたところで、漠然とした不安に多するひとつの精神安定剤に過ぎないわけです。

VARの数字だけをみても本当のリスクはわからないのですが、
合議制体質の強い会社にとってVARは現場と経営陣をつなぐ数字とし大変便利な呪文にもなりえます。

「一応」過去の金融市場の変動実績に基づいて、
「一義的」に決めることができる数字ですから、
「一応」客観性はあります。

逆にちょっとわかった経営陣が過度なリスクをとるときに、
意図的にVARを隠れ蓑に使うという応用編もあります。

リスクのあるファンドが、VARによる説明を前面に出す場合もあります。

特に短期の実績で報酬が決まる体系においては、できるだけ多くのリスクポジションを認められたもの勝ちです。そんなときVARが安全な数字であれば、シメシメものです。

最近ではそいういう暴走が起きないように
大きな会社では、二重三重にフロント、ミドル、バックでそれぞれリスク計算をさせていますが
それはそれで、また硬直的で機動性のない運用しかできなくなるわけです。

悩ましい問題ではあります。 

VARの限界を正確に理解するのは難しくても、最悪シナリオを考える基本だけは、 お忘れなく。

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アメリカで1950年代にポートフォリオ理論の原型は生まれました。その後、1970年代にオプションの理論価格を計算する方法が発明されたことで、金融工学は急速に発展したんですね。

日本ではバブルのころから上陸し始めました。とくにバブルが終わった後は個別株を買わせるだけの営業スタイルに限界も見え始め、新たな収益元が必要な証券会社は欧米の技術を取りいれようと、先を競って、海外の学者や研究機関と提携しました。

相場観で売り買いしていた世界に、数学を導入するわけですから、伝統的なディーラーやトレーダーはてんやわんやです。社内の軋轢も大きいものがありました。まさに黒船襲来の騒ぎです。

また、販売部隊も、「あーでもない。こーでもない」相場解説から突然、リスクがどうとかトラッキングエラーがどうとかやるわけですからたいへんです。ですから、最初のうちは、そういう新しいことをやる人たちを別組織、別働隊で行動させていました。

まあ、バスケットとかポートフォリオとかいったところで、複数の銘柄を同時にj売買するにはまだまだ市場の仕組みが追い付いていません。また、社内的にも、手数料の引き下げにつながるという危機感から、大手をふって推進しにくいという事情もありました。

理系や大学院卒が証券界で突然もてはやされるようになります。
外資系も、日本でビジネスを拡大していましたので、外資系を含めて、数学ができる学生はクオンツ(数理のバクグラウンドを持つ人間)といわれて引っ張りだこでした。

金融工学とはフィナンシャルエンジニアリングを直訳したものですが、日本では意味する範囲は意外とあいまいです。

おおもとのアメリカではオプション価格理論と言い換えても大きな問題はありません。
ポートフォリオ理論は現代投資理論の数学的な部分というような感じです。

やることは、数学的に、リスクとリターンを分析し、リスクとリターンの最適な組み合わせを考えたり、リスクを違う形に変えたリするわけです。前者がポートフォリオ理論で後者がオプション理論です。

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ハイフリークエンシートレーディング(HFT)
高速高頻度取引のことですが、中身を知らないで結構適当なことをいうのがこの業界のおきてでもあります。その横綱級なのがこのHFTですね。高周波
高周波取引と訳す人がいるのには思わず笑ってしまいます。

このような事例は結構多いんですが、あんまり知らないほうが、適当なことを言えるので知らぬが仏ということかもしれません。

その背景には
コンピュータに高等数学を使った複雑な計算を高速で行わせ、取引をするとマーケットから「魔法のように利益を吸い出せる」ということを神格化したいこころがあるようです。
神格化しておけば、俺たちには関係ない世界、ですみますし、なんか理由なく市場が急落した時には、高速取引のせいにしておけばいいわけです。相場解説にはかかせないキーワードです。

あんまりネタばらしをするわけにはいかないのですが、
高速取引のおもなものは次のふたつです。
おそらく一般投資家の方が思い込んでいるものとは全く違います。

①非常に大きい株数をできるだけマーケットインパクトをかけないで売買するのに使います。
これまでは、機関投資家から預かった注文を証券会社のトレーダーが裁量(いわゆる相場観)で執行していたものを、アルゴリズムシステムを使って細かくスライスして注文するものです。もともと、売ったり買ったりする総量は決まっていますから、高速取引を使うことが市場の動きを自ら加速する要因にはなりません。売る場合にはもちろんできるだけ高く、買う場合にはできるだけ安く執行するようにプログラムされていることは当然であります。

②市場全体を一つの塊ととらえて、市場全体のマーケットメイクをすることによって利益を狙います。基本的には何百銘柄を指値で買って、指値で売ることを狙います。この売りと買いの指値を市場の全銘柄を対象に細かく指値を変えながら高速で行い、全体のリスクが中和されるように常にリバランスを行います。

煙にまくためにこれを専門用語でいいますと

スタティスティカルアービトラージ(統計的手法による裁定取引)
クオンタティテイブトレーディング(数量的計算方法によるトレード)
マーケットマイクロストラクチャ(市場のミクロなゆがみを収益化する)


これらが一色単にHFTと呼ばれています。

日本語でお客ささまに不信感を与えないために

電子マーケットメイク とか 市場流動性供給 とか言い換えたりもします。

基本は市場の細かい動きに対して逆張りです。安きを買って高きを売ります。

順張りで市場の動きを加速しているのは、本来のHFQではありません。アローヘッドの板を瞬時にかっさらたり、あおったりしているのは、実はHFQを装ったただのできの悪いプログラムトレーディングであるケースがほとんどです。続きを読む
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金融工学とは

◆難しい説明

将来の不確実なキャシューフロー(お金の動き)を定式化し、未来に起こりうるケースを事前分析し、リスクの価格を評価する枠組みを提供する学問。

資本の有効利用を視野に入れて、金融の機能的効率性と資本の効率性にかかわる思考技術知識体系を想像する学問。

金融市場の不確実性に確率論や統計学を取り入れて数値化する学問。

◆下衆な説明

言葉の説明ではごまかしけれない相手に対して、難しそうな算式や、カタカナ専門用語を使って、金融商品の危ない部分を深く追及させないようにする学問。

価値のないものを組み合わせて一見新しく手有利そうに見えるものを作り出して、一方で元の値段がわからないようにして、大きなさやを向くための技術を提供する学門。

経営者に対して、金融商品のリスクのありかをわかりやすく説明するために、経営者の理解できる部分だけを安心できるような形に整える技術を提供する学問。

◆どちらともいえる認識

金融商品のリスクを減らしながらリターンを増やす方法を提供する学問。

金融市場のスキを見つけてリスクなしでお金を儲ける手段を提供する学問。
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シカゴCMEの日経平均先物には円建てとドル建てがある。

最近は、円建ての流動性が増えてきたので、円建て先物の値段が朝のニュースで伝えられるようになった。

少し前では、ドル建てのものをあんまり意識しないでみんなが使っていた。
違うものを見ていることを誰も気にしなかった。
でも、今はもう心配ない。
逆に、ドル建ての日経平均先物を普通の人が見る機会はほとんどなかろう。

なぜドル建てのほうが高いのか?

このドル建てと円建ての違いは単純そうだが、実際はドル建てはエキゾチックな商品だ。クオントフユーチャーといって、ちょっとした金融工学の知識がないと理論価格は計算できない。

現物指数が12000円のとき
円建ては1枚あたり 12000*500円=600万円 これはシンガポールと同じ仕様なので、シンガポールとの間で移管が可能。

ドル建ては1枚当たり 12000*5ドル=6万ドル(1ドル100円だとたまたま600万円)

今は1ドル=100円に近いので、1枚当たりの金額はたまたま近い。

もし、日経平均が同じ12000で動かなくても為替だけ突然1ドル=200円になったら、円建てを勝った人は何も変化はないが、ドル建てを買った人は円換算が倍の1200万円になって円ベースでのリスクは倍増する。今後の円ベースでの損益は円建ての2倍になる。もちろんドルベースでは前後で何も変化はない。

このように為替と日経平均の関係を予想を反映して、2つの先物にはリスクに見合うように価格差が生じる。
今はドル建てが高い。この差を単なる金利差と考えている人が多いが、それは大間違い。

円ドルの為替と日経平均の相関関係を反映して、ドル建ての日経平均先物は円建てよりも高くなったり安くなったりする。そこがエキゾチックなところで、単にドル建てで表示されているだけではない。
まったく無相関の時は、円建てとドル建て先物はほぼ同じ値段になる。
これを知っておくと、ちょっと自慢できるかも。知らないと、ちょっと恥ずかしい。TVでいつも解説している人は...

今、ドル円と日経平均の間には強い正の相関がある。
ドル円が上昇(円安ドル高)するとき日経平均が上昇するという関係である。
この相関関係が強いほど、ドル建て日経平均の理論価格は高くなるのだ。

たとえば、20年以上前の円高・株高・債券高のトリプルメリットをテーマにした相場だと、ドル建て日経平均は円建てより安くなる。

円建ての日経平均とドル建て日経平均の価格差を分析すると、市場が為替と日経平均の関係をどう考えているかがわかる。(金融工学ではインプライドコリレーションという)たまにはそういう解説も聞きたいものだ。

なぜドル建てのほうが流動性があるのか?

大阪の日経平均先物の外国人投資家の市場シェアは7割前後ある。日経平均の値段を決めているのは外国人投資家だといってもいいぐらいだ。

昨年10月から日経平均は約40%上昇した。
一方ドル円は約20%上昇した。
ドルベースで考えると、(1+0.4)/(1+0.2)=1.16 16%しか上昇していない。

外国人投資家から見ると、現物株をこの間持ち続けて場合は16%の利益というあんまり有難くない話。
ところが、大阪の先物を同じ金額持っていた場合、為替の影響は値上がり分にしかかからないので
0.4/1+0.2=0.33 つまり約33%の利益となる。(証拠金や限月交替時の影響は無視)

ドルベースの投資家にとって、円安株高シナリオはあんまり有難くない。現物買付時に為替ヘッジをするか、円資金の借り入れ(いわゆるキャリートレード)を行えば、まるまる40%の値上がり益を享受できる。
円建て先物でも十分この有難くなさをある程度相殺できる。

その悩みは、CMEのドル建て日経平均を買うことで一発で解消する。
今の相場では、ドル建て日経平均先物はドルベースの投資家にとってはお宝なのだ。

そういうわけで、シカゴでは円ベースよりドルベースの日経平均先物が好んで売買されるのである。
買い手がどうしても多くなるので、売り手は、円ベース先物との間で裁定取引をする業者が中心になる。

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デリバティブをわかりやすく解説する吉本佳生氏。
「スタバではグランデを買え」で大ブレイクしている。

普段冷静な吉本氏の怒りのパワーを感じさせる一作。

この本はもともと2009年に「デリバティブ汚染」というタイトルで地方自治体やその関連団体に広がるデリバティブ被害を書いたもの。今回はその大幅改訂増補版。

デリバティブ汚染が個人にまで広がりつつあることに危機感を抱いて、前作を生かしながら最近の事情を追加している。

金融工学の持つ負の側面がうまく描かれている。
ただ、めずらしく力んでいるので、前作に比べ深入りしている分だけ難解さが伴う。相当お怒りのようだ。
初級者にはちょっと厳しいかも。
中級者におすすめだが、上級者はデリバティブに対する痛烈な批判だけでも一読の価値はあるだろう。

安易にデリバティブ商品に手を出した地方自治体およびその外郭団体には共通の特徴がある。
それは、赤字の運営資金を基金の運用益によって補わなければならないという切羽詰まった事情だ。

遠い将来のリスクには目をつぶって、目先の高利回りに手を出してしまう。
近くの法人が始めればそれで安心して安易に手を出してしまう。その心理をついてたくみに販売する。
そんな構図だ。著者は、デリバティブが製造元、販売者、購入決定者の3者両得になるように巧妙に使われており、最終受益者のみが被害をこうむる極めて悪質な詐欺まがい商品だと指摘している

そういえば、厚生年金基金も、代行割れという積み立て不足を解消するために、運用利回りを偽った投資顧問会社にやすやすと引っかかってしまった。入口はよく似ている。



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金融工学は何の役に立つのか。
経済学と同様に投げかけられる疑問である。

過去には理系の学生が金融機関へ殺到したこともあった。
金融工学にはどこかオシャレな響きがあった。
35歳以上お断りだと言われたこともあった。
そのころ門前払いを食らったオヤジたちはとっくに定年を迎えているだろう。
お金を生む魔法の秘密を持っているとも勘違いされた。

いろんなことが起こった結果、金融工学では大したことができないということがばれてきた。
でもそれは、ばれたのではなく、最初にみんなが勘違いしただけである。
流行に踊り、流行が過ぎると端に追いやられる。
ハクライものの宿命である。

こんなときだから、もう一度投資の原点に戻ってみないか。
それが、このブログのメッセージである。

金融工学といわれるものが、最初に登場したのは1950年代。
平均・分散の概念を使い、算術的に証券市場を分析することが始まった。
それまでの勘だけがたよりの証券市場を合理的にとらえようという試みだ。

まだ、この時点では、金融工学とそれを使った投資理論も統計学に毛の生えた程度だった。
その後金融工学を本格的な発展をさせたのが、1970年代に入って発明されたオプション理論である。

これを皮切りに、アメリカではどんどん派生商品が導入された。

これまでにない損益パターンが実現できるとあって、金融工学をベースにした派生商品取引は一気に広がった。

それに最初の水を差したのが
1987年に起こったブラックマンデー。

ポートフォリオインシュアランスという今から考えれば原始的なやり方で下値をヘッジする手法が、現物市場の予想外の下落に後追いとなり、売りが売りを呼んだ。

金融工学最初の試練は、意外と大したものではなかった。
ポートフォリオインシュアランス自体、大した理論でもなかったし、米国株式市場の立ち直りも意外と早かった。

その後アメリカはレーガン政権からパパブッシュ・クリントン政権へと変わり、経済成長とともに株価の上昇が続いた。証券業界は、証券化、M&A、デリバティブなど成長分野が目白押しで、MBA取得者の多くがウオールストリートを目指した。

そんな中、2回目の危機が訪れる。
1998年LTCMの破たんだ。
オプション理論でノーベル賞を受賞した経済学者が2名もパートナーとして参加していたから、金融界は大騒ぎである。

しかし、この混乱でも金融工学は死ななかった。
IT産業が急速な成長を見せていたこともあり経済は堅調だった。
金融工学を支えるコンピューターがこのころ急速に進歩した。

しかし、そのIT産業のバブルが2000年に入ると変調をきたす。ITビジネスの不確実性が大きく成長する可能性としてのオプションを評価しすぎてしまったのだ。要は実績もないのに夢を見過ぎたわけだ。
さらに続いて起こった911テロでアメリカは大きなダメージを受けた。

落ち込んだ経済を立て直すために、果敢な金融緩和が行われた。
この緩和の流れに乗って起こったのが空前の住宅ブームだった。

証券化によって、貸し手と借り手が分断されやがて金融業界のモラルは崩壊した。

合成された証券の評価に使われた格付けは金融工学とはとても言えない鉛筆なめなめ同然のシロモノだった。

投資銀行や証券会社はデリバティブやオフバランスの仕組みを使ってとんでもないギャンブルをおこなった。

次の買い手となる貧乏人がついに見つからななり住宅市場はあえなく崩壊した。
住宅価格の下落は、、まわりまわって2008年にリーマンショックを引き起こし、100年に1度といわれる金融危機だといわれた。

こうして金融工学は3度死んだ。

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