九条清隆 相場観と金融工学

株式・先物・オプション・FX・仮想通貨など、投資・投機を通じていろいろ考えるブログです。

カテゴリ:証券会社の現場 > 伝説のセールスマン

やり手証券マンM氏久々の登場です。

セールス5
いろいろ小細工を繰り返し社長さんに会ううちに、僕にもお客さんが何件かできてくるわけです。
いよいよ戦力として「本業」=「手数量稼ぎ」をしなければなりません。

つまりそれは、株を買ってもらって、それを売ってまた別の株を買ってもらうってことを
「延々と」続けさせるということ。

証券会社は、正直言ってお客さんが儲かろうと損しようと、売買ごとに手数料が入るわけで
株を買ってもらったらできるだけ「長く持たせずに」「短期売買」をしてもらうことが一番。
これをいっては身もふたもないけど。
 
僕がいたころは、株の取引時間は9時から午後3時まで。
3時に取引が終わると「今日は何ぼや!」と課長席が声を張り上げるんだ。
今日一日で手数料をいくら稼いだのか報告しなかればならないとってもイヤーな時間。

「10万円です」などど答えようなものなら「そんな奴は、店頭に降りろ!!」と即座に罵声が飛ぶってわけ。

ちなみに「店頭」とは、支店の窓口営業のことで「通常、女性がやる仕事」と考えられていた時代なんだ。
一度店頭に回されれば、まず出世はないというのが不文律。
会社人生は「THE END」なんだ。
僕はそう理解していたし、その恐怖と毎日闘っていた。
 
「ど、ど、どうにかして手数料を稼がねばならない...」
追いつめられた営業マンが手を染めるのが「ダマテン」なんだ。
僕がダマテンに手を染めたかどうかまでは言えません。
確かにグレーなものはあったかもしれないけど...

ダマテンとは、麻雀用語で、テンパイしていながらリーチせずに、だまし討ち(麻雀界では立派な手法)で上がろうとすることだけど、
「証券界では」「お客さんに電話せずに、お客さんの勘定で発注すること」。もちろん違法に決まっております。

明らかに違法でも、人間追い込まれればそこまでやってしまうのである。

今は、証券界はまるで別世界のように紳士になってしまったけど、当時は「ダマテン」が結構頻繁に行われていたのは暗黙の事実さ。
君に任せるって場合もあるわけだしね。(これもダメだけどね)

それでも、ほとんど問題が表面化しなかったのは、N証券の営業マンの凄さということ。
お客さんにばれたときの対応策は「徹底的に謝る」という拍子抜けするぐらいシンプルなんだ。
小細工はしない。ズボンとおでこが擦り切れるぐらい土下座をする。
その点2次災害は極めて少なかったはず。 

そんなアホな、と思われるかもしれない。

そもそも営業課が相手にするお客さんは「お金持ち」なので、ダマテンで損した金額は彼らにはそれ自体は大した金額ではないんだ。
 
営業マンが(時には上席の課長も一緒に)、会社に詫びに飛んでいき、部下の面前で「申し訳ありませんでした!!」といって土下座でもしようものなら、謝られてる社長のほうが「カッコ悪い」のでまあまあ、となって「もういいから帰れ」となるんだ。

営業力とは追い詰められたぎりぎりの世界で生まれる。
僕はそう確信したのさ。
 
このエントリーをはてなブックマークに追加 Clip to Evernote

セールス5
名刺を1日100枚集めてヘロヘロになって寮に帰っても、まだ1日は終わらない。

「2度と来ません!!」とか「電話しませんから!!」
と口から出まかせを言って名刺をもらっても、そんなつもりは毛頭ありませーん。
続きを読む
このエントリーをはてなブックマークに追加 Clip to Evernote

おなじみM氏の投稿です。昔の現場ですね。今はだいぶ違うとは思いますが。

セールス5
 あの手この手で苦労した社長の名刺集め。
 そんなのはしょせん軽い準備体操に過ぎないんだ。


 準備体操が終われば、いよいよ本番入ります。
 さあ、鬼の「新規顧客開拓」だ。
 

やり方に決まりがあるわけでなし、王道もなし。誰が教えてくれるでもなし。
要は「自分で考えろ」ということなんだ。

一つだけはっきりしているのは、
花の営業部隊が対象にする顧客は「お金持ち」ということ。
たとえ100万円単位の注文を毎日もらえたとしても、しょせんそれは我々が相手にすべき「ホンモノ」のお客様ではない。
今なら明らかに「女性蔑視」で問題になるところだけど、「そんなお客は店頭の女の子にやってもらえ!!」と軽く上司に一蹴されるってわけ。

「お金持ち」の基準はいちおう「1億円以上」資金を預けてくれるというところだろうか。
その「お金持ち」を探すネタはタンマリ用意してある。何のために名刺集めやったんだかねホント。
高額納税者という鉄板リストから始まり、高額所得法人リスト、ベンツ保有者、ゴルフ会員権保有者、百貨店外商客等のリストありとあらゆるリストがそろっている。
そこにかたっぱしから電話して、アポ取りをするわけさ。

電話を掛けるときのルールは、「決して受話器を置かないこと」左手で受話器を持ったまま、右手で番号を押し続ける。
きつい支店だと、これを「立ったたまま」やらされる。

電話しても「私、N証券××支店の××と申しますが、社長様いらっしゃいますか」といって
社長に取り次いでもらえる確率はせいぜい 1% くらい。
 
しかも、かけた電話の2回に1回は「私、N証券の、」とひとこと言ったところで、ガチャン!!で終わり。
先程挙げたリストには過去諸先輩方がすでに何度も電話しているし、おそらくあらゆる証券会社、銀行、サラ金等から連日電話がかかってるはず。

こういう新規先への飛び込み電話は、今なら「非招請勧誘」といい立派な違法行為である。いまどきおれおれ詐欺ぐらいしかそんなことやってないんじゃなかろうか。
 
こんな、精神的に焦燥感にまみれる「禅の修行」のようなアポ取り電話が、指が腱鞘炎になるまで延々と続くわけさ。
このエントリーをはてなブックマークに追加 Clip to Evernote

おなじみ、やり手元証券マンM氏からの投稿です。

セールス5

N証券はいきなり「OJT」。
「On the Job Training」

つまり仕事をしながら研修するってこと。
というか要はぶっつけ本番。


普通の会社は、社会人としての最低限のマナーと知識を研修で教え込んでから外部に送り出すはず。N証券の場合は研修の時間がもったいないから、日々のトラブルにもまれて研修?修業?せい!体で覚えろということなんだ。支店に配属された新人は、まず「名刺集め」の業で修行する。着任1日目で、右も左もわからないところなのに、支店近辺の「会社」「商店」に1件ずつ順番に飛び込む。まさに絨毯爆撃ですね。

「社長いらっしゃいますか?」と訪ねて、社長の名刺をとにかく集めまくるんだ。
これはまるで「お布施行脚」のようなもので、特に意味はない。研修というか修業のようなもの。
課せられたノルマは一日100枚あまり。
スーツが歩いているようなわけのわからない若造が突然「社長いるか」と訪ねて来ても、「普通の会社」なら、「留守にしております」と返されるのがオチ。

まあ、愛想の悪い受付のおばさんに体よく追い返される。
門前払いを食らわされるうちに、そのうち世の中が少しわかってくる。小さい事務所なら、入った瞬間に社長のいる場所はすぐに見抜けるようになる。そうなればこちらのもの。受付のおばさんはスルーして、「社長らしき人」のところまで、一直線さ。そして、「社長、N証券××支店に配属になりました××です」「ご挨拶に参りました。名刺をいただけませんでしょうか」とやるのさ。
 
ここで、社長の反応は2パターン。
「失礼な奴だな、とっとと帰れ!」と怒鳴るか、「はい、これ、二度と来るなよ」と名刺を素直にくれるか。
4月恒例新入社員のお布施参りはとっくにオミトオシなのである。「もうそんな季節か」という手慣れた社長も。
こちらもしだいにスレてきて、最初から「二度ときませんし、電話もしませんから名刺下さい」って、強引に名刺をもらうようになる。

といいながら後日「先日、ご挨拶に伺った、××です」としれっと電話するわけさ。
社長の対応はここでも2パターン。
「二度と来ないって言ったじゃないか!!、ガチャン!!」と本気で怒って電話をきるか、「お前、図太いやつだな。」と、話をしてくれるかである。もともと株にちょっと興味がある社長は、こちらがそこまで懐に飛び込むと意外に話すチャンスをくれたりするから不思議なものだね。

N証券の営業スタイルは、ほとんどの社長に怒られようとも、たまにこちらの無鉄砲さを面白がって相手にしてくれる社長を探して回ることなんだ。

ごくごくまれに、世間を知らない受付嬢が「ご丁寧に応接室に通してくれる」ことがある。
でもこれは、実はあんまりありがたいことではない。
応接室に通される→丁寧に扱われる→実は先輩社員の重要な既存顧客→社長が出てきて話が長くなる→時間をとられ名刺集めのノルマが達成できなくなるってわけさ。

「社長いらっしゃいますか!」と言ったとたんに、奥に座っていた社長がつかつかと歩み寄ってきて「帰れ!!!」と塩をまかれることもある。これは先輩社員がこの社長に「大損させた」というあかしなのだ。

とまあ、こんな感じのことを3か月もやっていれば、いつのまにかOJTは終了するわけさ。

このあと、どんなセールスマンになるのでしょうかね。なんか張り切って続編書いているようです。
このエントリーをはてなブックマークに追加 Clip to Evernote

おなじみ、やり手元証券マンM氏から手記をいただきました。


セールス5
入社が決まると、次のイベントは配属→入寮とくる。

新入社員のほとんどは全国100以上ある営業店への配属となり
原則全員、寮に「入れられる」

N証券の寮は××明清(メイセイ)寮という。(××に地名が入る)

その名のごとく「明るく」「清く」ってわけ。

こんなパラドックスに富んだ名前を誰が考えたんだろうね。

「絶対に明るくない」し「清くもない」明清寮。
朝5時には寮を出て、その日のうちに帰ることなく、午前様で帰っても寝るだけの寮。

休日でも、明日やるべきノルマを考えると吐き気がする寮。
既婚先輩社員が突然押しかけてきて、愚痴・説教を長々と聞かされる寮。

何よりも笑点のテーマソングが嫌いになった寮。(日曜5時は最悪の時間帯)
 

僕だって、本当は明るく生きたったさ。


でも、文の勢いからは本人楽しんでいるようにも思えますが。。。
まだまだ続きがあるようです。

このエントリーをはてなブックマークに追加 Clip to Evernote

またまた、やり手証券マンM氏から続きの手記をいただきました。

セールス5
私の入社したN証券は「営業ありき」の会社だったんだ。


あんまりお利口な人材は必要なく、体力自慢で打たれ強いのがいい。でも、東大生はある一定数が必要なんだ。当時は「業界無敵」といわれたN証券でも大蔵省には頭が上がらなかったってわけさ。

おそらく上級公務員試験を通って大蔵省に入る学生のほとんどが東大卒のはず。
将来彼らのなかから、証券局課長から局長まで排出する。そんなエリート官僚の「同期」をN証券としては10名程度は取っておかなければならないからリクルーターも大変なんだ。

当時N証券は、採用戦線のピークにあわせ、内定をだした学生を、関西地区、関東地区の学生に分けて旅行に連れていたんだ。関西の学生は三重の保養所、関東地区は伊豆の保養所。もちろんこれは会社側の「好意」などでもなんでもない。いわゆる「拘束旅行」と呼ばれているのもので、この時期、学生が他社に寝返らないようにするために、保養所に「軟禁」するのが目的なのさ。


そのときのエピソードにこんなものがあるんだ。
関東組約100名が伊豆の保養所について食事がはじまる。自己紹介の席では、当然のことながら早慶生が圧倒的に多く、明治、筑波、一橋等が続く。しかし、東大生がなぜかいない。たしか10名内定者がいたと聞いている。やがてひそひそ話が始まる。「まさか東大は関西組じゃあないよな」「なぜ、東大がいない」「彼らはどこへ行ったんだ」と。


その頃、彼らは「ハワイ」にいた。。。

どうやら、ハワイ拘束旅行の噂は本当のようです。

このエントリーをはてなブックマークに追加 Clip to Evernote

80年代に起こったバブルはいつから始まったのでしょうか。
おそらくプラザ合意のあった1985年ごろからですね。
一瞬急激な円高に日本経済はひるみますが、やがて
円高、金利低下、株高のトリプルメリットが始まり、未曽有のバブルへ突入するのです。
当時の新人採用は今とは正反対の売り手市場。
そこそこの大学?を出ていれば誰でも就職できました。特に体育会系の学生は勉強なんかできなくても。


バブルは再来するのでしょうか?
ついに就職氷河期に終わりわくるのでしょうか?


そこで、なんともうらやましバブル期に、N証券に入社したあるやり手証券マンMの手記を紹介しましょう。それはそれは、学生は引く手あまただったようです。

セールス5

N証券では「優」の数が0でもどんどん内定がでたんだ。同期は350人。

みんなの顔などおぼえちゃいないさ。
いったい何人残っているのだろう。
そんなこと今の僕には全然関係ないけどね。

N証券にはリクルーター制度があったんだ。支店の営業マンだろうが本社スタッフだろうが会社から情け容赦なくリクルーターをやれと指令が下されるわけさ。
指名された社員は人事部の手下となり平日へとへとにこき使われた上、土日は出身校の学生の採用活動に没頭させられる。
秘密だけど、これにもノルマが。

たとえば、早慶では各50名必達と言われていたんだ。
 

三菱・住友グループなどとまともに競って、簡単に学生を採用できるはずもなく
「おしみなく金を使う」

1年間でリクルーターひとりに割り当てられる交際費は100万円以上に及ぶ場合も。
採用活動といっても、やることは、学生を呼び出し、特上すき焼き、特上しゃぶしゃぶ(なんでも特上である)等をご馳走し、歓楽街へ連れて行くだけさ。

学生の中にはこのときはじめて「特上肉」に遭遇し、感動して涙する者もいる。

バブル当時内定のピークは4年生の6月ころだったので、目星をつけた学生はこのころ毎週末呼び出し、飲ませ食わされの乱痴気騒ぎを繰り返す。

「毎週」の意味するところは他社の面接に行かせないようにする作戦だから。

めでたく内定し、承諾すればそれでよし。

ただし最終選考まで残っていたのに最後に「他社に行きます」というとただでは済まない。
伝説の「コーヒーシャワー」の儀式を受けなければならないのさ。

これは、電話で「他社を考えています」というと決まって「喫茶店で話を聞こう」ということになるんだ。
学生の寝返り話を聞き終えたところで、「そうか、わかった。他社で頑張れ...こんな時でもな」と
バシャ―とコーヒーを頭からかけるってわけ。

当然、これは純情ですれてない学生の話で、情報ツウの学生はこの時期、N証券に喫茶店に呼び出されたら行ってはいけないと知れていた。。。


元N証券社員M


どうやら、N証券のコーヒー事件は伝説ではなく「日常茶飯事」だったらしい。
でもこれは20年以上前の話ですからね、念の為。

このエントリーをはてなブックマークに追加 Clip to Evernote

↑このページのトップヘ