2009年02月21日

PHOEBUS / 奥の細道

『喜怒哀楽忘れる快楽訪れるこの一瞬』 「そよかぜ」


CABUとLINVの兄弟MCとDJ,SOからなる静岡のグループのデビューシングル。発売は1997年。95,96年の日本語ラップバブルとも言える盛り上がりによってこの時期はいろんな作品が出てるね。まさにその時期に、彼らは世界的に活躍するクリヤマコトの全面プロデュースである意味鳴り物入りでデビュー。経緯としてはクリヤマコトがオーガナイズしていた「salon」というイベントでクリヤマコト自身が見出したそう。この作品におけるプロデュース名はClay-Z。
ちなみにこのPHOEBUS、このシングルの12インチ版と別に2枚の12インチ、更にそれらをまとめたミニアルバムも出してます。レコは3枚とも持ってるけどミニアルバムは一度も見たことない。欲しい!

太陽神アポロンの別名というPHOEBUSの名前をグループ名に冠する彼らの特徴はとことん自然をモチーフにしたリリック。この時期のアンダーグラウンドにおける主流のハードコアなリリックでもなく、LB勢のような日常をシニカルに切り取るようなリリックでもなく、自然から得る情感や自然そのものを歌うリリックが中心。

彼らの概観に関しての話はそんなところにしておいて、実際の曲について。
幻想的な音に乗せてまさにPHOEBUSらしい自然を歌うイントロ部分から一転、重たいビートに乗せて『手合わせ合掌 合わせ合掌』という印象的なフックで始まる「卯の方向」。ヴァース部分では浮遊感のある上ネタがまた空気を変えるものの、曲のベースになるビートがしっかりしてるためヴァースとフックの明暗のバランスも取れてるいいトラックになってる。ラップスタイルは、この曲だけでなく全体的に言えることだけど、この当時らしい単純な単語踏みで巧さがあるわけではないんだが、兄弟らしい細かい掛け合いやユニゾンを使うなど言葉を聴かせる工夫がすごくなされてる。
タイトル曲「奥の細道」。この曲も『奥の細道のまた奥の道の奥の秘密基地』というフックがとにかく印象的。フックの時だけ表れるベースも耳に残る。太いビートに不穏な上ネタ、あくまで自然や情景をモチーフに描きながらも他の2曲とは違う攻撃的なリリック、かっこいい。そしてこの曲では日本語ラップ史に残る(勝手に認定)ものすごい試みが。『返ってこい山彦 ほら ヤッホー(ヤッホー) ほら ヤッホー(ヤッホー)』という、実に日本的な"やまびこール&レスポンス"。実際、「everybody scream!」に対する「みんな騒げー!」はうまい日本的変換がなされてるけど、「say ho!」はそのまんまだからね、考えれば考えるほどこれ以上の日本的コール&レスポンスは思い浮かばないよ。今後はみんなこれでいくべき。どうですかみなさん。 ほら、ヤッホー! ほら、ヤッホッホー! さ、わ、げー!
そして3曲目「そよかぜ」は、これぞPHOEBUSなリリック。吹き抜ける「そよかぜ」が浮かび上がらせるイメージや感情をそのまま歌詞にした曲。トラックもふわふわと浮遊感漂う気持ちよさ。ここでも細かい掛け合いやユニゾンがいい味出してる。そしてやっぱりフックがいい。冒頭で取り上げた『喜怒哀楽忘れる快楽訪れるこの一瞬』。ほんと気持ちよさそうだなぁ。


結構褒めまくっているんだけど、正直な話最初はあまり良いとも思わず封印してた時期もありました。でも時間おきつつ何度か聴いてるうちにどんどんはまってきて今ではすごい好きな1枚に。
上でも少し書いたように、基本的にどの曲でもベースになるビートがしっかりしてるために、その詩的なリリックの内容に引っ張られて変にアブストラクト的な音楽じゃなくちゃんとHIP HOPな曲になってるのが好印象。たぶん今の時代にこういうリリックを書こうとする人がいたらこうはなってないんじゃないかな。
そして、どの曲も本当にフックが印象的でいいんだよね。この作品の中では「奥の細道」が一番好きなんだけど最初はやっぱりフックがすごく耳に残ったのが改めて魅力に気づいていくきっかけでした。
持ってるけどあんまり聴いてないって方いたらリリック起こし見ながらもう一度聴いてみてみるといいかも。


奥の細道

1.Introduction
2.卯の方向
3.奥の細道
4.そよかぜ
5.卯の方向(Instrumental)
6.奥の細道(Instrumental)
7.そよかぜ(Instrumental)

PHOEBUS / 奥の細道
[リリック起こし]

kls at 21:30│Comments(0)TrackBack(0)CD review | PHOEBUS

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