酔い音←こっち向き

自分が好きな奴 胸張って手上げられる奴いる? 俺はそこまで自信がねぇ けどビビるほどチキンじゃねぇ

CD review

CONFUSE / STRESS (12inch)

日本語ラップ最初のアングラ全盛期1996年発売。
当時P-VINEをはじめてとして様々なレーベルが日本各地のアーティストを拾い上げ作品をリリースしていた。
結局12inchやCD作品1枚や2枚を残して,その後まったく名前を聞かなくなってしまったアーティストも多くいる中,日本語ラップ好きに強烈な印象を残したひとつがこの作品。
DJ DOUBLE-KのMIXTAPE「弐」に収録されていたことで耳にした人が多いのではないだろうか。

静岡浜松レペゼン,OTA, PLUS-1, BOMBERの3MCとDJ TAKAYAのグループで92年結成だそうな。(以前書いたCOMFUSEの記事でいただいたコメントより。貴重な情報感謝です。)

正に96年当時の日本のアンダーグラウンドヒップホップ感満載の不穏なトラックに”ストレス”をテーマに淡々とラップを紡ぐ曲。
日本語ラップとしての盛り上がりや認知度の上昇とともに,とんでもない歴史的なニュース,出来事が立て続けに起こった95,96年という時代の鬱屈した感じの発露なんだろうなという背景を強く感じる。
とは言え,いつの時代でもストレスと戦いながら,向き合いながら,逃げながら,なんとか生きていかなきゃならないのが人間。
発売から26年経った今でも,いわゆるワークライフバランスが崩れていろいろと人生考え直した自分にとっても,刺さる言葉がある。


『自分自身からの こうするべき あるべきって指示を従い
 いつの間にか知らず知らずのうち 蓄積され続け溜まり溜まる
 体の中へ育ちゆくストレス こらえ切れず怒りへと変貌を遂げ 皮膚を破る』

BEATMASTER / FULL MOON 2000 (12inch)

beatmasterfullmoon2000『次のコース西のほうだ河川敷 あるんだよなパワーを出せん時期』by.KO-1

静岡浜松,セントラルアイランドレペゼンBEATMASTER。
この作品「FULL MOON 2000」も収録されているアルバム「NIGHT KAHRIMAN」のレビューはこちら

とにかくライミングが気持ちいい。
メロディをのせたフロウや多彩なビートアプローチで聴かせる気持ちよさではなく,その言葉の持つ本来の音調と響き,そして韻を踏むことで生まれるリズムが聴かせる気持ちよさ。
”韻を踏む”ってことの効果って正にこういうことだよね。
『検問すらライミングとタイミングで突破 どっか月が見える丘に行こうか』by.KO-1「FULL MOON 2000」

『または深夜零時で集う 煙草の煙を吐き出す鉄道 乗れば感じる体で哲学 俺の言葉ひとつで凍てつかす 口にさすメンソール そう我が名はKENGO 言語使いの百面相』by.KENGO「続 哲学と文学の音楽」

とにかくガシガシとケツで韻を踏みながら繋がれていく音の気持ち良さ。
「FULL MOON 2000」のフックを盛り上げるように展開するトラックも,「続 哲学と文学の音楽」の印象的なギターのフレーズのワンループトラックも最高に渋い。

フィーチャリングのLOVE PUNCHのILLVANAも同じく気持ち良く韻踏みながら印象的なフレーズを残してる。
『まるで関門突破の尿道口 揺れるNewYork L.A. 東京と各地のB-BOYに感動を与える堂々と』by.ILLVANA「続 哲学と文学の音楽」
『まるで関門突破の尿道口』ってなんだ。最高。

名盤。


Side A
1 FULL MOON 2000
2 instrumental
3 a cappella
B side
1 続 哲学と文学の音楽
2 instrumental
3 a cappella続きを読む

ACKEE & SALTFISH / Shatta Fire GOHATTO REMIXES (12inch)

IMG_2506

名古屋出身の双子のレゲエユニット。
「Shatta Fire」と「GOHATTO」のREMIXが収録の12inch。2001年発売。
「Shatta Fire Murder Mix」には同郷M.O.S.A.D.が参加。
M.O.S.A.D.の1stalbum「Great Sensation」が2002年、前身のMasterz of Skillzとして出した「E.A.T./M.O.S.」は1999年なのでモサドとしてもトコナXとしても正にこれから大進撃をする直前の作品。

BPMの速いダンスホールビートにアキソルとモサドの熱いラップが絡む。リミックスへの参加ということでモサドの面々は1ヴァースずつの参加だがやはりTOKONA-Xの声の存在感の強さが並ではない。
もともとのhookはもちろんかっこいいんだけど、オリジナルにはないアキソルとモサドのhookがめちゃくちゃかっこいい。
LIVEで聴いたら上がりまくること間違いない曲。モサド参加のREMIXは12inchのみなので見つけたら即買い。

『誰だ? ACKEE&SALT FISH 誰だ? M.O.S.A.D.
 やったろまい クソなStyle 腹くくれやGuys
 You think your big time? You gonna die.』


ACKEE&SALT FISH / SHATTAFIRE GOHATTO REMIXES
Side A
1. Shatta Fire Murder Mix Feat.M.O.S.A.D
2. Murder Mix Instrumental
3. Original Mix
4. Original Mix Instrumental

Side B
1. Gohhatto DJ YUTAKA Remix
2. DJ YUTAKA Remix Instrumental
3. Original Mix
4. Original Mix Instrumental

V.A. / Yellow Rap Culture In Your House

YRCIY1YRCIY2YRCIY3

知る人ぞ知る、いや言わずと知れたKRUSH POSSE「K.P.」収録のコンピ「Yellow Rap Culture In Your House」。1990年発売。
$SIDEに2曲、¥SIDEに2曲分かれて収録されている。「K.P.」は¥SIDEに収録。$SIDEにはGDXが元在籍していたHOME BASE、フィメールラッパー2人のHONEY BOMBが参加しているがどちらも英語ラップ、それに対し\SIDEはDJ KRUSH POSSEとGUTCH GEEともに日本語でラップしている。¥と$の違いもそういうところからなのかな。


¥SIDE1曲目「GUTCH GEE / DO DA DO」。カッティングのきいたファンキーチューン。この当時のコッチ側(MAJOR FORCE流れとは違う側)の特徴かリリックに関して特筆するようなことはないけど、ラッパーの『break!』の合図で入るブレイクやフックに入るスクラッチなどHIP HOPらしい曲を作ろうとしてるのがすごく伝わる。それこそその辺はMAJOR FORCE流れと違うこの当時のHIP HOPへのアプローチの典型かも。
2曲目「DJ KRUSH POSSE / K.P.」。KRUSH POSSEとしての初めての録音モノ。MUROが『とにかくカッコ良いモンを作ろう』と言って作られた曲。後の「CHAIN GANG」やペイジャーでのハネのあるファンキーラップを想像すると肩透かしをくらうかもしれないが、抑えたトーンでクールに決めるMUROは文句なくかっこいい。イントロや曲中何度か挿入される「SLY & the FAMILY STONE / Sing a Simple Song」ネタがとにかく印象的でこの曲をグイっと引き締めてる。これ以降から今のMUROを見た贔屓目差し引いたってやっぱりトラックもラップもクオリティ高い。

$SIDE1曲目「HOME BASE / NOW IZ WHEN WE MUST DECIDE-SAMURAI STYLE-」。このコンピにMUROを誘ったというDXシュウ(現GDX)ともう一人のラッパーYOGGY-B(現YOGGY)+DJ MA$Aのグループ。このコンピ全体的にそうだけどこの曲も当時のミドルスクールノリ全開のトラック。フックはスクラッチとタイトルの連呼ってのも典型だね。二人ともラップは英語。でもDXシュウはやっぱり声が立っててかっこいい。YOGGY-Bも悪いわけじゃないんだけどなんでEAST END始めてからはラップ辞めちゃったんだろう。
2曲目「HONEY BOMB / LET'S GETHERIN」。当時は珍しかったであろうフィメールラッパーの2人組み。PUBLIC ENEMY的なあのピャーって騒がしい音で始まるトラックの上でカタカナ英語で頑張ってラップ。『あぁ〜あっあ〜びーっぼーい♪』っていう謎の歌フックが変に耳に残る。


このコンピがWax Plateからの2枚目(YRC-002)。ちなみに1枚目はGUTCH GEEとYOGGY-BのユニットPuzzle Jam Rockers「Rap & Beats」(YRC-001)。

この盤発見したときの記事→「いいぃぃぃやっほぉおおおおぉぉうううぅ」
探し続けてれば見つかる!



V.A. / Yellow Rap Culture In Your House (WAX PLATE) [1990]

¥SIDE
1.GUTCH GEE / DO DA DO
2.DJ KRUSH POSSE / K.P.
3.DJ KRUSH POSSE / K.P. acapella

$SIDE
1.HOME BOYS / NOW IZ WHEN WE MUST DECIDE-SAMURAI STYLE-
2.HOME BOYS / NOW IZ WHEN WE MUST DECIDE-SAMURAI STYLE- acapella
3.HONEY BOMB / LET'S GETHERING

SUNZLUCK / YONAKANO TAIYOW

「現場至上主義の体現、2MC1DJ、正真正銘北の一等星、宙に舞う歓声、未だ未完成、これが眠らない野生の証明。仙台の現場で叩き上げた情熱をいっぺんに詰め込んだ初の音源ここに到着!」(帯より)


ボースティング、勝ち上がリズム、仲間、音楽、ポジティブさ、ステージ、showman ship、かっこいいということ、自分の在り方、生き様、My Style Is Best。
B-BOYで、ヒップホッパーで、ラッパーであるということの、ありとあらゆる美点を純粋に信じ、これでもかと詰め込んだアルバム。

HIP HOPってこうだよね、HIP HOPのかっこよさってこういうところだよね。HIP HOPに対する初期衝動というのか、聴いていてニヤニヤしちゃうような、純粋な、HIP HOPであることのかっこよさ。
自分はある意味対極のclassical musicも聴くし、HIP HOP至上主義ってわけでもないけど、思春期にガツンとやられて以来僕を惹きつけてやまないHIP HOPという音楽の魅力、大好きな部分、そのひとつである前向きな"強靭さ"がこのアルバムには詰まってる。


1曲目「2on2」。2MIC on 2turntableでガッチリと魅せる"10分間"。『10分間は俺達のモンだ』というリリックには年間100本以上というLIVEで培った確かな自信がこもっている。
CROSSを迎えた「MATASETANA(triple star steee)」はドラマティックなトラックの上でステージへの情熱を歌う。CROSSは本当に響きのある目立つ声してるね。
彼らの代表曲「夜中の太陽」。『HIP HOPの未来託されたエース』、『崩れたZION救うためやってきた』、ここまで言っちゃうBUZZの男っぷりが痛快。K-MASSIVEの『ストイックな俺達と下手糞なお前達の差は埋まらんぞ』の『差は・埋ま・らん・ぞー』の歌い方大好き。LIVEで聴いているときも思っていたけど彼らはどの曲もフックの作りがうまい。それってやっぱりLIVEでのすごい強み。『we are 夜中の太陽!』
「サンマダ(TRUTH OR FACT?)」。これも熱い曲。とにかく印象に残ったリリックをひとつ。『いらねぇぞ他県のゲスト』
人生をひとつの曲に例え、正に今が"サビ"だと歌う「NO MUSIC NO LIFE」、このトピックの着眼点がすごくおもしろい。『正に今がサビの歌いだし』by.BUZZ、『おふくろの腹の中からドラムロール ダカダカダンダン』by.K-MASSIVE、こういう表現のユーモアさや、『今俺は最高の仲間と最強の音楽を見つけました』by.BUZZ、のようなHIP HOPという音楽に対する誇りと信頼感のリリックなど、とにかく聴いていてなんだかわからないけどニヤニヤが止まらない。大好きだ。
最後、crewのBallistic Baggy全員参加「DOWN TOWN SHIT」。二人目のフリーキーなフロウの人がうまくてかっこいい、『支離滅裂brain繊維』にもニヤリ。ポッセカットらしくフックも派手でかっこいい。


とにかく最初に書いたような(ボースティング〜My Style Is Best)なHIP HOPへの熱い愛がたっぷりこもったリリックだらけ。それを意識してかせずか、いやもちろん意識してだと思うんだけどDJのコスりも定番ネタが多い。そういう、ある意味で愚直なまでに純粋なHIP HOPの"かっこよさ"にこだわったこのアルバムは、彼らの最初の作品集としてとっても好印象。
あえてひとつだけ文句つけるとしたら、どの曲もドラマティックなトラックでかっこいいんだけど、その上ネタ重視のためかビートのパターンがどれも単純で薄いところ。とは言ってもここで取り上げてない曲も漏れなく好き。
ここまでHIP HOPが細分化されて多様化してきた中、これほど初期衝動を思い出させてくれるような純粋さを持ったHIP HOPアルバムを作ってくれるアーティストが地元仙台に居たという嬉しさ。こういうアーティストはやっぱりいなくなっちゃいけないよね。
僕は今だからこそこのアルバムは傑作だと強く推します。



SUNZ LUCK / YONAKANO TAIYOW

1. 2on2
2. MY STYLE IS WILD feat.CURE
3. MATASETANA(triple star stee) feat.CROSS
4. SKIT
5. 夜中の太陽
6. サンマダ(TRUTH OR FACT?)
7. DON'T WORRY
8. NO MUSIC NO LIFE
9. DOWN TOWN SHIT feat.Ballistic Baggy

環ROY / 少年ミュージック

『土星のわっかをあの子にプレゼント』 「なっしん」


「カンロイ」ではなく「タマキロイ」の1st album。
声高に叫ばれる"自由"なんて逆に胡散臭くてイマイチ信用できない悲しいこのご時世、僕がこれほど"自由"を感じるのは3軒目の飲み放題と、このアルバム「少年モンスター」だけだね。
[HIP HOPの枠を超えた自由なHIP HOP!]なんてコピーは世に溢れてるけど、本当に"自由"なHIP HOPってこういうことじゃないのかね。

見慣れた、見知った街を歩き回りながら聴きたい。もちろんそれが東京で『寒い仙台思い出し』ながらだったらもっといいのだろうけど、自分にとって見知らない街じゃやっぱり意味がない。
適当に行く場所を決めて、見慣れちゃって刺激の薄い景色に『チョットだけ歪なroad trip』を聴いて色をつける。

あー、このアルバムに対して感じたことをなんとかまとめようとしたけど、こうやって語れば語るほどこの作品が胡散臭くなっちゃう。それだけはイカン。
とにかく、この雰囲気大好きすぎる。
歩き回るのが趣味な僕は携帯に入れて歩き回りながらいっつも聴いてるアルバム。
よし、個々の曲の話。


「鼻歌」。情景も描写も生き生きしてて楽しい。フックのリリックが大好き。『君の笑顔思い出すのが好きさ』。
「鼻歌」聴きながら今日の散歩をイメージして頭の準備、さぁチョットだけ歪なroad「trips!!」へ。耳に残るリリックがいっぱい。ノリで歌うような鼻歌フックも好き。
nautilusを使った「なっしん」。こんだけベタなHIP HOPトラックの上でも相変わらずの環ROY節。最後に吐き捨てるように言う『マジクソ全然動じねぇ』が、馬鹿っぽく言いながらもこのアルバム中唯一と言ってもいいような強い自己主張にも感じる。[いつだってやりたいようにやるよ]。
おっと、もう一個あった強烈な自己主張、『パセリは残さないで食べる レモンは絞らないで食べる』「パセリレモン」。ヨーヨーチェケラッチョ!
「少年ミュージック」。楽しいなぁ。楽しい。レビューにならん。大好き。相変わらずの鼻歌フックも最高。
「東京holiday」、こんなふわふわした輪郭の薄いトラックなのに不思議なキャッチーさ。これが環ROYという人間のポップさだよね。
「Midnight Breaking Fishman」。真夜中の散歩。好きな音楽を聴きながら。『わざと遠回り もっと今の曲を聴いていたいのさ』。どっかの誰かの奏でるインプロに乗せて同じく自由に、いつも通り、歩きながら思い浮かぶ有象無象を歌うよ。


僕はこのアルバムを実験的だとは思わない。確かにこのアルバムを語る枠は幅広くあると思うし、HIP HOP畑以外の人から評価されてるのもなんとなく頷ける。
でもこの人の魅力、このアルバムの魅力はどこまでいってもやっぱり"自由さ"をたっぷり湛えたHIP HOPであることだと思う。
好き嫌いの分かれる作品なのかもしれないけど僕はドツボ。近年こんなに長く、コンスタントにリピートしてるアルバムあんまない。

このアルバムが大好きだっていう人と飲み放題3軒梯子したい。


少年モンスター

1. hello!
2. 鼻歌
3. trips!!
4. 農場荒らしサグ
5. 鎮環踵
6. なっしん
7. パセリレモン
8. 少年ミュージック
9. 東京holidays
10. true blues
11. midnight breaking fishman
12. see you!

PHOEBUS / 奥の細道

『喜怒哀楽忘れる快楽訪れるこの一瞬』 「そよかぜ」


CABUとLINVの兄弟MCとDJ,SOからなる静岡のグループのデビューシングル。発売は1997年。95,96年の日本語ラップバブルとも言える盛り上がりによってこの時期はいろんな作品が出てるね。まさにその時期に、彼らは世界的に活躍するクリヤマコトの全面プロデュースである意味鳴り物入りでデビュー。経緯としてはクリヤマコトがオーガナイズしていた「salon」というイベントでクリヤマコト自身が見出したそう。この作品におけるプロデュース名はClay-Z。
ちなみにこのPHOEBUS、このシングルの12インチ版と別に2枚の12インチ、更にそれらをまとめたミニアルバムも出してます。レコは3枚とも持ってるけどミニアルバムは一度も見たことない。欲しい!

太陽神アポロンの別名というPHOEBUSの名前をグループ名に冠する彼らの特徴はとことん自然をモチーフにしたリリック。この時期のアンダーグラウンドにおける主流のハードコアなリリックでもなく、LB勢のような日常をシニカルに切り取るようなリリックでもなく、自然から得る情感や自然そのものを歌うリリックが中心。

彼らの概観に関しての話はそんなところにしておいて、実際の曲について。
幻想的な音に乗せてまさにPHOEBUSらしい自然を歌うイントロ部分から一転、重たいビートに乗せて『手合わせ合掌 合わせ合掌』という印象的なフックで始まる「卯の方向」。ヴァース部分では浮遊感のある上ネタがまた空気を変えるものの、曲のベースになるビートがしっかりしてるためヴァースとフックの明暗のバランスも取れてるいいトラックになってる。ラップスタイルは、この曲だけでなく全体的に言えることだけど、この当時らしい単純な単語踏みで巧さがあるわけではないんだが、兄弟らしい細かい掛け合いやユニゾンを使うなど言葉を聴かせる工夫がすごくなされてる。
タイトル曲「奥の細道」。この曲も『奥の細道のまた奥の道の奥の秘密基地』というフックがとにかく印象的。フックの時だけ表れるベースも耳に残る。太いビートに不穏な上ネタ、あくまで自然や情景をモチーフに描きながらも他の2曲とは違う攻撃的なリリック、かっこいい。そしてこの曲では日本語ラップ史に残る(勝手に認定)ものすごい試みが。『返ってこい山彦 ほら ヤッホー(ヤッホー) ほら ヤッホー(ヤッホー)』という、実に日本的な"やまびこール&レスポンス"。実際、「everybody scream!」に対する「みんな騒げー!」はうまい日本的変換がなされてるけど、「say ho!」はそのまんまだからね、考えれば考えるほどこれ以上の日本的コール&レスポンスは思い浮かばないよ。今後はみんなこれでいくべき。どうですかみなさん。 ほら、ヤッホー! ほら、ヤッホッホー! さ、わ、げー!
そして3曲目「そよかぜ」は、これぞPHOEBUSなリリック。吹き抜ける「そよかぜ」が浮かび上がらせるイメージや感情をそのまま歌詞にした曲。トラックもふわふわと浮遊感漂う気持ちよさ。ここでも細かい掛け合いやユニゾンがいい味出してる。そしてやっぱりフックがいい。冒頭で取り上げた『喜怒哀楽忘れる快楽訪れるこの一瞬』。ほんと気持ちよさそうだなぁ。


結構褒めまくっているんだけど、正直な話最初はあまり良いとも思わず封印してた時期もありました。でも時間おきつつ何度か聴いてるうちにどんどんはまってきて今ではすごい好きな1枚に。
上でも少し書いたように、基本的にどの曲でもベースになるビートがしっかりしてるために、その詩的なリリックの内容に引っ張られて変にアブストラクト的な音楽じゃなくちゃんとHIP HOPな曲になってるのが好印象。たぶん今の時代にこういうリリックを書こうとする人がいたらこうはなってないんじゃないかな。
そして、どの曲も本当にフックが印象的でいいんだよね。この作品の中では「奥の細道」が一番好きなんだけど最初はやっぱりフックがすごく耳に残ったのが改めて魅力に気づいていくきっかけでした。
持ってるけどあんまり聴いてないって方いたらリリック起こし見ながらもう一度聴いてみてみるといいかも。


奥の細道

1.Introduction
2.卯の方向
3.奥の細道
4.そよかぜ
5.卯の方向(Instrumental)
6.奥の細道(Instrumental)
7.そよかぜ(Instrumental)

PHOEBUS / 奥の細道
[リリック起こし]

tee / You Belong To Me

「あたしを決めつけないで」[album収録曲タイトルより]


シンガー&ソングライターteeの1stシングル。このサイトでこれを取り上げる理由はもちろん"日本語ラップ"に関わりがあるため。
タイトル曲のREMIXヴァージョン、その名も「You Belong To Me(HIP HOP REMIX)」になんと餓鬼レンジャーが参加。このCDの発売が97年だから「リップサービス」よりも前の作品。この頃の餓鬼レンの音源なんておそらくDJ GOSSYの「地熱」とDJ DOUBLE-Kの「弐」ぐらいのはず。このteeというシンガー&ソングライター(こういう紹介のされ方をしてる)を拾ったプロデューサーは一体何を思って餓鬼レンジャーを起用したのだろうか。そして特にR&B、HIP HOP畑の人間でもないであろう、このteeと。今思えばものすごい先見の明と言えるのかもしれないがまったくもって謎。

で、問題の曲の方はと言うと、名曲です。
フルートネタ(最高)と同時に始まるポチョムキンとYOSHIの声からいきなり『胸がキュンなる』by.ポチョムキン。若い二人のラップもシンプルながら、今の餓鬼レンではまず聴けないであろう"擦れ違う恋"を歌ったリリックがすごくいい味出してる。こんな純な餓鬼レン聴いたことない。この後「シド&ナンシー」歌っちゃうなんて増して信じられない。
1stヴァースはYOSHIが、2ndヴァースはポチョが素晴らしい。特にポチョムキン2ndヴァース最初の4小節は巧い!
ちなみに曲の最後には餓鬼レンの自己紹介の中でオリジナルメンバーのDJ KOGAの声も聞けるよ。

で、主役のteeの方はと言うと、無味乾燥です。
いや、この軽さ薄さがこの曲の絶妙な空気を作っているんだけど。歌はお世辞にもうまいとは言えないです。でも、この人のblogを読んでてやたら好印象を得ました(主にクリスマスの記事)[blogは各自お探しください]。そしてアルバムをやたら聴いてみたくなりました。
今現在はコーラスとかアカペラやってるそうです。2004年には和田アキ子のバックコーラスで紅白にも出たとか。


CDには同曲のいろんなヴァージョンが収録されてるんだけど、良いのはやっぱり名曲HIP HOP REMIXと、オリジナル版。BOOK ○FFなどで出会いを楽しみに探すのもいいけど、今ならAmazonで1円で買えるみたいよ。即購入お薦め!


You Belong To Me
1. You Belong To Me(ORIGINAL VERSION)
2. You Are Everything
3. You Belong To Me(HIP HOP REMIX featuring 餓鬼レンジャー)
4. You Belong To Me(COOL DUDE MIX)
5. You Belong To Me(RHYTHMATIC DEEP HOUSE REMIX)
6. You Belong To Me(JUNGLE REMIX)
7. You Belong To Me(ORIGINAL Instrumental)


tee / You Belong To Me(HIP HOP REMIX) feat.餓鬼レンジャー [リリック起こし]

XBS / MEGA BASS EXPRESS

X・B・S YES!


ニトロの重低音担当、エクストラベーススピーカーことXBSの1stソロ。
と言ってもイントロ、アウトロ含めての6曲入り。ミニ?シングル?といったサイズの小作品。
日本語ラップにおける韻踏み法の一つ、倒置法と体言止め、ひたすらこれで韻を先攻に言葉を繋いでいくスタイル。これがリズムに乗って小気味良く聴こえるときもあれば、『曖昧なまま しどろもどろ』「MEGABASSEXPRESS」に聴こえるときも。

特に好きな曲は「ELEGIACS-extra extra-」。彼お得意の言葉の使い廻し(歌詞カードにも見られるコラージュ写真的な言葉の切り貼り)がいいリズムを生んでいてかっこいい。シンプルなビートで始まりフックで展開する流れのあるトラックも流石はAQUARIUS(発音はお馴染み『あくえぇーりあす』)。
5曲目「DAYZ OF GRACE」はMACKA-CHINプロデュースで『NO STRESS JUST RELAX』な曲。この曲は珍しく意味の通るリリックを書いてるね。シンプルでいい曲だと思います、ハイ。


トラックを提供しているメンツが、DJ WATARAIにイタチョーにAQUARIUS、そしてMACKA-CHIN。そんなナイチョープロデューサー揃い踏みによる、それなりのトラック(ずば抜けたのは正直ない)をもらっているため、地味か地味じゃないかでいうとギリギリ地味ではない(もちろん派手さはない)、といった感じの作品。
ニトロから一人でもラップで客演いたらまた印象違かったかな。

歌詞カード裏のコラージュ写真では右上のXBS本人の微妙な顔と右下の「トンファーキック!」がやたらにキニナル。


MEGABASSEXPRESS
XBS
インディペンデントレーベル (2001-12-28)


NITRO MICROPHONE UNDERGROUND / SPECIAL FORCE

『誰があーだこーだ言えどNo.1』by.DABO


NITRO MICROPHONE UNDERGROUND待望の新曲はなんとNIKEとのコラボで、iTunesでの販売限定曲。ニトロ勢絡みの作品、ソロ作品、例えそれらの作品の悉くにおいて何度肩透かしを喰らおうともやっぱり期待しちゃうのが"8人揃ったニトロ"。

トラックはDJ VIBLAM。前作のタイトル曲「STRAIGHT FROM UNDERGROUND」を彷彿とさせるラップと一体となった爆音仕様トラック。そのトラックと8人のMCから発せられる"音"、"ノリ"、そして"爆発力"のようなモノ、そのものをその熱量に任せて聴く曲としては正に"ナイチョー8人揃い踏み"らしい曲。


まぁ1曲新曲出したところで次のアルバムはいつになるかまったく予想つかないのがニトロですが、いちおう3rdに向けてレコーディング中というウワサも聞いたので楽しみ待つことにします。


そしてこの曲の感想、レビューとしてもう一つ記しておきたい事。自分にとっても嬉しい発見。

「ニトロの新曲で熱くなれた自分はまだまだ日本語ラップを楽しめる」

WORD SWINGAZ / UNDA II OVA

RYW&OKIの2MIND UNITとDJ CELORYが起こす化学反応を全感覚で堪能せよ。(CD帯より)


ナニワの遊言導士ことWORD SWINGAZの1st。全曲DJ CELORYプロデュース。濃いよりも濃い2MC。クセがあるよりもクセがあってクセになる。盛り上げ屋。ナニワから唱える平和。

テーマ曲「遊言導士〜Theme From Word Swingaz〜 USHIMITSUDOKI MIX」、でっかく頭振りながら聴きたい曲。前半部は短いヴァース毎にマイクを廻し、後半部は細かい掛け合いでヴァースが構成される。こういう曲こそLIVEで盛り上がるんだろうね。WORD SWINGAZは一度LIVE観たかった。この声とフロウが実に中毒的。
そして名曲「一本のマイク 〜Dat's My Patna!〜」。派手に始まるイントロから嫌がおうにも気分は高揚。「遊言導士」然りこういう跳ねるビートがWORD SWINGAZにはぴったり、DJ CELORYナイスお仕事。『あらゆる時どんな時もこいつが俺の最高の友』。リリックも最高にかっこいい。このノリが実に実に中毒的。
何かのインタビューで自身達も言ってたけど、この人たちの神髄はパーティチューンにこそある。間違いなくあがる、いやあげさせられる。が、故に後に続くメロウに聴かせる「万華鏡 〜Innocent World〜 part.2」、「Go For Get It 〜Catch a "BIG ONE"〜」はどうしても入りきれない違和感が。
「万華鏡 〜Innocent World〜 part.2」はセロリらしい"清潔"なトラックに『万華鏡のような世界』を歌う曲。リリックも確かに良いこと言ってるんだけど、な〜んかわざとらしく聞こえちゃうんだよね。ラッパーとしては最高に魅力的でもこういうことを歌うには損な声なのかも。
ラストの曲「Go For Get It 〜Catch a "BIG ONE"〜」はまだトラックに静かな熱さがある分まだ"ズレ"はそこまで強く感じないけど、印象は相変わらず。O.K.I.の『平成も二ケタ 早すぎる時〜』からのヴァースはすごい好き。


ハマり曲はとことんハマってるが、そうじゃない曲はどうにもズレてしまっているという感じのアルバム(ミニ)。声にクセが強いので苦手な人も多いかもしれないが、一聴して「嫌い」と片付けてしまうには実にもったいない作品、アーティスト。聴けば聴くほどずぶずぶ嵌まる中毒性があります。「一本のマイク」は本当に好き!

ワード・スウィンガーズ
WORD SWINGAZ, DJ CELORY
Pヴァインレコード (2000/05/25)


1.INTRO...
2.UNDA II OVA~Psyco,Phunk,Rhyme
3.遊言導士 〜Theme From Word Swingaz〜 (USHIMITSUDOKI MIX)
4.Skit
5.一本のマイク 〜Dat's My Partna!〜
6.万華鏡 〜Innocent World〜 (Part.2)
7.Skit
8.Gor For Get It 〜Catch a "BIG ONE"〜

UZI / 言霊

100%UZI印(うじるし)の漢汁音源集


96年「悪名」に収録の「マグマ沸騰」でその圧倒的キャラを見せつけてから実に8年越しの1stアルバム。しかしその間UBG、雷家族中心に様々なアーティストとの客演においてその声とキャラで名前を売り続けた。この人の魅力はやっぱり破壊力のあるラップフロウ。とにかくどんなメンツの中にあっても埋もれることなく一瞬で耳を惹きつける。だからこそ、客演で光る才能。さて、ソロフルアルバムではどうか・・・。

イントロに続いて二曲目「荒技師」INOVADER作のすっとぼけファンキーなトラックがなんかツボ。UZIのフックも自ら『だから何? 頭悪い』と言っちゃうすっとぼけっぷり。なんか好き。
続く二曲目「Knock Out feat.ZEEBRA」。長年共に歩んできた師弟よる渾身の1曲。ジブラもウヂもかっこいい!なんでこれの前に「荒技師」もってきたんだろう。リリック的にもスタートにピッタリだろうに。
三曲目「言霊」。この曲はひとつのライン挙げるだけで。『させるお陀仏 南無阿弥陀仏 撃ち込む弾丸 何万発』
五、六、七曲目、RINO LATINA II, ZEEBRA+OJ&ST, G.K. MARYANがそれぞれ参加してるがどれもあまりインパクトなし。ゲストが元気ないからだろうか・・・トラックがよくないからだろうか・・・。客演で光る才能のはずがなぜかここの流れが一番聴きにくい。「Wハットトリック」のトピックなんかはおもしろい曲なんだけど。
十曲目、後に続編も作られてる酒飲みダメソング「解放軍」。『初登場の地でも顔パスで通過 髭がパスポート』、素晴らしすぎる。
十二曲目「一刀両断 feat.煙巻」を『聞き流すようじゃまだシーラカンス』。フックにケムマキが甘い声で一服の清涼剤を加えていますが、そんなことなんのそののUZI節。冒頭の『シーラカンス』から『真田十勇士』、『草●君ばりのいい人』に『試験管ベイビー』、挙句に『妖怪ハンティング』。まったく何を歌ってるのかわかりません。それでもD-Originooのゆっくりと踏みしめるようにビートを刻むトラックも相まってかUZIのスタイルにぴったりな良い曲に仕上がっとります。
十三曲目「IZUMI」。正に水が湧き出すようなDJ OASISのトラックが素晴らしい。UZIの代表曲と言ってもいい曲。UZIらしい言葉選びでヴァースとフック、フックとヴァースの間を空けることなく走り続けるのが気持ちよくてかっこいい。2ヴァース目の最後はUZIの曲を少しでも聴いたことのある人なら誰もがニヤリ。
十六曲目「結論」。ZEEBRAプロデュースの静かに燃えるトラックにUZIの熱い言葉。『結論出す前にするな絶望』


全曲を通してのことだけどこの人の踏み方は基本的に体言止めの単語踏み。なのに一辺倒にならずにおもしろいのはこの人の趣味の世界が強く反映した豊富なボキャブラリーが故。韻踏むためにわけわからん部分も出たりもするけどそれも含めて耳奪うUZIスタイル。

どこを切ってみても100%UZI印(うじるし)、UZI節、UZI色。正にウヂ太郎飴。「ラヴソング?メロウ?何の事です?」 この1stアルバムを表現するのはこの一言でOK→『俺がUZI 通すのは話の筋』。流石だね。

言霊(ことだま)

UZI, ZEEBRA, RINO LATINA II, OJ&ST, DJ OASIS, KM-MARKIT
ポニーキャニオン (2002/12/18)



1.イントロ
2.荒技師
3.Knock Out feat.ZEEBRA
4.言霊
5.戦場の狼 feat.RINO LATINA II
6.俺ら feat.ZEEBRA + OJ&ST
7.Wハットトリック feat.G.K.MARYAN
8.十里への道
9.9mm
10.解放軍
11.風林活火山〜氏大の野望'99 風林の章
12.一刀両断 feat.煙巻
13.IZUMI
14.風林活火山〜氏大の野望'99 活火山の章
15.リスク
16.結論
17.心技体
18.アウトロ

TWIGY / 聖戦

近未来は一分後


日本語ラップのレア作品レーベル、クラシック量産レーベルと言えばの高木完主催VORTEXレーベル。この作品もご他聞に漏れず名作。1曲目にはZEEBRA&DJ KEN-BO参加。2曲目には名前だけDEV LARGEも。参加する予定で名前が入ってるが結局参加できなかったというお話。これ実際に参加してたらまたすごかったでしょうね。

1曲目「聖戦 part.1 feat.ZEEBRA」。ネタ使いがたまらない。2分46秒の短い曲ながらTWIGY節たっぷりに心地よく流れていくフロウ、そこに"光が射し込む"ようにアクセントをつけるZEEBRAのフック。なんでこんなにかっこいいんだろう。水と油のように決して馴染みはしない才能同士ではあるが、だからこそ際立つお互いの魅力。この作品で間接的にではあるが目論まれたTとZとDの共演が後に実現した「Player's Delight」もそれがはっきりと出たクラシック。
2曲目「聖戦 part.2」。プロデュースはPrince Paulと高木完。ゆったりとしたトラックに完全にトんだ状態でフリースタイルで韻と言葉を頼りに連想ゲーム的に繋いでいく。1ヴァース目の途中まくし立てるように言葉を詰め込み吐き出す圧倒的な部分でさえ気まぐれなんでしょうな。ふらふらゆらゆら。
3曲目「椰子」は前の2曲と違って跳ねる鍵盤とビートのテンポの良い曲。TWIGYも跳ねるようにラッピン。途中メロディのあるフロウしたりとTWIGYも楽しげ。



「聖戦 part.1 feat.ZEEBRA」がかっこよすぎる。part.2には是非ともDEV LARGEにも参加してほしかった。CDでは相当レアとも言える作品だけどアナログではよく見かけます。VORTEX作品は基本的にそんな感じ。ちなみに「BEST OF VORTEX」に「聖戦 part.1」と「椰子」は収録されてるが「聖戦 part.2」はこの盤のみの曲。どっちにしろVORTEXはレーベル買いしとけってこってす。日本語ラップ以外のアーティストの作品もあるんだけどね。

聖戦
TWIGY, ZEEBRA, DJ KEN-BO, Prince Paul, 高木完
ユニバーサルミュージック (1996/04/25)


1.聖戦 part.1 feat.ZEEBRA
2.聖戦 part.2
3.椰子
4.聖戦 part.1 (instrumental)
5.聖戦 part.2 (instrumental)

シーモネーター&DJ TAKI-SHIT / 浪漫ストリーム

天才的リリシスト 変態的リリシスト 「シーモネーター!」「まってたんだ!」


2002年春、突如としてメジャーシーンに現われたキャッチーでキレのある天狗。名古屋のシーンの草創期から正に"名は体を表す"を実行し続けてきたシーモネーターがいきなりメジャーデビュー。しかも米米クラブ「浪漫飛行」ネタ。PVにはしっかりカールスモーキー石井も出てた。そして当然のように裸天狗もやってた。印象は『なんだこの爽やか変態』。

タイトル曲「浪漫ストリーム」。いくら"シーモネーター"だからといってももちろん今までの曲すべてが下ネタで構成されてたわけではないが、これまでのイメージを吹っ飛ばすこの曲での底抜けの爽やかさ、キャッチーさは驚いた。元ネタの希望溢れる爽やかさをうまく継承した好プロデュース。さすがはケツメイシとずっと楽曲製作しているYANAGIMANか。聴きやすく元気になれる曲。
1曲目で惹きつけておいてお次はシーモ節全開の「シーモバウンス」。トラックはこちらもTAKI-SHITらしいベースの効いたチョッパヤバウンス。矢継ぎ早に繰り出されるシモネタリリックの数々、流石。シーモネーター&DJ TAKI-SHITを味わうには持ってこいのかっこいい曲。
そしてなんと言ってもこのシングルのハイライトBEATMASTERからKO-1参加「時代と理解を越える機械」。TAKI-SHITのぶっといビートにスキルをフルにアピールするようにタイトにライミングしながらラップを乗せる二人のMC。特にKO-1独特のキレの良い発声でガシガシと細かく踏みながら言葉を繋いでいくスタイルの真骨頂のようなヴァース。『「あれできない」「これできない」じゃなく見付けろ「これができるじゃねぇか」って』 リリックがまたかっこいい! アルバムにも未収録の隠れた名曲。
ラストは定番テーマのクラブを歌った「ダンスホールスプラッシュ」。最後にまた爽やかな曲を持ってきた感じ。うん、まぁそれだけの曲。


「浪漫ストリーム」は単純に良い曲、「シーモバウンス」は彼ららしいかっこいい曲、でもこの2曲は他のCDでも聴くことができるのでやはりこのCDの"買い"ポイントは「時代と理解を越える機械 feat.KO-1」。KO-1が最高。逃しちゃあならんシングルです。

浪漫ストリーム
シーモネーター&DJ TAKI-SHIT 高田尚輝 ヤナギマン KO-1
ソニーミュージックエンタテインメント (2002/04/24)


1.浪漫ストリーム
2.シーモバウンス
3.時代と理解を超える機械 feat.KO-1 (BEATMASTER)
4.ダンスホールスプラッシュ

RIM / One W nine five

『「女じゃムリだムリ」 根掘り葉掘り言ってたの誰だっけ? おだまり』 「One W nine five」


DJ KENSEIプロデュースでSONYからいきなりメジャーデビューしたフィメールラッパーRIM。メジャーデビューしたフィメールラッパーは日本で初めてか? 可愛らしさを前面に押し出したスタイルでもなく、かといって95年当時圧倒的主流だったハーコースタイルにも傾倒せず、絶妙のバランスで"女"を出したスタイル。「MAKE MY DAY」ではフックで歌も聴かせ表現の幅も見せる。タイトル曲「One W nine five」ではラップディレクションにSHIKI、ガヤでQやSKIPPも参加。

タイトル曲「One W nine five」はKENSEIらしい音数の少ないシンプルなビートと印象的な音使いのトラックの上でRIM自身の自己紹介とHIP HOPに対する姿勢をリリックに込める。SHIKIがラップディレクションしてると言っても決してSHIKIのフロウに似たものになってるわけでもなく、独特のリズムで抑揚つけながら言葉を繋いでいくスタイルは後にSLR名義で聴ける彼女のラップからはまだ未完成とは言えども正にRIM印のもの。『いざ見せる聞かすラップフゥ』(←聴けばわかる)の部分のように要所要所に味付けするユーモアがまたいい感じ。ただ曲としてのインパクトは弱い。日本語ラップ好きの聴き所はガヤで参加のSHIKI, Q, SKIPPの声の聴ける部分かな。
「幻走」はROCK TEE作のゆったりと夜の雰囲気の漂うトラックに寄り添うようにゆったりとフロウする。ヴァース部分では最初から最後まで微妙にずらした声を重ねて録ってるために楽曲に漂う"幻"的な不安定感がうまく出てる。
「MAKE MY DAY」はROCK TEEによるモロにSOULアプローチのメロウなトラック。ここでは前曲とは違いキレよくすっきりとラップする。そしてコーラスも自らでした歌フック。このトラック・ラップ・フックの対比が鮮明で心地良い。小節中に細かく踏むリズムが気持ちいい1ヴァース目が好き。このシングル中一番聴きやすく、すごく良い曲。「これで終わり?」と思ってしまうほど短く感じる3分40秒。少し物足りなさを感じてボタンを押す。リピート。リピート。


RIMというラッパーの魅力がよく出てる作品だと思う。でも、メジャーデビュー最初のシングルとしてはインパクト弱すぎる。「幻走」、「MAKE MY DAY」どちらもタイトル曲向けとは言えない曲だけど「One W nine five」はより向いてないよ。あのシンプルなKENSEIのトラックはそのトラックの良し悪しとは別に、プロデュースという意味ではRIMを活かし切れてるとは言えないと思う。RIM自身に焦点を当てれば良いラップしてるんだけど曲としてのインパクトに欠けるから最初からRIMというラッパーに興味を持って聴いてる人以外は流れていってしまう。"良い曲"を表に出すであろうタイトル曲がそれじゃあカップリングにどんな曲が入ってても印象は薄くなっちゃうのも必然。そこらへんがメジャー契約していながらもこのこれ以外に作品を残すことができなかった要因の一つなんじゃないのかな。
でもRIMは本当良いラッパーですよ。後にDJ BEATの作品に参加した「Renewal Love feat.SLR(RIM) & F.O.H.」は名曲。それ聴いて気になった人は是非とも探して欲しいCDですね。


ワン・ダブル・ナイン・ファイブ
RIM, DJ KENSEI, SHIKI (SOUL SCREAM), MC Q (RAPPAGARIYA), SKIPP (NOROY)
ソニーミュージックエンタテインメント (1995/10/21)

1.One W nine five
2.幻走
3.MAKE MY DAY

Q-ILL / High Life

Hi Life Entertainment配給第1弾
初期のQ-ILLを記録する実質最初の音源!! (diy Tokion websiteより)


定番の紹介からいくと2000年のB-BOY PARKのMC BATTLEでディスりながら口スクラッチをかまして観客のド肝を抜かし魅せるバトルをし、その年の審査員特別賞をもらったという経歴を持つラッパー。とは言ってもこの人の魅力はやっぱりバトルによって発揮されるものではない。独特の響きを持った声とセルフプロデュース作はもちろん、ジャズをベースにしたバンドdiy Tokionとの共演において特に顕著に現れるQ-ILLの心地よいトラックメイキング。そこに漂うは不思議な浮遊感。このアルバムはMC BATTLEで名を上げた2000年に自主で出した盤。現在でもまだ買えるようです。


ビートを刻み始める心臓の音から始まる「Intro/Hydro?」
に、続きこのアルバム中、いやQ-ILLとしても異色とも言える「東京Special」。ファストファンクトラックに矢継ぎ早に言葉が吐き出され1分42秒を駆け抜けるイントロ的曲。『大東京 まだ走り書きの地図 大東京 振り返るのは今じゃない』。Q-ILLの活動一発目の気持ちが溢れてるフックが好き。
後のアルバム「Out Of Cosmos In The Brain」でリメイクされQ-ILLの代名詞的曲になった「Hi Life(microcosm mix)」のオリジナルヴァージョン「Hi Life」。リミックスのカッティングギターが気持ちよく爽快なアレンジとは違いこちらは少し落ち着いたトラック。しかし、リリックの随所からその熱い想いが溢れてる。ひと言ひと言噛み締めて聴きたい曲。カッコいい。好きだ。
6曲目「Sunrise - live at Q-ill's cafe feat.DIYU」は最初にQ-ILLの音楽の特徴として表現した"浮遊感"が最も表れてる曲。慎重かつ軽やかにキャンバスの土台を作るようにビートを刻むドラムに、少しずつ少しずつ色を乗せていくように音を重ねるギターとベースとキーボード、その上をゆるやかにゆるやかに漂いながら一つの絵を形づくるようにフロウするQ-ILLの声。酔っ払った頭をフラフラと揺らしながらそこに描かれる様々な情景をぼんやりと追いかけながら音に浸りたい。こんなLIVE、最高だ。
サンプリングされてるネタがすごく気持ちいい「Night Assignment(one)」。この人のリリックには様々に移りゆく情景、人(モノ)の動き、五感の反応、そして心情が交錯するように表れてくるという特徴がある。ここら辺うまく表現できないんだけど、
『短針が少し傾いた そろそろ 足音聞こえた所 ほころぶ顔と 浮きつく心 満点の星空眺めながら 差し込むエンジンキー 天気良い』
こういうリリック。モノの動き、聴覚、心の動き、情景、人の動き、情景、などこんな感じにいろいろと視点が流れながれながら描き出されるリリックがすごく心地良い。この曲のトラックとのハマリ具合も含めてこの取り上げたラインがすごく好き。
「Thank U My Men」ではDIYUをバックにいろんな人たちにシャウトして「Outro/Hydro??」に繋がりアルバムは一端終了。
そしてボーナストラック「Akikaze feat.NOAH」。これもDIYUとの共演でQ-ILL独特の浮遊感を持った曲。NOAHという女性シンガーの柔らかな声がまたその浮遊感を増している。『心のかさぶた 夏を剥がす』。明るい夏が終わりなんとなく物悲しさの漂う秋の訪れ、先程のQ-ILL独特のリリックの綴り方によって描かれる季節の移り変わり。


11曲入りだが1曲1曲が短く合計時間で30分ちょっとしかない。
間接照明で、ひとりで、カクテル片手に、アルバムリピートで、ゆったりと過ごしながら聴きたいアルバム。




Q-ILL / High Life

1.Intro/Hydro?
2.東京Special
3.Hi Life
4.skit
5.Sunrise
6.Sunrise -live at Q-ill's cafe feat.DIYU
7.Blue Butterfly
8.Night Assignment(one)
9.Thank U My Men
10.Outro/Hydro??
???.Akikaze feat.NOAH

PRIMER / PRIMANIA

あのFUSION COREのMr.POWが最高のパートナーRICEと共にシーンにバックアゲイン!!これが何を隠そうPRIMERだ!!
聴いた奴から、プライマニア! 聴いたら即、オレマニア!! (CD帯より)


このCDが発売された2002年には既にEL DORADOは無くなり伝説のレーベルと化してしまっているが、パンチライン続出のリリックにサンプリングセンス溢れたトラック、これぞ正にEL DORADO直系スタイル。と言ってももちろん、FUSION COREのMr.POWとずっと一緒にLIVE活動してたRICEのグループだから当然と言えば当然。


『バラバラバラ・・・』とヘリの音から始まり、これから始まるよーってな感じの勇壮なトラックにのせて二人の『チェカチェカプライマー』で声だし練習、少しずつテンションを上げて上げていく。そして・・・
「PRIMANIA」のイントロでそのテンションを一端落とし『お、なんか綺麗な曲』と思わせた瞬間、爆発的にプライマー劇場のスタート。この上ネタに使われてるバグパイプの音色がヤバスギル。ヤバスギルなんて安易な言葉使っちゃったけど、だってもう間違いなくこの曲はこのネタ勝ち。MAKI the MAGIC素晴らしい!そこにのる二人のラップも疾走感があってとにかく聴いていて爽快。リリックは滅茶苦茶だけど。
『オレはスワッピング相手の心をピッキングで侵入 どうだオレ専門店 ご来店OKカップルも足を運んで』 by.Mr.POW
『気持ちダミアン 顔は聖母マリア』 by.Mr.POW
『がっちりハートわしづかみ さっとティッシュ出すようなエロやさしさをまっとう』 by.RICE
『オレ達はチャック全開気にしない性格だ』 by.Mr.POW
もうどうでもいいですね。サイコー。名曲!
続く「DIRTY CLONE」もネタがすげぇカッコいい。プロデュースはDJ ANA。
『DJ ANA(ANA)+プライマーから仕掛ける罠で明かす鼻 七色虹またがりすべるすべり台 口笛でも吹き気楽に行こうかい』 by.RICE
このリズミカルなライミングがすごく気持ち良い。上手い。RICEは舌足らずな感じだし、Mr.POWも言葉の詰め方が結構強引でどちらも"スムーズなラップ"には程遠いんだけどなぜか爽快感があるんだよね。
「ORANGE」、プロデュースはNAL、これまたトラックが良し。RICEのトーンを少し抑えたフロウがすごくハマってる。Mr.POWはちょっと辛いかな。もっとテンポあるノリで押す曲ではあの"なんだか落ち着かない"フロウがすごくハマって不思議な爽快感になったりするんだけど、この曲ではそのまんま"なんだか落ち着かない"。
FUSION COREからIQ∞を迎えた「SWITCH OFF」。プロデュースはFOCE OF NATUREからKZA。四街道ネイチャーを思い出すような気持ち良いトラック。正に夏の真っ昼間に外でバーベキューでもしながらビールをクイっといきつつ聴きたい曲。SWITCH OFF 今日はどFREE!


二人ともすごくラップが上手いってわけじゃないんだけどなぜか爽快感のある曲群。これは集まったトラックメイカーの手腕による部分が大きいでしょう。ここでは取り上げてないけど4曲目はI-DeAプロデュース。イントロ、アウトロ入りの7曲で合計22分ちょい。このコンパクトさもこのミニアルバムの良いところ。でも正直アウトロなしで「SWITCH OFF」で終わった方がすっきり爽快に終われたかな。
これで僕もプライマニア!オレマニア!?

プライマニア
PRIMER, IQ∞, MAKI the MAGIC, FORCE OF NATURE, I-DeA, NAL, DJ ANA
Pヴァインレコード(2002/11/25)



1.Unite with PRIMER [produced by NAL]
2.PRIMANIA [produced by MAKI the MAGIC]
3.DIRTY CLONE [produced by DJ ANA]
4.PRIME SUSPECT [produced by I-DeA]
5.ORANGE [produced by NAL]
6.SWITCH OFF feat.IQ∞ [produced by KZA(FORCE OF NATURE)]
7.Finally the time has come [NAL]

オジロザウルス(OZROSAURUS) / ライムダーツ

いいものはいい...オジロはイイ...一言でカッコイイ。
まさに見たことも聴いたこともないスキルとフロー。そこの君、とにかく買え!!
ゲストラッパーにキングギドラのジブラ、他。楽曲にDJ Hasebe、P.M.X.、他。 (CD帯より)


ものすごく安易でひねりのない帯の言葉だが、『見たことも聴いたこともないスキルとフロー』この作品はまったくもってこの一言に尽きる。はっきり言ってこの後の「Rollin' 045」以降のオジロザウルス(マッチョ)とは同じアーティストであって同じアーティストではない。オジロザウルス(マッチョ)というひとつ(ひとり)のグループ(アーティスト)としてはまだまだ完成されていないし未熟で魅力に欠けるとも言える。だが、そこに置いてもこの作品が光を放つのはマッチョの圧倒的にスキルフルなラップフロウとそのオリジナリティ。

1曲目は自らのグループの名を冠した「オジロザウルス」。ぶっとい鳴りのバスドラがビートを刻み、そこに不穏な上ネタののるラップを引き立てるようなトラック。NOZOMUというトラックメイカー作。とにかく耳惹かれるのはマッチョのフロウ、デリヴァリー。流れるように、畳み掛けるように、詰め込んだり、間を空けたり、変幻自在に動くフロウ。上手すぎる。執拗に繰り返されるフックも印象的。名刺代わりのインパクト大曲。
3曲目はあるエピソードを生んだいわくつきの曲。
『影で大ボラ吹かす坊主 即興にかけちゃなかなかお上手 だがすべて大きな勘違い 見ときな段違いのパンチライン』(参考;リリック→「∞∞∞∞[skit]」)
この曲に参加しているZEEBRAのこのラインを聴いたDev Largeが自分がDISられたものだと思い速攻で「カモ狩り」を作ってアンサーした、という経緯。しかし後にそれは勘違いだとわかり両者和解。その為12inchシングルでリリースされた「狩人の唄」にはその問題のリリックは変更されて歌われている。(参考;リリック→「狩人の唄」) また同じく、レゲエクルーV.I.P.のMIX TAPE「V.I.P. Hi-Power」ではダブとしてZEEBRAディスの部分を変更し単なるワックMCモノにして歌いなおしている「カモ狩り」が収録されている。まぁそこら辺のエピソードを抜きにしてもこの曲のハーコージブラはめちゃくちゃカッコイイしマッチョも負けずに高い熱量のラップで応戦。フルヴァージョン「狩人の唄」も聴くべき。この師弟関係とも言えるこの二人の共演はこの後も多くの作品を残している。しかも名曲多し。
4曲目「砂漠の湿地帯〜今すぐ欲しい」はこのCDと同時発売されたSugar Soul「今すぐ欲しい」のOZROSAURUSヴァージョン。メロウでスムースなトラック上でメロウでスムースにラップするジブラとのオリジナルヴァージョンは艶めかしくエロいが、ダークでラフなトラック上でダークでラフにラップするマッチョとのこのヴァージョンは正に卑猥なエロさ。マッチョの渇いた声がアイコの声に潤いを求めるように絡みつく様が正に「砂漠の湿地帯」というタイトルにピッタリ。またその声の対比がエロさを増しててこれもかなりアリ。
最後の「望ム」はFUSION COREからIQとPOU(POW)とMELLOW DOWNからSUが参加。どちらも最近では絡みのない意外な組み合わせ。みんな熱くてイイ感じ。IQが上手い。最後の方でSUが叫ぶ『メロウダーウン!!』の声が無駄に濁点付いてる感じで好き。力入りすぎですよ。


「Rollin' 045」以降のオジロしか聴いたことなくてこれを聴くと大分びっくりするかもしれない。逆にこれ以前のマッチョの作品ではこんなにガナリ声じゃないしむしろ声が若いだけで今に近いとも言えるような感じなんだけどね。そんなわけで今のオジロを想像するとなかなか聴くのは辛いが、97年の始めに出された作品だし、単純にこの当時のハーコー路線を取るある1つのグループの作品と見れば、荒削りながらもぶっとい楽曲に、当時19歳のマッチョの才能と後の成功に繋がる道をひしひしと感じ取れる作品だと思う。


ライム・ダーツ
OZROSAURUS, P.M.X., Sugar Soul, ZEEBRA, FUSION CORE, SU
ワーナーミュージック・ジャパン (1997/01/25)


1. オジロザウルス
2. 絶望の市場
3. ∞∞∞∞[skit] feat.ZEEBRA
4. 砂漠の湿地帯〜今すぐ欲しい(OZROSAURUS version)
5. 望ム feat.IQ, POU, SU

NOCTURN / NOCTURN SPARK

名古屋のオリジナルフィメールラッパーグループ。


野太い声でぶっきらぼうなラップのMOMOと甲高い声で飄々とラップするCHIBISACHIの2MCグループ。このクセが強く真逆なタイプの二人の絡み合いももちろんおもしろいが、何より特筆すべきはやはり刃頭とOLEE LOUの作る変態・変則トラックへのアプローチ。99年のこの時期に女性ラッパーグループが単独でCDを出してるっていうのも、様々なスタイルのアーティストがひしめき合っていながらも結束が強く熱いシーンを作り上げているる名古屋ならでは。最近ではANTY the 紅乃壱と蝶々と名古屋のフィメールラッパー集めたAMAZONESってグループでの活動もやってたね。

タイトル曲「NOCTURN SPARK」は正に刃頭なトんだトラック。ローファイなビートの連打にモコモコベース、そこにのる怪しいピアノのループ、これが気持ち悪いほど耳に残って離れない。リフレインレフレイン、あー・・・。更にそれにアクたっぷりの二人のラップが絡むんだからひどいもん。よくこんなトラックの上でラップするよ。
続いてはMUJINAからLOKUとRYUJIをゲストに迎えた「SURVIVAL 2000」はこのCDで唯一男の声の聴ける曲。ちょっと安心。「INTRO」に続いていきなり「NOCTURN SPARK」を聴かされるもんだからお腹が重くなってるところ。とは言ってもゲストの二人も特徴的な声だし、OLEE LOUのトラックも負けずに変則。冒頭からずっとループされるチョッパーベースが印象的。内容はワックMCモノ。ラップもみんな勢いがあって良いね。LOKUのフロウが好きだ。CHIBISACHIがキレてる。
続く「F★CK...」はこのCDの中では一番聴き易い曲。ジャズ風の跳ねた鍵盤とゲストヴォーカルのCHISAの"クセのない"フック。この曲歌ってるのがMOMOだけってのもあるね。
ラスト「それなりのLOVE」はこれまた刃頭節全開の変態トラック。イントロから和ネタに畳み込まれるビート連打とごちゃごちゃしたベース、更にはMACHACOの妖艶な声とメロディの歌までのって二人のラップが絡むわけだからね。特異。特に異なっていると書いて特異。刺激満点。ところで"それなりのLOVE"って・・・。


女ラッパー2人のグループってだけで特異なのに楽曲のアプローチまで徹底して異端。この狙いっぷりがイカス。ただ当然それ故に聴き手を選びもするだろうし、一枚通して聴くには体力も必要。他のいろんなアーティストの曲との合間に入ってくると良い刺激がもらえるね。ココ最近の彼女らの音源は聴いてないんだけど去年2ndも出したみたいだね。でもほとんど情報出てこないしSTREET RELEASEって感じ?2004年に名古屋で観たNOCTURNは予想以上にカッコよかったので是非とも聴いてみたいんだけどな。
女を出したかわいいさが売りのスタイルでもなく、男に負けないハーコービッチスタイルでもなく、NOCTURN流の女のHIP HOP、"NOCTURN SPARK"に痺れる一枚。


スパーク
刃頭, OLEE LOU, LOKU from CHOCO BROTHERS, RYUJI from MUJINA, MACHACO
Pヴァインレコード (1999/12/25)


1.INTRO
2.NOCTURN SPARK
3.SURVIVAL 2000 feat.LOKU (CHOCO BROTHERS), RYUJI (MUJINA)
4.F★CK...!? feat.CHISA
5.回転ジェット feat.MACHACO
6.それなりのLOVE feat.MACHACO

MONGOL / BRASIL BRASIL

ニトロから絶妙のコンビネーションもんごりあーん


SUIKEN & MACKA-CHINの組み合わせとしては「SATURDAY NIGHT MONGOL」以来の曲。こんだけ最高の組み合わせで名曲作ってるんだからもっとやってくれ。いちおうこの二人にTINAの加わったMONTIENはあるけども。

夏、爽快、意味無し、ノリノリ、ブラジルブラジル、アーイエー!

正直この曲のレビューはこれだけいいような気がする。てか書けない。

ネタが良すぎて最高に気持ちいいMACKA-CHINのトラックにハッチャケタ二人の意味無しラップ。意味なんかなくたってかっこいいし気持ちいい。そこらへん流石はナイチョー。


アルバムにも未収録だしこのシングルでしか聴けないので確実に買い。クラァーシック!


BRASIL BRASIL
MONGOL(SUIKEN feat.MACKA-CHIN), SUIKEN, MACKA-CHIN
ソニーミュージックエンタテインメント (2002/04/24)


1.BRASIL BRASIL -main mix-
2.BRASIL BRASIL -remix-
3.BRASIL BRASIL -main mix instrumental-
4.BRASIL BRASIL -remix instrumental-
記事検索
Categories
Recent Comments
QRコード
QRコード
amazon
  • ライブドアブログ