すてきな日々

山歩きと音楽とオーディオ

富士山(2012/8/31~9/1)

遅くなったが夏の富士山編。夏の遊びの締めくくりとして8月末に富士山に登ってきた。

 富士山は今回が2度目で、前に登ったのは2009年になる。基本的には同じ行程で登るが、前回は御殿場へ向かう高速バスが遅れて御殿場から富士山五合目へ向かうバスに接続出来ずにタクシーで向かう羽目になった。今回はそれを警戒して、早めのバスで乗りこみ御殿場でバス待ち乗り継ぎ待ちの間に夕食をとっていくことにした。

 金曜日に夏休み最後の有休。深夜から徹夜で登って頂上で御来光を拝む作戦だ。昼間に仮眠を取って夕方新宿駅から高速バスに乗る。予定通り御殿場に到着し、先に五合目行きのチケットを買ってから駅前で食事。

 19時20分御殿場発のバスに乗車。最終バスなので混むかと思ったが10人乗ってるか乗ってないかぐらい。御殿場の町を抜けて、バスはすぐに富士山への山道に入る。バスの運転手は熟練の業で街灯もない真っ暗なぐねぐね道を走っていく。富士山から下りてくる対向車がある度に前照灯を下向きに切り替える。挙動が素早いので対向車はこの気遣いに気付いてすらいないだろう。

 上の方へ行くと道の両脇に延々と路上駐車の列が出来ている。まだ夜だというのに駐車場が満車なのだろうか。それとも昼のうちに駐めた持ち主がまだ降りてこないのか。こちらは安心の運転で悠々と須走口五合目にぴったり到着。

 富士山にはいくつかの登山ルートがあるが、須走ルートは中庸な道と言える。登山口の標高は富士宮口や吉田口よりやや低いが御殿場口よりはだいぶマシ。標高の高い富士宮口と吉田口に人が集中する傾向があるので上りはじめは人が少なく歩きやすい。

 登山口五合目の菊屋山荘前で装備を調える。夜間登山なのでヘッドライトは必須だが、持ってきてなくて菊屋で買ってるカップルもいる。他の山ではあり得ないこういうスーパーカジュアルな人がいっぱいいるのも富士登山のある種の楽しさと言える。おれは予備の超小型ライトもいつでも出せるようポケットに忍ばせておく。御殿場はクソ暑かったがここはすでに標高2000mで肌寒いので薄手のフリースをはおる。下はうっかりタイツを忘れたので短パンでやや寒い。心配だ。防寒着は軽量化のためにこれだけだが、あとは雨具の上下がある。頂上では風よけに着ることになるだろう。

 夕食はたっぷりカツ丼を食ってきたのでカロリーは問題ない。どうせ昼には下山している、はずだ。行動食は玄米ブランに加え奥穂高でも使ったミックスナッツ。200gで恐怖の1200キロカロリー超え。デブ製造器。一日くらいならこれだけで十分もちそうだ。

 富士山は高山病もあり得るのでこの標高2000メートルでゆっくり過ごして体を慣らす。歩いてきての2000メートルならたいしたことないが、車でいきなり上がってきて即出発すればキツイかもしれん。個人的には2500を越えると体が重くなるタイミングがある。

 30分ほどゆっくり準備して出発。須走ルートの序盤は意外にも樹林帯である。恐ろしいことに真っ暗な中をライトも使わずにアホの人たちが降りてくる。繰り返すが夜に降りてくるのにライト持ってないとかいうスーパープレーヤーたちを楽しめるのは日本広しと言えどもこの山だけ。

 六合目22時、本六合目22時40分、7合目23時30分と順調に高度を上げていく。本七合目0時半、八合目は1時到着。もう寒い。仮眠が足りなかったので眠気が出てくる。本八合目までやって来たのは1時半。この時点で眠気と寒さのダブルパンチで相当参っていた。とりあえず体の調子が悪いときは何か食う、の鉄則に従い山小屋でカップラーメンを頼む。下界基準で言うと相当高いが水を含めて湯を沸かす火器一式を持ってくるのと比べると悪くない。ゴミも小屋で買った物は小屋で捨てられるし。さすがにカップラーメンのゴミくらい大した重量じゃないけど。

 一段落したが眠気が酷いので、それにこのままだと山頂に早く着きすぎるので小屋の影で横になって仮眠を取ろうとする。この時点で雨具も、持ってきた防寒着は全て身につけているが寒くて寝付けない。足先も寒く感じる。最近のハイキングに使っている靴はバスクのトレランシューズだがゴアのような防水層はなく、通気性重視の仕様なので水蒸気も冷気もガンガン通る。つまり寒い。これからの時期は何らかの対策が必要かもしれん。それでも1時間ほど休憩しただろうか。体力的な消耗は元々さほどでもないので気を取り直して歩き出す。

 ここまでは富士山としては静かな山歩きを楽しめたが、ここから先は最大手の吉田口ルートと合流になる。小屋の裏から山頂へ続く道にはもう大行列が出来ていてもうすでに亀の歩み状態となっている。しかしどれだけのんびり歩いても夜明けにはまだまだ時間を余して登頂しそうだし、それに体も疲れているはずだし強制的にゆっくり歩くのも悪くない。列に加わって聖地巡礼の信徒のように黙々と歩き続ける。

 意外に早く頂上の目印である鳥居が見えた。スローペースで歩いたからか疲れはもうすっかり治まってあっけない気分で登頂。4時20分くらい。

 このルートは富士山の東側斜面になるので御来光を見るには絶好のロケーションである。夜明けまではまだ時間もあるので剣が峰向けてさらに登ってもよかったが山際の良い場所に陣取ることができたのでここでこのまま座って御来光を待つことにした。

 寒い。気温がまだしも風が強くて体温が奪われる。先ほどからもう東の空は赤く染まり始めているが本当に日がのぼるのは5時をすぎるだろう。それに雲が多く、ひょっとしたら御来光も覆い隠されてしまうのではという不安もある。雲は強い風に吹かれてどんどん形を変えていく。




雲が多い。果たして御来光は見えるのか。




来た! 日の出だ。5時15分。




見事な御来光。


人はこんなに。これが夏の富士山。


御来光を無事拝むと、次は本当の最高点たる剣が峰を目指す。須走口は東斜面を登るので御来光は山頂でなくても見える点が恵まれているが、剣が峰は反対側にあたり遠い。登頂をこなした後で、強風と薄い酸素の中さらに登るのは結構つらい。




剣が峰への道は当然山の縁なので見通しがいい。日本最高所なので遮る物があるはずもないし、独立峰なので近くに山並みもない。下界が雲の下にそのまま見える航空写真のような風景が富士山独特の展望だ。


あそこが旧測候所、剣が峰だ。


登り終えて反対側から。


影富士。関東の山に登ると富士山の姿を見ることが楽しみの一つだが、富士山の欠点は富士山の美しい姿が見られないことである。仕方なく影富士を代わりとする。



前に登った時は二度と来るかと思うほど辛かった富士山だが、時が経つと苦しかったことは忘れて楽しかったことだけが思い出されてまた来たくなる。今度はいつになるか分からんがまた来たいことは確か。

上高地~奥穂高3(2012/8/24-25)

奥穂高続き

 4時にテント場を出発して6時半に穂高岳山荘に到着。あとは最後のアタックのみだ。


これは奥穂高側から山荘を挟んで反対側の涸沢岳。っていうかアホみたいな場所にテントがあるのが見える。怖いわ!


しかしこの奥穂高核心部、ぱっと見は岩山という感じで2本の足で立って歩くべき道が見えねえ。


よく見ると岩山に生息する山羊みたいに人の姿が見える。岩肌にペンキでマーキングもしてある。見た目は相当やばそうだが、実際歩くと写真で見るほど酷くはない。


というわけでスタート。この道(?)はとっかかりの20分ほどが一番怖い。とくに2つめのハシゴを上がったところで鎖場を右に巻くところが足の下が切れ落ちてて怖い。詳しくはこのあたりに


なんだろこのつぼみ。リンドウっぽいが…とあとで調べてみるとトウヤクリンドウとのこと。


だいぶ高くなってきた。槍ヶ岳が見える! 一発で分かるな。本当にとんがってる。いつかはアレだな。


ここまで来れば地面はなだらかになる。雲海も楽しむ余裕が出てきた。


今度は右手にいかにもヤバイ稜線が見えてくる。名高い馬の背という箇所で上級者向きのルートである。おれは一生歩かないであろう。


奥穂高岳3190m登頂。7時半。標高日本第3位。


ちなみに標高第3位だが右手に見えるお社のあるピークは人工的に盛った部分でこの部分は標高第2位の3193m北岳(南アルプス)より高くなってしまっている。もちろん人工なので天然の標高には勘定されない。余計なことをする奴がいるものである。本当の山頂は左。


見渡す限り山。山域が広い。これが北アルプスのスケールか。


真ん中に槍。

 早くから歩き始めた甲斐あって素晴らしい天気の中で山頂の時間を過ごすことが出来た。やはり夏の高山は早朝に登頂してなんぼである。天気の良い日でも昼前になると雲がわき出してくるし、昼下がりには雨に捕まるなんて事も少なくない。


ぽこっとした山がジャンダルム。さらに向こうに西穂高岳がある。このピークからこちらへ向かうルートがロバの耳、馬ノ背、さらに向こう側の西穂高岳へ向かうルートは超危険な切り立つ岩稜地帯。西穂高からジャンダルムを経由して奥穂高へはこの危険ゾーンを6時間半かかる。北アルプス屈指の難所らしい。 2009年に遭難者救助中の岐阜県の防災ヘリが落ちたのがこのあたり。


雲海もカッコいい。わずかに見えるのが富士山。肉眼ではもっとよく見えた。この山頂には山の格好良さが全部ある。


少し南側から。右手が奥穂高、真ん中辺りのドームがジャンダルム。

 たっぷりと堪能。下から人が続々と上がってくるので早めに撤収する。あの険しい道に時間が遅くなればなるほど人の列が出来ることになる。行き違いを待つのに時間を取られてしまう。早く降りるのだ。


穂高岳山荘へ戻ってきた。このテラスからの眺めが絶品。


いい場所だなあ。しかしここへ泊まろうと思うとどういう行程でくれば良いのか。上高地から一気に上がってくるには辛い。




10時涸沢帰着。行きにテラスの前を通ってきた涸沢小屋でソフトクリームを食べる。カロリー補給だ。今日も火をおこしての昼飯は摂らない。歩きながら何か食べる。


昨日は撮れなかった明るい日差しの下の涸沢テント場。また来たいぜ。

 テントを撤収して再び重荷を背負う。と言っても去年までのテント泊とは比較にならない10キロ程度のザックだが。去年の白馬は14キロほど背負っていたのでだいぶ体が楽。

 あとはひたすら飛ばして15時に上高地着。涸沢-上高地の長さは異常。でもこれだけ人里から隔てられてるからあの風景があるんだよな。上高地からはバスで新島々へ。穂高へ登る山屋と言えば新島々、みたいなイメージがあるので来てみたかった駅でもある。しかしまあ、なんという駅でもなく。ここからはアルピコ交通の上高地線電車で松本まで。松本では乗り継ぎに時間を空けてたっぷりメシを食っていく。松本はまた観光で来たいな。それを言うなら茅野もだけど。

 今年の夏のメインイベントであり、長年憧れていた上高地・涸沢・奥穂高を無事にこなすことが出来た。今度の目標はどこに定めようか少し悩むところである。槍ヶ岳かな。黒部かな。立山かな。南アルプスの白根三山縦走もいいな。

上高地~奥穂高2(2012/8/24-25)

奥穂高続き。

 テントのフライのみで張る予定がうっかり本体のみを持ってきてしまった愉快なkmcさん。しかし雨さえ降らなければとくに問題ないはず。ほとんどふて寝で仮眠を取って、起きるとテントの受付が始まっていたのでそれを済ませる。さてまだ15時半だ。どうしよう。売店で生ビールを飲むことも出来るが今日はワイン持参だしな…と思ってると雨がぱらつきだした。と、見る見る間に立派な雨となり、大雨へ進化し、嵐になった。ギニャーッ! テントが浸水する!

 通常テントというものは本体のみでは雨は防げない。ナイロンではあるものの、きちんとした防水素材ではないため、打たれ続けるといつかは染みてくる。ウインドブレーカーみたいなもんだ。よって一般的なテントはもう一枚、防水性・耐候性のあるシートを上にかぶせて二重構造とする。これがダブルウォールテントであり、その耐水性のあるシートがフライシートである。このフライシートがないと当然テントは浸水するわけだ。

 と言ってもフライシートのみで張った場合も雨が降り続けば床から浸水する。フライシートは上からかぶせる物だからテント本体のような床(フロア)は存在しないからだ。だがここ涸沢は石ころだらけのサイトでその名も涸沢(からさわ=枯れ沢)なので水はけは抜群によいと思われる。これならばフライのみでの設営に向いていると言える。

 そうは言っても、やはり最悪の場合を考えて水対策は一応整えている。濡らしてはマズい羽毛のシュラフは使用時には防水のシュラフカバーを使い、ザックに収納する際はビニール袋に入れた上でアウトドア用の防水バッグに入れてある。身につけていない電気機器やバッテリー類もこの中だ。これを持ち出して屋根のあるところへ待避。これで雨が止むのを待つ。


まだ晴れてるテント場。


猛烈な雨。


止まない…。

 結局1時間ほども降り続いただろうか。やっと降り止んだのでテント場へ戻る。テントは当然浸水していたが、自立式テントという物はペグなどの地面への固定さえ外せばそのままサクッと持ち上げられるので入り口を下に向けてたまった水を排水してしまえる。敷きっぱなしにしていたスリーピングマットはウレタン部がやや保水していたので絞りだすように拭いて外に干す。

 寝るまでには何とかなるだろう。暮れ始めた石ころだらけのテント場で湯を沸かして夕食にする。これで寝てる間にもう一雨来たらきついが、こんだけ降れば今日の分は終わりだろう。


夕方のテント場。最盛期には700ものテントが張られるらしい。




 翌日、朝3時起床。今日は奥穂高まで往復してテントを撤収して上高地まで降りる。夜にはうちへ着いている予定で考えると早朝からの行動になる。本当は前穂高辺りを経由して降りたかったが、それだと涸沢に戻らないのでテント装備を持って登らねばならない。奥穂高はたぶん今までの山行で一番険しい山なのでそれは避けたくて往復ルートとした。

 というわけで火を使わないでさっさと食事を済ませて必要最小限のものだけザックに入れて4時出発。まだ暗いのでヘッドランプでの行動だ。涸沢から奥穂高への道は、最初は二通りあって雪渓を横切る道と、テント場正面涸沢小屋の前から上がっていく道と二つある。横着してアイゼンは持ってこなかったので雪渓を避けて涸沢小屋経由ルートから上がる。

 涸沢小屋へは石畳の道が通じているので暗くても迷うことはない。ほどなくして涸沢小屋へたどり着き、まだ人影も少ない中をテラスを通って裏手から山道へ上がる。しばらくは分かりやすいが、やがて開けた石だらけの道に出る。歩くのにはそんなに苦労しないが開けているのでぱっと見ルートが分かりにくい。が、きちんとペンキでマークがしているので見落とさないようにヘッドランプを付けた頭を振り振り慎重に進む。後ろを見ると山の端がオレンジ色に光り出している。夜明けが近い。


涸沢小屋のテラスから見たテント場。




こんな石ころの道を上がっていく。


すごい綺麗な夜明け。


景色が真っ赤に染まる。この朝と夕の光の色を見られるのは泊まり山行の醍醐味。


こうして見ると涸沢はかなりの窪地。冬は雪崩とかどうなるんだろう。


ザイテングラートも真っ赤。



 ザイテングラートの取り付きには夜明け間もなくの5時半に到着。たいそうな名前が付いているが意味は「支稜線」で、つまりメインの尾根に続く枝尾根である。gratにはただの尾根でなく「痩せ尾根」という意味があるらしく、いわゆるナイフリッジ的な物か。とにかく傾斜のきつい、細い岩場を登っていくことになる。登るときはそうでもないが降りるのが少し怖い部類の道だ。


この岩場をひたすら登る。


もう日はすっかり昇った。涸沢ヒュッテが小さい。


頭上に小屋が見えてくる。


穂高岳山荘到着。6時半。いよいよ奥穂高岳が丸見えに。登山道ってものが見えねえ。どうやって上がるんだ。

以下次号。
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