下に紹介する症例は産婦人科医会が出している「母体安全への提言2011」p.10の症例1より引用です。
http://www.jaog.or.jp/diagram/notes/botai_2011.pdf
 
今年、アジスロマイシンの心血管死リスクについてNEJMに論文(N Engl J Med 2012;366:1881-90.)が出たのは記憶に新しいところですが、そのリスクの実例です。
自分自身、アジスロマイシン(その他マクロライド、キノロン)を処方する時にQT延長症候群の有無を厳密に確認しているかというと、していません。また、この症例では「実は」QT延長があったということが判明していますが、実際には検査を受けていなくて知らない人も大勢いることでしょう。問診だけでは限界がありますが、かといってマクロライドやキノロンを処方する前に全例心電図をとるというのも現実的ではない(?)ようにも思います(そうでもないかな?)。
 
この症例では、肺炎ということであれば抗菌薬処方は必要だったのだろうと思いますが、「かぜ」に大して「念のため」「何かあったら怖いから」処方される抗菌薬についてはどうでしょうか?
 
抗菌薬が絶対に必要な状況であれば、こういったリスクはやむを得ないと考えることもできますが、「念のため」「怖いから」処方される抗菌薬が裏目に出ている可能性には眼を向ける必要があると思います。

「母体安全への提言2011」p.10の症例1より
症例1
30 歳代、1 回経産婦。
妊娠 20 週 5 日に動悸と息切れを自覚し受診していた A 産婦人科診療所で心電図をとり、洞性頻脈と診断された。翌日、本人の意思で B 循環器内科を受診、24 時間心電図が行われ、異常がなかったと、本人から産婦人科主治医に伝えられた。妊娠 23 週 1 日に再び動悸を訴えA 産婦人科診療所を受診、呼吸苦、咳、CRP と白血球の上昇を認め、肺炎を疑いアジスロマイシンを処方された。翌日、呼吸苦が出現、急激に症状が悪化し酸素飽和度の低下、血圧低下をきたし高次医療機関に搬送されたが 2 時間後に死亡した。死亡後に、妊娠 20 週に循環器内科で行われた心電図で QT 延長症候群が指摘されており、安静と再受診が指示されていたことがわかった。本人は家族、産婦人科主治医にこのことを伝えていなかった。また、従妹に突然死があることが後に分かった。