IDSAのCRBSIガイドラインのアップデート版がでました.
Clinical Infectious Diseases 2009; 49:1–45
前回のは2001年でした.まだざっとしか読めていませんが,前のものより少し記載が細かくなってわかりやすくなったような印象があります.
以下に前半のサマリーだけ訳してみました.
長期的カテーテル,短期的カテーテルがそれぞれ何を指しているかは原文を参照ください.
内容に誤りがあったり,誤字脱字もご容赦ください.訳は意訳している部分もあるので,正確でない可能性もあります.意味がわからない場合や納得しかねる記述は原文でご確認ください.

いくつか思ったこと:
・血液培養の定量培養って技術的には結構難しいらしいです.日本でやってるところってあるのでしょうか?
・抗菌薬ロック療法って実際にやってみると,指示が間違わずに伝わるかどうか難しい印象があります.できれば抜去してしまった方がよいのでしょうが,いろいろな抜去しにくい状況に配慮されてガイドラインが記載されているような印象をもちました.でもやっぱり抜いてしまった方がすっきりしますけど.
・カテ先のみ陽性(15コロニー以上)で,血液培養陰性の場合は,感染の徴候がないかどうか注意深く観察して血液培養をフォロー,というものでしたが,黄色ブドウ球菌については,5-7日間治療する,とされているのは新しい記載ですね.やっぱり黄色ブドウ球菌は恐いです.
・DTP(differential time to positivity)はもうスタンダードとされていますね.これも血液採取量を同じにしたりと,実際は注意が必要です.

以下,前半のサマリーの訳です(ゴゴゴ・・・).
•    ❑    カテーテル感染
•    ❑    診断:静脈内カテーテル培養
▼    ❑    総論
    •    ❑    1.カテーテル培養はカテーテル関連血流感染(CRBSI)を疑ってカテーテルを抜去した場合に行うべきである.カテーテル培養はルーチンに行うべきではない(訳注:カテ感染を疑っていない場合は,カテ培養をしない)(A-II).
    •    ❑    2.カテーテル先端の定性培養は推奨されない(A-II).
    •    ❑    3.中心静脈カテーテル(CVC)について,皮下の部分よりは,カテーテル先端を培養にだすべきである(A-II).
    •    ❑    4.抗菌カテーテルの先端培養では,培地に特異的な阻害剤を使用せよ(A-II).
    •    ❑    5.カテーテル先端の半定量(ロールプレート)培養で15コロニー形成単位(CFU)以上陽性または,定量培養で10の2乗以上陽性であれば,カテーテルへの定着(colonization)を反映する(A-I).
    •    ❑    6.カテーテル感染を疑っている時に,カテーテル刺入部に浸出液があれば,検体を培養とグラム染色に提出せよ(B-III).
▼    ❑    短期カテーテル(動脈カテーテルを含む)
    •    ❑    7.短期的カテーテルの先端培養はロールプレート法がルーチンの臨床微生物検査には推奨される(A-II).
    •    ❑    8.肺動脈カテーテル感染を疑いの場合,イントロデューサーの先端を培養に提出する(A-II).
▼    ❑    長期カテーテル
    •    ❑    9.刺入部の培養とカテーテルハブの半定量培養で同じ微生物が15CFU未満であれば,カテーテルは血流感染源でないことを強く示唆する(A-II).
    •    ❑    10.静脈アクセス皮下ポートをCRBSI疑いで抜去したら,カテーテル先端の培養に加えて,ポートのリザーバー内容物を定性培養に提出せよ(B-II).
▼    ❑    診断:血液培養
    •    ❑    11.抗菌薬治療前に血液培養検体を採取せよ(figure 1)(A-I).
    •    ❑    12.可能であれば,血液検体はphlebotomy team(静脈採血チーム:訳注:日本にはないですよね〜)(A-II).
    •    ❑    13.皮膚から採血する場合の皮膚消毒は注意深く行うべきで,アルコールまたはヨードチンキ,アルコール性クロルヘキシジン(0.5%以上)を使って(ポピドンヨードはあまりよくない)消毒して,血液培養のコンタミネーションを防ぐために,十分な皮膚への接触時間,乾燥時間をとるべきである(A-I).
    •    ❑    14.カテーテルから採血する場合には,カテーテルハブをアルコールまたはヨードチンキまたはアルコール性クロルヘキシジン(0.5%以上)で消毒し,血液培養のコンタミネーションを避けるために十分乾燥させる(A-I).
    •    ❑    15.CRBSI疑いの際,抗菌薬投与前にカテーテルと末梢静脈から2セットの検体を採取し,ボトルにはどこから検体を採取したかがわかるように印をつけておく(A-II).
    •    ❑    16.血液検体が末梢静脈から採取できない場合には,異なるカテーテルルーメンから2セット以上の検体を採取することが奨められる(B-III)(訳注:へえ,こんなことしていいんだ〜まあ,ないよりましかってこと?).このような状況で全てのルーメンから血液培養の検体を採取するべきかどうかはよくわかっていない(C-III).
    •    ❑    17.CRBSIの確定診断には,少なくとも1セットの皮膚から採血した血液培養とカテーテル先端培養から同じ微生物が検出されることが必要である(A-I).もしくは2つの血液検体(1つはカテーテルハブから,もう1つは末梢静脈から採血)で,定量の血液培養または陽性になるまでの時間差(DTP:differential time to positivity)といったCRBSIの基準を満たすことで確定診断することもできる(A-II).もしくは,2つのカテーテルルーメンから採血して,血液培養を定量培養して,1つのルーメンからのコロニー数が他方の3倍以上であれば,おそらく(possible)CRBSIを示唆する(B-II)(訳注:煩雑ですね.血液培養の定量培養ってどんな風にするのでしょうか?).この場合,血液培養のDTP基準については,解決されていない問題である(C-III).
    •    ❑    18.定量の血液培養については,カテーテルハブから採取した血液から検出される微生物のコロニー数が,末梢から採取された血液からのコロニー数の3倍以上をもってCRBSI確定になる(A-II).
    •    ❑    19.DTPについては,カテーテルハブから採取した血液検体の方が,末梢から採取された血液検体よりも少なくとも2時間以上早く陽性になることをもってCRBSI確定になる(A-II).
    •    ❑    20.定量血液培養またはDTPについては抗菌薬投与前かつボトルの血液量は同じ量にする必要がある(A-II).
    •    ❑    CRBSI治療終了後にルーチンに血液培養を採取するべきかどうかについてはエビデンスは不十分である(C-III).
▼    ❑    カテーテル関連感染症の一般的な管理
    •    ❑    22.抗菌薬の治療期間について表示する際には,血液培養が陰性化した最初の日をもってday1とする(C-III).
    •    ❑    23.バンコマイシンは,医療機関関連の状況でMRSAの頻度が高い場合にはエンピリック治療として推奨される;MRSAの中でバンコマイシンのMICが2μg/mlを超えるものが優勢であれば,ダプトマイシン(訳注:日本では未承認)のような代替薬が推奨される(A-II).
    •    ❑    24.リネゾリドはエンピリック治療(すなわち,疑いはあるがCRBSIと確定していない患者)では使用すべきではない(A-I).
    •    ❑    25.グラム陰性桿菌をエンピリックにカバーするべきかどうかは,地域の抗菌薬感受性率や重症度による(例:4世代セファロスポリン,カルバペネム,βラクタム/β-ラクタマーゼ阻害剤配合薬±アミノグリコシド)(A-II).
    •    ❑    26.好中球減少患者や重症敗血症患者,多剤耐性菌が定着しているとわかっているような患者で,CRBSIを疑った時に,緑膿菌のような多剤耐性グラム陰性桿菌に対してエンピリックに併用療法は行うべきである.培養と感受性試験の結果が返ってきて抗菌薬のde-escalationができるまでは(A-II).
    •    ❑    27.大腿にカテーテルが入っているCRBSI疑い患者が生死を争うくらい重症な場合には,グラム陽性菌のカバーに加えて,エンピリックにグラム陰性桿菌,カンジダ属についてもカバーを行うべきである(A-II).
    •    ❑    28.セプティックな患者でカテーテル関連カンジダ血症を疑ってエンピリックに治療するべきかどうかは,つぎのリスクファクターのいずれかがあれば行うべきである:TPN,広域抗菌薬を長期間使用,血液悪性腫瘍,骨髄移植または固形臓器移植後,大腿カテーテル,カンジダ属がいろいろな部位に定着している(B-II).
    •    ❑    29.カテーテル関連カンジダ血症を疑ってエンピリックに治療する際には,エキノキャンディンを用いる.限定的にフルコナゾールでよい場合もある(A-II).フルコナゾールが使用できる患者は,3ヶ月以内にアゾール系薬剤の投与歴がなく,Candida kruseiまたはCandida glabrataのリスクが低い医療期間の場合である(A-III).
    •    ❑    30.抗菌薬ロック療法はカテーテルを残す場合には用いるべきである(B-II);しかし,この場合抗菌薬ロック療法が使用できなければ,定着したカテーテルから全身抗菌薬を投与するべきである(C-III)(訳注:定着したカテーテルからって言われても???).
    •    ❑    31.カテーテルを除去しても真菌血症または菌血症が持続する場合(すなわち,カテーテル抜去から72時間以降も持続する場合),4〜6週間の治療が推奨される(S. aureus感染についてはA-II;他の病原体による感染ならC-III).感染性心内膜炎や化膿性血栓性静脈炎があるとわかった患者や小児の骨髄炎患者でも4〜6週間の治療が推奨される;成人の骨髄炎治療では6〜8週間治療が推奨される(figure 2, 3)(A-II).
    •    ❑    32.CRBSI患者で,以下のうちどれかがあれば,長期的カテーテルを抜去するべきである;重症敗血症,化膿性血栓性静脈炎,感染性心内膜炎,有効な抗菌薬を投与しても72時間以上血流感染が持続する場合,黄色ブドウ球菌感染,緑膿菌感染,真菌感染,抗酸菌感染(A-II).CRBSI患者の短期的カテーテルはグラム陰性桿菌,黄色ブドウ球菌,腸球菌,真菌,抗酸菌の場合に抜去するべきである(A-II).
    •    ❑    33.CRBSI患者でカテーテルを残そうとする時には,追加の血液培養(定められた日に2セット;新生児であれば,1セットでも許容される)を採取し,もしそれが有効な抗菌薬を投与して72時間以上陽性が続くのであれば,カテーテルは抜去するべきである(B-II)..
    •    ❑    34.病原性が低くても除去することが難しいような微生物(例:Bacillus属,Micrococcus属,Propionibacteria)によるCRBSIでは,血液培養のコンタミネーションを除外した後に(複数の血液培養陽性で,少なくとも1セットは末梢静脈から採取),一般的には長期的,短期的カテーテルともに抜去されるべきである(B-III).
    •    ❑    35.合併症のないCRBSIで,黄色ブドウ球菌,緑膿菌,Bacillus属,Micrococcus属,Propionibacteria,真菌,抗酸菌以外の病原体による長期的カテーテルの感染の場合には,多くの患者で長期の血管内アクセスが生存のために必要であるので(例:血液透析患者や短腸症候群患者),カテーテル抜去せずに治療を試みるべきである.この場合,全身抗菌薬投与,抗菌薬ロック療法ともに行う(B-II).
    •    ❑    36.CRBSIを示すような血液培養陽性結果が報告されたら,自動的に標準治療のアドバイスがなされるようなシステムを構築すればIDSAガイドラインの遵守率が改善する可能性がある(B-II).
    •    ❑    37.ウロキナーゼやその他の線溶系薬剤はCRBSI患者の補助療法としては推奨されない(B-I).
    •    ❑    38.カテーテルが留置されている患者でコアグラーゼ陰性ブドウ球菌が血液培養1セットだけ陽性になった場合には,抗菌薬投与前,カテーテル抜去前に,追加の血液培養を感染の疑いがあるカテーテルと末梢静脈両方から採取して,真の血流感染かどうかとカテーテルが感染源かどうかを確かめる(A-II).