定年までに知って得するお金の話~武田信

知っているだけで得する情報はたくさんあります。これまでの取材や自分の経験で知りえた、得するお金の情報を、カテゴリーごとに、わかりやすく、紹介していきたいと思っています。また、国や地方などでつくっている公的制度を知り、上手に利用することは大切です。しっかりと確認していきましょう。武田信の自己紹介:ファイナンシャルプランナー(CFP認定者、1級FP技能士)。大手金融機関に入社。営業、企画、総務部門をはじめ、支社長、支店長、理事などを経験。会社勤務と並行して、お金に関することをテーマに、取材・執筆に取り組んでいる。他、DCプランナー、証券外務員などの資格を取得。

カテゴリ: 税金

働いている高齢者は、年金給付に与えられる公的年金等控除に加えて、給料に対して与えられている給与所得控除も併用できます。そのため、同じ課税前収入でも、給料しか稼いでいない現役世代よりも控除額が多くなって、所得税負担が軽くなります
・これにより、同じ課税前収入でも、高齢者の9割は現役世代よりも税負担が軽くなっています。

<庶民の生活水準は、生活保護とさほど大差がない>
生活保護を東京23区で夫婦と小学生1人が受給する場合、1年間で280万円が支給されます。これと同額の手取りを得るために必要な額面年収を逆算すると、約50万円の社会保険料と約25万円の所得税・住民税が引かれる前の355万円が必要になります。つまり、同年収の世帯は、すでに生活保護受給世帯と変わらない生活水準となっているのです。
・一人暮らしの場合は、年収200万円がそのラインです。この水準に今回の増税やそれに起因する不景気で、生活保護以下の”見えない貧困層”が増えるのではないかと思われます。
・なお、生活保護の人たちは、医療費の本人負担がなかったり、自治体によっては、水道代の免除やその他の補助も多いです。実質、280万円を超える可処分所得と同等になります。
生活保護と同等の年収は355万円


・財務省の発表によれば、社会保障や公共事業など、国の基本的な行政の財源となる一般会計税収は、2009年度は38.7兆円でした。それが、2013年度で47.0兆円まで増額し、2017年度には58.8兆円まで膨らみました。税収は右肩上がりに増え続けているのです。
<自分1人だと、どのくらいの税金を払っているのか>
(前提)
・一般的なサラリーマンが生涯に支払う税額を出すにあたっては、生涯収入を3憶2000万円(大卒・大学院卒の男性の平均・ユーフル労働統計2018をもとに算出)に設定しました。
所得税(1787.6万円)
平均的な1人当たりの総額は、1787.6万円に及びます。
・初任給で年収400万円の場合、所得税は年間8.6万円ですが、60歳まで働いた場合の年収1185万円では、所得税は108.0万円になります。所得が多いほど税率が高くなります。累進課税制度が取り入れられているからです。
・所得税の税収総額は、2009年度の12.9兆円から、2017年度には18.9兆円まで増額しています。わずか8年間で6兆円が上積みされたことになりますが、今後さらに上昇します。現在、控除の縮小と廃止が検討されているからです。
・2018年度以降は、年収1220万円を超えると配偶者控除(最大38万円)は適用されないように変更されました。加えて、給与所得控除(最大220万円)の引き下げが検討されています。
住民税(1699.1万円)
1人当たり
生涯に総額1699.1万円を負担します。
・住民税は定額で納入する均等割(年額5000円)と、所得に応じて支払う所得割の合計が源泉徴収される仕組みになっています。所得税とは異なり、前年度分の給与をもとに徴収されるため、定年後1年目に前年度の給与分の負担を強いられるのが特徴です。
・2014年の税制改正により、住民税は全国一律で1000円上昇しました。生涯の総額で言えば、1人当たりの負担は約6万円分上昇したことになります。
消費税(1439.9万円)
2017年の一世帯当たりの消費税の納税額は年間24.0万円です。これをもとに計算しますと、1人当たりの生涯負担額は、1439.9万円となります。
・消費税は、2014年4月1日に税率が5%から8%に引き上げられました。2013年度の消費税収は10.8兆円でしたが、2014年度には16.0兆円まで増額しています。財務省の試算によりますと、消費税が10%に設定されれば、税収は年計でおよそ4兆円も増えるといわれています。わずか、6年前と比較して、毎年10兆円以上も多く、強制的に税金を徴収されることになるのです。
・消費税は、年金、医療、介護の社会保障給付と、子育て支援を合わせた「社会保障4経費」に全額充てられることが消費税法で定められています
・2018年度の社会保障給付費の総額は121.3兆円にも及び、年々膨らみ続けています。つまり、社会保障4経費の支出に対し、税収が追い付いていないのです。採算を合わせるため、ゆくゆくは消費税率がさらに引き上げられる可能性もあります。
自動車(483万円)
・自動車を購入する際には、消費税に加え、自動車取得税(自動車の購入代金の3%)がかります。200万円の車を購入すれば、その瞬間に22万円の税金を納めたことになります。
・さらに、自動車税(1000cc以下の自動車の場合、2万9500円)が毎年徴収されるうえ、車検の度に自動車重量税(購入から12年以内の場合、年額1万円)をまとめて納税する必要があります。
・60年間、12年間(5年に1回)ごとに車を買い替えたすると、自動車税は207万円、自動車重量税は60万円、合計267万円も請求されます。
*2019年10月1日以降、自動車取得税と自動税は廃止されます。しかし、税額が減るわけではありません・自動車取得税の代わりとして「環境性能割」自動車税の代わりとして「種別割」が、新たに税金として設定されます。電気自動車など、一部のエコカーに対して税率を軽減する一方で、一般的な自動車に関する税率はほとんど変わりません。つまり、名称が変わるものの、自動車取得税、自動車税は実質的には「据え置き」のままです。
ガソリン税と石油税
・税法上、1Lに対し、合計で56.6万円が上乗せされる仕組みになっています。1L130円とすると、そのうち約4割は税金です。
・60年間車に乗り続けたとすれば、ガソリンだけで、186万円分を、税金として支払うことになります。つまり、自動車だけでも、生涯で483万円(=267万円+186万円)もの税金を納めることになるのです。
マイホーム(777.2万円)
①不動産取得税
②登録免許税
・登記をする際に、固定資産税評価額×0.15%
③印紙税(収入印紙)
・売買や建築の契約書
④消費税(家屋部分のみ
⑤固定資産税
(例)固定資産税評価額がそれぞれ2000万円(100平方メートル)の家屋、3000万円の土地の計5000万円分の不動産を購入したとします。
①不動産取得税:21万円
②登録免許税:20万円
③印紙税:1万円
④消費税:160万円
⑤固定資産税:575.2万円
・固定資産税の納付通知は、毎年1月1日時点の所有者に、年1回、4~6月頃に送付されます。これに伴い、所有者は4月から翌年3月まで、1年間分の固定資産税を先払いすることになります。税率は1.4%です。
・家屋は10年ごとに評価額が下がりますが、土地はそうはいきません。例の不動産を55年間保有した場合、575.2万円もの固定資産税がかかる試算となっています。
①~⑤合計:777.2万円
たばこ税(609.9万円)
・1箱500円だとすると、そのうち278.5円がたばこ税として計上されます。毎日1箱、60年間吸い続ければ、総額は609.9万円です。2006年以降、2度の増税により、1箱当たりの値段は平均して200円も増額しました。増額分はすべて税収になります。
・たばこ税は、2021年までに1箱あたり40円の値上げが予定されています。
酒税(243.1万円)
・ビールについては、1Lあたり222円が酒税として徴収されます。500ml缶(260円)を毎日1本、60年間飲み続ける場合、生涯で243.1万円に及びます。
・品目やアルコール度数に応じて、2026年までに増税する予定です。ワインは1本(720ml)あたり15円、発泡酒やチューハイは1本(350ml)あたり7円の増税が検討されています。
●相続税(160万円)
・この税は、2015年度の税制改正により、基礎控除額は40%も減額されました。つまり、課税対象が拡大したのです。親の5000万円の相続財産を一人の子供が相続した場合、160万円の相続税が課されます。
→ここまでの税額をすべて含めますと、たった一人の生涯に、7039.8万円もの税金を国にとられることになります。
●社会保険料
・社員の社会保険料を納めることは社会保険関係法令で義務付けられています。給与から社会保険料が強制的に徴収されるのはこのためです。
健康保険料(1460万円)
・従業員とその家族の医療保障に充てられます。
・会社によって異なりますが、月給に対して10%程度の保険料率をかけたものが健康保険料として、毎月徴収されます。個人と企業で折半することが定めれらているため、給与のおよそ5%が従業員の負担額となります。
・生涯収入3憶2000万円の場合で考えると、1460万円を支払うことになります。
厚生年金保険料(2698.8万円)
・老齢年金や遺族年金に充てられます。
・この保険料率は、全国一律で給与の18.3%です。健康保険料と同様、個人と企業で5割ずつ負担するため、給与の9%強が徴収されることになります。先の生涯収入ベースでいえば、2698.8万円です。
・厚生年金を受給した場合、受給額によっては、所得税と住民税が徴収されます。60歳で働くのをやめ、年金を繰り上げ受給すると、老齢年金の収入は平均して年185.6万円です。
・この年金収入に対し、所得税が3.0万円、住民税が7.1万円かかります。年金を受給し続けている限り、この金額を、毎年国に納め続けなければならないのです。

・平均的な生涯賃金ベースで計算しますと、もし自分が70歳で亡くなると、60歳からの10年間で、老齢年金は、配偶者がいる場合、1805万円しかもらえません。
・配偶者がもらえる遺族厚生年金は、自分がもらえるはずだった厚生年金の4分の3ほどです。配偶者や子がいなければ、そのお金すら受け取れず、2000万円以上も「損」をすることになります。
・長生きしなければ、支払ったお金よりも少ない額しか受け取ることができないのです。
③雇用保険料
・仮に社員が失業した場際に、再就職の支援に充てられます。一般的に、個人が負担する雇用保険料は給与の0.3%です。
④介護保険料
・40歳を迎えると、突然給与明細に介護保険料の項目が増えます。介護が必要になった際に給付金を受け取るためのお金です。定年までの20年間、給与の1.73%の5割(0.865%)の金額を払い続けなければなりません。

・2019年4月22日、健康保険組合連合会は、12年連続で健康保険料が上昇したことを発表しました。介護保険料も上昇し、平均の負担額は年間10万912円と、過去最高となりました。
・加えて、厚生労働省は厚生年金の加入期間の延長(70歳以上まで)を発表しました。今後は、できる限り長時間にわたって厚生年金保険料を支払わせようというのです。もはや保険料も、理不尽なほどの負担と言っても過言ではありません。
税金と保険料を合わせると、1憶1442.7万円が強制徴収されます。生涯収入の36%を国に値する金額を国に納めるのです。






・問題は、年金の各種申請書や届け出は複雑で「記入漏れ」や「提出漏れ」起きがちなことです。
・特に間違いが多いのが、毎年9月頃、年金機構から年金受給者に送られる「扶養親族等申告書」です。扶養家族の人数、所得を記入して返送しますが、この書類の記入ミスや提出漏れが、翌年の「増税」を招くケースがあります。
(記入ミス)
注意が必要なのが「配偶者の所得額」です。この「所得」は、収入から公的年金控除などを引いた金額のことです。65歳以上の妻で収入が、年金で年120万円以下、副業の給与が年65万円以下といった場合、所得は「0円」と記入しますが、年収額を書いてしまうと配偶者控除が受けられなくなるケースがあります
(提出漏れ)
・書類そのものを出し忘れるとさらに深刻です。夫(65歳)の年金が220万円、妻(65歳)が基礎年金だけの78万円の場合、配偶者控除の38万円がなくなるなどして所得税が約15万円も増額されます。

・記入ミスや、提出忘れの場合は、税務署で確定申告をして還付を受けることが大切です。

<手取りとは>
・手取り(実際に使えるお金)=額面収入(基本給+残業手当・役職手当など)-(所得税・住民税・社会保険料*)
*社会保険料→厚生年金保険料、健康保険料、介護保険料、雇用保険料など
<収入が高くなるほど税金は高くなります>
・税金を計算する際は「税率」を掛けて額を出すのですが、所得税は収入が高くなるほど、5%、10%、20%と税率も高くなっていきます。
・一方、住民税はどこでも一律10%です。
●さらに、手取りは2003年からずっと下がり続けています
・ちなみに、2002年から2017年までの15年間で、額面年収700万円の手取りはなんと50万円も減っています。額面年収500万円の場合でも35万円の減少です。
・2003年以降、制度改正が相次ぎ、所得税も住民税も、厚生年金保険料も健康保険料もすべてアップし続けています。
年収別手取り早見表
所得税率
関連記事:『「所得税」と「住民税」はいくら?(年収300万円、500万円、1000万円の人で違いは)』(2019年7月6日付)
関連記事:『月収20万円独身の手取りは15万8500円!』(2019年8月7日付)

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