August 18, 2019

子育てで一番大切なこと 愛着形成と発達障害




2018.09
子育てで一番大切なこと 愛着形成と発達障害
杉山登志郎 著
講談社現代新書


児童精神科医として第一線を走り続けてきた著者が考える、子育てで一番大事なこと。

それは、そんなに難しいことではない。

生き物として当たり前に暮らし、安心できる環境があり、ひとり1人の多様性が認められ、親(養育者)との愛着形成がなされること。

だが、そんな子どもが持つべき「当たり前」が、現代日本には欠けている。

晩婚化による出産年齢の高齢化。
労働の長時間化による生活時間の狂い。
貧困。
一律教育を是とする学校教育。
孤立する育児。
虐待とその世代間連鎖。

生物としての当たり前から逸脱し、子どもにとっての当たり前であるべき環境が欠けている結果、自閉症スペクトラム障害(ASD)や注意欠陥・多動障害(ADHD)になる子どもが増えている。

子どもは大人社会を写し出す鏡。

日本の抱える病理が、子育てを苦しいものにしてしまっている。



登場人物は架空の3人。

児童精神医学の臨床の第一人者であり、ちょっと言動に問題がある大学教授・杉本。
優しい語り口とデータ・エビデンス中心の理論派准教授・矢野。
2人の聞き役となる、出産に少しの不安を抱えた女性編集者・ミサキ。

この3人の対話という形で書かれた内容は、小難しい専門書と言うより、ちょっとした物語風で読みやすい。


読みやすいとは言っても著者は児童精神科医なので、当然のことながらASDやADHD、知的障害、学習障害の話がメインとなる。

それらの疾病の発生原因に関する最新研究や、良化・悪化する原因などを説明しつつ、疾病を取り囲む社会制度の問題点や、ちょっと奇抜な解決策(?)を提示していく。


妊娠中の女性がダイエットをすると、オナカの中の子どもが「外の世界は飢餓状態だ。 」と勘違いして栄養を溜め込む体質(=肥満体質)になってしまう。

子どもが暴力に晒されることで、脳は委縮しダメージを受ける。
体罰で前頭葉が、親のDVなど見たくないものを見ることで視覚野が、暴言で聴覚野が委縮する。

など、「へぇー。」と思う挿話が沢山ある。


だが。
とりあえず「子育てで一番大切なこと」というタイトルに惹かれ、この本を手に取った育児中の人間は

「こういう内容の本が読みたいと思ったわけじゃないんだが。」

と思うであろうことは請け合い。

新書だし、サブタイトルもあるから騙されてるワケではないのだけど、ノウハウ本ではなく児童精神医療と社会問題を扱った学術書寄りの内容ですからね。


でも、内容も面白く、読みやすさも手伝ってサラッと読了できるし、実際に大事なことも教えてくれる。

・動物として自然で健康な生活を守ること。(バランスの良い食事と睡眠)
・好奇心を大切にすること。
・脳を興奮させ過ぎないこと。
・安心して成長できるように見守ること。
・3歳までは愛着形成期なので、子ども中心に生活すること。
・子どもの多様性を受け入れること。
・子どもに合った教育を選ぶこと。
・無理をさせないこと。
・迫害・挫折の経験を少しでも減らすこと。
・社会全体で子どもを育てること。


簡単に出来るようで、難しい。

特に最後のやつ。

自分が養育里親出来るかと聞かれると、実際はナカナカ・・・

少子高齢化だって言うなら、生まれてきてくれた子ども達を大事にしようよ。という話。


know_the_base at 22:01│Comments(0) まじめな本 

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