2018年に見た映画

August 22, 2018

ちょっと今から仕事やめてくる




毎日の深夜残業、もちろん残業代はつかない。
ノルマを課され、常に上司に怒鳴られ、明日なんて来なくて良い。
ブラックすぎる会社で働く青山は、力尽きる目前。

電車に飛び込んでしまう目前、青山を救ったのは、小学校の時に転校した山本。
だが、記憶の山本は、おぼろげ。

謎の山本に振り回されながらも、青山は少しだけ笑顔を取り戻していく。
一方で心はどこか、山本を疑う。

そんな時、仕事で痛恨のミス。
部長のパワハラは極まり、青山は眠ることさえ出来なくなっていく、、、


演出過剰と思うほどの漆黒企業で働く青山。
異常なパワハラ上司に、表面だけ良くて裏切る先輩、終わらない仕事。

ブラック企業って噂は聞くけど、こんなんあるわけない。

え?
ないんだよね?

青山は山本に言う
「今どき、正社員として働くのは簡単じゃないんだ!」

山本は青山に聞く
「仕事を辞めるのと、死ぬのは、どっちが簡単なん?」


ブラック企業で視野が狭くなって、すり減って、死んでしまうくらいなら辞めてしまえば良い。
そんなこと、みんな分かってるハズなのに、現実に命を断ってしまう人がいる。

たぶん、本当に現在進行形でブラック企業に勤めてる人は、この作品を観てないと思う(映画を観ている時間と心の余裕的に)。
なので、「ブラック企業ってこんなんですよ。」という社会認知を上げる為の作品。


ブラック企業も、青山くんの不遇も、テンプレすぎる気がする。
そして、青山くんの決意も、辞め方も、これまた教科書通りと言うか、分かりやすくし過ぎて人間味がない。
正直、仕事辞める前後の青山君は、完全に「仕事辞める洗脳」を受けたような表情になってて、逆に怖い。
まぁ、ブラック企業で働き続けるのも洗脳だから、どっちもどっちだけど。

山本の抱えた背景も、これまた分かりやすい。

いや、分かりやすいのが悪いわけではないんだが。
映画として、全部を綺麗にまとめようとし過ぎ感がある。

ま、予想を裏切って青山くんが死んじゃうエンドなんか、誰も見たくないしね。

ええんでないの。


パワハラ上司に怒鳴られ続けるシーンは、本当にその経験ある人だったら見てらんないだろな。

経験のない自分でも、なんかツラかったもん。


最終評価 B





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August 21, 2018

この世界の片隅に



2017年 日本映画


広島近くの漁村で育ったすず(のん)。
親を手伝い、海苔を作り、絵が得意で空想好き。

18歳になったすずの元に縁談が舞い込む。

相手は幼い時に出会った北條周作。
地元から離れた造船の町・呉に嫁いだすずは、見知らぬ土地、見知らぬ人達の中で何とか暮らす。

だが、時代は戦時下。
着々と物は少なくなり、世情は不安定になり、人の心は荒んでいく。

何もない中、手間を惜しまず工夫に工夫を重ねて日々を生きるすず。

時間が経つほど、戦火はすずの暮らす呉に近づいていた・・・


まるで日本昔ばなしの様に、おっとりとしたすずの語り。

一方でどんどん悪くなる情勢。

人を好きになったり、小さなことで笑ったり、そんな普通の感性が踏みにじられていく。
当たり前の幸せが、当たり前の暮らしが、当たり前の心が壊れていく。

すずの世界が、歪んでいく。
すずの悲しみが、苦しみが、怒りが、胸に刺さる。


最終評価 A


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August 18, 2018

ペンギン・ハイウェイ

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2018年・日本映画
原作・森見登美彦

「四畳半神話大系」「夜は短し歩けよ乙女」といった、現実と混ざり合う不思議な世界観を持つ森見登美彦が少年時代の原風景を描いた「ペンギン・ハイウェイ」をスタジオ・コロリドが映像化。


小学四年生のアオヤマ君は、一日一日世界について学び、学んだことをノートに記録する。
利口な上、毎日努力を怠らずに勉強するので「きっと将来は偉い人間になるだろう。」と自分でも思っている。

そんなアオヤマ君にとって何よりも興味深いのは、通っている歯科医院のお姉さん。
気さくで胸が大きくて、自由奔放で、どこかミステリアス。
アオヤマ君は、日々、お姉さんをめぐる研究も真面目に続けていた。

夏休みを翌月に控えたある日、アオヤマ君の住む郊外の街にペンギンが出現する。
海のない住宅街に突如あらわれ、そして消えたペンギンはたち。
いったいどこから来て、どこへ行ったのか。

ペンギンが並んで目的地を目指して歩く「ペンギン・ハイウェイ」。
謎のペンギンたちの謎を解くべく、「プロジェクト ペンギン・ハイウェイ」と名付けた研究を始めたアオヤマ君は、お姉さんが投げたコーラ缶がペンギンに変身するのを目撃する。
ポカンとするアオヤマ君に、笑顔のお姉さんが言った。

「この謎を解いてごらん。どうだ、君にはできるか?」


観察し、仮説をたて、実験し、考察する。
小学四年生でありながら、世界のすべてをそんな科学者の目で見つめるアオヤマ君。
冒頭で「僕はたいへん頭がよく。」と言い切るアオヤマ君は、自意識過剰のナマイキ者かと思いきや、本当に賢くてそして素直な心を持つ少年。

そして、そのアオヤマ君の憧れるヒロインは、ぐっと年上のお姉さん。
理性的であり、自由で奔放であり、神出鬼没。
アオヤマ君が一緒にいるだけで幸せになってしまい、「なぜお姉さんのオッパイは、あんなに魅力的なのか。」という男子永遠の謎までも抱えた、魅力的な女性。

どうやって小学四年生の少年が、こんな魅力的な歯科助手のお姉さんにチェスを習い、歯医者の外で関わるまで親しくなったのか、ぜひ教えてほしい。

そんな2人が挑む、ペンギンたちの謎。


ファンタジーであり、結構骨のあるSFでもある。
ファンタジーでしか起こりえない事象を、アオヤマ君が真面目に科学の目でまっすぐに考察していく過程が面白い。

完全に未知の事象に向き合うアオヤマ君は、事象を観察し、ひとつひとつの小さな事象に分解し、実験し、記録を残し、考察し続ける。

人間が理解できる領域と、人間が理解できない領域。
わからない部分を素直に「わからない。」と受けとめ、それでも考えぬいて「でも。仮説を立てました。」と言って挑戦する。

科学者の知性と目の前の不思議をそのまま受け入れる少年の心。
そんなアオヤマ君を「こどもだから」という色眼鏡を付けずに評価し、信頼し、実験に付き合うお姉さんが、また良い。


性にギリギリ目覚めていない少年が、24〜26歳くらいのお姉さんに憧れる。
このちょっとだけソワソワしてしまう初恋感が、たまらない。


正直、小学四年生の男子と夜の喫茶店でチェスをしたり、一緒に出掛けたり、部屋に連れ込んだりするお姉さんの行動は、大人目線的にはヒヤヒヤする。

たぶん、本当に歯科助手のお姉さんと小学生の患者っていう関係性でコレをやってたら、アウトだとろなぁ・・・。
まぁ、アオヤマ君のお父さんとお姉さんが普通に話してるシーンがあるので、親と何らかの知り合いなんだろう・・・という脳内処理をしておきました。

しかし、お姉さん・・・ええな・・・・。
声、蒼井優かよ!
それもまた・・・ええな・・・。


思いがけず良い作品と出会ってしまいました。

何が良い。とか、どこが良い。とか、上手く説明できません。
何せストーリーが森見登美彦だし、そんなの説明できるわけない。

でも騙されたと思って観て、そしてこの爽やかな鑑賞後の気分を味わって欲しい。


観る側にも、理解不能な世界観を呑み込むリテラシーが求められる作品ではあると思うので、たぶんヒットはしないんだろうなぁ。
とは思いつつ、パンフレットを買って、近いうちに原作を読みたいと思ってしまうくらいに魅力的な作品でした。

最終評価 A−



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August 17, 2018

君の膵臓をたべたい



2017年・日本映画


高校の現国教師・志賀春樹(小栗旬)は、かつて自分の通った学校で教鞭をとる。

地味で目立たず、他人との関わりを避けていたかつての自分(北村匠海)。

老朽化で取り壊しが決まった図書館で、春樹はかつて自分と過ごした山内桜良(浜辺美波)の事を思い出す。

膵臓の病気で、余命数年の桜良。
クラスの人気者の秘密を偶然に知ってしまった日から、桜良は春樹に妙に関わりだす。

本を整理する春樹の周りを飛び回っては邪魔をし、彼氏でもないのに春樹を外に連れ回す。

「本当に死ぬの?」

そんな疑問が浮かぶほど、桜良は元気で、自分の病気を冗談にして屈託なく笑う。

急に接近する地味で目立たない男子と、人気者の女子。
桜良の行動は、クラスに波紋を起こす。

一方で、桜良の病状は着々と進んでいた・・・



桜良が自分の病気をネタにしてしまう気持ち、分かるな。

重病なら重病なほど、関わる相手に気を使って欲しくなくて、冗談にしてしまう。
何事も無かった日常を維持したくて、そうしてしまう。

秘密を知っても変わらなかった春樹が、桜良の求めた日常を与えた。
だから、桜良は春樹に近づいた。


決して「好き」とか「愛してる」という形でおさまるラブロマンスではなく、魂の深いところで繋がった2人。

そんな2人を浜辺美波と北村匠海が好演している。
演技が特別に上手いと言うわけではないのに、役にハマると言うのはある。
周囲のために無理に明るく振る舞う桜良と、浜辺美波のぎこちない演技が絶妙に良い。

そして、浜辺美波かわええ。

前半で仕込んでいた伏線というか、ネタ振りをあえて回収しない、ハズすって言うストーリーも良い。
高校生の日常で起こった全てがラストに繋がるなんて、そんなハズもなし。
このとっ散らかった感が、悪くない。


泣ける、と言うところには届きませんでしたが、良い作品でした。

まぁ、この内容で観客が泣けないなら、作品としては微妙なんですけどね。


最終評価 B+


で、結局、桜良ちゃんの膵臓病は何だったのですか?
膵臓癌?
桜良くらいの若年女性の膵臓癌発症率は、相当低いですけど、、。

桜良の疾患が何なのかは、ずっと気になってモヤってました。

原作読んでないから何とも言えないけど、映画の中の描き方だと「ハッキリ決まってないのかな?」という印象。
まぁ、良いけど。



以下、ネタバレ。

数々の物語の中で都合良く使われる「死に至る病」。

ギリギリまでピンピンしてて、キャッキャウフフして、急転する病状。
そんな展開かと思ってたら、変化球でした。

でも、そうよね。
死に至る病を抱えていたら、必ずその病気で死ぬわけもなし。

過去を振り返る春樹の
「甘えていたんだ。残りわずかな余命を彼女が全うできると思い込んでたんだ。」
ってセリフは、ドキッとさせられる。


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August 16, 2018

鋼の錬金術師 (実写版)

鋼の錬金術師 DVD
山田涼介
ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
2018-04-18



世界の理を知り、組成を組み替える力を持つ錬金術師。

死んだ母親を蘇らせるため、錬金術の中で禁忌とされた人体錬成に挑んだ幼いエルリック兄弟は、大きな対価を払うこととなる。
兄のエドワードは、右腕と左足を失い
弟のアルフォンスは身体を失い、全身鎧に魂を定着させて何とか命を保つ。

アルフォンスの肉体を取り戻すため、エドワードは軍の狗となった。
軍から与えられた通り名は、鋼。

鋼の錬金術師エドワード・エルリックは、賢者の石を探し求め旅を続ける。


原作漫画は、世界観からストーリーの起承転結までの完成度が突き抜けた名作。

一方、実写版は、、、


うむ。
期待通りに突き抜けたクソ映画でした。

開始5分経つ前、タイトル出る前に「アカンやつやー。」って分かるっていうね。

まず、配役がアカーン。
エドワード(主人公・山田涼介)と、ウィンリィ(ヒロイン・本田翼)とホークアイ(クールビューティ兼スナイパー)がアカーン。
無理に寄せようとした見た目は、コミケのコスプレエリアなら許せるレベル。

品行方正なだけでバカなエドワードなんか、エドじゃない。

大佐に守られるだけで、指示待ちしか出来ない普通の女の子なんかホークアイじゃない。
ホークアイは、キャラクターが把握できてないとしか思えなーい。寄せる気さえ感じなーい。

一方で。
松雪泰子のラスト、内山信二のグラトニー(演技はともかく)、大泉洋のショウ・タッカーは、原作の雰囲気がありました。


錬金術がCGなのは当然と言うか、全然良いんですけど、、、演出がウルトラマン風味なのはナゼなのか。
真実の扉の中で、エド変身しちゃうかと思いましたよ。

そして、現代と思えないアクションシーンのキレの悪さ。
アクションは鋼の錬金術師の見せ場とちがうんか。

すげーよ。
漫画原作実写化の王道ダメパターンを、どこまでも真っ直ぐに歩いてる。

逆に期待通りだけどね。
逆に。



ショウ・タッカー役の大泉洋さんは、どハマりしてるのが笑えた。

あ、フルCGのアルだけは観られる。
まぁ、活躍はしないんだけども。


なんでこういう作品がたまに観たくなるんだろうか。
不思議。


最終評価 C

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March 29, 2018

ノーエスケープ 自由への国境

ノー・エスケープ 自由への国境 [Blu-ray]
ガエル・ガルシア・ベルナル
ポニーキャニオン
2017-10-18



メキシコとアメリカ国境の砂漠地帯。
一台のボロトラックがメキシコからの密入国者たちを運ぶ。

だが、砂漠の真ん中でトラックは故障。
十数人の密入国者たちとガイドは、歩いてアメリカに入ろうとする。

ひたすらに砂漠を歩き続け、それぞれの体力差によって徐々に先行班と遅れ気味の後方班に分かれていく。
先行班に追いつこうと後方班が急ぐ。

その時、一台のピックアップトラックが現れる。
国境警備か?

身を隠す後方班が見たのは、トラックから降りてきた男が次々と先行班を撃ち殺していく姿。

逃げろ

だが、どこに?

見晴らしの効く砂漠。
相手は猟犬を連れたスナイパー。

ひとり、また、ひとり。
獣を狩るように殺されていく、、、。


アメリカ人の狩人が、なぜそんなにも密入国者を憎むのか。
密入国者たちひとり1人がなぜ密入国しようとしたのか。
それらの説明は、ほぼない。

説明はほぼ無いに関わらず、体型、持ち物、ちょっとした言動で、それぞれの持つ背景が不思議と伝わる。
むしろ、この人はこうなんだろうなと、観客側が自由に想像できる空白を残してあることが作品に奥行きを与える。

余計な説明が無いことで、テンポは加速し、緊張感が増す。


姿の見えない異常者や人外を相手にするのとは違う、人間対人間の生々しさ。

引き込まれました。


最終評価 A




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March 25, 2018

ゴースト・イン・ザ・シェル



2017年製作

「攻殻機動隊 GHOST IN THE SHELL」の実写映画化。




ネットが深化し、人の暮らしの隅々にまで入り込んだ未来。
人は肉体を機械化(義体化)し、直接ネットと脳を接続することさえも可能になった。

全身義体の第一号となった少佐(スカーレット・ヨハンソン)は、公安9課のチームリーダーとしてサイバーテロと戦う最前線に身を置く。

最高の技術が詰まった肉体は、戦士として最強の力を少佐に与えた。
だが、時々見えてしまう幻覚や、靄がかかったような過去の記憶に少佐の心はかき乱される。

自分は誰なのか。
本当に人間なのか。

自分が破壊したゲイシャロボットと自分は何が違うのか・・・。

ロボットと人間の境界で彷徨う少佐。

そんな時に出会った謎のテロリスト・クゼ。
他人の脳さえもハッキングして利用するクゼを追う中で、少佐は自分の過去を奪った本当の敵を知ることになる・・・。



主役の少佐(素子ではない)役にスカーレット・ヨハンソン、公安9課の課長・荒巻にビートたけしを起用。

人が見えなくなる光学迷彩や電脳世界に直接ダイブするサイバーな世界観は、以前であれば実写化不可能だったけどCG技術の発達で比較的安く作れるようになったから作ろうぜ。な、作品。

攻殻機動隊から光学迷彩・少佐・公安9課・荒巻・バトーといった、言葉と設定だけを借りてきて、ストーリーは改変しまくった別物。
まぁ、素子をスカーレット・ヨハンソンが演じてる時点で、別物と割り切っているのだけど。

それなのにちょいちょい原作や前作からシーンを借りてきたりしているのが、微妙にイラっとくる。

これだけ改変してしまうなら、いっそ世界設定だけ使って公安9課や素子から完全に離れた作品にすればいいのに。

攻殻機動隊だからって和のテイストを盛る必要もないし。
しかも、フジヤマ・ゲイシャな間違った方向の和テイストが更にイラっとする。

まぁ、日本の実写映画化が壮大なコスプレ大会になりがちなのに比べれば、マシではあるが。
ストーリーもキャラクターも世界観もダウンサイジング感が強く、単純に残念。


個人的に一番の違和感はビートたけし演じる荒巻だった。

ここだけ非常にコスプレ感が強く、キャラクターもビートたけしと合ってない。
しかも、公安9課の頭脳のハズが、かなり前線で戦う武闘派になってしまっている。

戦う荒巻・・・、うーん、まぁ別物ベツモノ・・・と思うしかなし。



でも、ま、分かってた。

パッケージ見た段階、いや、実写化って話を聞いた時からダメだろうと思ってて、分かって観てるんだから仕方ない。
一応、中身を確認したいと思っただけだから。

フェアなフォローを入れておくとすれば、元々自分が他の攻殻機動隊作品のファンだから、最初から実写化にネガティブなイメージがあることは否めない。

まぁ、じゃあ攻殻機動隊のファンじゃない人間が観るのかって言う疑問もあるが。


最終評価 C+



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夜は短し歩けよ乙女




「こうして出逢ったのも、何かのご縁」

森見登美彦の「夜は短し歩けよ乙女」の映画化作品。

京都の男子大学生・私は、黒髪の乙女・彼女に恋をした。
いわゆる一目惚れだ。
私が彼女と恋仲になるべくとった作戦は、他人の目から見たら迂遠極まる「ナカメ」作戦であった。

なるべく、かのじょの、めにとまる。
その迂遠極まる努力を積み重ね、彼女と言う城の外堀を埋め続ける私。

外堀を埋め、外堀を埋め、いつまでも外堀を埋め続け、今宵も彼女の目にとまるべく夜の町を歩く彼女を追うのだった・・・。

そして一方、黒髪の乙女は「お酒が飲みたい。」という熱烈な思いに駆られ、単身で魅惑の夜の大人世界へと乗り込んでみることにしました。
めくるめく大人世界の光にわくわくして、二足歩行ロボットのステップを踏んでしまうのです。


私と彼女の2つの目線が交互に入れ替わりながら、2人の周囲で様々な出来事が起こり、様々な人たちと出会っていく。

錦鯉養殖業者の男・東堂。
酒を愛し、鯨飲する歯科助手の美女・羽貫。
羽貫の連れであり、謎めいた風貌と言動で天狗かどうかと疑われる男・樋口。
高利の金貸しと恨まれる一方、不思議と気前の良い老人・李白。

その他にも、パンツを履き替えない願をかけた男・パンツ番長などなど。

夜の飲み屋街で彼女を探し、古本市で彼女を探し、ゲリラ演劇やらゲリラ炬燵で混乱する大学祭で彼女を探し、必死に彼女の目に留まっては外堀を埋める私。

夜の飲み屋街で様々な人に出会い、古本市で懐かしの絵本を探し、大きな緋鯉のぬいぐるみを当てたりゲリラ演劇に出演し大学祭を楽しむ私。

彼の目には彼女しか映らず、乙女の目には世界の様々がオモチロク、彩り豊かに映る。

そして、乙女の目の片隅にいつも映った先輩は、いつしか乙女の心の片隅に・・・・?


森見登美彦の名作小説を映画化。
映画化したのは、同じ原作者の「四畳半神話大系」をアニメ化した製作スタッフ。

あの不思議な世界観をよくぞ見事に映像化したものだと感心する。

サブカル・オブ・サブカルな作風と内容の作品だが、なんと第41回日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞を受賞している。

ただ、原作を読んでいない人にどこまで内容が伝わるかは、かなり疑問。
人物背景や展開がかなり独特の世界観を持つこの作品を、更には2時間にまとめるために内容をはしょったり、変更したり。
アニメ版の四畳半神話大系を観て世界観に慣れている、もしくは原作を知っている人なら、ストーリーを追えるけれども、一見さんにはちょっとしんどいだろう。

逆を言えば、この世界観に心を掴まれている人には、たまらない作品であるということだ。
だからこそこの作品は、一般ウケではないサブカルチャーの粋だと、自分は思う。

それでいいと思うし。
何でもかんでも一見さんまで面白い作品ばかりなんて、クソつまらない。

素晴らしく趣味に突き抜けた作品でした。


個人的には、全ての物語を無理に一夜の出来事に詰め込んでしまった変更が残念というか、不要だったと思う。
サークルの先輩の結婚を祝う会から飲み屋徘徊、李白さんとの飲み比べ、古本市、大学祭、風邪の大流行まで、その全部が一晩の出来事なんて、いくらなんでも無茶苦茶だ。

最終評価 B+



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March 17, 2018

映画ドラえもん のび太の宝島

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2018年・日本映画

前作の「のび太の南極カチコチ大冒険」から娘と劇場で観ている映画ドラえもん。
今年も劇場で鑑賞です。


「僕らも本物の宝島に行こうよ!」

夏休みのある日。
出木杉君が読む「宝島」に感動したのび太は、自分たちも宝島を探しに行こうと盛り上がる。

だが、ジャイアンやスネ夫は、のび太を笑う。
「いまの時代に未知の宝島があるなんて、本当に信じてるのか?」

いつもの通りにドラえもんに泣きついたのび太は、秘密道具「宝探し地図」を渡される。
地図は、付属のペンで指し示した場所に宝があれば教えてくれる。
だけど、1ミリでもズレていたら反応しない。
とてもではないが夢物語だ・・・。

そう説明するドラえもんだが、のび太の指し示した場所に地図が反応する。

それは日本の南。
太平洋上に海底火山が生み出した新島だった。

宿題を片付けろと言うパパとママを振り切り、のび太は宝島を目指す冒険に出るのだった・・・・。



前作は「ザ・定番の劇場版ドラえもん」でしがが、今回はなんだか新しい切り口の映画ドラえもんでした。
劇場版になると急に頼れるイイヤツになってしまうジャイアン・・といった映画ドラえもんの定番から少し外れて、どちらかと言うとテレビ版というより原作?に近い雰囲気という印象を受けました。

表情やギャグのテンポが、よりマンガ的というか。

設定にも新しさを感じました。
今回の敵である時空海賊は、ドラえもんより未来から来ている存在だという事。

いつもなら未来の秘密道具を持っているドラえもんが、基本的には優位。
相手の常識を秘密道具で上回って解決に持っていく。
でも、時空海賊たちはドラえもんより未来の技術を持つ。
空気砲の弾が斬られたり、通り抜けフープが使えなかったりと、ドラえもんの秘密道具の力が無効化されたりもする。

そこで頼りになるのがキャラクターの人間力。

窮地に陥ったドラえもんを助けるため、震える膝をグッと押さえて駆け出すのび太とか。
秘密道具のアドバンテージに頼らないのび太自身の行動や言葉が、大人が見ててもナカナカに感動的。


ちゃんと最後まで寝ることもなく、楽しむことが出来ました。

まぁ、敵との最終決戦で肝心のところがギャグ解決とか、もう少し御都合を抑えて貰えたら・・・なんて、ドラえもんに言うのは野暮ですかなぁ。

しかし、石頭で宇宙船の外殻が割れるってどうなのよ。超未来技術とちがうんか。


最終評価 B+



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January 04, 2018

君の名は。

君の名は。
神木隆之介
2017-07-26


2016年・日本映画

新海誠 監督作品


東京ので暮らす立花瀧はある日、目が覚めたら田舎暮らしの女子高生だった。
あまりにもリアルな夢。
困惑しながら、とりあえず胸を揉んでみる。

困惑に満ちた一日が過ぎ、翌日目が覚めると、普通に自分の身体に戻っていた。
変な夢を見た。
それだけだったハズなのに、周囲の様子がおかしい。

「昨日のお前は変だった。」
口を揃える友人やバイト先の先輩たち。

一体どういうことなのか。


飛騨高山の町で暮らす宮水三葉はある日、目が覚めたら東京暮らしの男子高校生だった。
あまりにもリアルな夢。
困惑しながら、東京の高校生活を楽しんでみる。

困惑に満ちた一日が過ぎ、翌日目が覚めると、普通に自分の身体に戻っていた。
変な夢を見た。
それだけだったハズなのに、周囲の様子がおかしい。

「昨日のみつはは変だった。」
口を揃える友人や家族。

一体どういうことなのか。


夢の中の出来事の様に、目覚めてしまうと記憶は曖昧になる。

だけど、間違いなく入れ替わっている。


繰り返される入れ替わり。
瀧と三葉は互いの生活が侵されないようにルールを決め、携帯にその日にあった記録を残す。

だが、突然に入れ替わりが終わってしまう。

薄れていく記憶。
交換したはずの電話番号は繋がらず、瀧はかすかな記憶を頼りに町の風景を描き、その風景画だけを頼りに飛騨高山へと向かった。

そこで瀧は、三年前の隕石落下によって、三葉の住んでいた町が消滅していたことを知る・・・・。



2016年に話題をさらった「君の名は。」地上波初放送を観ました。
あまりにも話題になった作品で、リアルタイムでの上映前に流れていたトレーラーの知識と漏れ聞こえてくる感想でのネタバレに

「もう、べつにいっか。」

と思ってしまっていました。

残念、この2年の自分。

かなり自分の好みストライクだったです。「君の名は。」
話題作の後追い感想は、かなり恥ずかしいのですが、好みだったんだから仕方ない。

ぼんやりネタバレしてるのに、最後まで目が離せずに観きってしまいました。


ストーリーの核は「秒速5センチメートル」と同じ「遠くにいて、会いたいけど、会えない。」もどかしさ。
秒速では、幼さや距離だけが会えない理由だったけれど、この作品では互いに記憶が曖昧になってしまう夢だというのが大きな要素になってくる。
単に距離だけの問題だと「グダグダしてないで会いに行けよ。」となってしまう所が、そうすんなり会いに行かない理由に納得が出来る。

しかも秒速ではリアルで寂しいラストだったものが、ハッピーエンドになっていて。
「そうそう!これが観たいんだよ! 観たかったんだよ!」と。

もちろん美術は噂通りに素晴らしいのですが、その美術にこだわりまくった「言の葉の庭」は美術ばかりに目が行って、中身に共感するのがナカナカ難しかった。
それが、この作品では美術はあくまで美術として、ストーリーを盛り上げるための脇役に落ち着いている。

そして新海監督は、根っこの描きたいモノがファンタジーじゃなかったんだろな。
思いっきりファンタジーに振った「星を追う子ども」は、あまりにも宮崎駿を意識しすぎただけの凡作だった。
でも、ここでファンタジー要素と自分の作風との距離感を理解したんだと思う。

ストーリー、美術、ファンタジー。
男女の肉体精神入れ替わりという「転校生」ばりのベタなファンタジーシチュエーションと、過去の自分の作品が犯してしまった「一般ウケしない理由」を全て昇華させて再構築していく。

過去の作品を観てくると、「君の名は。」の断片がみてとれる。
そして、その断片が良い形になって戻ってきて、ハマったことがわかる。

ストーリー的には、御都合とかムチャクチャしてる部分とかあるんですが、それをテンポでねじ伏せていく手腕も上手い。
元々、映像と音楽を融合させるのが上手だった監督と、作品にマッチする楽曲を提供したRADWINPSの幸福な出会いに感謝。

まさに新海誠監督の映画監督としての成長、そしてタイミングが生み出した作品なのでしょう。



確かにこりゃあ、ヒットするわ。

流行るものには、それなりの意味があるなぁ。

やっぱ自分で観てみないとだな。
とりあえず、オリジナル版を観てみたい。


たぶん、過去からの引き出しを全部使ったであろう「君の名は。」。
次の作品で、新海誠監督の真価と今後が問われるんだろうなぁ。


最終評価 A+



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January 03, 2018

星を追う子ども



2011年・ 日本映画

新海誠 監督作品

父を亡くし、母と2人で田舎に暮らす明日菜は、山の中に作った秘密基地で鉱石ラジオを聞いたりしながら放課後を過ごしていた。

そんなある日、秘密基地に向かう途中で熊に似た謎の巨大生物に襲われる。
巨大生物から明日菜を救ってくれた少年・シュンは、聞いたこともない場所・アガルタから来たと言う。

翌日、再会を約束して別れたシュンが、遺体で発見されたと聞く・・・


創生から人類を導き続けてきたアガルタ文明。
それはイザナミを生き返らせようとイザナギが旅した黄泉の国であり、それ以後も支配者たちが力の源とした場所。

だが、度重なる人類の侵略にアガルタは疲れ、世界を閉じた。

死んだ妻を生き返らせたい。
その願いでアガルタの奥地を目指す森崎と共に旅をする明日菜。

旅の中で、明日菜は自分の中の本当の願いを知る。


森の中の秘密基地。
少女の肩に乗るネコっぽい生き物。
胸に下げた青い石を使った鉱石ラジオ。
熊っぽい巨大生物と、その動き。

他にも多々、多々、どこかで見た感が・・・

ナウシカ、トトロ、ラピュタ、もののけ姫、千と千尋。
宮崎駿作品全部のせといった演出と内容。

これはムスカ?
これはナウシカ?
これは飛行石?
これはハク?

むしろ、元ネタを想像する方に気を取られてしまうほど。
冒頭から怒涛のオマージュ押しに、これは流石にワザとだろなーと思う。
あえて宮崎駿作品全部のせで描いて、その先に行きたい?感じなんだろうか。

完全な無からの創造は出来ないにしても、元ネタが気になるほどの作り方をされると、作品に集中出来なくなる。

ストーリーも演出も別に悪い作品じゃないのに、もったいない。


最終評価 B−



know_the_base at 20:59|PermalinkComments(0)

秒速5センチメートル



2007年・日本映画

新海誠 監督 作品


「ねぇ、知ってる?
桜の花びらの落ちる速度って、秒速5センチメートルなんだって。」


小学校で出会った貴樹と明里。
図書館で過ごすことが多く、なんとなく似ていた2人は自然と惹かれ合う。

だが、中学進学の前に明里は親の都合で転校し、今は文通だけが2人を繋ぐ。

栃木のローカル線沿線に住む明里。
都内に住んでいる貴樹。
中学生には、逢いに行けない距離。

そして、今度は貴樹が親の転勤で鹿児島へ。

中学生の2人にとって無限とも思える距離へと離れてしまう。
貴樹の引っ越し前に、2人は会う約束をする。

だが2人の約束した日は、ダイヤの乱れる雪の日だった・・・。


3つの短編で描かれる、貴樹と明里の恋。

「桜花抄」
貴樹と明里の中学時代。
文通だけが2人を繋いでいた日々と、焦燥のなかで明里の待つ駅へと向かう貴樹が描かれる。

「コスモナウト」
鹿児島へ引っ越した貴樹を想う少女・花苗目線の物語。
高校3年生になり進路で迷う中、頭にあるのは中学で引っ越してきた貴樹への想いだけ。
だが、彼の中には知らない誰かが居て、自分がいない事を痛いほど感じている。

「秒速5センチメートル」
心のどこかに残った明里への想いを抱えたまま、大人になった貴樹。

いつでも探してしまう、どこかに君のかけらを
向かいのホーム
路地裏の窓
こんなとこにいるはずもないのに

桜の舞う中
明里への想いが、終わったことを噛み締める。



中学生の時ほど純粋に恋することって無いよなぁ。

おそらく貴樹と明里は、だいたい同世代で。
中学1年生の遠距離恋愛が文通だったり、腕時計がG-SHOCKだったり、何かとノスタルジーをくすぐられました。

もの凄く青臭い恋愛映画で、親の都合で引っ越しをしたり、片想いを伝えられなかったり、初恋の女の子に会いに行けなかったり
何というか、もっとやりようあるだろ、とか、色々言いたくなる。

そして、雪の中、深夜まで女子中学生が駅で待ってたり、雪の夜に2人で道端の納屋で夜を明かしたり

いやいや、と思ったりもする。


でも、まぁ、そういうことじゃないんだろなぁ。とも思う。

多分、小中学時代の「桜花抄」は、貴樹の中で思い出補正が入った記憶で、美化された初恋なんだよな。と。
で、劇中歌の「One more time , One more chance」の使い方が上手くてズルい。

こんなんされたら、こっちだって中学時代の思い出補正なアレコレを思い出すわ。

まぁ、作り手の狙い通りっちゅうことや。


最終評価 B +



know_the_base at 05:34|PermalinkComments(0)