英霊
March 03, 2009
靖国 YASUKUNI
明治2年より、天皇の為に死んだ「英霊」を祀る靖国神社。
終戦記念日8月15日。その神社には様々な人々が集まる。
大きな日本国旗を捧げ、参拝する老人。
旧日本軍軍服に身を纏い、行進を行う集団。
ラッパを鳴らし、行進する集団。
「天皇陛下万歳」を叫ぶ人々。
君が代を歌う集団。
戦没者集会に訪れる国会議員。
そして、それに抗議をする近隣国の若者たち。
その人々の姿に「意見」をさし挟まず、記録したドキュメンタリー。
監督、リー・イン。中国映画。
この映画は、「賛成」も「反対」も「反日」も「賛美」も無い、案外にフェアなドキュメンタリーになっていて、好感が持てる。
逆を言えば、特に主張の薄いこの内容で、何故にあんなに話題になったのかが疑問。
微妙な日本語の中国人監督が日本で撮ったドキュメンタリーで、更には微妙な編集故に、意見を盛り込めなかった感がある。
まぁ、その力量不足がかえってフラットな視点として、良い効果を与えたと言える。かな。
戦争は、人を殺す。国家的に国民を使い、他国の人間を殺す。
そこには当然、殺す人と殺された人がいる。
殺した人は自国で英雄視され、殺された人の国では逆になる。
ただ、どちらの国にも殺された人の家族は居て、その殺された人への想いは国を越えても変わらない。
その怒りも嘆きも消えない。
彼らは、どこかに怒りや悲しみの矛先を向けるか、癒しを求めるかせざるを得ない。
個人が他人を殺せば、その個人に責任を問うことが出来る。許す事で心の平安を得る事が出来る。
だが、国と言う、集団生活を生きる為の都合によって生み出した「概念」が殺せば、やり場がない。
そのやり場のない矛先や癒しの象徴として、靖国神社がある。
それだけの事だと僕は思う。
僕個人として、そこに賛成も反対もない。 それは当たり前。仕方ない。
ただ、それだけ。
流石に、戦争で死んだ何万という人の家族全てに 「その「悲しみ」は自分の中で昇華して。」 とは言えない。
ただ、仕方ない。
殺したんだから恨まれるのは仕方ないし、殺されたんだから、悲しむのも、怒るのも仕方ない。
あとは時間が経つのを待つだけしか出来ない。世代を重ね、実際に死んだ人と具体的な繋がりが無い世代に変わっていくのを待つしかない。
「自分は正しい。」なんて思った時に、人は最大の間違いを犯すんです。
そんな人間レベルの「正しい。」を他人に強要するのはやめましょう。
あ、あと、コミュニティ依存はほどほどに。
酒は飲んでも飲まれるな。
コミュニティ、利用はしても、利用されるな。
最終評価 B