March 12, 2016

灰と幻想のグリムガル level,1




ささやき、詠唱、祈り、目覚めよ

灰と幻想のグリムガルlevel,1

十文字 青 著
オーバーラップ文庫


気付くと、そこは暗闇の中。

ここがどこで、自分が何者で、今までは何をしていたのか。
そんな事を考えると、雲を掴むように記憶にモヤがかかってしまう。
分かるのは、自分の名前くらい。

ある時、ハルヒロは自分と同じような状況のヤツラと一緒に、グリムガルと呼ばれる地に居た。

流されるままに訪れた義勇兵団事務所。
ブリトニーと名乗る所長は、ハルヒロたちに見習い義勇兵になるか、ここを出て行くかを選ばせる。

右も左も分からない状況でハルヒロたちに選択肢は無い。
少しの金を貰って見習い義勇兵となって、事務所を放り出された。

一緒にグリムガルに来た強そうなヤツラは、ハルヒロたちを残して去っていった。

残されたハルヒロたちは、肩を寄せ合い、なんとか見習い義勇兵としての一歩を踏み出すのだった・・・。



2015年度の冬アニメの中で、なんとも心の琴線にクリーンヒットした「灰と幻想のグリムガル」の原作に手を付けました。


このグリムガル、いわゆる剣と魔法のファンタジー世界で、未熟な冒険者(義勇兵)として踏み出した主人公たちが成長していく典型的なストーリーです。

ただし、主人公たちは、この世界の中で主人公ではありません。
完全に脇役です。

どう考えても、世界の中心から遠く離れた有象無象のパーティのひとつでしかない。

普通のファンタジーなら最弱の敵であるゴブリン一匹に四苦八苦し、6人の仲間でやっと倒す。
しかも、格好良さのかけらもない泥臭い感じでなんとか倒す。

一巻の最後まで読んでも、ずっとゴブリンとしか戦わない。
街の他の義勇兵から「ゴブリンスレイヤー」なんて呼ばれるくらい、ゴブリンとしか戦わない。

そして、ゴブリン一匹倒して幾らの収入、その金で何とか生活費を工面し、食事をし、貯金をして何とか装備を整え・・・・と、地味に地味に話は進む。

で、そんな地味で、盛り上がりもない展開の中、最弱の敵のハズのゴブリンに大事な仲間を殺されてしまう。
というか、殺させてしまう。

当然、生き返るわけもない。

こんな地味なファンタジー、今まであったか?
そんな疑問さえ湧いてくる。


でも、このリアルにリアルにファンタジー世界を表現した「灰と幻想のグリムガル」は、完全に僕の心にヒットしました。

ドラゴンクエストやウィザードリィから始まるあとがきの内容で、著者は完全に同世代だと確信してます。
そして、影響を受けた小説が「ロードス島戦記」と「隣り合わせの灰と青春」とか。

「作者は僕か!」と叫びたくなりました。


そして、このグリムガルで描かれていた主人公たちに、僕は思い当たるフシがあるんです。

良いパラメータをもつキャラを作る為に、作っては消し、作っては消しを繰り返す。
自由度の高いRPGで、最初のキャラクターメイキング作業でお馴染みの光景です。

でも、その消されてしまった凡庸なパラメーターのキャラクター達は、一体どこに行くんだろう?

そんなコトを考えたことがありました。

ドラゴンクエストで言えば3のルイーダの酒場で、いつまでも冒険に連れて行って貰えない戦士や格闘家は、いつも何をしているんだろう。
ウィザードリィの訓練場で消えていった無数の凡庸冒険者たちは、一体どこに行くんだろう。

生きていくには、ただ酒場でくだを巻いていれば良いと言うわけにはいかない。
プレイヤーの目に触れない場所で、黙々とスライムを倒しているのかも・・・?

グリムガルは、そんな僕が空想の中で抱えた疑問への、ひとつの答なのかも知れません。

魔王に挑戦するでもなく、お姫様を助け出すでもなく、ただ街の周辺で生活の為にモンスターと命がけで戦う。
そんな冒険者たちにも、喜びも悲しみもあり、成長もある。

冒険者としては歩みの遅いハルヒロたちの、今後が気になります。



「実兄に特に薦めたいシリーズ発見です。兄、この作品は我々のツボだぞ!間違いない!」



know_the_base at 01:16|PermalinkComments(0)TrackBack(0)