2019年01月01日

特許文書を読み書きする能力は、文系か理系のどちらに属するか? はてなブックマーク - 特許文書を読み書きする能力は、文系か理系のどちらに属するか?このエントリーをはてなブックマークに追加

日本では高校生くらいから文系と理系に分かれますが、仕事をしていると、高校のときの文系科目とは何だったのかと思うことがあります。

例えば、特許文書の調査・作成をする際には、文章の読解力と作成能力が必要になります。こういうことこそが国語の能力のはずなのですが、文系の人が得意なことなのかというとそうでもないように感じます。むしろ理系の人の方が向いているかもしれません。実際に、特許を読み書きする仕事をしている人は大企業の研究所に多いのですが、そこは理系出身の人ばかりです。

***

(1) 特許文書を読むための文章の読解力

特許文書の特許請求の範囲は、特許の権利の範囲を定めるもので、厳密性が重視されます。

特許請求の範囲は、以下のような長い文章になることがあります。

(例)特許第4024116号【請求項1】

  患者の自宅等に配置されたコンピュータ端末と、医療機関や研究施設等に配置されたコンピュータ端末と、複数のハードディスクを備えた医用データ管理サーバとが、インターネットや専用線等の通信手段によって接続され、前記端末のそれぞれから、前記医用データ管理サーバに格納される医用データにアクセス可能ならしめる医用データ管理システムであって、
前記医用データ管理サーバが、
該医用データ管理システムに会員登録された患者の会員情報及び患者以外の医師、医師以外の医療従事者、研究者、医療機関等の会員情報が保存される会員情報ファイルと、
患者の医用データが登録、保存される医用データファイルを有し、
かつ、前記医用データファイルに登録、保存された個々の医用データそれぞれにその医用データの管理に必要な情報が保存される医用データ管理ファイルが付随されてなり、
前記会員情報ファイルには、患者の会員情報として少なくとも会員IDや会員の個人識別情報、ログイン用認証手段及びアクセス権追加用認証手段に関する情報が記録され、また患者以外の医師、医師以外の医療従事者、研究者、医療機関等の会員情報として少なくとも会員IDや会員の個人識別情報及びログイン用認証手段に関する情報が記録され、
また、前記医用データファイルに保存された患者の各医用データに付随する医用データ管理ファイルには、アクセス権に関する情報として、当該医用データの患者の会員情報と、前記会員情報ファイル内の会員情報に基づいて患者会員に付与されたアクセス権追加用認証手段の使用によってアクセス権を認証された医師、医師以外の医療従事者、研究者、医療機関等の会員情報とが記録され、
前記コンピュータ端末は、ログイン画面、患者情報検索画面、医用データ一覧画面、医用データ詳細閲覧画面の表示手段を備え、前記医用データ一覧画面に表示された医用データの一覧から、一つの医用データを選択する入力を受け付ける医用データ選択手段を備え、
前記医用データ管理サーバは、
患者会員の会員IDとアクセス権追加用認証手段が会員情報ファイルに登録されたものであるか照合する会員情報ファイル照合手段と、
会員IDが、選択された医用データの医用データ管理ファイルにアクセス権を認証された会員情報として記録されているものであるか否か照合する医用データ管理ファイル照合手段を備えた医用データ管理システムにおいて、
  上記医用データ管理システムにおける前記医用データ管理サーバは、前記患者の自宅等に配置されたコンピュータ端末、又は前記医用機関等に配置されたコンピュータ端末のログイン画面からログインのために入力された医師等の会員情報である会員IDとログイン用認証手段が、前記会員情報ファイルに登録されたものであれば、該医用データ管理システムへのログインを許可し、
  患者会員の会員情報の入力を促し、前記コンピュータ端末の患者情報検索画面から入力された患者会員の会員IDとアクセス権追加用認証手段が会員情報ファイルに登録されたものであるか会員情報ファイル照合手段を用いて照合し、前記患者会員の医用データファイル内の医用データのうち一覧表示するためのデータを抽出し医用データ一覧画面としてコンピュータ端末に表示し、前記医用データの一覧からアクセスしようとする医用データが選択されると、前記ログイン時に入力された会員IDが、該医用データの医用データ管理ファイルに記録されているものであるか否か医用データ管理ファイル照合手段を用いて照合し、
  (1)前記会員情報ファイル照合手段の照合結果及び、前記医用データ管理ファイル照合手段の照合結果から、該当するデータが存在する場合には、当該医用データを医用データ詳細閲覧画面としてコンピュータ端末に表示し、
  前記会員情報ファイル照合手段の照合結果から該当するデータが存在する場合であって、前記医用データ管理ファイル照合手段の照合結果から、該当するデータが存在しない場合には、当該医用データのログイン時に入力した会員IDを患者会員の医用データ管理ファイルのアクセス権が認証された会員情報として追加記録し、当該医用データを医用データ詳細閲覧画面としてコンピュータ端末に表示する一方、
  (2)前記会員情報ファイル照合手段の照合結果から該当するデータが存在しない場合であって、前記医用データ管理ファイル照合手段の照合結果から、該当するデータが存在する場合には、当該医用データを医用データ詳細閲覧画面としてコンピュータ端末に表示し、
  前記会員情報ファイル照合手段の照合結果から該当するデータが存在しない場合であって、前記医用データ管理ファイル照合手段の照合結果から、該当するデータが存在しない場合には、医用データ詳細閲覧画面へのアクセスを禁止することを特徴とする医用データ管理システム。

***

(2) 特許文書を書くための文章の作成能力

特許請求の範囲の文章を作成するときは、権利化されたときに、他社が発明を真似する抜け道がないように注意深く言葉を選ぶ必要があります。

(例)特開2018−055353号公報【請求項1】

 電子メールに設定された送信先を示す情報を取得する送信先取得手段と、
 前記電子メールの本文と添付ファイルとからそれぞれ送信先を示す情報を取得する宛名取得手段と、
 前記送信先取得手段により取得した情報と、前記宛名取得手段により取得した情報とが示す送信先が、それぞれ同一の送信先であるかを判定する判定手段と、
 前記判定手段により同一の送信先であると判定された電子メールを送信する送信制御手段と、
 を備えることを特徴とする情報処理装置。

上記の4行目を

 前記判定手段により同一の送信先であると判定された電子メールのみを送信する送信制御手段と、

としてしまった場合、判定手段によって同一と判定されないものを送信する例外が一つでもあるものをカバーしなくなってしまいます(したがって、上記の特許を権利化できたとしても、他社に真似された製品を作られてしまします)。

また、

 前記判定手段により同一の送信先であると判定されたときに前記電子メールを送信する送信制御手段と、

としてしまった場合、判定手段によって同一と判定されるものを送信しない例外が一つでもあるものをカバーしなくなる可能性があります(ただし、微妙なので実際には裁判で判断されることになると思われます)。

***

特許文書を作成するためには、(1)のような文章を読めて、(2)のような地雷を注意深く避けて文章を作る能力が必要です。

私は、文章読解能力と文章作成能力を鍛えるのは、高校のときの国語の勉強よりも、プログラミングの経験を積む方が役に立つのではないかと考えています。

プログラミングによって動くものを作るということは、仕様書(もしくは頭の中の仕様)の中で曖昧になっていることを決めていくということでもあります。動くものがあるということは、すべての入力に対して何らかの出力がなされるはずですので。

したがって、プログラミングの経験を積んだ人は、仕様書を見たときにその中の曖昧な部分を見つけるのに慣れてします。例えば、(2)のような仕様が与えられた場合、プログラミングの経験を積んだ人は、「宛名取得手段が送信先を示す情報を取得できない場合はどうすべきか?」ということについて考えます。

こういう習慣が、文章を書くときの厳密さにつながると思います。

また、他人が作ったぐちゃぐちゃのソースコードを読む経験を積むと、上記(1)のような文章も読めるようになります。


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