2006年04月16日
マンモスの牙

マンモスの牙が実は借りものなんだと、最初に言いだしたのはサイだった。
彼はよほどマンモスの牙がうらやましかったらしい。
借りもののくせに威張っているのはズルいじゃないかと、
いまいましげにカワウソに言った。
サイはべつにマンモスの牙が借りものだなんて信じていたわけじゃない。
すこしだけ愚痴を言いたかっただけなんだ。
ところがカワウソは、まんまとこれを信じてしまった。
マンモスはズルいやつだと決めつけて、あちこちに言いふらしてまわった。
だからマンモスの牙が本物だと証明されたとき、
カワウソは嘘つきだということになった。
2006年04月02日
親方と弟子

「ばかやろう!」と、ビーバーの親方が怒鳴った。
「すみません!」と、ビーバーの弟子も怒鳴り返した。
それっきり二人は、もくもくと作業を続けていた。
そばで見ていた熊の子供は、
不思議そうに弟子に聞いた。
何が悪いか自分でわかっているのに、親方って必要なの?
2006年03月26日
いたずら子猫

いたずら子猫がピアノの鍵盤にとびのった。
おどろいたピアノが大きな音をたてたので、
子猫もおどろいてニャンと鳴いた。
ピアノはひどく腹をたてていた。
「あなたのニャンは音程が悪すぎる」
その日から子猫は、ピアノのレッスンをうけることになった。
僕はずっと、遊んでるんだと思ってた。
2006年03月19日
カザミドリと風

カザミドリと風はそれなりに仲はいいけれど、
カザミドリは風車ほどには、風のことを好きじゃない。
東をむきたいと言っているのに
無理やり西にむけられたりするんだから、
あたりまえといえば、あたりまえ。
風に悪気がないんだとしても、意見のぶつかることはある。
2006年03月12日
ハゴロモの妖精

ハゴロモの妖精は、本当は地上に居たかった。
草の上を転がったり、若木の枝にひっかかったり。
なんとかして地上に留まりたいと願った。
ふわふわと舞い上がるその姿は、みんなの憧れの的だったけれど、
地上を生きる多くのものが知らないことを、彼女は知っていた。
だから地上に居たかった。
2006年03月05日
二等辺三角形

「二等辺三角形を上手く描くコツは、
三角形を描いたあとに、
これは二等辺三角形だと、何度も自分に言い聞かせる事だ」
トノサマガエルの授業では、時々おかしなことを教えている。
2006年02月26日
砂浜の足あと

砂浜に足あとを残していく人は、
きっとセンチメンタルな人だろう。
波がほんの少し届かない場所につけられた足あとは、
ちいさなちいさな、願かけにもみえる。
海はやがてたくさんのものを静かに飲みこんで、
水へとかえしてしまうのだけれど、
だからこそまた、願いをかけられる。
2006年02月19日
ペリカンの郵便

ペリカンに郵便をたのむと、ときどきトンチンカンなことをやる。
ケンカしている友だちに、少しでも早く届けてくれといったのに、
結局3日かかったし、友だちの返事が届くのに、また2日かかった。
その頃になるともう、怒っているのがバカらしくなって、
返事を書くかわりに僕は、友だちに会いにいった。
ふたりしてペリカンの郵便は遅すぎるといって、仲直りをすることにした。
2006年02月12日
運のわるい男

とても運のわるい男がいた。
あらかじめ数字を宣言してサイコロをふると、
絶対にその数字がでない。何度やってもだめなんだ。
だから男はことごとく賭けに負けた。
ムキになればなるほど、負けばかりがふくらんだ。
あるときから男は、賭けの方法をちょっと変えることにした。
「よし、このサイコロで5がでたら君の勝ちだ、いいね?」
そういってサイコロをふるのだ。
運のわるい男は、こうやって運のいい男になった。
2006年02月05日
もぐらのおやじ その2

長靴をはいた猫の長靴は、雨具じゃないよね?
とモグラのオヤジがきいた。
違うとおもう、と僕は答えた。
田植え用に使うものでもないよね?ときくから
長靴をはいた猫が田植えをした話はきいたことがないよと答えると、
モグラのおやじはとても残念そうな顔をした。
長靴をはいた猫が田植えをしないことが、なぜそんなにも残念なのか、
僕にはさっぱり見当がつかない。