あけましておめでとうございます。
はじめまして、新人の川です。
年末年始の連休に南八ヶ岳は旭岳東稜に行ってきました。
自身初のアルパインクライミングだったこともあり詳細な記録を取る余裕もなかったため、
僭越ながら山行を通して感じたことを中心に書き綴っていきます。
以下は、新人が厳冬の八ヶ岳で洗礼を受けた記録になります。
■1日目(2024年12月31日) ~美しの森から出合小屋まで~
深夜1時に神戸を出発。ガラガラの名神と中央道を経て予定より早く美しの森駐車場に到着。
宴会セットのおかげで26kgを超えているであろうザックが不安だったものの担いでみると何とか大丈夫そう。
直近に歩荷トレを何度かやっておいて良かったと過去の自分に感謝した。
林道を歩き堰堤越えを何度も経て、あっという間に拠点となる出合小屋に到着。
小屋はもぬけの殻で(私たちと同じく旭岳東稜を登攀予定の2人組パーティが後からやってきたのみ)、
4テンでの4人テント泊から小屋での至極快適な宿泊に変更となった。
落ち着いた頃に寄せ鍋と飲酒による宴会が催され1日目は過ぎていった。
■2日目(2025年1月1日) ~旭岳東稜の登攀~
午前1時過ぎ、目が覚めるとすでに皆起床していたため、そそくさとシュラフから這い出る。
各自朝食を済ませ、予定通り3時に出発。期待と不安が入り混じる2日目がスタートした。
小屋から沢筋の右岸を少し辿り、前日に偵察していた尾根末端に取り付く。
途中1箇所で懸垂下降をこなし、5~10m程度のちょっとした岩場でお助け紐を出してもらいつつ高度を上げていく。
五段の宮直下の急斜面に差し掛かり、小屋で宿泊していた2人パーティが追いついてきたので先頭を譲ると、瞬く間に斜面の上部へと消えてしまった。
それに対して私はというと、落ちれば明らかにアウトな急斜面でアイゼンの前爪がキマっているかどうにも信用ができず、かなりもたついていた。
「こんな斜面でいったい何十分無駄にするつもりだ?」という思いが一瞬頭をよぎるものの、
落ちれば元も子もないので一歩ずつアイゼンとアックスが効いていることを確認しながら慎重に登る。
もはや「怖い」といった感覚ではなく「落ちないよう一挙一動に全集中しよう」という感覚だけが頭を支配していた。
私にとっての核心部をどうにか抜け、五段の宮の取り付きに這い出る。安堵感と快晴の八ヶ岳ブルーの絶景を前に緊張が途切れ、ただただ眠くなりそうな感覚だった。
その頃、ちょうど先行パーティが五段の宮に正面から取り付くところだった。安定感のある登りで強いクライマーだというのが伝わってくるのと同時に「こりゃ直登はムリだな」と直感する。
10時頃、藤本さんが左側の草付きより五段の宮登攀を開始。
三段目の少し下辺りにある太い潅木でロープをフィックスし、続いて私がアッセンダーでユマーリングのように登っていく。
終了点に辿り着き「こんなとこリードするなんて凄い!」と驚いていると、藤本さん曰く「支点たくさん取れるから簡単やで」とのこと。マジっすか…
2P目を登り終え時計に目をやると、すでに14時40分。日没のちょうど2時間前だった。
私のような不慣れなメンバーがいるとこんなに時間が掛かるのかと申し訳なさでいっぱいだった。
3P目と5P目はお互いコールが届かず、ロープがいっぱいまで伸びる。
5P目終了点で山頂直下に出るもついに日没を迎える。
そこから藤本さんが山頂までロープを伸ばしたところ、簡単なのでフリーで行けるとのこと。
セルフビレイを解除し最後の斜面を駆け登る。
登頂の喜びに浸れると思いきや、山頂に出た瞬間に長野県側から猛烈な風が襲いかかってきた。
そういえば雲の流れめっちゃ早かったなぁなどと思い返しながら、記念撮影の余裕もなく早々にツルネ東稜まで試練の稜線を辿り始める。
暴風で身体が持っていかれそうになり、氷の粒が顔面に突き刺さる。こりゃ厳しい。
快晴微風というこれ以上ない好条件で忘れかけていたけど、厳冬期の八ヶ岳にいるということを嫌でも思い出させられた。
何とかツルネ東稜に逃げ込むと嘘のように風が凪いだ。各々体勢を立て直し下降を開始する。
赤テープ豊富な尾根をダラダラと下り続け、21時頃にようやく出合小屋に帰還。
件の2人組パーティはすでに撤収していた。
もはや夕飯を食べる気力もなく、冷え切った体を温めるために熱燗を煽り、
申し訳程度のツマミを胃袋に収めてシュラフに潜り込んだ。
■3日目(2025年1月2日) ~下山~
7時前に目が覚め、昨晩食べる予定だったカレー鍋を作り始める。
出汁が効いたのか、いくらでも食べられるくらい美味しかった。
食後一息ついたところで、本日入山してきた2人組が入ってきたのをきっかけに下山準備を始める。
食料を消費したにもかかわらず入山時と重さが変わっていないどころか更に重くなったんじゃないかと思えるくらいザックが成長しており、
下山はお気楽ハイキングだと楽観視していた私の期待は粉々に打ち砕かれることとなった。
(1日目よりは歩行が多少楽だったので実際は軽くなっていたと思う)
下山後は小淵沢IC近くにある「塚治朗」でボリュームのある蕎麦をいただきました。
■まとめ
今回、旭岳東稜という私にとって分不相応とも言える場所から無事に帰ってこられたのは、
ひとえに経験豊富な先輩方のサポートがあったからであり、自身の実力不足をこの上なく痛感しました。
それと同時にアルパインクライミングの楽しさの一端を味わった気がします。(実際めっちゃ楽しかったです)
ご一緒させていただいた藤本さん、須川さん、岩瀬さん、本当にありがとうございました!
これまで以上にトレーニングに勤しんでまいります!