2019.4.11~13 杓子岳杓子尾根 メンバーT.I、I(記)
T.I君から杓子尾根の誘いを受ける。
尾根上部で双子尾根と交わり、杓子岳に突き上げる積雪期バリエーションルート。
メジャーではないが、記録を見ると最近よく登られているようだ。
4月11日(木) 雪
恵那山トンネルを越えると、辺りに雪が舞い始める。
昨年のような春山晴天を期待していたのに、先が思いやられる。
T.I君と話しつつ眠気を凌ぎながら、何とか白馬道の駅に辿り着き、仮眠する。
夜が明けても雪は降り続き、一向に止む気配はない。
念のため、途中でタイヤチェーンを付けて、漸く二股に到着する。
駐車場がなく、路肩も少ないため、駐車場所に苦労する。
何度かT.I君と山行を共にして、かなり体力に差があることが事前にわかっていた。
そのため、今回は、食料、ロープ、テントと共同装備の殆どをT.I君に担いで貰っての山行だ。
二股からの林道は、猿倉荘手前のヘアピンカーブまで除雪されており、順調に歩を進める。
猿倉山荘前で一息つき、スノーシューとわかんをそれぞれ装着する。
屋根に積もる雪の高さは2mを軽く越えている。
ここからはトレースなし。
この辺りの地形を把握している自分が先行するが、思った以上に雪が深い。
昨年GWに白馬主稜を登った時のトレースを考えれば、進み具合は雲泥の差だ。
大きな堰堤右岸付近から、ラッセルを交代する。
T.I君は、わかんで重荷を背負っている筈なのに、あっという間に差が開く。やれやれだ・・・
白馬尻に到着するも、降雪で視界が悪く目指す小尾根が判然としない。
本来であれば白馬尻付近左手の小台地が尾根取り付き地点だったが、行き過ぎてしまう。
行き過ぎたことに気付き、軌道修正して同尾根の北側急斜面から取り付く。
わかんでも膝上まで埋まるラッセルだが、T.I君はぐいぐい登って行くので、追い付くのにも一苦労だ。
尾根に上がり、途中からラッセルを交代するが、標高1,750mからの急斜面と深雪に足取りは遅々として進まない。
無心のラッセル中に振り返ると、遥か後方で手持無沙汰のT.I君が、のんびり休憩したり行動食を食べたりしている。
いつの間に!?と思わず笑ってしまったが、彼はそれでも余裕で直ぐに追い付いてこれるのだ。
当初は標高2,100mの緩傾斜地をC1と考えていたが、時間的にもきつくなったので標高1,930m付近の大きな岳樺の下を整地してテントを張る。
夜は、T.I君が仕込んで来てくれたキーマカレーとほうれん草炒めを美味しくいただく。
天候と積雪状況等を勘案し、C1ベースで白馬まで軽荷で往復することを決め、眠りに着く。
コースタイム:二股ゲート0850~1045猿倉山荘1110~1155長走沢~1330白馬尻~1420標高1,700m~1545標高1,930m付近C1
平面距離:8.45km、累積標高:(登り)1,424m、(下り)346m
4月12日(金) 曇り時々雪
テントから出ると晴天!のはずだったが、どうも天気は悪そうだ。
一晩経って少しは雪も締まるかなと思っていたが、そんなに甘くはない。
急な雪壁をT.I君は、相変わらずパワフルにラッセルして進んで行く。
追い付けるのは、雪の深みにハマってもがいている時と、立ち止まって待っていてくれる時位だ(笑)
標高2,100m付近は予想していたとおり、傾斜が緩くテント適地だ。
再び急な雪壁を登り、深い雪を何とか這い上がると標高2,260m付近の緩傾斜地に出る。
この辺りもテント適地ではなかろうか。
標高2,350m付近から美しいスノーリッジが続く。
トレースを付けながらリッジを進むのは楽しいが、やっぱりラッセルはしんどい。
標高2,450m付近から双子尾根と合わさるジャンクションピーク(標高2,560m)までは所々ナイフリッジが出てくる。
新雪で尖っているので、なかなか高度感がある。
ジャンクションピークは急な雪壁で、尾根に這い上がる時に雪の下がスカスカのブッシュで苦労する。
標高2,650m付近の傾斜がやや緩くなった平坦地で、先行するT.I君の足取りが何故か鈍り始める。
標高2,500mを越えた辺りから視界が極端に悪くなってきていたが、ここへきてホワイトアウト寸前状態となったためだ。
20分ほど待ってみたものの回復する気配がないので、相談のうえ自分が先行して先へ進むことにする。
右の斜面は切れ落ちており、雪庇も張っていたので近づかないよう、雪の切れ目に注意しながら進む。
標高2,660m付近に現れた小岩峰は、右から巻き上がる。
標高2,700m付近からの急な雪壁は、吹き溜まりで雪が深く、膝で雪を切り崩しながら(もがきながら)登ったのだが、高度約50m稼ぐのに約40分を費やす。(T.I君なら半分程度でクリアしただろうが・・・)
尾根は未だ続いているが、頂上は目前のハズ。
電池切れの自分に代わり、T.I君がラッセルして前進する。
ワンポイントの薄氷の乗った急な岩場を越えて少し登ると、立ちはだかっていた斜面がなくなって平坦となり、奥に待望の標柱が見えた。
景色が見えない分、標柱に北西方向に張り付いた巨大なエビのシッポが印象的だった。
残念だが、この視界不良と強風では主稜線歩きは選択肢に入らない。
2人でガッチリ握手した後、記念撮影し、そそくさと頂上を後にする。
安全を期して前述の岩場の下りをロープ確保し、急な雪壁を下った標高2,680m付近のコルで一息つく。
風雪で消えかかったトレースを辿り、時折バックスステップを交えながら、ジャンクションピークまで問題なく下る。
足取りの重い自分とは対照的にT.I君はナイフリッジも物ともせず軽い足取りでサクサク下って行く。
トレースは所々で消えていたのだが、標高2,440m付近の尾根分岐で方向を誤り右手の尾根を下ってしまう。
ここは自分が先頭で登っていたので、覚えておかなければならない箇所だったが、T.I君から相談を受けた時に誤った方向を下山路と判断していた。反省・・・。
ぐんぐん下った(100m位)後、どうも尾根の様子が違うことに気付き、T.I君を呼び戻して登り返す。
今度は間違わないよう慎重に地図と方位を確認しながら尾根を下り、標高2,100m付近で再度一服。
見上げると、漸く稜線が見える程度まで視界は回復していたものの強風は相変わらずだった。
テントに戻り贅沢時間、2人でのんびり、お菓子とお茶をいただきながら、思い思いに感傷に浸る。
T.I君が担ぎ上げてくれたおでんとうどんで温まり、お腹一杯になると、後は眠るだけだ。
寝袋に入りながらラジオを聴いていると、隣で微睡んでいたT.I君が、突然「寝ます!」と宣言して、秒殺で爆睡モードに突入するのだった。
コースタイム:C10600~0640標高2,100m~0730標高2,270m~0830標高2,500m~0910JP(標高2,560m)~1030標高2,700m~1135杓子岳山頂~1305JP~1420標高2,100m1450~1505C2
平面距離:4.02km、累積標高(登り)962m
4月13日(土) 快晴
目覚めると、外は風もなく空は雲一つない快晴だった。
味噌ラーメンを食べた後に珈琲で一服し、テントを片付けて下山を開始する。
素晴らしい天候と眩い景色に心を奪われる。(あ~今日の天気が昨日だったら!涙)
自分達の付けたトレースを辿り、真っ白な雪稜と真っ青な稜線を何度も何度も振り返りながら下る。
時間もあったので、T.I君に「雪訓する?」と話を振ると、「やりたいです!」との回答。
そんなこんなで猿倉山荘前で、少し雪訓をしてから長い林道を下る。
気温上昇と強い日差しに登山靴内が蒸れ蒸れになる直前で何とか二股に帰還。
林道は、ゲートから温泉付近まで長蛇の駐車縦列が出来上がっていた。
直ぐ近くのおびなたの湯で日焼けに悲鳴を上げながら汗を流し、白馬村でそばと定番の唐揚げで腹を満たして帰路に着く。
残念ながら!?デッド・オア・アライブ ドライビングテクニックは、ご遠慮いただきました(ホッ!笑)
コースタイム:C10610~0810猿倉山荘0935~1100二股ゲート
平面距離:7.87km、累積標高(登り)328m、(下り)1,223m
やはり大陸から寒気が入った時の後立山の天候は厳しい。
予想以上の降雪に見舞われ、展望なしのラッセルとハードな山行となった。
だが、自分達でトレースを付けながらの登りは、しんどいながらも充実した内容だったと思う。
相棒のT.I君には、重荷を担当して貰い、かつパワフルなラッセルで、かなり助けられた。
2人で無事、杓子岳ピークを踏めたことに感謝したい。
T.I君ありがとう!また、登りに行こう!!