2019年04月

2019.4.11~13 杓子岳杓子尾根

2019.4.1113 杓子岳杓子尾根 メンバーT.II(記)

  

T.I君から杓子尾根の誘いを受ける。

尾根上部で双子尾根と交わり、杓子岳に突き上げる積雪期バリエーションルート。

メジャーではないが、記録を見ると最近よく登られているようだ。

今回は悪天候と降雪の中、手応えある登降となった。
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411日(木) 雪

恵那山トンネルを越えると、辺りに雪が舞い始める。

昨年のような春山晴天を期待していたのに、先が思いやられる。

T.I君と話しつつ眠気を凌ぎながら、何とか白馬道の駅に辿り着き、仮眠する。

夜が明けても雪は降り続き、一向に止む気配はない。

念のため、途中でタイヤチェーンを付けて、漸く二股に到着する。

駐車場がなく、路肩も少ないため、駐車場所に苦労する。

準備を整え、0850ころに出発する。
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何度かT.I君と山行を共にして、かなり体力に差があることが事前にわかっていた。

そのため、今回は、食料、ロープ、テントと共同装備の殆どをT.I君に担いで貰っての山行だ。

二股からの林道は、猿倉荘手前のヘアピンカーブまで除雪されており、順調に歩を進める。

猿倉山荘前で一息つき、スノーシューとわかんをそれぞれ装着する。

屋根に積もる雪の高さは2mを軽く越えている。

ここからはトレースなし。

この辺りの地形を把握している自分が先行するが、思った以上に雪が深い。
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昨年GWに白馬主稜を登った時のトレースを考えれば、進み具合は雲泥の差だ。
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大きな堰堤右岸付近から、ラッセルを交代する。

T.I君は、わかんで重荷を背負っている筈なのに、あっという間に差が開く。やれやれだ・・・
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白馬尻に到着するも、降雪で視界が悪く目指す小尾根が判然としない。

本来であれば白馬尻付近左手の小台地が尾根取り付き地点だったが、行き過ぎてしまう。

行き過ぎたことに気付き、軌道修正して同尾根の北側急斜面から取り付く。

わかんでも膝上まで埋まるラッセルだが、T.I君はぐいぐい登って行くので、追い付くのにも一苦労だ。

尾根に上がり、途中からラッセルを交代するが、標高1,750mからの急斜面と深雪に足取りは遅々として進まない。

無心のラッセル中に振り返ると、遥か後方で手持無沙汰のT.I君が、のんびり休憩したり行動食を食べたりしている。

いつの間に!?と思わず笑ってしまったが、彼はそれでも余裕で直ぐに追い付いてこれるのだ。
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当初は標高2,100mの緩傾斜地をC1と考えていたが、時間的にもきつくなったので標高1,930m付近の大きな岳樺の下を整地してテントを張る。

夜は、T.I君が仕込んで来てくれたキーマカレーとほうれん草炒めを美味しくいただく。

天候と積雪状況等を勘案し、C1ベースで白馬まで軽荷で往復することを決め、眠りに着く。

 

コースタイム:二股ゲート08501045猿倉山荘11101155長走沢~1330白馬尻~1420標高1,700m1545標高1,930m付近C1

平面距離:8.45km、累積標高:(登り)1,424m、(下り)346m

 

412日(金) 曇り時々雪

テントから出ると晴天!のはずだったが、どうも天気は悪そうだ。

登攀具とアイゼンを装着し、杓子岳向け出発する。
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一晩経って少しは雪も締まるかなと思っていたが、そんなに甘くはない。

急な雪壁をT.I君は、相変わらずパワフルにラッセルして進んで行く。

追い付けるのは、雪の深みにハマってもがいている時と、立ち止まって待っていてくれる時位だ()

標高2,100m付近は予想していたとおり、傾斜が緩くテント適地だ。
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再び急な雪壁を登り、深い雪を何とか這い上がると標高2,260m付近の緩傾斜地に出る。
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この辺りもテント適地ではなかろうか。

標高2,350m付近から美しいスノーリッジが続く。

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トレースを付けながらリッジを進むのは楽しいが、やっぱりラッセルはしんどい。
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標高2,450m付近から双子尾根と合わさるジャンクションピーク(標高2,560m)までは所々ナイフリッジが出てくる。

新雪で尖っているので、なかなか高度感がある。

ジャンクションピークは急な雪壁で、尾根に這い上がる時に雪の下がスカスカのブッシュで苦労する。
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標高2,650m付近の傾斜がやや緩くなった平坦地で、先行するT.I君の足取りが何故か鈍り始める。

標高2,500mを越えた辺りから視界が極端に悪くなってきていたが、ここへきてホワイトアウト寸前状態となったためだ。
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20
分ほど待ってみたものの回復する気配がないので、相談のうえ自分が先行して先へ進むことにする。

右の斜面は切れ落ちており、雪庇も張っていたので近づかないよう、雪の切れ目に注意しながら進む。

標高2,660m付近に現れた小岩峰は、右から巻き上がる。

標高2,700m付近からの急な雪壁は、吹き溜まりで雪が深く、膝で雪を切り崩しながら(もがきながら)登ったのだが、高度約50m稼ぐのに約40分を費やす。(T.I君なら半分程度でクリアしただろうが・・・)

尾根は未だ続いているが、頂上は目前のハズ。

電池切れの自分に代わり、T.I君がラッセルして前進する。

ワンポイントの薄氷の乗った急な岩場を越えて少し登ると、立ちはだかっていた斜面がなくなって平坦となり、奥に待望の標柱が見えた。
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景色が見えない分、標柱に北西方向に張り付いた巨大なエビのシッポが印象的だった。
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残念だが、この視界不良と強風では主稜線歩きは選択肢に入らない。
2
人でガッチリ握手した後、記念撮影し、そそくさと頂上を後にする。

安全を期して前述の岩場の下りをロープ確保し、急な雪壁を下った標高2,680m付近のコルで一息つく。
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T.I
君は、満足気に、そして美味しそうに一服していた。
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風雪で消えかかったトレースを辿り、時折バックスステップを交えながら、ジャンクションピークまで問題なく下る。

足取りの重い自分とは対照的にT.I君はナイフリッジも物ともせず軽い足取りでサクサク下って行く。

トレースは所々で消えていたのだが、標高2,440m付近の尾根分岐で方向を誤り右手の尾根を下ってしまう。

ここは自分が先頭で登っていたので、覚えておかなければならない箇所だったが、T.I君から相談を受けた時に誤った方向を下山路と判断していた。反省・・・。

ぐんぐん下った(100m位)後、どうも尾根の様子が違うことに気付き、T.I君を呼び戻して登り返す。

今度は間違わないよう慎重に地図と方位を確認しながら尾根を下り、標高2,100m付近で再度一服。
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見上げると、漸く稜線が見える程度まで視界は回復していたものの強風は相変わらずだった。
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テントに戻り贅沢時間、2人でのんびり、お菓子とお茶をいただきながら、思い思いに感傷に浸る。

T.I君が担ぎ上げてくれたおでんとうどんで温まり、お腹一杯になると、後は眠るだけだ。

寝袋に入りながらラジオを聴いていると、隣で微睡んでいたT.I君が、突然「寝ます!」と宣言して、秒殺で爆睡モードに突入するのだった。

  

コースタイム:C106000640標高2,100m0730標高2,270m0830標高2,500m0910JP(標高2,560m)~1030標高2,700m1135杓子岳山頂~1305JP1420標高2,100m14501505C2

平面距離:4.02km、累積標高(登り)962m

 

4月13日(土) 快晴

目覚めると、外は風もなく空は雲一つない快晴だった。

味噌ラーメンを食べた後に珈琲で一服し、テントを片付けて下山を開始する。
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素晴らしい天候と眩い景色に心を奪われる。(あ~今日の天気が昨日だったら!涙)
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自分達の付けたトレースを辿り、真っ白な雪稜と真っ青な稜線を何度も何度も振り返りながら下る。

沢山のスキーヤーと登山者が快晴の稜線へ向けて登って行く。
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時間もあったので、T.I君に「雪訓する?」と話を振ると、「やりたいです!」との回答。
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そんなこんなで猿倉山荘前で、少し雪訓をしてから長い林道を下る。

気温上昇と強い日差しに登山靴内が蒸れ蒸れになる直前で何とか二股に帰還。
林道は、ゲートから温泉付近まで長蛇の駐車縦列が出来上がっていた。

直ぐ近くのおびなたの湯で日焼けに悲鳴を上げながら汗を流し、白馬村でそばと定番の唐揚げで腹を満たして帰路に着く。

残念ながら!?デッド・オア・アライブ ドライビングテクニックは、ご遠慮いただきました(ホッ!笑)

 

コースタイム:C106100810猿倉山荘09351100二股ゲート

平面距離:7.87km、累積標高(登り)328m、(下り)1,223m

 

やはり大陸から寒気が入った時の後立山の天候は厳しい。

予想以上の降雪に見舞われ、展望なしのラッセルとハードな山行となった。

だが、自分達でトレースを付けながらの登りは、しんどいながらも充実した内容だったと思う。

相棒のT.I君には、重荷を担当して貰い、かつパワフルなラッセルで、かなり助けられた。

2人で無事、杓子岳ピークを踏めたことに感謝したい。

T.I君ありがとう!また、登りに行こう!!


南アルプス 聖岳

南アルプス 聖岳               2019年4月12日ー14日   T


 深くて遠そうなので、どちらかと言えば避けてきた南アルプスに挑戦することにする。
最新のエアリアマップを買ってきて登れそうな山はないかと探すと、易老渡を起点として
聖岳~上河内岳~茶臼岳~易老岳~易老渡と戻る周回コースを辿ると一挙に百名山と二百名山、
三百名山と三つもゲットできるので、安易に計画を練り、提出する。聖岳は3013mも
あるが南ア最南端だし、雪も少な目ではないかと勝手に素人判断を下す。また、稜線上に
避難小屋が2か所あり、それらを繋げればテントも持たずに軽量化を図れるのではないかと
都合よく考える。あとは行くだけだ。事前に、計画が盛り過ぎではとの指摘を受け、心する。
 諸情報を集めると、2018年の台風被害でアプローチの林道も結構被害を受けている
ようなので気を付けねばならない。しかし単独だと出発するのに多大なエネルギーが要る。
 中止しても誰にも迷惑はかけない。しかし行くと決めたからには行くとして、家族に
呆れかえられながら車に荷物とアプローチ用のMTBを詰め込んで前夜21時いざ出発。
 しかし出発したのは良いが、関ケ原辺りで睡魔に襲われ、運転に困難を感じたのでSA
で仮眠する。約1時間。仮眠が効いたのかそのあとは順調に走り、一気に飯田ICを降り
、山道をくねくねと走り、下栗の里に到着。そこから又山道を走り、北又渡の所にある
水力発電所に到着。駐車場はあるが目指す芝沢ゲートの駐車場はまだ先だ。しかし眠い
ので適当な道端で車を停めて仮眠。
 翌朝目覚めると飯も食わずに林道を詰めあがる。しかし次第に道路崩壊が進み何やら
嫌な雰囲気が漂う。車で詰めあがると立派な芝沢ゲート駐車場が出現。アスファルトで
綺麗だが途中で万一土砂崩れがあるともう帰られないのでここは諦め700M程下の発電所
まで戻る。釣り師の人に出会う。飯を食いMTBを組み立て颯爽と出発。天気は曇り。
 芝沢ゲートから30分も漕ぎあがると突然林道が消えている。台風の洪水被害で道の
土台から消えている。ここでもはやMTBを諦め、残置して徒歩に変更。トホホ。
 崩れた斜面を慎重に超えていくとまたすぐに道が根元から消えている。そんなことを
繰り返しながら約1。5時間歩いてやっと易老度に到着。登山ポストがあるので計画を
提出しておく。そこから尚30分ほど歩くと便ヶ島広場に到着。以前は賑わっていたらしく、
キャンプ施設や自販機、流し場、残置された車や重機まであるが、今では最早すべてが陸の
絶海の孤島、道が消えていてはどうしようもない。ただ、子供たちが発していただろう
歓声が虚しく聞こえてくるような気がする。ああ、いいちこが呑みたくなってきた。
 そこから尚も川沿いの荒れた道を進むと人力ロープウェイが出現。これは面白いと
童心に帰って早速乗り込み、1/7システム位の滑車を使ったロープを引っ張って
対岸へと進む。初めはよかったが途中からは重くなり最後の方は渾身の力でロープを
引かないと前へ進まない。10分以上かかる。増水時以外は多少濡れても渡渉した方が
早そうだ。しばらく休んで腕力が回復してから出発。沢が両側から流れており、ルートは
中間の尾根上のようだ。北東方向へ快適に距離を延ばす。このスピードなら当初の計画通りに
いけそうだ。と思ったのは雪が現れるまでだった。途中。苔むした雰囲気の良い台地が
あり、はあーこれが地図上にある苔平だなと、勝手な素人判断を下す。となるともう
尾根の半分も来ているではないか。アラ還の割には何故こんなにペースが速いのだろうと
悦に入る。やがて雪が出てきて期待のトレースは予想通りどこにもない。そのうちツボ足
では潜るので、久々にワカンを付けることにする。最近はスノーシューが多かった。
 ワカンでも膝前後まで潜るので結構辛い。急激にスピードが落ちたのでここで初めて
スマホを出し、地図ロイドで現在地を確認する。とガビーン、尾根上の1/4も来ていない。
 狐に摘ままれたような気持で焦りながらラッセルを続ける。しかし焦っても焦っても
30分で300mも進まない。うーむこれはまずい。何かいい手はないかと考え、そう
だ飯を食えば馬力が出るだろうと考え食べるが馬力が出たのは2,3歩までだった。
 うーむワカンではなくスノーシューなら殆ど潜らないので遥かに楽だったろう。重い
ので家に置いてきたが。鹿の糞をチョコボールと間違え、赤茶けた樹皮を赤テープと
見間違う幻覚に襲われながら黙々と進む。道を自分で作らなければならないので神経を
使う。あ!足跡だと思ったら熊の足跡だったりする。そのうちに二足歩行を辞め四足で
踏ん張ると意外と潜らず快適に進むことを発見する。はあーこれは世紀の大発見かも。
 しかし直立猿人から進化した自分がここで四足歩行の獣に後退することに抵抗を感じ
誘惑を打ち消す。俺は人間なのだと。
 午後3時を過ぎたので、寝床の選定作業もしなければ。雪洞を掘るほどの雪もないので
ツエルトになりそうだ。嫌だなあ。何とか頑張れば聖平小屋迄辿り着けるのではないか?
 自問自答しながらシラビソの樹林の中を進む。夏なら小屋迄1時間ほどのはずだが。
 15時40分、遂に諦めビバーク決定。そうと決まれば急いでツエルトを張らねば。
 木と木の間にロープを渡しツエルトを張る。そして地面にありたけのシートを置く。
 飯を食って一寝入りしたら、あとは長い時間を狭さと寒さと戦うだけだ。外気とは薄いナイロン
一枚なので夜はマイナス5度位か。その点雪洞なら何故かはわからないが絶対氷点下に
ならないのでまだ暖かい。どちらにしても快適ではないので一晩で体力は奪われる。
 長い夜が明け太陽が昇ると暖かくなり思わず二度寝してしまい出発は7時となる。
 こうなったら周回縦走は諦め、何とか聖岳登頂を目指す。夏道コースタイム1時間を
約2時間半かけてやっと薊畑の稜線に出る。しかし相変わらずシラビソの樹林帯で
展望も優れず高揚もしない。ここは聖平小屋と聖岳への三叉路となっており、余分な
荷物は木にぶら下げて残置して荷物を軽くしてから聖岳へと北に上がる。このあたりから
雪質が変わり、妙に粘土のようにワカンやアイゼンに纏わりつく。2,3歩歩くたびに
ピッケルで叩いてやらないと、すぐに10センチほどの雪団子がつくので大変だ。
 アイゼンはペツルのパサックでアンチスノープレート付きだが。。雪の上でゴキブリ
ホイホイに捕まったような感じで進むが、南アルプスはスケールが他の山域とは違い
なかなかに遠い。しかも雪の斜面が微妙でアイゼン団子ではやや危険だ。しかもどこまで
行っても樹林帯から抜け出せない。いい加減に嫌気が差してきたので、小聖岳を目前に
しながら樹林帯がもう少し切れるというところで進退を考える。時刻は13時。この
ペースで進んでもまともな時間に登頂は無理そうなのであっさりと引き返すことにする。
 薊平まではトレースもあるので小一時間で戻る。そこから聖平小屋迄がまた遠い。
 夏道25分だが実際1時間30分程かかった。しかも小屋が水場の近くに建てたためか
樹林の奥にあり、辿り着くまでGPSのお世話になる。昨日焦ってそのまま突っ込んで
いたら小屋着は確実に20時を過ぎていただろうと思うとぞっとする。昼でも見つけ
にくいので夜ならもっと苦労するだろう。小屋に着くと冬季入口が雪で塞がっているので
掘り出しに30分かかる。やっと入ると真っ暗だが、昨日のホームレスと比べると
贅沢は言ってられない。15時過ぎから宴会を始め、昨日食べ損ねた食材を料理して
軽量化に努める。18時就寝。明日は午後から天気が崩れるらしいのでさっさと下山
したい。
 翌朝4時起床。ラジオ深夜便を付けると、ヒデとロザンナのロザンナさんのインタビュー
を再放送していて何回聞いても感動させられる。内容は省くが一言で言えば「愛の奇跡」
か。(そのまま!?)軽量化のために朝飯をたらふく食べ、5時出発。天候も安定して
いるので自分のトレースが期待できる。トレースがあればこんなに楽だとは!さっさと
下りて9時に西沢渡、10時30分易老渡、12時渋沢ゲート着。そこから少し降りた
所で来た時にはなかった土砂崩れを確認し、ぞっとする。もしゲートまで詰めて車を
停めていたらこの大きな石を自力で動かすのは不可能だろう。そうなると歩いて助けを
呼びに下りるか、助けが得られなければ近い里まで辿り着き、電話を借りてタクシーを
呼ぶしかない。当然車は土砂崩れが復旧するまでは何か月か何年か放置。ぞっとした。
 途中で温泉に立ち寄り、三日間の汗を流して帰神。何故か、できることはやり切った
という妙な達成感だけは残った。しかし積雪期に再訪することはないだろう。

NOTES:
 ・スマホは主に地図ロイド使用で機内モードで使うと三日間で残り電源1/3だった。
 ・燃料は冬用小ボンベで残1/4.やはり水を雪で作るのでよく減る。
 ・動物は多数。人影はなし。
 ・携帯電波は入ったり入らなかったり場所によって違った。
 ・このあたりの山域では標高2600m付近までシラビソ樹林帯でそこからいきなり
  雪面となる。ハイマツは見当たらなかった。山々はのっぺりとしていて登高意欲は
  あまり沸かないがどれも登り下りが激しく、スケールも大きくて体力が要る。
  またアプローチの林道の崩壊が激しく、降雨後はさらに注意が要るだろう。道路法面
  状況をよく見て危険を感じたら安全を期して手前に車をデポすべきである。一か所でも
  崩れたら、もう帰られない。また、夜間の走行や、クラクションの音だけでも
  反響で崩れそうなので注意が必要。  

  ・何故か写真がアップロードできない。。


2019.4.11-13 杓子岳杓子尾根

2019.4.11-13 杓子岳杓子尾根の記録
長野県 後立山連峰 杓子岳 杓子尾根
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こんにちは、岩瀬琢海です。
後立山に行ってきました。
当初、白馬尻から杓子尾根経由で杓子岳を登り白馬岳まで繋げる予定でしたが諸々の条件により杓子岳までのピストンとなりました。
新雪を掻き分けての山行。
展望こそありませんでしたが、それゆえに雪山の大変さを噛み締めた良い登山になったと思います。


以下、山行記録です。

---------------------------------------------

◎メンバー
T.I
H.I

◎行程概要
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・4/10
22:30 神戸にて合流・出発

・4/11「二俣駐車地ー1900m地点BC」
気温 +3℃〜ー7℃
曇り、雪
風有り
8:30 二俣の駐車地到着・準備
9:00 出発
11:00 猿倉荘
13:20 白馬尻
16:00 1900m地点・テント設営
20:00 就寝

・4/12「BCー杓子岳ーBC」
気温 ー11℃
2400m以上ガス
時折風と雪有り
4:00 起床
6:00 出発
9:00 ジャンクションピーク
12:00 杓子岳山頂・下山開始
15:00 テント地到着
20:00 就寝

・4/13「BCー下山」
気温 ー3℃〜+10℃
快晴
ほぼ無風
4:00 起床
6:00 下山開始
8:00 猿倉荘・雪上確保練習
11:00 二俣駐車地・下山完了



◎行程詳細

・1日目
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目がさめると、雪の降りしきる「道の駅 白馬」でした。
運転席にはH.Iさん。ぐっすり寝ている。
起こさないように外に出て、手を洗うついでに煙草を一服。
昨夜、僕も役に立たねばと思い免許を取って以来のMT車の運転を振り返り、
「SA内でエンスト2回、路上でクラクション1回鳴らされただけで無事に済んだ。この山行の核心は越えた。」
と1人静かに生きてることを噛みしめる。
見渡す田畑にはシンシンと雪が降り積もって行く。思い出したく無いことを柔らかく白く染めていく。

しばらくしてH.Iさんも起き出し、改めて二俣に向けて出発。
前調べ通り二俣で通行止めになっているので、柵の前で準備を整えて歩き始める。
猿倉荘の車道は途中まで除雪されていて、思っていたよりも早く進むことができた。
猿倉から先はノートレース。なめらかな白銀の世界。
交代番子で雪を掻き分け進む。
どうにか白馬尻までたどり着き、地図を確認して杓子尾根にとりつく。
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右側対岸にある斜面ではところどころ表層雪崩が起きている。下山に白馬大雪渓を使うつもりだったけどやめといた方が良さそうだなと思いつつ交代ごうたい黙々と雪を掻き分け続ける。
振り返れば白い雪面には自分たちのトレースだけ。あぁ気持ち良い。
H.Iさんがラッセル頑張ってる後ろで、こっそりエネルギー補給や立ち寝しているうちに日暮れが近づいてきたので、大きなダケカンバの下を整地してテントを張る。
夜ご飯を食べつつ、明日の予定を考え直す。
この先もラッセルが結構大変であろうことと、下降予定の大雪渓の雪崩が気になること、思いの外天気もイマイチということで、ここをベースキャンプにして杓子岳とあわよくば白馬岳までのピストンにすることを決め、就寝。



・2日目
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ハーネスを履き、ヘルメットを被って準備を整えて出発する。
背負う物がビバーク装備と登攀具と行動食だけなので荷物は軽いが、目指す山頂は雲の中。
相変わらずのラッセルをこなし、雪のナイフリッジや短いけど少々斜度のある雪壁をこなしながらとにかく進む。
2400mを越えたあたりでガスに巻かれる。
完全にホワイトアウトというわけでは無いけれど、先が見えない。見えるのは足元から10m先までだ。
立ち止まり、振り返ってH.Iさんに
T.I「どうしましょう?」というと
H.I「え、なにが?」と。
T.I「だって見えないですよ、この先。」
H.I「そう?見えてるやん。」
T.I「え。。?そうですかねぇ。。。見えますかねぇ。。。H.Iさんって視力良いんですか?」
H.I「いや悪いで。」
T.I「そ、そうですか。どう進んだら良いのかわからないんですけれど。。。」
H.I「そうかなぁ。見えるけどな。辞めとくか?」
T.I「辞めたくは無いですけど、どうにも、見えてこないです。」
とウダウダ迷った結果、H.Iさんに先行してもらってついて行くことにする。

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不思議だ。H.Iさんはなんの迷いも無く進んで行く。僕に見えるのはH.Iさんの後ろ姿と足跡と、自分のすぐ右側にうっすら見える雪と背景の切れ目だけだ。
どうやって行き先を判断してるんだろうと思いながらついて行くとしばらくしてわかってきた。
ここは尾根上で、雪と背景の切れ目が見えていればそれに沿って歩くと進行方向を間違えることも無いし、時折見える岩の陰やひとつ隣の尾根の木の陰と、地形図を照らし合わせれば現在地もわかる。雪庇は張っていない。
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いくつか岩場を越えてから、先頭を代わってもらう。
この尾根を辿れば山頂に着く。
とわかっていれば先が見えなくても怖く無いことを実感しながら登ってるうちに杓子岳山頂に到着。
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展望は無く寒い。
記念撮影などして、白馬岳まで行くかどうかの相談も必要無いくらいに「早いとこ降りよう」と意見一致したので引き返す。
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帰りはトレースがあるので安心でしたが風向きの加減でところどころ消えていて、広くなった分岐地点で尾根を間違える。H.Iさんが間違えてることに気づいて、GPSを確認しつつ登り返して修正。油断して気が抜けてました。
まだ日の高いうちにBCに到着して、のんびり夕飯を食べたりして就寝。明日は降りるだけだ。



・3日目
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超快晴。雲ひとつない。
タラレバ話ですが、今日がアタック日だったら最高だったろうなと話つつ激しく後ろ髪を引かれながら下山。
猿倉荘まで降りてきて時間もたっぷりあったので、雪上での確保(スタンディングアックスビレイ、腰がらみビレイ、カラビナと半マストでのビレイ、スノーバーの使い方など)を練習させてもらい、ぼちぼちで切り上げて、下山を続ける。
駐車場でがっちり握手して山行を終了しました。

神戸までの帰りは高速道路の事故等の通行止めの影響で時間がかかりましたが、「結構元気やから大丈夫やで。」と言われて一度もハンドルを握ることができず、僕のデッド・オア・アライブ・ドライビング・テクニックを披露することはできませんでした。



・登攀具について
今回はダブルアックスと40m補助ロープ+スリングやカラビナを持って行きました。
杓子岳下降時に1箇所だけロープを出して確保しましたが、クライムダウンできるので、人によるとは思いますが無くても大丈夫だったようにも思います。
ダブルアックスは必携でした。僕は一本は縦走用で、もう一本はハンドルタイプのバイル(ペツルノミック)でしたが、問題ありませんでした。今後は雪稜ではこの組み合わせになりそうです。
アイスやミックス壁のクライミングが無い限り、2本ともハンドルタイプはイマイチかもしれません。


・食事について
1日目夜:キーマカレー+ほうれん草とベーコン炒め
2日目朝:棒ラーメン+ウィンナー+乾燥野菜
2日目夜:おでん+うどん
3日目朝:袋ラーメン+ウィンナー+卵+乾燥野菜
にしました。
1日目のカレー、精魂込めて家で下準備をして現地で仕上げ調理して美味しく食べることができたのですが、振り返ってみると汁物の方が良いように思いました。水分を多く取れるメニューの方が良いなという感じです。油分の後片付けも少し面倒。おでんは食べた感もあるしすごく良かったです。
ラーメンは定番ですが、次回は具材に少し工夫した方が良いかなとも思いました。重さとの兼ね合いが難しいところですが、今回のようなBCからのピストンだったら食料の重さはある程度どうでも良いような気もします。


・日焼け
日焼け止めクリームを貸してもらって初日に塗りましたが、今めっちゃくちゃ顔が痛いです。
何重にも塗った方が良さそうです。
頬と鼻と鼻の下が猛烈に痛い。


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以上、山行報告でした。

今になって思いつきましたが、3日目に天気が良くなることはわかっていたので(杓子尾根は携帯電波入ったので天気図など見れました)、うんと早起きしてもう一度アタックしてみても良かったかもしれません。
トレースはつけてあるし暗くても迷わないのでスピーディーに山頂まで行けたかも、、、
とはいえ、残雪期の北ア・後立山は初めてで、勉強になることがたくさんあってすごく充実していたので思い残すことはありません。
またそのうち違うルートでの杓子岳や白馬岳からの景色を楽しもうと思います。
ひとつ天候に関して学んだのは、後立山は天気予報が良くても、完全に高気圧の勢力下になっていないと現地はそれほど良く無い天候ということです。


H.Iさん、計画段階から何から何まで相談にのって頂きありがとうございました!
またよろしくお願いします!!
あと、MT車の運転のイメトレもしておきます!

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