2021年07月

屏風岩 東壁/東稜ルート

「屏風岩」
クライマーならば誰しもがその名を知る大岩壁は日本のクライミングを語る上では避けて通れぬ、いわばクライミングの聖地のひとつである。涸沢・穂高へと続く登山道から見えるその姿は、まさに日本を代表するビッグウォールといっても過言ではないだろう。古くから多くのクライマーがその壁に挑み、歴史に名を遺す偉業を成した者もあれば、数多くの悲劇の舞台ともなった。
僕もその屏風岩に憧れ、いつか登りたいと夢見たクライマーの一人である。渡米し、しばらく日本の山にも別れを告げねばならぬのなら、山を始めたとき下から見上げた屏風岩に触れておきたいと感じた僕は、同じく以前より屏風の登攀に意欲を示していた長野さんに声をかけさせてもらい、この山行を進めていくに至った。

屏風の登攀に必要な技術として人工登攀の技術があげられる。もちろんフリーで抜けることができるルートも存在するのだが、我々が登る東壁・東稜ルートは主に人工登攀ルートとなる。
6月ごろより六甲山の堡塁岩でアブミを用いたクライミングの練習を行った。最初は慣れない手順に戸惑うこともあったが半日登れば勝手は理解できたし、だんだんとスムーズに登れるようになってきた。ハーケンやボルトだけではなく、本番を想定してカムやナッツ、トライカムといった所謂リムーバブルプロテクションも積極的に使用して人工登攀の技術を身につけていった。

7月に入り、ルートを調べたり必要な装備を選定しながら準備を行い、7月19日の夜、神戸を発つ。
その夜、あかんだな駐車場に車を入れ、仮眠。翌朝6:40発のバスに乗り込み上高地へ入る。
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上高地からは2時間ほどで横尾まで入り、テントを設営。その後翌日の渡渉点の偵察へ向かう。偵察へ向かう前に山荘横の登山指導センターで1ルンゼと屏風の頭から徳沢までの登山道の状況を尋ねたがセンター自体が17日にオープンしたばかりでまだ今年の情報はないのだという。残念だが仕方がない。
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事前のリサーチで横尾から橋を渡ってすぐに渡渉をすると比較的濡れないという情報があったため橋を渡って数分歩いたところに砂利が堆積しているあたりから川を目指す。しばらく河原を歩き、適当に渡りやすそうなところへ入ってみる。この水が想像を絶するほどに冷たい。長野さんはネオプレンのソックスにスポーツサンダルだったがそれでもヒーヒーと声を上げる。一方僕は素足にサンダル。呼吸が荒くなるほど冷たい。一度渡渉すると足が真っ赤になって痺れるほどの渡渉を何度か繰り返しながら1ルンゼの取り付きを目指して上流へと向かってゆく。しかしこれが思いのほか遠い。小一時間かけて到達した1ルンゼ取り付きは、なんと川を挟んで登山道の眼前だった。しかも問題の渡渉もそんなに濡れ具合は変わらない。水量によっては下部のほうが渡りやすいのかもしれないが、渡ってからのことを考えると1ルンゼに正対する地点からまっすぐ渡ったほうが明らかに早いということを確認。翌日の渡渉は岩小屋横の案内板から20mほど涸沢側に歩いた地点から渡ることを決めて、昼食をとるため横尾へと戻る。その日は明日へ備えて昼から木陰でうとうとしながら過ごし、早めの晩御飯を食べて早々に就寝。

翌日は0時起床。各自朝食をとって2時に横尾を発つ。20分ほどで前日確認した渡渉ポイントに到着。冷え切った冷水を昨日同様悶絶しながら渡り、1ルンぜへと入ってゆく。外から見るとかなりブッシュらしかったが、入ってみると森の中に綺麗に開けた枯れ沢が続き、快適にアプローチができた。T4取り付き手前で雪渓があったのでこれを乗越して、3時30分にT4取り付きへと到達。まだかなり暗かったため、30分ほど休憩しながら登攀の準備をしてゆく。空が白んできて頭上に大きな岩壁が現れると自然と胸が高鳴った。いよいよ憧れの登攀の始まりである。
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1ピッチ目のトップは長野さん。雪渓の隣から凹角に沿って徐々にロープを伸ばす。25mほどでピッチを切って、2ピッチ目は僕がトップで登る。やや左上気味に上がっていき、30mほど登ると終了点があった。ここからはしばらく林の中を歩いて登り、最後に10mほどの草付き凹角をサイマルで登ってT4へと上がる。この時点で6時だがすでに日光が当たりかなり暑い。眼前にはまさに屏風の名にふさわしい大岩壁が広がり、朝日に照らされてより大きく、かっこよく見えた。T4でしばらく休んだのちに、超藪漕ぎの緩傾斜帯をトラバースしてT2へと向かう。
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07:20、いよいよT2から東稜へと取り付いた。この時点で計画から約1時間の遅れ。ここから巻き返すという意気込みとは裏腹にトップで登る長野さんのペースが上がらない。ハング上部の支点間隔が遠くアブミをかけるのに苦戦する。体を支える腕の限界に、突き刺すような日光が追い打ちをかける。1ピッチ目15mを登るのに2人で1時間半を要してしまった。
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2ピッチ目はトップ交代して僕が順調に高度を稼ぐ。1ピッチ目とは違いスラブに並んだ支点にアブミをかけては乗り込み、またかけては乗り込みを繰り返す。技術的な難しさはないが、とにかく支点が悪い。たまにフリー用のボルトがあるもののそれ以外は半分しか刺さっていないハーケンや伸びきったリングボルト、半分切れたスリングがかかったハーケンなど体重をかけるのが怖い代物ばかり。それにすべての支点にクリップすればヌンチャクは確実に足りなくなるため、3,4本飛ばして状態のいい支点を中心にクリップする。そうすれば自然とランナウトしてゆくので、落ちれば下のボロボロのハーケンなど簡単に飛んでしまうだろうと考えるとますます怖くなる。アルパインは落ちないことが大前提とよく言うが、本当にその通りである。2ピッチ目の終了点はアブミに立ったままハンギングビレイをしてフォローの長野さんを上げる。晴れていて気持ちよいが、とにかく暑い。2ピッチ目の終了時点で10:30であったが、これは計画ではトップアウトしている時間である。まだ全ピッチの3分の1しか登れていない状態なので屏風の頭まで行くのはあきらめ、トップアウトできたとしても懸垂で降りることになるだろう。それにこの日の天候は快晴ではあったものの、昼からは大気の状態が不安定となり夕立が降るような天気であった。安全のため12時をもって登攀を打ち切ることを話し合って、僕が引き続きトップで3ピッチ目に取り付く。
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左にトラバースして5mほど上がると懸垂支点があった。頭上にはまだまだ岩壁が続いていて、このままのペースだと登りきるのにあと3,4時間はかかるだろう。しかしこの時すでに風は谷風に変わり、燕や常念の東斜面に大きな雲が乗り上げてきていた。仮に雨が降り出す前に登れたとしても、懸垂で降りれば渡渉で増水しているかもしれないし、時間をかけて涸沢か徳沢までまわっても雨の降る中、雪渓を渡らなくてはならない。さらに夕立の雷の中、壁に取り残されるのはもっと危険だろう。天気が安定するならたとえテントに戻るのが深夜になったとしても行けるだろうが、天気だけはどうしようもない。二人で相談して、11:30に同ポイントから撤退を開始した。30mほど懸垂で下ってハング下のバンドを経由してさらに30mの懸垂で草付きの緩傾斜帯へ下りる。T4までトラバースしてT4トップから懸垂を3回繰り返してT4の取り付きへ。下山中に気が付いたが、朝は雪渓横の急斜面を登って雪渓の上を歩いてアプローチしたが、雪渓手前20mの地点から右手のブッシュに入ると藪漕ぎに近くなるもT4取り付きまで楽に行けることに気が付いた。1ルンゼからは薄っすらと踏み跡もついていたのでT4にアプローチされる方にはぜひ使っていただきたい。
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もと来た道を戻りながら何度も何度も屏風岩を振り返る。トップまでは果てしなく遠い。でも4年前に下からこの岩場を見上げていたころに比べればかなり近くまではやってきたのだ。あともう少し、それはもう少しばかり技術を身に付けて、いろいろな経験を積んで帰ってきたときにやってみよう。自分自身の成長に気付ける場所として屏風岩にはまた来たい。屏風岩からの帰り道で次にこの岩場に来ることを考えただけでまた胸が高鳴った。
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1ルンゼを下って川を渡って登山道を横尾穂面へと向かう。このころには黒い雲が屏風に頭の上にも広がり、テントへ戻るころには雷がゴロゴロと音を立てていた。ナウキャストで見ると横尾周辺はそこまで雨は降らなかったが、表銀座や黒部、後立山ではかなりの降水と発雷があるようだった。登攀の技術はまだまだ足りず、トップまで登る力はなかったものの、状況を読み取り決断する力は山を始めたころに比べてかなり成長したと実感した。
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翌朝は7時に横尾を出て帰路に就く。途中穂高神社によって無事に帰れたことへの感謝と次からの山行でも見守ってもらえるようにお祈りして、10時に上高地へとついた。この日は4連休の初日で河童橋にはもの凄い数の観光客が美しい景色を求めて訪れていた。あとから知ったことだが僕らが山にいた3日間で5件の遭難事故が槍穂高連峰で発生し、うち2人が亡くなったそうだ。観光客がアイス片手に楽しむ美しい景色の中で、悲惨な事故が起きていることを考えると、我々もいつ事故を起こしてもおかしくないのだなと思う。ただその事実に対して自分だから大丈夫と高を括るのか、それとも常に最悪を想定して準備をするのか、それだけで生き残れる可能性には雲泥の差がある。常に技術を磨き、その心構えをもって、事故を起こさないこと、また事故を起こしてもそれに対応し必ず生き抜くことができる登山者でありたいと感じた。

反省点としてはまずそもそもの登攀力不足があげられる。
六甲山で練習したとはいえ、付け焼刃の技術では登れたとしてもロングルートになるとスピードが足りない。継続して安定した作業ができるように人工登攀の技術に熟練することとマルチクライミングによる練習も必要であると感じた。また人工登攀ではギアの数が通常のクライミングより圧倒的に多い。ギアラックの整理等をうまく行わないと混乱し、登攀がスムーズにいかないことがある上、最悪ギアを落としてしまうような場面もあるだろう。
アブミの架け替え時間の短縮案としてフィフィを使うことは以前から認知していたものの、ギアラックから落としてしまうリスク等を考えて、この登攀ではカラビナを用いていた。しかしカラビナを使うことでよりギアラックが混乱し、スムーズな架け替えができなかった。フィフィを使えばギアラックへの収納と支点への設置、回収が容易となり、またハーネスへもかけ方次第では落下しにくいと思われる。フィフィの使用については前向きに検討していくべきだろうと感じた。
今回の山行では横尾にベースキャンプを張ったが、当初はT4またはT2にテントを張る予定だった。荷揚げやルート上の問題からこの案より横尾ベース案を採用したが、登攀を確実にしたいのであればよほどのスピードが出せるパーティー以外はT4またはT2での幕営が適しているだろう。横尾からのアプローチは長くはないものの、暑さも相まってかなり疲労する。前日までにT4またはT2入りしておけば当日はかなり余裕が持てるだろう。
この山行で個人的に最も感じたのは登攀のスピードと安全のバランスだった。以上の反省点を踏まえても人工登攀はフリークライミングに比べて作業が多く、より時間を要する。となるとあとはその作業自体を減らすしかないのではと考える。単純にクリップする支点を減らせば作業時間はそれだけ少なくなり、登攀のスピードは上がる。ただし万が一何らかの原因でフォールした場合、クリップされた支点が少ないことで落下距離は伸びる。ビレイの方法によっては最終支点への負荷も大きくなるだろう。こうした安全面での問題を克服しながらさらにスピードを上げようと考えると「落ちないこと」が前提となってくる。結局はそこにたどり着くのだが、それだけ本番で落ちないことという言葉には落ちたら事故につながるという意味のほかに登攀のスピードを上げて成功率を上げること、危険な場所に長居しないことという意味があるのだと気付いた。決して成功とは呼べない山行だったが、得るものは非常に多かった山行でした。


2021.7.20-22 【滝谷 遡行~クライミング】


長年の念願が叶って
アルパインクライミングの聖地
穂高の滝谷へ行って来ました。

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少し私の話をさせて頂きます。

若かりし頃に山を始め、我武者羅に登った20代。 それが災いして29才の時に厳冬期の北アルプスで1週間遭難して九死に一生を得たがその代償として両足先を凍傷で失った。
リハビリを終え落ち着いた頃にかねてから興味があったクライミングジムに足を運んだ。
当時は今ほどクライミングジムはなかったが偶然にも近くにOCSと言うジムがあり怖怖と伺うと心優しく迎え入れてくれた。(大阪市OCS社長林さん)
また私の話に興味を持って頂きクライミングシューズをプレゼントの上、知人に私の足に合わせてシューズを加工までして頂いた。(石川県KCウォール社長宮保さん)
お2人には心から感謝です!
それならばと毎日通い詰めたが歩く事も困難な為、なかなかに厳しく挫折した。。
30代は大人の事情で年に数回の山行程度で、40才を超えた頃から本格的に始動、数年前からはクライミングにも再トライ、成長は遅いものの少しづつ登れる様になっていくのが楽しい。

色々調べていくと「滝谷」もルートによっては可能性がある事に気づいた。勿論、強いメンバーとではあるが。
遠く昔に憧れ、絶対に行ける事はないと思っていたあの「クライミングの聖地、滝谷」に行く事を決意した。
行くからには下から詰め上がる、滝谷出合経由
それから綿密な計画が始まった。

以下、山行記録です。
  ___________________________________________

■ メンバー

藤本 (L) (記)
谷口
吉澤

■ 装備 (主な物)

[共同]
ダブルロープ 8.5㎜ × 50m 2本
カム C4 #0.3-#3  1セット
ナッツ  1セット
ハーケン 4枚 (遡行時敗退用を含む)
アルヌン 180㎝ × 1  400㎝ × 1

[個人]
アックス (ハンマー型)
アイゼン (前爪付き)
アルヌン 60㎝ × 3  120㎝ × 2 

荷物を3人で分担して極限まで軽量化をしても1人当たり約14㎏になった。
事前のトレーニングで、10㎏を歩荷してⅣ級程度のマルチは経験していたので未知ではなかったが本チャンはやはり別物。

■ 行程概要

7/19
20:00 関西で合流

7/20
晴れ
1:00 高山のすき家で充電してから新穂高温泉
1:30 入山
4:30 滝谷出合
6:00 雄滝取付
16:30 雄滝落口 ※無念の敗退を決定
21:30 滝谷出合
23:00 就寝

7/21
晴れ、夕方雷雨
4:00 起床
6:00 行動開始
滝谷出合-槍平小屋-南岳新道-南岳小屋-大キレット-
16:00 北穂高小屋
21:00 就寝 

7/22
晴れ、夕方雷雨
2:00 起床
3:30 行動開始
6:00 滝谷ドーム 中央稜取付
11:00 終了点
12:00 テン場
涸沢槍-涸沢岳-
15:00 穂高岳山荘
20:00 白出沢出合
22:00 新穂高温泉

■ 行動詳細

7/20
滝谷出合までは順調に到着した。
出合から滝谷大滝が遠くに見えるが距離的には近い。歩いて直ぐに雪渓が現れた。雪渓と岩壁の間を
通ったり、雪渓の上に乗り上げたりしてアイゼンとアックスを要した。
念の為にスノーバーも用意していたが出番がなくてホッとした。

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まもなくすると右に雄滝、左奥に雌滝が控えめに見えてくる。近づくにつれその雄姿に圧倒される。

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雄滝と雌滝の間の尾根から取付く記録があり我々もその様にした。

1P、吉澤
下からは大きな階段状に見えるが意外に悪い。棚は外傾しており使える部分も小さい。ホールドも少ないし小石が堆積している。取付いて直ぐに安定してる?所でザックを下ろしクライミングシューズに履き変えた。35m程ロープを伸ばして適当な所でピッチを切った。トップバッターでリードするつもりだったが任せて正解だった。汗

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2P、吉澤
少しスイッチが入ってきた?そのまま連続登攀
このピッチが超絶に悪かった。右にバンドがありそれを辿る。その先はバランシーなボルダー。マジか!!
時間をかなり要したがここも突破した。どうやって登ったの!?
※敗退時に分かった事だがここは右に行くのではなく、もう少し上に行くと薄い踏跡と言うかここが弱点と言う
ラインが見つかる。
ここから、この滝の最強点を突く恐ろしく長い一日が始まった。

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3P、吉澤
完全に覚醒!ここも悪かった。。よう行くわ!
更に右にトラバース気味に行く。

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4P、吉澤 言わずもがな (笑)
草付を右上して立木を通りすぎ奥の岩壁でピッチを切る。
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5P、吉澤 書く必要もないか?
記録では取付とここの写真しかなかったのでかなり悪いと想定していたが問題はなかった。
傾斜の寝たルンゼをトラバースして45m程ロープを伸ばし立木でピッチを切る。

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6P、吉澤 やっぱり書いておこう
草付を右上するがここもかなり悪いし適当な懸垂支点が見当たらない。
一度全員が上がり細い木で元の所までトラバース気味に懸垂下降。
※ここはビレイポイントの立木からすぐ落口方向に向かうと小さなルンゼがありそこを超えて少し被った岩の下をトラバースすると綺麗に落口に出る。
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まだこの時点では滑滝上部まで日没までに行けると思い奮闘するが、時すでに16:00。
恐ろしく時間がかかり過ぎた。
この先何処まで詰めれるかは分からないがビバークをして3日間もあれば抜け切れる事をある程度は想像できた。しかし1日目の安全地帯はオセロ岩 (A~F沢が集まる所) かなり広い場所なので落石の危険が少ない。
そこまで辿り着けないのだけは分かる。
雄滝落口のすぐ上部に2段20m程の滝がありその上部の雪渓の状況が分からない。その遠くに滑滝が見える。
ヘッデンで前進して適泊地がなければ。。標高2,200m アルプスの冷たい雪解け水が飛び散り落石の危険性のある沢際での一夜は迷うまでもない。敗退を決定。
何ピッチ切ったのか分からないくらいヘッデンで懸垂下降。取付に着いてもまだ落石があり安全地帯ではない。
雪渓を超え滝谷出合に着いたのは21:30 疲れ過ぎて食欲もないがかきこむ。バーボンで自分にご褒美。
ほどなくして23:00にはゴーロ帯の上にマットと寝袋だけで就寝。
※20時間行動

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7/21
4:00 起床 流石に寒い

※谷口さん満身創痍 1人で下山
温泉とビールで復活!?(笑)
翌日には早朝からトレランで笠ヶ岳までCT14時間の所を10時間で行ったとか。流石です!

※藤本、吉澤
別ルートから再アタック!
プランBに変更 (当初から計画)
やったります!

6:00 行動開始
滝谷出合-南岳新道-南岳小屋-大キレット-北穂高小屋
荷物の分担を3人でしていたがリタイアがでた為、ロープ他が増え17㎏に
流石にこのコースはきつい。ペースが上がらない。昔の山屋は凄かったんだろうな。
16:00 北穂高小屋
※10時間行動
まだ滝谷登攀が終わってもないのに土産を大量に買い (笑) 宴会!
雷雨をやり過ごしテン場に移動
21:00 就寝

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道中、ボルダーで遊ぶヨッシー♪

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7/22
2:00 起床 
素速く朝食をとり、ギアを装着 
テントに荷物をデポして最小限のワンザックで。
3:30 行動開始
いよいよだ!

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縦走路を通り、滝谷ドームを越え奥穂方面に最初のクサリ場を降りたコルがアプローチの入口
その先には薄い踏跡が右に伸びているが直ぐに見失う。少しクライムダウンをすると記録にはあるが、何処か分からない。しかもこんな高所でボルダーなのは嫌だ!(笑)
更にトラバースすると小さなケルンがあった。それを見て安心、感謝。
また少しクライムダウンをして当たりを手分けして探しても懸垂ポイントが見つからない。
と覗きこんだ先に発見!新しく信頼できる支点で50mロープ1本でギリでバンドに到着。その先はしっかりとした踏跡がついたバンドをトラバースすれば直ぐに取付に着く。
そこはこの上なく贅沢な場所!縦走路からは見る事のできない岩の要塞に包まれたド迫力の滝谷!
眼下には、前々日に格闘した雄滝、本来目指していたその先の滑滝、オセロ岩、C沢、スノーコル (泊地)、第4尾根、ツルム、、、念入りに計画してきた全容が模型の様に見える。
至福の時間
ん~マンダム ♪

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6:00 滝谷ドーム中央稜 登攀開始

1P、吉澤 Ⅳ 核心ピッチ (2人の感想) 
凹角の中のクラックからチムニーを抜ける
コンディションは申し分ない。フォローで登ったがチムニーでザックが挟まり身動きがとれない。奥に良いスタンスとホールドがあるがスタックして身体を振れない。汗
ここは練習してきた1/3システムで荷揚げをするべきだった。

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2P、藤本 Ⅴ
リッジからカンテ左のスラブを登りテラスへ
朝一はやはり緊張する。しかも初リード(笑)
上部のスラブが悪く痺れた。
一番の絶景のピッチ。当然余裕などない。
ビレイ点にて、まだ終わってないよ~(笑)

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3P、吉澤Ⅰ
ガレた岩場のリッジ
難なく通過

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4P、藤本 Ⅳ
凹角上部はチムニー
上部チムニーのチョックストーン越えが悪かった。ホールドがあるか偵察して戻り、迷ってる間によれてきたが何とか突破する事ができた。汗

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5P、吉澤 Ⅴ
右の凹角に入り出口のハングを右に抜ける
最終ピッチ
ビクトリーロード
雄たけびを上げたのは言うまでもない
それにしても錆びて朽ちたハーケンを見てのクライミングは恐怖だわ!
11:00 終了点

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余韻に浸ってる暇などはない。
12:30 テン場
急いでデポした荷物を纏めて下山。下山とは言っても 滝谷ドーム~涸沢槍~涸沢岳 の激しく長いアップダウンがある。
15:00 穂高岳山荘
白出沢出合を目指す
2020年の地震の影響により通行不能となってはいるが、通ってる記録もある。穂高岳山荘の親切なスタッフに状況を教えて頂き自己責任のもと降りる事を決定。
始め浮石はさほど多くもなかったので大げさな注意喚起だと思った。が途中から終始浮石だらけになり、雪渓も現れた。その時に猛烈な雷雨がやってきて厳しさ極限!白出沢に流れ込む支流の鉱石沢の崩壊が凄まじく、そこに張られていたFIXロープを使い懸垂下降した。懸垂してる自分のロープが堆積してる石をひっかけ落石を落とす。恐ろしい。その先には小滝が連続する。巻道も崩壊している。一つ目の滝は倒木で懸垂下降。次は軟鉄のハーケンで残置支点を作り懸垂下降。重太郎橋など跡形もない。渡渉ポイントを心配していたが当たり一面はゴーロ帯の為、何処でも渡る事ができた。また前日と直前の物凄い夕立による増水の影響もなかった。
何とか難所を日没までに突破。後は下山のみ。
20:00 白出沢出合
22:00 新穂高温泉
※18.5時間行動

谷口さん、お待たせしました。_(._.)_

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以上、山行記録でした。

あくまで個人的意見ですので、この記事を参考にされる方は自己の責任において行動をお願いします。

色々と考えさせられる事もありアルパインの未熟さを感じたが、滝谷出合からの情報も沢山収集できた。
準備をしっかりとして必ずリベンジします!
今回同行して頂いたメンバー、本当にありがとうございました。
 


大台ヶ原 サマーコレクション

○概要
山行日
山域、ルート
大台ヶ原 サマーコレクション
活動内容
マルチピッチクライミング
メンバー
石橋(L)、谷川(記録)

昨年の11月,岩場で石橋さんからキャバクラ行きましょう!と言われて驚いた.聞き直すとサマコレと言っていたようで,調べてみると面白そうなルートであったので,参加させていただくことにした.
それから半年間,当ルートに向けて外岩やジムでトレーニングしてきた.雨天のための延期を一度挟み,ようやく今回実施できた.
適期は秋であることはわかっていたが,お互いの都合により梅雨の中実施することになった.
案の定,染み出しや大量の蚊などで全く快適ではなかったし,2人とも2テンで散々な結果であったが,それでも誘ってくれた石橋さんと登れて良かった.またお互い強くなって登りたい.

○行動記録
・アプローチ及び1ピッチ目
 ビジターセンターの駐車場で前夜泊前日から未明まで雨が降っており,岩が濡れている可能性が高いと考えられた.出発を遅らす案もあったが,アプローチで迷う可能性もあったため,早めに出発することとした.
 案の定と言うか,間違って本来降りるべき沢の一つ東の沢を下ってしまった.崖の上に出て,登り返して,西にトラバースして,下って,また崖の上に出て,を数回繰り返す.最後は軽い藪漕ぎでサンダーボルト取り付きにたどり着いた.そこから岩壁沿いに西に進むとルンゼにあたった.クライミングシューズに履き替えてロープなしで登る.

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・2ピッチ目(5.10a,谷川リード)
 取り付きに着いて岩を見ると,岩は黒々と光っており,濡れているのがよくわかる.未明までずっと雨が降っていたから当然であった.休憩がてら30分ほど待ち,気持ち少しだけ乾いたかな?(絶対変わってないだろうな)と思うくらいで登攀を開始した.
 開拓当初の1ピン目は吹き飛んでおり,取り付きから現在の1ピン目までは目測5mほどある.最初は左の草付きを登り,旧1ピン目の残骸あたりから右にトラバースして,現1ピン目まで登った.本日一発目であるため,また,グランドフォールし得る状況であったため大変怖かった.1ピン目からはクラックが左上に伸びているので,レイバック気味に左上していった.終了点のテラスにはマントル気味で上がらないといけないが,それが地味にいやらしかった.

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・3ピッチ目(5.10c/d,石橋リード)
 最初の核心.だが石橋さんはあっさりと登り,自分も特に苦労することなく登れた.ガバやガバカチが多い.

・4ピッチ目(5.10c/d,谷川リード)
 2つ目の核心.核心部までは壁が寝ているので問題なかった.核心部ではうっすら被っており,余裕がなくなってくる.それでも微妙なホールドを繋いでいくが,それも見当たらなくなり,ピンも見つからずテンションをかけた.落ち着いて下から見ると,左に抜けると楽そうなのに右から登っていたことに気が付いた.ピンも左にある.落ち着いてルートを見ていればオンサイトできただろうに,残念...

・5ピッチ目(5.8,谷川リード)
 前ピッチから繋げて登った.前半はガバの多いフェイスで,後半は草葉の中を木の根なども使いながらのアルパイン的な登りになる.
 嫌らしい箇所はないのだが,とにかく濡れている.染み出しや泥でシューズが濡れていき,遂にはガバ足で滑ってしまいフォールしてしまった.フリー気味の前ピッチはまだしも,アルパイン気味の当ピッチでフォールしてしまったことが大変ショックであった.その後も滑ってしまったことがフラッシュバックして,恐怖心を抱えたまま登ることになった.
 石橋さんをビレイしていると,一度テンションがかかった.核心部でパンプしてしまったらしい.その後も腕は回復しきらず,石橋さんとしても怖いピッチとなったようであった.核心ピッチであったため,4ピッチ目で区切った方が良かったと反省した.

・6ピッチ目(5.6,石橋リード)
 草付きを左の側壁の途中までトラバースする.途中支点は灌木で取っていることが多かった.このピッチも濡れていて,グレードの割に怖い.

・7ピッチ目(5.9,石橋リード)
 2ピッチ目や4ピッチ目など,美味しいピッチのリードをいただいていたので,このルートの名物であるハンドトラバースの当ピッチのリードは石橋さんに譲った.というか,先程から怖い思いをしてばかりであったので,少し休みたかった.
 当ピッチの取り付きから目視できるハング下まで直上していき,ハング下からは左に伸びるクラックに沿ってトラバースをする.クラックの中は乾いており,素人のジャミングでも十分効かすことができ,余裕を持って登ることができた.本当に面白いくらいキマるので,暫く休んでお茶でもしたい気分であった.
 このピッチ以降は日当たりが良く,岩は乾いており快適なクライミングが楽しめた.

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・8ピッチ目(5.9,谷川リード)
 岩の弱点を突いて登っていったらピンがなくなり,大きくランナウトして登ることとなった.
 どうやらカンテの右を登るのが正解らしく,途中でピンが右側に見えた.しかしトラバースもいやらしく,今のラインも壁は寝ていてガバばかりに見えたため,そのまま登ることとした.問題なく登り切ることができた.

・9ピッチ目(5.9,石橋リード)
 最後のピッチ.ここも岩の弱点をつくとカンテの左に行きそうだが,ピンは右についている.ここは素直にピンに従って登ることとした.下でビレイをしているとテンションがかかった.どうやら終盤の薄かぶりの箇所で足を滑らせてたらしい.最終ピッチで気が緩みそうだなと思い,一応油断はしないようにとは言っておいたが,冗談っぽく言っていので,態度が共わないと効果は薄いのだと実感した.

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・下山
 防鹿柵を巻きながら歩く.柵には扉もあるが,鍵が閉まっていて入れない.扉の締め忘れ対策には,誰も入れないようにしておくのが一番であろう.鹿の食害は植生に与える影響も大きいし,大学のフィールド調査が行われていたりするので仕方がない.疲れていたが遠回りしながら駐車場に戻った.

○所感
 自分はこのルートに誘われたことを機に当会に入った.まだ一年も経っていないが,これまで非常に多くのことを学ばせてもらい,山仲間にも巡り合えたため,入会して良かったと思う.また,このルートを目標に自分のクライミング能力の向上した.自分は優柔不断なことも多く,何もなければ恐らく入会していなかったかもしれないため,石橋さんにはとても感謝している.今回の結果は散々と言っても過言ではないが,それでも彼と一緒に登れて良かった.
 彼は今後数年間は日本を離れるため,暫く一緒には登れない.しかし帰国後にはお互い今より強くなって,また再チャレンジしたい.今度は秋の,絶対岩が濡れていない日で!!

○参考文献
・日本100岩場④東海・関西 増補改訂版(北山真)(山と渓谷社)179ページ
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