2021年08月

2021.8.28 上多古川本谷

2021.8.28 大峰山脈 上多古川本谷


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こんにちは、岩瀬た、です。

吉岡さんと上多古川本谷に行って来ました。
見栄えのする滝や釜が多くてグッと胸にくる沢でした。
2日ほどかければ本谷から竹林院谷経由で山上ヶ岳まで抜けられる谷ですが、今回は阿古滝から下山のワンデイとしました。

カメラを持って行くのを忘れたので写真をほとんど撮れなかったのが残念。。。

以下、簡単な山行記録です。

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◎メンバー
岩瀬た(記録)
吉岡


◎装備
・50mロープ(今回使用せず)
・スマホ(下山時にGPS多用。尾根の派生が複雑だったので便利だった。)

◎行程概要
・8/28
6:50 駐車地 出発
7:30 入渓
12:00 本谷と竹林院谷の分岐
12:30 阿古滝
16:00 駐車地 下山完了


◎行程詳細
林道の道幅が広くなっているところに車を止め、準備して出発。
矢納谷の出合まで30分ほどで到着し、適当なところから入渓。
なんやかんやと遡行して、「なんか遡行図と全然違うなぁ」と思っていたら、茶屋谷に入ってしまっていた。あららと思いながら戻る。
茶屋谷も綺麗な沢だったのでまた改めて行ってみたいなと思う。

分岐点まで戻ってきて、気を取り直して遡行再開。
泳ぎを交えながら快適に進み、双竜ノ滝に到着。かっこいいなぁ、沢って良いなぁと思いながら巻いて、洞門ノ滝に到着。久しぶりに大きな滝を見て、なんだかパワーを感じる。夏って感じだなぁと思いながらしばし休憩。
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洞門ノ滝も巻いてしばらく進むと、一直線にズドドドと釜に突き刺さる煙突ノ滝に到着。
文字通り煙突って感じだ。目で見て水圧がすごい。
これも巻く。巻道でのトラバース悪いなぁと思いながら慎重に進み、沢に復帰すればゴーロ帯をバシャバシャ進み、疲れてきたな!と思うくらいのタイミングで本谷と竹林院谷の二俣に到着。しばし休憩。
そこから阿古滝まではすぐ。

阿古滝は50mの大滝だが水量はあまりなく、落口から落ちる水は途中で霧となって散っている。
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太陽の光との兼ね合いで綺麗だ。もっと綺麗に見える時間や季節もあるだろう。

阿古滝の岩壁沿いに左に進んでいくとテープがチラホラ出始めて、阿古滝道に出た。
この阿古滝道を辿るもところどころ不明瞭。
テープがちょこちょこついていて踏み跡も出てくるが“あっちの尾根へトラバース、こっちの尾根へトラバース”みたいな感じで「この踏み跡どこに向かってるんや、、、これは忠実に尾根沿いに降りる方が良いんちゃうか、、、」と迷いつつも最終的には無事に矢納谷出合いに着いた。
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下山完了。

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以上、簡単ですが山行記録でした。

巻きの多い沢でしたが、巻道もちょこちょこ悪く高巻きになることが多かったです。
上多古川は紅葉の時期がとっても綺麗と聞いたので、また秋頃に山上ヶ岳まで行く計画でのんびり1泊2日の遡行もしてみたいなと思います。
快適に泊まれそうな場所もチラホラあったし、なにより景観よく明るい沢でした。


私事ですが、ここ最近仕事を変えて大阪に引越しました。ほぼ座り仕事でそれに加えて仕事がおもしろくて家に帰ってからもパソコンをカタカタしたり調べ物。運動は週に1、2回気分転換にクライミングジムに行く程度で山に行くにしては完全に日頃の運動不足。
この記録を書いてる今現在は筋肉痛で全身痛い、、、笑
ここ何回かの山行は毎回そうだ。行くたびに今まで感じなかった体力的なトレーニング不足を感じる。日頃のトレーニングが足りないということは情熱が燃えてないことと直結している気がする。

僕にとって山登りやクライミングをすることは、自分自身への挑戦とか探究の方法のうちのひとつだったんだなと思います。(、、、大袈裟ですね。笑)
今は挑戦や探究の方法の取り方が、山から仕事に変わっていって、ここで少しだけ方向転換なのかもしれません。
山登りを始めた21歳から10年経ち、立てた目標を落とせたことも落とせなかったこともそれぞれ多いけど、良い期間だったな。

方向転換とはいえ、立てた山の目標はきっちり回収していきたいし、山もクライミングも、そこでできた人との繋がりも、大好きなことに変わりはないので良いバランスを探りつつその時その時に1番重要だと思えることに心と時間を費やして行こうと思います。
さて次に行く山行はどんな山行になるだろうな。ワクワク楽しみです。

比良 明王谷〜口ノ深谷

◎山行日     令和3年7月31日
◎メンバー  野間、岩瀬た、OKD(記)
◎行程  
        7:10  駐車場出発
         8:00  三ノ滝
         9:00  口ノ深谷出合
       10:20  13m滝
       12:00  岩間10m
       12:50  15m滝
       13:20  登山道
       15:20  駐車場

○橋のたもとから入渓。水は冷たい。
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○いきなり泳ぐ岩瀬君。冷たいのにようやるわぁ。
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○二ノ滝。ヌメる。。朝一やしちょっと緊張した。
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○三ノ滝は滝裏をくぐる。水量は少ない。
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○三ノ滝を登攀。ここもヌメる。タワシでゴシゴシ。
振られ止めにハーケン1枚とカム1個。
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○セカンドの野間ちゃん。果敢に登る。
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○透き通った水。魚もそこそこいた。
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○口ノ深谷に入ってすぐの滝。
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○倒木が多くてまぁまぁ荒れていた。いつかの台風の影響なのか。
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○サクサク登る。
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○13m滝。くぐる女子と見守る男子。
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○観察中。結局巻いたけどね。
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○蛙を捕まえてご満悦。
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○尻尾を掴んで2人の方に放り投げたら岩瀬君は驚いて尻もち。野間ちゃんは「無理無理無理無理」と叫んでいた。内心「悪魔」「コ○ス」と思ったらしい。ごめんね〜。
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○攻める女子と巻くオヤジ。
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○岩間10m。岩のトンネルくぐり。迷路のよう。
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○ガシガシ登る男子。ええ顔。
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○ラストの15m滝。
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○ここはバンド伝いに抜けられる。ここを過ぎたら平流となり最後は登山道に出て遡行終了。
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◎まとめ
当初、紀伊半島の泊まり沢の予定だったが天気予報がいまいちっぽかったので、急遽日帰りの比良でまだ入った事のない口ノ深谷に行くことにした。
沢はいつかの台風の影響か荒れた部分も多く、倒木を乗り越えたり蜘蛛の巣にやられたり難儀した。
また巨石やゴーロも多くて乗っ越すのに体力を削られ、思ったよりも遡行に時間かかってバテた。

でもやっぱり沢は癒されるし、のんびりと泊まり沢に行きたいなぁと思う山行でした。
同行のお二人ありがとう。蛇を投げてゴメンね。



















十津川水系 小黒谷遡行

山行日 2021年7月27日
山域 十津川水系 小黒谷
活動内容 沢登り
メンバー T口(L)、Y田、SMB(記録)
行程
6:30駐車地
7:40入渓
11:40遡行打切り
13:50駐車地
 
お久しぶりです、そして初めまして。
昨年末に入会したSMBです。
拙文失礼します。

〜前置き、経緯〜
 少し私の事についてお話しさせていただきます。
 もともと趣味で登山をしておりましたが、私が神戸山岳会の門を叩いたのは、サバイバル登山家服部文祥の著書を読み、彼のYouTubeチャンネル楽園山旅を視聴し沢への憧れを抱いた為です。
 しかし、彼の著書やチャンネルにはほとんど登攀要素はなく、自分にはテンカラやイワナの皮剥ぎぐらいの知識しかありませんでした。
 そしてT口さんに沢をやりたい意向を伝えると、クライミングの道具を揃え、教本で用語やロープワークを覚え、そしてゲレンデが血塗れになる程の熱血クライミング指導が始まりました。
 仕事中にゲレンデでの練習を思い出し手汗を握り、夜中に大フォールの夢を見て飛び起きた時に、何か思ってた感じと違うと気付きました。
 しかしその後10aをオンサイトし、その時の景色や達成感に酔いしれ、今まで味わった事のない山の楽しみ方を覚えたのです。
 そして今回念願の沢デビューを果たしました。

〜入渓〜
 初沢のデビュー戦は十津川水系の小黒谷でした。
 今回リーダーのT口さんとY田さんに同行させてもらい、リーダーから沢登りのなんたるかを教授いただきました。
 適地にて前泊し、日の出とともに入渓ポイントへ出発。
 駐車地に他の車は無く、最後まで人に出くわすことはありませんでした。
 駐車地から少し進んだ所で養蜂が行われており、蜂の大群に遭遇、ルートを分断されながらもなんとか最初の難所、ダム湖を渡す吊橋へ。
 この吊橋、ただでさえ数十メートルの高さにあり、横幅60センチ程の狭い板の上を歩かされ、更に経年劣化で数カ所大穴が空いており、板を軋ませ足をすくませながらも何とか最初の洗礼をクリア。
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〜遡行開始〜
 小黒谷は風屋ダムに流れ込む出合いから遡行を開始。
吉岡本の沢登りルート100曰く、
『沢登り用に出来た谷で、滝のほとんどが直登出来る』
と書かれており、沢登りの何たるかを素人の自分に教えてくれる素晴らしい沢のようです。
入渓早々、鹿の白骨死体に出迎えられ、木々の鬱蒼とした薄暗い中にも、流水に木漏れ日がさす幽玄な雰囲気に、一気に沢の虜になりました。
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まず5mの小滝から始まり、5×9m斜滝、15m斜滝等といずれも楽しく直登出来ました。
そして釜を備えた5×12mの斜滝が現れたところで、T口さんから『リードする?』と声がかかり、やってみることに。
釜を泳ぎ取り付いたあとは直登し、T口さんがアッセンダーで登った後、セカンドビレイでY田さんが。
記念すべき初リードは無我夢中で、どんな風に登ったか記憶にありませんが、取り付きまでの釜の泳ぎは大変楽しいものでした。
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次の17m、13m滝ともども直登は難しく大きく高巻き滝上へ、その後20mの斜滝はT口さんがリード、SMBがタイブロックを使いアッセンダーでセカンド、最後セカンドビレイでY田さん。
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その後ナメ床小滝が続き、私の2度目のリードは流水をまたぎながらのものでした。
支点を取ろうと岩の出っ張りにスリングをかけましたが、流水の勢いに耐えきれず外れ、そのまま支点を取ることなく直登。
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途中、『支点も取れずこのまま落ちたら』という嫌な考えが頭をよぎり身体が固くなりましたが、今考えても仕方ないと気持ちを切り替えることが出来、これがゲレンデでの練習の成果なんだろうなと感じました。
その後18m滝をT口さんがリードし、植林小屋が見えたところで遡行を打ち切りました。
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〜下降ルート〜
ネット上の山行記録に下山が核心と書かれていたので覚悟していましたが、切り立った谷の中腹を延々歩いた後、急峻なモノレールの線路沿いを吊橋まで下降と中々骨が折れました。
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 〜総括〜
今回は初沢、初リードと盛り沢山な内容で、様々な事を学んだ濃厚な山行となりました。
沢登りをして特に感じたのは、釜での泳ぎや滝のシャワー、足場のヌメり等々数え切れませんが、自然の力を全身で感じられる自分にとっての癒しやライフスタイルとなり得るというものです。
この様な経験をさせていただいたT口さん、Y田さん、ありがとうございました。
T口さんから各地の沢情報を聞き、行ってみたい沢がいくつも出来ました。
また泊沢なども経験してみたいです。
食料調達(岩魚)は任せて下さい。
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備忘録
・遡行図は紙で持参。
・滝の音で声が通らないので、笛でしっかり意思疎通をとる。
・クライミングやロープワークの練習頑張ろう。

後立山縦走 欅平~唐松岳~白馬岳

こんにちは。石橋です。

以前モンブランへともに登った仲間から今年も白馬においでとお誘いを受けたのが6月のこと。
昨年白馬に行って以来、後立山周辺の縦走はかなり気になっていたし、日本を出る前に誘ってくれた仲間にも会っておきたかったので急遽だが行くことにした。

富山から電車を乗り継いで黒部の玄関口・欅平へ。初日はここから一時間ほど歩いた先にある祖母谷温泉に幕営し、日付が変わるころに行動開始して唐松岳までの標高差約2000mの稜線を登る。二日目は唐松山荘で幕営して、三日目に目的地の村営頂上宿舎を経て、四日目に大雪渓から下山するというのが当初の計画であった。
3泊4日の山行で特に二日目は標高差2000mを11時間かけて上がるのだから当然荷物の軽量化は必須の課題である。事前に調べた情報では祖母谷から唐松までの登りはそのほとんどが下りに使用されるルートで、八方尾根から登ってきた登山者が唐松山荘に一泊するか、もしくはトレイルランナーが日帰りで八方から欅平まで抜けるときに使われる下山道としての記録が多かった。小屋の情報などで一応登山道としての表記はあるものの、所要時間は11時間から13時間となっていた。普段の僕の山行スタイルはウルトラヘビー山行。持てるものは持つ、必要なものは担ぐ、というまさに30年は遅れようスタイルである。しかし今回ばかりは苦手な軽量化をして、ウルトラライト山行たるものやってみるべきなのではないかと装備や食料を厳選してゆく。いつもは適当に詰め込む行動食も一日ごとに分けてパッキングする徹底ぶりである。しかしあれもいる、これもいる、などという言っているうちに当日に水も詰め込むと体感30㎏近い重量になってしまった。これでは普段の歩荷と変わらないではないか。ウルトラライトなどまだまだその背中すら見えてこない。
厳選したものを詰め込んだ85Lザックを背負って阪急梅田のバスターミナルから夜行バスに乗り込み、富山へと向かう。富山からは早々にとやま鉄道に乗り込み、魚津で富山地鉄に乗り換えて宇奈月温泉に降り立つ。ここからはかの有名な黒部峡谷鉄道に乗って黒部の玄関口である欅平を目指す。観光客に混じって規格外の荷物を引きずりながら小さなトロッコへねじ込み(快く載せてくれた乗り合わせた方々に感謝!)、黒部の急峻な谷の中をゴトゴトと音を立てながら一時間半ほど走ると欅平に出る。
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ここには黒部第三発電所があり、上部の仙人谷ダムと合わせてその建設が非常に困難を極めたものとして知られている。またこの欅平の奥手には奥鐘山があり、奥鐘山西壁は多くの難ルートが存在する日本屈指のビッグウォールである。
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この日は連休最終日ともあって駅の周辺は多くの観光客がいたが、駅から離れるにつれて人もまばらとなり、祖母谷温泉では20人ほどに出会ったがそれも昼を過ぎるころには皆、欅平の方へと帰っていった。
祖母谷温泉は温泉小屋から上流側に200mほどいった河原からボコボコと湧き出す100℃近い硫黄泉をそのまま引っ張て来た厳選かけ流しの温泉小屋である。河原から真夏でもモクモクと吹き出す湯気を見ていると、この地に電力開発のために隧道を掘ることがいかに大変かが理解できる。そんな熱い湯に太陽が照り付ける中入れるはずもなく、日が暮れるまで読書しながら待つ。日が暮れ始めていざ入ってみると最高に気持ちがよい。男湯はテント場から丸見えではあるが、別に気にすることでもない。気が付いたら一時間も湯に浸かっていた。体もポカポカになったところで明日に備えて早々にテントに戻った。
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11時半に寒さで目が覚める。標高1000mを下回っていたため気を抜いて何も被らずに寝ていたら意外と冷え込んでいた。こう見えて超ビビりな僕。夜中に単独で唐松へ登る計画を自分で立てたくせに、この時、めちゃくちゃビビってた。以前黒部の山賊という本を読んで以来、山の怪談や地域に伝わる伝説なんかを調べていたから、それを思い出して余計にビビり散らす。一瞬登山道が不明瞭なんて理由をつけて帰ってやろうかとも考えた。恐怖と凍えで体の震えが止まらないのでとりあえずもう一度温泉に入ることにする。満天の星空の下で温泉に浸かって体を温めると、だんだん恐怖も和らいでいけるような気がしてきた。気を改めて準備にかかる。

7月26日 天候 晴れ時々曇り
1時半、祖母谷温泉を出発して祖父谷方向へと歩み始める。一応怖いのでスマホでお気に入りの曲をかけながらどんどん進む。しばらく沢沿いを歩いて、次第に斜面へと上がってゆく。標高が低いので背丈ほどのブッシュが続くが、登山道の草は一部を除いて綺麗に刈られていた。あとから猿倉の遭対協の方に聞いた話だが、ちょうどこの前の日に草刈りが完了したばかりだったのだという。本当に登山道を整備してくれる方には頭が下がる思いである。この瞬間、恐怖で逃げ帰ったときの言い訳も消えてしまったのも確かだが…。
1420mのコルを経て唐松岳から餓鬼山、奥鐘山まで続く稜線の上に出る。それまでは谷の中の真っ暗な森の中だったが、稜線へ出ると木々の間からわずかに月の光が差し込むと幻想的な世界が広がる。そこからさらに30分ほど進むと餓鬼ノ田圃に出る。餓鬼ノ田圃は餓鬼山の中腹に位置する湿地帯で貴重な動植物が数多く残されたいわば最後の楽園である。真っ暗なので全容はわからなかったが確かに登山道の脇に湿地帯が見られた。さらに30分で餓鬼山避難小屋まで抜けてそこから1時間で餓鬼山まで抜けた。このころにはあたりも次第に明るくなり、行く先には五竜岳から唐松岳、白馬岳まで続く稜線が見える。背後には剱岳が浮かび上がり、何とも幻想的だ。
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餓鬼山の登りあたりからかなり尾根も狭くなり、餓鬼山山頂から大黒鉱山跡に下りるまでの道はところどころ崩落している。樹林があるので高度感こそないが、踏み外せば無事では済まない道を進む。
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このころ想定していたコースタイムをよりかなり早く進んでいることから、今日中に天狗の小屋まで進めるのではないかと考える。というのも、翌日27日からは台風8号接近の影響もあって少々風が強くなり、雨も降り出す可能性があった。不帰ノ嶮を風雨の中、重荷を背負って抜けるのはリスクがあるので半ばあきらめていたのだが、今日中に天狗まで進めば望みはあるのではないか...。その可能性があるならスピードを上げていくしかない。大黒鉱山跡から唐松山荘までの最後の長い登りを息絶え絶えに駆け上がる。段々と樹林の背丈も低くなり、高山植物のお花畑が広がってゆく。早足で登山道を登ってゆくと、いきなり目の前にライチョウが奇声を上げながら飛び込んできた。よく見ると数羽のひよっこたちが斜面の上へと逃げてゆく。どうやら気付かぬ間にライチョウ親子に近づきすぎてしまったらしい。ごめんよ。
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山荘手前で雪渓があった。トレースはないので注意深く渡る。
テント場を横切り山荘まで上がると唐松-祖母谷間通行禁止の案内が…登山道整備が完了する8月中旬まで通行禁止なんだとか。どおりで崩落してたり雪渓にステップが切ってないわけである。まあ特段苦労するところはなかったから良いんだけどね。
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唐松山荘到着が9時。計画では昼過ぎの到着だったのでかなり早く登れた。なけなしの3Gを使って最新の天気図を確認する。進路も定まらなかった台風8号はどうやら東北に向かうということ、台風西側は上空の風も15Knot程度なので予想したほど天候も荒れないことを確認して、不帰方面へと向かう。唐松岳を越えて、不帰のキレットへと入ってゆく。流れるガスの中に浮かぶ岩峰、壁にくっつくように咲くイワギキョウが美しい。独り寂しく夜道を歩いてきたからか、すれ違う人がいつも以上に温かく感じる。単独で山に入って気が付いたのは、いつもよりも出会った人ひとりひとりのことを鮮明に覚えているということだ。出会いをいつもよりちょっぴり大事にするのが単独行の良いとこなのだ。
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不帰の岩場はものの一時間半ほどで通過し、そこからは地味なアップダウンを繰り返す。10時間重荷を背負って登ってきた脚にこれが応える。標高差400mの急坂・天狗の大下りは唐松側から向かうと天狗の大登りになる。これまでコースタイムを大きく巻くスピードで登ってきたが、さすがにこのころになるとコースタイムを維持するのが精一杯だった。
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14時、天狗の小屋に到着。出発以来初めて座ってちゃんとしたものを食べた。天狗山荘にテント泊の予定は入れていなかったが、快く泊めてくださった。疲労から一眠りして起きると、白馬鑓が夕日に照らされ真っ赤に燃えていた。稜線まで上がるとちょうど雲海の向こうに夕日が見えて、とても美しかった。
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7月27日  天候 曇りのち雨 
朝4時半起床。昨夜明日は朝から小雨が降っているだろうと予測していたが、テントから顔を出すと雨はまだ降っていないようだった。ただ長野方面に積雲が群れを成している。崩れるのも時間の問題だろうと出発を早める。簡単な朝食を済ませ、テントをそそくさと撤収して、5時15分に天狗山荘をあとにする。飯食って寝れば疲れ知らずなのが若者の特権だ。空模様を伺いながら小走りで頂上宿舎へと向かう。白馬鑓を越えたあたりで白馬岳まで見通せた。白馬岳を飲み込む白雲が次第に大きくなってゆく。
途中、天狗山荘のテント場で一緒になった女性2人のパーティーを追い越す。五竜岳から来て、今日は栂池まで行くという。あの雲の中に突っ込んでゆくとは…何とも勇猛果敢なお二人である。一方僕は二時間かからないぐらいで目的地の頂上宿舎に転がり込む。この時間なら大雪渓から下りれるかなとも思ったが、雲の様子を見ても雨が続きそうなので無理して下りることもないだろう。それにせっかく来たのだから一日ゆっくりしていきたい。雨も降っていたので親切にも宿舎の売店で休ませていただけた。誘ってくれた知り合いは小屋の仕事もあるだろうから、待ちながら荷物をまとめ、手記に記録を残し、本を読む。そうしている間にも売店にフラフラ下りてきた知り合いに「なんでいるの!?」と驚かれてしまった。そりゃそうだ、こんな天気だもの。事前に山に入る前に悪天候で行けないかもしれないとは伝えていたので、来ないもんだと思っていたらしい。意外と早く天狗まで抜けれたこと、空模様伺いながらここまでササっと来た事を説明。驚きながらもコーヒーとチーズケーキをご馳走してくれた。今まで食べたどのケーキよりも美味しかった。
昼過ぎに雨が少し上がったタイミングでテントを設営。夕食と一緒に小屋で買った大雪渓で一人祝杯を挙げる。ここまで来れて本当に良かった。支えてくれた人と見守ってくれた山に感謝して就寝。
深夜一度目が覚める。風の音も雨の音もないのでテントから顔を出すと、綺麗に月と無数に瞬く星が夜空を飾っていた。靴を履いて稜線まで上がるとはるか遠くに雷光が見える。恐ろしいが、とても神秘的だった。

7月28日 天候 曇り時々晴れ
4時半起床。ゆっくり支度を始める。この日は台風が東北地方を横断することで風が変わり、白馬周辺では北西風~西風~南西風へと変化する。午後から南西風へと変わると太平洋上の暖かく湿った空気が流れ込むため天気が崩れるため、風が西から吹いている朝のうちに下山しようと考えていた。テントから出るとガスってはいるものの降水はなし、風もほとんどない。たまに雲の切れ間から青い空が顔を覗かせる。テント場のゴミを拾っていると小屋の知り合いが様子を見に来てくれた。宿泊客は少ないがそのあと5時半から仕事なのだという。苦労は多いようだが話を聞いていると本当に小屋での仕事が心の底から好きなのだろうなということが伝わってくる。そんな仕事を持てていることがちょっぴり羨ましい。
6時下山開始。雲の切れ間から朝日が差し込むと、雨上がりのお花畑がキラキラと輝く。雪山とは違い、山全体に命の息吹を感じれる夏山らしい光景に心打たれる。
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大雪渓は今年落石事故が多発してるということで少々急ぎ目に下る。途中すれ違う方に先の登山道の状況などを伝えながら順調に下り、8時には猿倉へと下山した。八方の湯で汗を流し、大糸線で松本へ。松本でバスの待ち時間に入った居酒屋で仲良くなったおじさんと旅の話で盛り上がり、ほろ酔い気分で大阪行きのバスへ乗り込み、楽しかった山行が終了した。

事前に調べると今回行った祖母谷~唐松岳の情報がほとんどなかったので(通行止めなのだから当たり前なのだが)、少し記載する。
例年7月中旬ごろから草刈りが入り、特に祖母谷温泉から餓鬼山までは比較的歩きやすくなる。それ以前はかなりの藪漕ぎになると推測される。祖母谷~白馬間の登山道も同様にこの時期に草刈りが入るそうだ。
祖母谷から沢沿いに上がるルートで数か所、また餓鬼山から大黒鉱山跡へと下るルートの数か所で登山道の崩落があった。通行できないほどではないが、足を滑らせると特に後者の箇所ではかなり深刻な事故に発展する場合があるため注意が必要。
大黒鉱山跡の水場は登山道から往復15分の場所にある。今回は使用していないが沢の音が聞こえたので水は十分に確保できるものと思われる。
唐松山荘下の雪渓は登山道に沿ってトラバース。スコップが置いてあったので8月に入ると小屋の人の手でステップが作られるのかもしれない(行けばステップがあるという保証はない)。

今回の山行では少々不思議な体験もした。
前述の餓鬼ノ田圃から餓鬼山へと向かっているときに熊対策でつけていた鈴が2回に分けて10秒ほど激しく鳴った。風のせいかとも考えたが、樹林帯の中で風は肌で感じるほども吹いていなかったのでいまだに何が鈴を揺らしたのかはわからない。
頂上宿舎のテント場では足音のような音が聞こえたりもした。台風前でテントを張っていたのは僕一人だったが、風でテントがはためく音や雨の音とは全く違う音だった。以前まで登山道具店で靴のフィッティングを仕事にしていたので色々なタイプの登山靴が歩くときに出す音を知っているが、この時聞こえたのは重たいフルレザーの登山靴で固い地面をゴトゴトと歩く音と、軽めの登山靴で砂利の上を歩くときの音。夜の10時頃だったので後者は小屋の人が見回りに来てくれたのかもしれないが(翌朝小屋の知り合いに聞くとそんな時間に見回りにはいかないそうだ。見回りって言ってくれた方が気が楽だったのだが...)、前者は余程こだわりのあるような人でなければ今の時代では履かないような靴である。雨風がそこまで強くない夜だったのであそこまではっきり聞いてしまうと聞き間違いということもないとは思うのだが、実際はよくわからない。
山の怪談やら伝説を調べまくってビビってたから、事態を過大評価している可能性もなきにしもあらずだが…靴の音は仮に聞き間違えても、鈴は聞き間違えることはない。それに2回も。
街だと馬鹿らしい、で済ませれるのが山だとなぜかそうは思えない。下山後、白馬の交番の横にあった遭難慰霊碑を偶然見つけて思わず手を合わせた。

そんな楽しくも不思議だった単独山行。次はどこへ行こうかな、と考えるとわくわくが止まらない。
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