2023年02月

2023.2.23-26 米子不動

2023.2.23-26 長野県 米子不動大瀑布 の記録

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こんばんは、岩瀬た です。

憧れの地、米子不動に行ってきました。
当初は入門エリアの、「奇妙の滝」「十八幅滝」「森の囁き」「氷の呟き」を登れたら満足と思って計画しましたが、どれも案外すんなり登れたので、3日目に「アナコンダ」にトライしようと意気込んだものの、先行パーティがすでに取り付いていて、後追いを良しとしない信念(というほどの信念でも無いけれど、、、)から取りやめ。
その隣にある、いかにも険悪な「コブラ」にトライするか迷ったものの結局ビビって登れず、他の滝に移るか迷うも時すでに遅くほぼ全滝に取り付いているパーティがあり、結局僕らは入門エリアにまた戻ってクライミング練習という結果。
なんだか尻切れトンボのような、「やっぱり先行パーティを待ってでもアナコンダやれば良かった。」という後悔や、「登るラインが見えたコブラに背伸びしてでも挑戦すべきだったんじゃないか、、、」と、時が経てば経つほど自分の情けなさを感じる山行となりました。

とはいえ、まぁなんかようわからんけど行って良かった。
「米子不動のバッカヤロー!」と斜上したやり場のない悔しさを、ワインをグビグビ飲みながら小声で叫んでなんとなくスッキリしてやった山行でした。
OKDさんには良い迷惑だったかもしれない。この場を借りてごめんなさい。しかしパートナーが毎度おおきにOKDさんで良かったと思っている。適当にいなしてくれるのが救いだ。
来年はやってやる。今年は年に1度の米子詣の元年だ!!

以下、思い出すのも悔しいので簡単に山行記録です。

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◎メンバー
岩瀬た
OKD


◎行程
1日目、アプローチと奇妙の滝
2日目、十八幅滝、森の囁き、氷の呟き
3日目、森の囁き
4日目、下山。

・1日目
アプローチは除雪がされていて駐車地から2時間ほどで大沢出合あたりに着く。
この除雪はマウンテンワークスという組織の試験的除雪だそう。ありがとうございます。
この日のために買ったスノーシューが楽しい。
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(スノーシュー楽しい!林道は除雪されてたので必要無かったけど。上部では有効だった。)

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(OKDさんのスノーシューは岳連フリマで500円。安い!)


さらに少し上の方まで進んでテントを張ってベースとし、さっそく奇妙ノ滝を登りに行く。
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(奇妙ノ滝)

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(奇妙ノ滝。良い名前や。)

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(長い)

50m1ピッチで、初めての長さでしんどかったがなかなか爽快。入門でこれかー!と思う。

1日目はこれにて終了。


・2日目
まずは十八幅滝を登る。
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(十八幅滝)

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(十八幅滝、1ピッチ目。)

良い感じ。

少し移動して森の囁きにOKDさんがリードトライ。
順調に登って行くが、落口のベルグラを懸念していったん辞めようとする。しかし漢の意地を見せてもう一度トライ。がしかしやはり手が出ず選手交代。
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(リードOKD)
ここ1番は僕に任せろ!とヨーヨースタイルで上がってベルグラに突入するも結構緊張。
必殺投げ縄スリングで木の枝にプロテクションを取ってそろりそろりと登り切る。


続いて氷の呟きも登る。
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(氷の呟き)

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(氷の呟き)

ベルグラが悪かったが、案外きっちり登れてるぞ!手応えあり!2日目終了!


・3日目
前日のテントの中で今日はアナコンダにトライすることを決めていた。
アナコンダへのアプローチの道中、1パーティー先に行っているのがわかり「どうかルート被りませんように、、、」と祈るも、滝が見えたらすでにアナコンダを登り始めていた。がーん。
2つの滝が迫力がある。でかいなー!
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(左がアナコンダ、右がコブラ)

後ろからも1パーティー来ており、米子の人気具合がよくわかった。
アナコンダを登ってるパーティに声をかけてから、右のコブラを眺める。どうやったらこうなるのかよくわからぬシャンデリア群の上に何十メートルあるのかわからないバーチカルが続いている。
登ることを想像するとビビってしまう。
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(コブラ。極悪に見える。)

それでもじっくり眺めていると、徐々に登れそうな線が見えてきた。
まず真ん中の短いバーチカルを登って岩とのコンタクトラインに逃げ込み、そのまま凹状のコンタクトラインを進んで傾斜が落ちたところで段々になってるところを使って氷の表面に出る。あとは気合と根性と脱力のバーチカルを登れば良い。
と、そこまで想像したところで本当にそれができるのかビビってしまい、加えてアナコンダのパーティの人に「さっき変な音してたよ」と囁かれて、「辞める理由はこれで決まり!!」とコブラは諦める。

そのあと龍神の方に回り込んで、そこでは後続してたパーティが準備していたので少しお話しして、龍神も悪そうに見えたので登ることは諦めて、カチカチ山に行ってみようかと元来た道を降りる。
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(龍神)

いったんベースに戻るとだんだんやる気がなくなってきてしまって、カチカチ山ももう良いかとなってしまう。
僕は"なんかもう酒でも飲んでゴロゴロしたいぜ"みたいな気分になっていたけれど、OKDさんが森の囁き行こうと言ってくれたので昨日と同じエリアへ。
道中、米子の滝群が見えるのだが、カチカチ山や正露丸にもクライマーの姿が見えて、土日の米子不動の人気具合を痛感。みんな朝早くからやってきてやる気バッチリだ。それに比べて、何を登るかボンヤリしてた僕らは、、、と思ってしまうが後の祭りだ。
(当初の目標は達成していたので、ガッカリしてしまう必要もなかったけれど。)

気を取り直して、森の囁きをまた登る。少し立ったラインで登ってみたり、落口のベルグラでベルグラ登りの練習などをしました。


・4日目
下山。
今回のために買ったばかりのスノーシューが壊れる。がーん。


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以上、山行記録でした。

次は2泊3日で行く予定!今回で概念や雰囲気もわかったので来てよかったです。
OKDさんグダグダ言ってしまってすみませんでした&ありがとうございました!!!
ファイヤー!

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(左から、権現滝、不動滝、黒滝、カチカチ山、味とも、味とも右、正露丸、百草丸、のはず。)

2023.2.18 錫杖岳 左ルンゼ

2023.2.18 錫杖岳 前衛峰 北東壁 左ルンゼ の記録

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こんばんは、岩瀬た です。
先々週すっかり魅了された錫杖岳に、今回はOKDさんと日帰りで行ってきました。
ガイドブックの中では最も難易度の低い前衛峰の左ルンゼ。結果はなんと敗退。

前回の雪崩に引き続き、なかなかタダでは帰らせてくれない錫杖岳です。

以下、山行記録です。

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◎メンバー
岩瀬た
OKD


◎行程概要
5:00 中尾高原駐車地 出発
6:30 クリヤの岩舎
7:30 左ルンゼ取付
9:30 グラスホッパー分岐点 左ルンゼ1P目
10:30 下降開始
11:30 取付
14:00 駐車地


◎行程詳細
4:30、眠い目をこすりながら準備して5:00出発。
クリヤ谷のトレースはかなりしっかりしている。
3ルンゼへ伸びるトレースの途中から北東壁側に回り込んで、7:30取り付きに到着。
トイレなどしたかったが傾斜がまぁまぁあって落ち着けなかったので我慢して登ることにする。

出始めは下地が雪なので、ロープは出さなくても良さそうな溝状になった部分を登ってみるが、ザックが邪魔で登りにくかったので荷上げをすることにして空身でトライ。
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(ズリズリ登り。)
登ってみると抜け口が案外悪かったので、荷上げをしてからフォローは一応ビレイして登ってもらう。

その次のピッチもノーロープで上がるが、これまた足場が崩れて若干嫌な感じだったのでロープを放り投げてフォローはビレイ。

そこでグラスホッパーとの分岐点に出た。
左手にグラスホッパーを見て右の滝が左ルンゼの1P目だ。

結氷薄いが繋がっていた。良かった。
ラインは、"1、左側が傾斜が緩いが支点は微妙そうな感じ" "2、正面は立っているが支点は取れそうな感じ"のどちらか選べる感じ。
ここはOKDさんがリード。正面を登るそう。

滝に取り付いて1つ目のスクリューをとって少し登ると左足を乗せてた氷がガバッと大きく剥がれた。
これは焦るだろうと思うも、案外冷静に続けて登って、2つ目のスクリューを打つ。
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(リードOKD)
さらに少し登って「しんどい!!」と言いつつモゾモゾしてると思いきや、グワーと言いつつ落ちた。あー!!残念!!落ち着いてるように見えたし良い感じだったのに!

落ちると同時に、リーシュをつけていたはずのアックスがビレイしている僕の方に飛んできた。
気持ちは「キャッチしてやるぜ!」だったが、身体は正直に避ける体制をとっており、変なポーズでアックスを見送る。
歩いて取りに行けるところでアックスは止まってくれてセーフ。

どうやら、グリップレストの石突にアックステンションをしようとした瞬間に落ちて、墜落の衝撃荷重でグリップレストが折れてしまったようだ。アックスはノミック。
派手に落ちたことと、アックスが壊れたことのダブルパンチでしょんぼりするOKDさん。
ド、ドンマイです、、、、
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(しょんぼりOKD)

なにはともあれ怪我も無くスクリューがバッチリ効いていたので良かったです。

ひとまずアックスを回収して、壊れたアックスで登るのもなんだかなぁということで降りることに。こういう時は素直に降りるに限るのだ。

スクリューを回収するために僕も少しだけ登ってみましたが、正面は普通に結構立ってたので、左側から登った方が良かったかも。
無事にスクリューを回収して、残置の捨て縄など利用しつつ取り付きまで懸垂下降3ピッチ。

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(また来よう)

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(帰りませう)

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(悲しみの前衛峰)

小雪の降る中駐車地まで。

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以上、山行記録でした。

僕もノミックを使っていますが、アックステンションは僕も石突部分にかけていたので、今後は見直そうかなと思います。

OKDさん、また再チャレンジしましょう!!次は左ルンゼがうまく終わったら継続してグラスホッパーもやってみたいです!


2023.2.11-12 御在所岳 2ルンゼ

2023.2.11-12 御在所岳 2ルンゼ の記録

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こんにちは、岩瀬た です。
OKDさんと会外友人がんちゃんと御在所2ルンゼに行ってきました。

本当は大峰で氷瀑調査と思っていたのですが、あいにくの天候が続いたので気持ちの良い結氷は望み薄いだろうということで、これまた望みの薄いながらも氷瀑が無くてもどこかしら登れる御在所岳に変更。
簡単に記録しておこうと思います。

以下、山行記録です。

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◎メンバー
岩瀬た
OKD
がんちゃん


◎行程概要
・2/11
6:20 駐車地出発
7:15 藤内小屋 テント設営
9:00 マイナス滝
10:15 2ルンゼ奥又
13:00 奥又の壁
14:00 奥又の壁のコル(?)
15:30 藤内小屋 テント泊

・2/12
6:00 起床
8:00 下山開始
9:30 駐車地


◎行程詳細
・2/11
凍ってるんかいなと思いながら集合して出発。
OKDさんとがんちゃんは初対面だ。果たして気が合うのかと思いながら運転交代しながら一路鈴鹿へ。

雪のない駐車場で準備をして入山。
ほどなくして藤内小屋に着く。
がんちゃんは藤内小屋に泊まったことがあるらしい。なんと2食付き5700円となかなかリーズナブルなようで、そんなことは全く知らずにテント泊としたことを少し後悔。
まぁでも良い。テントで過ごすのは好きだ。暖かいお布団も好きだけれど。

2ルンゼが凍ってるのかわからなかったので、ダメだった場合は中尾根を登ることにして準備して出発。
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(がんちゃんがドローンを持ってきていたので氷具合の偵察に飛ばすが強風で断念。ドローンおもしろい!)

2時間ほどで2ルンゼ最初の滝のマイナス滝に到着。
結氷薄いがどうにか登れそう。
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(マイナスの滝)

まずはOKDさんがリード。
昨年、OKDさんと長野さんとここに来て、その時もOKDさんがリードしたけれど登れず交代したことがある。そのリベンジマッチだ!(氷結具合は全然違うけれど、、、)

垂直部に差し掛かって少し登るが、やはりだいぶ結氷が薄いのでアンパイをとってチェンジ。残念!
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(もう少しのところでチェンジ!)
「ここ1番は僕に任せろ!」と僕がいかせてもらう。

乗越部分がバランス悪く、岩に乗った氷も足を置くと剥がれたりしたのでスクリューを2本固め打ちして慎重に乗越す。
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(右か左か迷うところだ。左を選択。)
ホッと一息でビレイ点へ。
2人も登ってきて合流。

奥又の滝はだいぶ痩せていたが登れなくはなさそう。
下部はベルグラ登りの良い練習になりそうだ。
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(下部が薄い!)

ここでOKDさんに雪辱を果たしてもらうべく、
「いけそうですよ!傾斜もキツくないし、大丈夫ですよ!」
とリードをオススメするが、結果的に僕がリードをすることになり、改めて壁をじっくり見ると、悪そうに見えてきた。
他人事だとホイホイ勧めることができるが、自分事となるとそうもいかない。不思議なものだ。

そうこうしてるうちに、がんちゃんの知り合いのAさんとRさんがやってきた。噂に聞くタフなギャルのお二人だ。
挨拶をして、結氷悪いねーなどと会話を交わし、飴をいただいた。
ありがとうございました。

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(記念写真)


さて、リラックスしたところでクライミングスタート。
左か正面か選べたが容易そうな正面から行くことにする。

出だしが結氷悪くて叩くとポコポコなる氷に半分しか入らないスクリューで気持ちばかりのプロテクションを取って、壊れるなよぉと思いながらゆっくり壁に立ち込む。
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(慎重に慎重に。)
少し上がって氷が厚くなったところですぐさま2本目。安心できた。
そこからは快適なクライミング。

ここ最近登った氷の中ではかなり柔らかく、柔らかい割にアックスは深く突き刺さらない感じで、こういう氷もあるんだなぁと思いながら登る。
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(出だし以外はウキウキクライミングだ。)

無事終了点に着いてトップロープをセット。
OKDさんとがんちゃんも1本ずつ登る。
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(OKD)

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(がんちゃん)

思いの外早く登れたので、この後どうしようかなぁと相談。
2ルンゼを抜けて登山道に上がるのも良いけれど、滝の右にあるルンゼもなにがあるのかわからず楽しそうだったので行ってみることにする。
(カモシカルンゼだと思っていたけれど、後で調べてみたら違った。奥又の壁を登っていたよう。)

そのルンゼ、出だしは気持ちよく雪を漕いでいく感じだったけれど、岩をのっこす辺りから悪くなってきて、岩壁の基部沿いにトラバースするところからロープを出すことになる。
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(出だしのワクワク感良い感じ)

ここはたまたま先頭だった僕がリードさせてもらう。
トラバースが終わると少し立った凹角。
凹角は良い具合に登れるようになっていて、細い木にランナーを取りつつ登り、登り切ったコルでピッチを切ってOKDさんとがんちゃんを迎える。40mⅢ級くらいのピッチだった。
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(がんちゃん)

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(OKD)
そこからは歩いて進むことができて、ロープを畳んで進むと3ルンゼに向かうトレースに辿り着いた。
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(山頂(なのかな?)が見える)

トレースを下ってテントに戻って今日の行動終了。

夜ご飯にキムチ鍋とチーズリゾットを食べて、気温も全然低く無く快適に眠ることができました。
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(海鮮豚餃子キムチ鍋2回転)

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(チーズリゾット。上手にできました。)


・2/12
この日はどこかでドライの練習でもしようと話していたけれど、2ルンゼと奥又の壁で多少満足していたのと、朝起きると天気もイマイチな感じだったので、朝ごはんを食べて下山としました。

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以上、山行記録です。

今週末はどこも天気が悪そうで、どこ行くか結構迷いましたが近場で登ることができて良かったです。良い山御在所!
サーフィンの格言に、「フィールドに立つことが大事。」というのがあるそうです。

OKDさん、がんちゃん、毎度ありがとうございました!








2023.2.4-5 錫杖岳 3ルンゼ その2



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谷川です.
2023年2月4-5日で,岩瀬さんと錫杖岳の3ルンゼに行ってきました.
時間,装備など詳細は岩瀬さんの記録にあるので,僕は自分が感じたことをそのまま書き連ねます.

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錫杖岳は,漫画「孤高の人」を読んでから憧れの山であった.
北アルプス全山縦走の最後の山で,主人公がフィギュア4も交えたテクニカルなフリーソロで未踏ルートを登っていた.
今回は入門の3ルンゼだけど,それでも憧れの山に取り付けるのは嬉しくもあり,自分の実力が通じるか不安でもあった.

大阪からは5時間ほどのアプローチ.
深夜に槍見温泉周辺の駐車場に到着し,仮眠をとる.
SAエリアのトイレにダウンを忘れ,岩瀬さんをざわつかせるも,結局車内で見つかった.
おっちょこちょい長谷川の2つ名を賜った.

結局ほとんど寝れず,行動スタート.最初はトレースがあったが,北沢出合からは3ルンゼに向かって斜面をラッセルした.
少し平らなところでテントを張ってデポ.
幕営地から見る前衛壁がおどろおどろしく,本当に登れるのか不安だ.
眠いし,お腹減ったし...

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それでも壁に近づいて3ルンゼの中を見ると行けそうだと感じた.
迫力のある側壁と突き上げるルンゼが最高に格好良い.
テンション上がってきたぜぇぇぇぇぇ!!!

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1ピッチ目,2ピッチ目はラッセルと傾斜の緩い氷であったのでフリーで抜けた(ピッチ数は「新版アイスクライミング」と同様に表記しています).

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3ピッチ目,リードでいかせてもらう.中間部のチョックストーンが結構難しい.2回ほど上り下りしてホールドを探る.
最初はチョックストーン直下のハングから突破しようと考えていたが,ハングから左手のフェース出るところが悪い.
初めから左手のフェースを行った方が良さそう.
左手のフェース上をアックスで探り,1つ1つホールド見つける.徐々に登るイメージを固まってきた.
よし,行ける.
1手目,左手ショート順手で1cmほどのカチにアックスをかけ,足を上げる
2手目,右手ショート逆手で1cmほどのフレークにアックスを横がけしてさらに体を上げる.
3手目,チョックストーンの左側のベルグラに左のアックスを優しく刺す.
4手目,チョックストーンと壁の間に右のアックスを差し込む.これで安心!

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4ピッチ目は岩瀬さんリード.岩穴を登って行く.
楽しい!って言いながら登って行くので見ているこちらも楽しい.
でもフォローでは気が抜けて変なムーブして疲れた.というかベルグラで普通に緊張する.
こんなルートを生き生き楽しく岩瀬さん,流石だ.

5ピッチ目は僕リード.チョックストーンの左の氷を登る.厚い箇所なら10cmほどの厚みがあるし,氷結も良いのであまり怖くはなかった.

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(氷はこんな感じ)

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岩瀬さんが格好良い!アルパインクライマー長谷川!とめっちゃ褒めてくれた.
尊敬する岩瀬さんからそんなふうに褒められると口元が緩む.とても嬉しい.おっちょこちょい長谷川でなくなってよかった!

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チョックストーンを超えると,さらに上にチョックストーンが見えた.6ピッチ目のだろう.
このルート,チョックストーンだらけだな.
ピッチを切ろうか迷いながら,とりあえずチョックストーン直下まで行く.
左手は人工ルート,右手はフリーのルートらしいと思い出す.
右いけそうだな.疲労もないからこのまま行こう.
岩瀬さんには申し訳ないけど,でも登りたいという自分の気持ちを大事にしたかった.
壁を目の前にすると怖いと思うことの方が多いのだけれど,今回はとても楽しい.
恐らくチョックストーンはボルダーチックで,普段のジムの感覚と近いのだろう.
しっかりオブザベして,イメージを固める.
右側のルートは,よく見ると3ピッチ目のフェースより良いホールドが多い.
それを繋ぎながら上がっていき,チョックストーンと壁の間にアックスを差し込んだ.
これで安心,さあ上がろうと顔を上げると粉吹雪が顔面を直撃した.やべ,息できなくなる.
一旦顔を下げ,アックスにぶら下がってレスト.バラクラバを上げる.やり過ごしてから登ろうと思ったが,一向に粉吹雪が止まない.
2回目,待っても仕方ないから正面突破!しかし,目が開けられず押し戻され,もう一度アックスにぶら下がる.
3回目,目をつむりながらエイヤで上がろうとすると,左アックスで刺してた氷雪が壊れた.なんとか岩間のアックスで保持し,またぶら下がってレスト.
岩間のアックスのグリップレストにどんどん雪が積もり固まり,握れなくなってくる.次がラストチャンスかな.
4回目,左のアックスをよく分からないところに刺して正面突破を試みる.やっぱり吹雪がきつい.
これ以上はきついので,右の側壁に垂れるスリングでA0した.そのまま雪壁を登り,灌木で終了点とした.
あーあ,やっちまった.けどA0したポイントを見ると,そこだけ竜巻のように吹雪が滞留していた.
フォローの岩瀬さんもアバババババヤバイヤバイ言いながら登ってきた.

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(竜巻のような吹雪がずっと落ち口に滞留していた.なんとか岩瀬さんが這い上がる)

こんな事もあるんだなあ,ゴーグルはすぐ出せるようにしなきゃなあ.
余裕があったらグラスホッパーも継続したかったが,繋がっていなかったので今回はやめた.
でも下部の岩とベルグラのパートを越えれば登れそう.もっと強かったら行くんだろうな.もっと強くなりたい.
グラスホッパーはやはり格好良いルートだな.いつか絶対登ろう.その時は3ルンゼから継続して登りたい.

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(グラスホッパー左ルート?)

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(グラスホッパー右ルート?の取り付き)

2日目は快晴.青空を突く前衛壁の格好良いことよ!!
見ていると,他の山登ってる場合じゃねえなと思えてくる.
岩瀬さんも通いたい!と連呼している.同じ気持ちなのが嬉しい.1ルンゼも2ルンゼもいつかやろう.

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昨日の夜は30cmほどの降雪があり,本日は快晴.普通なら雪崩を警戒するところである.
しかし,昨日会心の登りができたこと,格好良い壁を目の当たりにして新たな目標ができたこと,仲間も同じ志を抱いており会話に夢中になったことですっかり頭が一杯になり,警戒を怠っていた.
そんな状況で注文の多い料理店を見に北沢を登っていたら,案の定雪崩に飲み込まれた.

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飲み込まれる前の数秒で,あ,これは生きれるやつだと感じた.流量はそれほどでもない.
それでも雪に埋もれながらゴロゴロ横回転で落ちていった.視界は完全に雪で覆われていた.
アックスは絶対離さないと握り直す.
腕で顔を覆いエアーポケットを確保する.
この下何もないよな,
などと考えていたら流れがとまり,起き上がることができた.
「大丈夫ですかーーー!!」まずは叫んだ.辺りを見回すと,上方で岩瀬さんが起き上がっており,安心する.
次の雪崩がないとも限らないので,急いでデブリから離れる.
岩瀬さんと顔を見合わせると,感覚が麻痺っているのかお互い笑いが込み上げる.
不謹慎だが,そうでもしないと,やってしまった,また多くの人を不安にさせてしまう,次に同じことがあったらどうなる?という不安で押し潰されそうであった.
岩瀬さんがいてくれて本当によかった.
幕営地に戻り休んでいると,まさに青天の霹靂,雷のような音が鳴り,1ルンゼで雪崩が起こっていた.
あそこは今朝取りついているパーティがいたが,手こずっていたので1ピッチ目にいるはず,雪崩は最終ピッチ周辺,大丈夫だろう.
そう思ったが,岩瀬さんは安全確認,場合によっては救助のために雪崩装備を持って向かうことを提案した.
確かにもしものことを考えると行くべきだ.この人の判断はいつも的確で,早い.
ダッシュで1ルンゼに向かうと,今朝付けたトレースが完全に埋まっていた.
周囲を見渡すと,1ピッチ目の上部からちょうど懸垂用のロープが垂れてきた.
声をかけると,大丈夫,今日は危ないからやめる,とのこと.
無事で本当によかった.
その後の下山中も,1ルンゼは何度も音を立てて崩れていた.
これはトラウマになりそう...1ルンゼの上部氷柱登っている時なんか,このことを思い出して生きた心地がしないだろうな.

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(中央の白い線が1ルンゼ)

下山中,帰阪中はずっと雪崩対策について話していた.
帰阪後,岩瀬さんからお薦めされた「アルパインクライミング考」を読んでみた.
一番最初の話が雪崩の話で,なんとタイムリーなんだろう.
横山さんたちは池の谷ガリーで雪崩にあったそうだが,その時は焦りで思考が一杯だったらしい.
僕らの場合は興奮で一杯で,警戒を怠っていた.どんな感情にしても,それだけで頭が一杯になることは命取りである.

これから家族もできる.
年を重ねるごとに,仕事でも私生活でも責任は増え,何かあった際に被害を被る人が増える.
冬山を辞めた方が良いのではないか.

そう迷っても,気がつけば山のことを調べている.
妻は,辞めなくても良いのではと言ってくれる.

まだ結論は出ないが,いずれにしても今シーズンはやり抜く.
そこで同じことを繰り返さないよう,他の事故も起こさないよう,準備し,気を引き締めよう.

2023.2.4-5 錫杖岳 3ルンゼ

2023.2.4-5 錫杖岳 3ルンゼ の記録

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こんにちは、岩瀬た です。
今週は谷川くんと錫杖岳に行ってきました。
1日目は3ルンゼ、2日目は他のルートを偵察。

錫杖岳は、横山ジャンボさんの「アルパインクライミング考」にも紹介されていて、この本は僕のフェイバリットでもあるので、その舞台にやってきたと思うと心の底からワクワクしてしまう。

1日目の3ルンゼは、初めてのチリ雪崩を受けまくりながら、谷川くんが難しいピッチを全部こなした。(僕にも残しといて欲しかったなあ!!笑)
2日目の偵察では、昇温甚だしい中で欲を出して冬の"注文の多い料理店"を見てみようと取り付きまで行った結果、雪崩に飲まれてしまいました。
60mほど流されましたが運良く2人とも無事で、反省すると共に、結果的には、良い経験となりました。

以下、山行記録です。

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◎メンバー
谷川
岩瀬た


◎装備
・50mロープ x2
・スクリュー
・カム #0.5〜#3
・その他


◎行程概要
・2/4
4:00 中尾高原口バス停駐車場 出発
6:10 クリヤの岩舎
6:40 1550m地点 テント設営・ギア準備
7:40 出発
8:30 3ルンゼ入口
12:30 3ルンゼトップアウト〜グラスホッパー上部氷柱基部へ
13:30グラスホッパー上部氷柱基部 下降開始
15:00 3ルンゼ入口
15:15 テント場 泊

・2/5
5:00 起床
7:30 偵察出発
8:10 1ルンゼ取り付き
9:10 注文の多い料理店 取り付き 雪崩
9:30 折り返し開始
9:50 テント場 休憩 安否確認出発
10:30 1ルンゼ取り付き 安否確認
11:20テント場 撤収 下山開始
12:30 中尾高原口駐車場


◎行程詳細
・2/4
レンタカーを走らせて一路、錫杖へ。
中尾高原口バス停の駐車地で少し仮眠して4:00出発。

クリヤ谷にはしっかりとトレースがついていた。
錫杖沢の岩小屋に泊まるつもりだったけど、ラッセルに難儀しそうな気がしたので前衛峰手前の傾斜の緩いところにテントを張ることにして樹林帯のラッセル開始。
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(ラッセルラッセル。思いの外沈まない。)

今シーズンよく行った八ヶ岳に比べて当たり前だが雪質や雰囲気が全然違い、あ、なんか山だな。という気分で進む。少し湿って重みのある雪だ。
僕は真冬の北アルプスに来るのは今回が初めてで、経験の少なさを感じる。

1550m地点の良い場所にテントを立てて、7:30、曇った朝にドーンと佇む前衛峰に感動しながら3ルンゼ取り付きに向けて出発。
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(ラッセルラッセル)

8:30ごろに取り付きについて、一息ついた後、ルートに入る。
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(3ルンゼ入口)

良い具合に雪がついていたのでしばらくはフリーで進み、最初のチョックストーンのところからロープを出す。
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(ここはフリーで上がる)

1ピッチ目、谷川リード。
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(1ピッチ目谷川。どこにいるのかよくわからないが、チリ雪崩の中だ。)

チョックストーン部分で結構モジモジしつつ、チリ雪崩の中を乗越していく。
フォローで登ると、ビレイしながら見てた感じよりも悪くて、ベルグラを使いつつジャミングも交えながら思いっきりA0して登ることになった。おぉ谷川くんナイスリードと思う。
チリ雪崩も頻発。ここ以降チョックストーンの乗越しがあるたびにチリ雪がグルグル渦巻いてる中を登ることになる。
落ちてきたチリ雪崩が巻き上げられてゆらゆら揺れる光景はなんとも不思議だ。なんだか少し夢のよう。

2ピッチ目、岩瀬たリード。
いくつか見た記録の中でも印象的な、トンネルくぐりのアトラクション的なピッチ。
出だしは思いの外足場が崩れて難儀したが、立体的で楽しいピッチだった。
背中を壁に当て、氷にアイゼンを当て、おすわりステミングで抜ける。
プロテクションはカムで良い感じにとれた。(ダイさんとヨッシーさんの記録にも書いてあった#3のカムがよく効きました!)
トンネルを抜けて少しラッセルし、洞窟のようになってるところでピッチを切る。風もなく暖かい良い場所だ!


3ピッチ目、谷川リード
これまたチョックストーンをベルグラ登りだが、岩の隙間に氷が良い感じに張っていて割と安心して支点を取りながら登る。
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(うーんカッコいい!)

チョックストーンを乗越してもなかなかビレイ解除のコールがかからず、なにしてるのかなぁと思いながら洞窟の中で待つ。結構ロープが出て行く。
50mいっぱい伸ばしたところでビレイ解除のコール。
フォローしてみると、ベルグラ登りは案外足場があってスッと行けたが、そのあとしばしのラッセルをはさんでもう一つチョックストーンの乗越しがあって、谷川くんどうやらそこも続けて抜けて行ったよう。
2つ目のチョックストーンは、左に残置支点がいっぱい打ってあり、思わずそこを登りそうなものだけれど、ロープは右を乗越して行っている。
結構被った乗越しで、僕がリードならここでいったんピッチ切ってるなと思い、谷川くんやるなぁと思う。
取りついてみると、これまた案外良いスタンスがあって見た目よりも悪く無かったが、ひょいと体を上げると、抜け口で渦巻くチリ雪崩に襲われる。
「うわ!アバババババ!!見えない!!アババ!ちょっと!やばいってこれ!!全然見えない!!アババ!!」となる。ゴーグルをつけてないことを深く後悔。
チリ雪崩が一度落ちてきては巻き上がって渦巻き溺れてしまいそうな中、被っているので簡単には降りることもままならず、必死のパッチでのっこす。
いやこれリード結構キツかったんちゃうか!?と思いながら登って谷川くんと合流。
そこはもう3ルンゼのコルだった。難しいところのリードは全部谷川くんに持っていかれた!!やられたー!!
でもナイスリード!
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(アバババの後。)

グラスホッパーも見てみようと言うことで少し登って見てみたが下まで繋がっておらず、時間もまぁ降りても良いかという時間だったので氷はまた今度ということにして同ルート下降に移る。
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(グラスホッパーはまた今度)

15:00、4回の懸垂下降で取り付きへ。結構スムーズに降りてこられた。(下降でもアババババは避けられなかった。)

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(下降開始)

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(下降)


テントに戻って待ってましたののんびりタイム。
あまーいミルクティーのウィスキー割を片手に、「腹減った。。。」といつも呟いている谷川くんの作る具沢山キムチ鍋2回転+雑炊でお腹をパンパンに満たして、今日の3ルンゼのことや少し深掘りな各々のことなど話して、パタパタとテントを打つ雪の音を聞きながらあたたかな眠りにつきました。


・2/5
今日はレンタカーを返す都合もあり、いくつかのルートの偵察だけして早め下山のため、のんびり朝ごはんを食べて7:30出発。昨日は曇っていたが今日は雲ひとつない素晴らしい快晴だ!
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(高級テントカミナドーム)

ひとまず2ルンゼと1ルンゼを見に行くことにする。
昨晩は雪が降っていたので夜のうちにトレース埋まっちゃってるかなと思ったが、すでに何パーティか登りに来ているようでトレースはしっかり残っていた。すぐに前衛峰基部に着く。
3ルンゼの入口から基部沿いにラッセルしつつブラブラ。
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(左下からが2ルンゼ、右が3ルンゼ)
極悪非道な2ルンゼを見上げて、いつか行かなくちゃなぁと話しながら、輝く氷柱の1ルンゼへ。

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(1ルンゼ)

1ルンゼの1ピッチ目は氷があるにはあるが薄い。
取り付き凹角の左側の壁をちょうど登り始めたパーティがいて、挨拶しつつ少し見学。
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(1ルンゼ取り付き)

ジッと見てるのも変なので、さらに左に向かって進む。

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(P2が空を突く)

左方カンテの取り付きこのあたりかなぁと以前に夏に来たときのことなど思い出して、せっかくなら注文の多い料理店も見たいと思い、さらに左へ。時間はちょうど9時ごろ。
気持ち良く開けた北沢を、ジブリのもののけ姫に出てくるコダマのような小雪が時おりツーっと転がり落ちて行く中、膝高のラッセルで詰めていく。
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(注文の取り付きへ。この後、雪崩に飲み込まれる。)

雪が眩しくて日焼けも気になる(僕は結構日焼けに弱くて、あんまりやけると熱が出る)のでゴーグルとバラクラバでしっかりガードして登り、ようやく注文の多い料理店の取り付きに到着。
冬のこの壁を見ることができたと嬉しい気持ちでラインを眺めていると、視界の奥、北沢大滝に灰色の煙が舞うのが見えた。

一瞬、ただのチリ雪崩だろうと思ったが、煙の中に大きめの雪がゴロっと顔を覗かせて、ようやく何が起こってるか把握。距離は200mといったところか。

「雪崩れ!やばいやばい!」
とすぐ後ろにいた谷川くんに叫んで、どうしたら良いかわからないけどとりあえず壁に近寄ろうとするも、2、3歩動いたところで壁に向かってもとうてい間に合わないし意味がないことを悟り、どうしようもないが雪崩れに正対して身構える。
飲み込まれる瞬間、「終わったな。」と思った。

1発ドンと突き飛ばされ、前のめりに雪の中をグルングルンと回転し始める。
1回転目は「このまま埋まっちゃうかな。」と他人事のように思う。
2回転目は「案外視界が明るいな。バタつく方が良いのかな。」
3回転目で「なんかまだ埋まってないな。これワンチャン助かるかも。っていうか岩とかにぶつかって身体折れたら嫌だなぁ。」
4回転目で「どうにかして体制を立て直したいな。」
と思いながらもう半回転したら流れの外に吐き出された。
立ち上がって、自分が今どこにいるのか、谷川くんはどこにいるのか若干テンパっていると、
「大丈夫ですかー!!」
と谷川くんの声が聞こえ、どこから聞こえてきたのかわからないままにとりあえず
「大丈夫!!」と叫ぶ。
ぐるっと見回すと僕から20mほど下に真っ白になった谷川くんが立ち上がっていた。
無事だ。良かった。

とりあえず安全なところに移動して、びっくりからの笑いが出てきてお互い無事でギアも無くしてないことを確認。お湯など飲んで一息つく。

雪崩に気づいてから飲まれるまで5秒、流されてたのは15秒くらいだろう。
僕で60mくらい、谷川くんで80mくらい流された。
規模もそんなに大きく無かったからか運良く雪崩の末端に辿り着いてことなきを得たといったところだ。
ゴーグルとバラクラバをしていたからか、流されながらも視界も呼吸もひとまず確保されていて割とよく覚えている。
無事で何よりだ。

一息つくとちょうど偵察折り返しの時間だったので、下山に取り掛かる。
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(樹林帯に逃げ込んで一息。)

1ルンゼを登ってるパーティのビレイヤーに「大丈夫でした?」と聞かれたりして、いやぁヤバかったです。などと答えながら、すごすごとテントに戻る。

テントで一服しながら片付けをしていると、にわかにカミナリのようなバリンバリンという音が響き、前衛峰を見上げると1ルンゼの上部が真っ白な雪煙を上げて崩壊していった。
谷川くんと顔を見合わせて、唖然として崩壊を眺めていたが、さっきの1ルンゼのパーティやばいんじゃないのということで急いで準備して安否確認に向かう。
谷川くん早い早い。全然追いつけなくて情けない気持ちになりながら、いろんなケースを想像しながら登り返す。あれ持ってないな。これ持ってないな。と、なにが代替え品になるか考えながらちょうど30分くらいでようやく1ルンゼ基部にたどり着いたら、懸垂下降で撤退してくるクライマーの姿が見えて、怪我がないか聞いたら大丈夫とのことだったのでホッと胸をなでおろしてまたテントに戻りました。
テントに着いたらまた何回も1ルンゼがバッカンバッカンと音を立てて崩れていく。
まぁさすがにさっきのパーティももう大丈夫だろうということで見にいったりはせず。

11:30、テントを片づけて、元来た道を歩く。
12:30、駐車場に到着。

下山完了。

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以上、山行報告でした。

結果的に、すごく勉強になった今回の山行でした。
思い返しながら記録を書きましたが、当たり前の雪崩インシデントの兆候がいくつもあって、反省です。
谷川くんと、これは今後にちゃんと活かさなとねと話しました。

とはいえ、錫杖岳は魅力に溢れた山だったというのも正直なところです。
3ルンゼは正直結構甘く見ていたけどピリッとするところもあって、「アルパインはこれだな!」と思える場所だったし、下から眺めたいくつものラインはどれもカッコよくて、どれも登ってみたい。今回流された北沢だってもちろん詰めてみたい。
今シーズン続け様に八ヶ岳に行ったように、次からは錫杖岳でもいろんな経験をしてみたいと素直に思える良い山でした。

良くも悪くも貴重な体験ができたと思います。
なにごとも、進むも一手、引くも一手だ。正解は無くとも間違いを踏まないようにしないとな。

谷川くんありがとうございました!



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