滋賀県高島市にある山の道「中央分水嶺・高島トレイル」。琵琶湖と若狭湾を同時に望むことができる、自然豊かなロングトレイルに大先輩の松本さんと須川で縦走してきました。高島トレイルはマキノの愛発越えから今津の山を経て、朽木の三国岳に至る80㎞のロングコース。藪に埋もれていた古道や山道を地元の方が整備して2007年に開通しました。自然に囲まれた未舗装のトレイルを長く歩けるのが魅力です。一般的に夏路で6日かかるコースです。
■0日目 12月29日
29日の仕事納めの後に急いで家に帰り、忘れ物がないか最終確認して、22時30分の京都発JR湖西線で安曇川駅まで。駅近くの公園でテントを張らしてもらい、前夜祭の祝杯を上げる。
■1日目 12月30日
7時39分 安曇川発バス
9時30分 桑原橋
11時43分 三国岳
13時8分 岩谷峠
15時33分 地蔵峠
16時19分 休憩舎着
7時39分安曇川駅発のバスで朽木支所まで、そこから市バスで高島トレイル終点の桑原橋まで。市バスの運転手さんが「今年は近年まれにみるほどの雪が少ない」と教えてくれる。
桑原橋には全く雪がなく、年末年始も暖冬の予報。桑原橋から三国岳までは急な登りが続く。久しぶりに重たい荷物を担ぐので、ザックのベルトが肩に食い込んで痛い。天気は良くブナ林が一面に広がり気持ちよい。地蔵峠から40分ほど下った休憩舎の東屋の下が今日のキャンプサイト。予報では今晩から全国的に雨。食事は味気ないが、夜はアルファー化米と袋麺で朝は棒ラーメンと餅が一つで全日通した。19時頃から雨が降ってきたが、東屋のおかげで快適に眠ることが出来た。
■2日目 12月31日
6時50分 休憩舎発
8時13分 クチクボ峠
11時8分 おにゅう峠
12時51分 百里ヶ岳
13時55分 木地山峠
14時46分 桜谷山
16時4分 与助谷山着
昨日の夜からの雨が続く。気温は高いので寒くはない。雨対策をして出発。小雨になったり本降りになったり、青空が見えたりと山の天気は目まぐるしい。三国岳からナベクボ峠までは「高島トレイル」と書かれた黄色いテープはないので、ルートファインディングに集中しなければ、すぐにルートを外してしまう。眺望もない雨の中を無心に歩く。高島トレイルは80㎞あるが、1000メートルまでの低山ばかりでアップダウンは比較的少ない。百里ヶ岳山頂で一瞬の晴れ間がでて、虹がかかり癒される。予定では水場のある木地山峠で泊まる予定だったが早く着いたので距離を延ばす。木地山峠で水を汲み与助谷山まで行き山頂でテントを張る。雨は降り続き、風も出てきてテントの中もビチャビチャに濡れてしまう。
■3日目 1月1日
6時50分 与助谷山発
7時45分 駒ヶ岳
10時8分 横谷峠
13時40分 桜峠
15時41分 二ノ谷山
17時 水坂峠着
天気予報では朝には雨が止むはずだが、その気配はない。雨の中を駒ヶ岳へ、このあたりから雨からみぞれに変わってきた。13時ごろにやっと天気が回復し若狭湾が見える。横谷峠から桜峠までの間で送電線を超える箇所があるが、工事中のようで通行止めになっている。迂回することもできないのでそのままロープをまたぎ通過させてもらう。桜峠でいったん集落まで降りる。二ノ谷山から歩いていると、急に立ち眩みのような揺れがあり目の前がくらくらする。後でこの揺れが能登半島地震であったことを知る。朽木からこの辺りは携帯電話が入らないので、ラジオを持っていくことをお勧めする。暗くなる一歩手前で水坂峠に到着。隣に小川が流れており、すぐに水が汲める。雨は止んだが、濡れたままの寝袋の中に横たわり、眠れない夜を過ごす。ここでやっと高島トレイの中間点。
■4日目 1月2日
6時40分 水坂峠発
9時50分 武奈ヶ嶽
13時33分 三重嶽
15時6分 大日尾根
16時50分 大御影山着
水坂峠から武奈ヶ嶽まで、いきなりの急登を登る。このあたりから雪が積もっている。日本海に近い今津の山になるので、雰囲気は一変する。雪は20cm位しか積もっていないのだが、ラッセルが辛い。雪で足が上がらず体力が消耗し歩行スピードが極端に落ちてしまう。疲労も限界で、松本さんに遅れてしまう。松本さんは重荷力もあり、強く頼もしい。今日は天気が良く、日本海の若狭湾がすぐ近くに見える。
晴天の雪山登山でテンションは上がるが体が追い付かない。抜土まで行く予定だったが、大御影山の山頂で日が暮れだしてしまう。夏なら抜土まで行かないと水場がないのだが、雪は豊富にあるので水にすることが出来るので大御影山山頂でキャンプとする。夕日が美しい至福の時間。
■5日目 1月3日
7時40分 大御影山発
9時15分 抜土
10時50分 大谷山
11時47分 寒風
13時20分 マキノ高原温泉さらさ着
ラッセルに時間がかかるので、高島トレイル始点の愛発越えまでの予定は諦めて、マキノ高原温泉さらさまでのルートに変更する。この辺りは、琵琶湖と日本海が同時に見えて眺望が最高。ブナ林の葉も落ちて遠くまで見渡せる。途中で熊?ような足跡が続いている。大谷山手前に石庭という場所があり琵琶湖の水蒸気が雲海を作り絶景。寒風について、やっと自分たち以外の登山者に出会う。ここからは、雪もない道をマキノ高原温泉さらさまで快適に下る。温泉で5日分の疲れを癒して湖国バスでマキノ駅まで行き。新快速で神戸まで帰る。
■おわりに
最近はクライミングや沢登りなどばかりで、荷物を担いで長期で山に泊まることはなかった。今回のロングトレイルでは衣食住を全て担いで歯を食いしばりながら、日の出から日の入りまでひたすら歩いた。一歩一歩の小さな積み重ねでどこまでも進むことができる。久しぶりに山で生活することによって、登山という行為は、なんでも自分でやらないと生きられない「シンプルな遊びだな」と改めて感じた。雨が降っても雪が降っても地図とコンパスを頼りに、目標に向かって進む。生き抜くために知力と体力をフル活用して行動する。努力するからこその感動がある。登山は奥が深く人生そのものだ。
今回、ご一緒くださった松本さん。30年近い付き合いだが、久しぶりに一緒に山に入ってみてやっぱり山仲間は一生の財産だと感じた山行でした。ありがとうございました。また山に行きましょう!