<メンバー> M田、A木

寒気の南下、冬型気圧配置になりつつあった当日、山は行ってみなければ分からないと出かけてみました。

個人的に大山は好きな山であり、毎年冬には登ったり滑ったりしていました。弥山尾根や中ノ沢等の登攀、弥山沢や八号沢の滑降経験はあったものの、そういえば別山は縁がなかったことと、A木君に大山北壁で登りたいルートを聞いた際、別山の名前があがっていたので、今回計画することに。

前日21時に神戸を出発、大山寺駐車場に到着した頃には雪が舞っていましたが、降り始めたばかりのようであり、11日の降雪はなかったようでした。
12日の天気は、高層天気図によると寒気の南下と、昼以降は完全な冬型気圧配置になるとの予想でしたが、午前中までは完全な冬型にはなっておらず、なんとか持つかもしれないと、少ない可能性にかけて就寝しました。

5時30分に起床、降雪は10㎝程度で雪は小降りになっていました。
朝飯を食べ、6時50分頃に駐車場を出発、神社へ向かう途中の雪壁から、今年の降雪量のすごさを実感しました。例年の4倍あるそうです。

P1010926
※高く積みあがった雪壁



P1010928

※豪雪で埋もれた大神山神社



こんな天気の中、北壁を登攀する物好きな人が、自分達以外にいるのかと考えていましたが、元谷小屋に到着すると6名程のクライマーがいました。その中に、神様K藤ガイドがおり、早速話を伺ってみることに。どうやら予想は同じで、午前中勝負、問題なのは登攀後の稜線で、風速20m以上の暴風雪になるだろうとのことです。

別山中央稜の登攀自体、難易度はそれほどないのですが、いくつか気がかりな点を上げると、①初見であること、②普段より降雪量があること、③天気が下り坂であることなどでした。A木君に関しては、今シーズンが初の雪山でしたが、年末から継続して雪山山行を重ねており、ほぼ問題ないと考えていました。(実際、その通りでした)

万全の条件ではありませんでしたが、午前中に勝負を賭けてみることに。我々以外の方も同様のようでした。

P1010930
※本日の北壁



小屋で登攀準備を整えて出発。中央稜取り付きまでは、脛~膝ラッセル。A木君は率先してラッセルをしてくれました、元気です。

P1010940
※中央稜登攀開始



中央稜末端に9時頃到着、下部は完全な雪稜となっており、ダガーポジションの同時登攀で進みます。今年は降雪量が多いと聞いていましたが、中央稜は完全に雪に覆われており、上部岩壁帯も真っ白です。岩壁帯が始まる辺りから、スタカットに切り換え、私がリードすることに。

岩も枝も草付も氷雪で覆われ、区別が付かないため、ダブルアックスで氷雪を落としながらホールドを探ります。残置支点を探すよりも、自分で支点構築したほうが早く、楽しい登攀でした。イボイノシシは使えますね、凍った草付にばっちり効いていました。

P1010944
※一瞬の晴間、中央稜を見下ろす



P1010946
※厳冬期の大山北壁、素晴らしい景観
(弥山尾根を登るパーティーが見えます)


基本、天気は悪く、常に降雪状態だったのですが、一瞬だけ雲の切れ間から晴間が見えました。このとき、中央稜から見下ろす元谷や、大山北壁の美しさに言葉も出ませんでした。

P1010947
※雪で覆われた上部岩壁帯を望む







一瞬の晴間が終わった瞬間から、本来の冬山の姿が戻ってきました。風雪が段々と強まってくるのが分かります。登攀自体は粉雪の処理以外は特に問題なかったのですが、最後のピッチを登るころには、完全に周囲の視界が閉ざされていました。

P1010951
※牙を剥いた大山



別山の頭に出るころには、完全ホワイトアウト、視界は数m先しか見えない猛吹雪の状態です。とりあえず吊り尾根へ降り、稜線へ向かわなければならないのですが、ここで初見ならではのミスを犯すことに。別山の頭へ登ってきた方向を西→東と思っていたところ、どうやら東→西が正解だったようです。最初に吊り尾根と思って下降したナイフエッジは、どうやら別山の西側稜線だったようで、再度別山の頭に登り返し、コンパスで方向を確認することに。

丁度その頃に後続パーティーが最終ピッチを登っていたのが見えたので吊り尾根について大声で尋ねたところ、どうやら懸垂支点があるとのことなので、付近を探してみることに。すると、カラビナが少し見えたので、掘ってみると残置のロープも見つけました。これで吊り尾根の位置が判明したので、A木君とコンテでナイフエッジを渡り切ることに成功。A木君はメガネが曇り、視界はほとんどなかったようです。

大山側に出たら、一般登山道には赤旗が立っているため、これに沿って下山しようと考えていたところ、2つ目のミスを犯すことに。下山すべきところ、反対に山頂方面へ歩いていました。猛吹雪で視界は数m、山頂小屋が現れるまで気付きませんでした。小屋は2階まで埋まっており、窓から入れるか確認したところ鎖錠されており、窓ガラスを割らない限り入れそうにありません。

今後、天気は下り坂であり、仮に小屋に入ったとしても当分出れそうにないこと、最悪を想定し、スコップ・ツェルトを持参しており、いざとなればビバークできること、大山一般登山道は赤旗が立っていること等を考慮し、早急に下山することに。A木君にコンパスを出してもらい、北西方面へ歩くと、早速赤旗を発見、以下コンパスと赤旗を頼りに6合目まで無事に高度を下げることが出来ました。風雪を避けるため、一般登山道をそのまま下山し、大山寺駐車場へ戻りました。

今回の山行は反省点も多かったのですが、あらためて冬山の厳しさを教えてもらいました。吹雪の中、視界数mのホワイトアウトのときに頼れるのは、やはりコンパス、しかもアナログが一番使いやすいことも再確認しました。(GPSがあればなお安心だと思います) また、スコップを持っていたことも安心感に繋がりました。いざとなれば雪洞を掘ることができるからです。

通いなれた大山でしたが、久々に厳しかった!A木君、心配させて申し訳なかったです、これに懲りずまた行きましょう。

<M田>