御在所岳 前尾根                  平成24年4月某日  T、U


 7年ほど前、雨のため断念した前尾根に行く事にする。ネットで調べるも、これと
いったルート図もなく、エイ、ヤーで行く事にする。少ない情報によるとクラックが
多いようなので、カムとナッツ類(お菓子ではないですよ)を忘れずに持参する。
 前夜20時西宮発。新名神にのり、甲賀土山ICで降り、鈴鹿スカイラインを
くねくねと曲がりながら登山口に到着。深夜だと言うのに暴走族の車で賑やかい。
 暴走族に負けないように宴会をしてから寝ようとするが、何故か私のシャツの
袖にあの、人懐こい愉快な山仲間が・・。これは木の枝か?ナメクジか?いや、
その正体は我が山仲間ヒル君ではないか! 早速、箸で摘まみ、火あぶりの刑に
処す。合掌。しかし1匹いると言う事は他にも仲間が大勢この新調したアライの
エアライズ2に潜んでいるかもしれない。しかしこのエアライズ2は実に快適だ。
各寸法も絶妙で、3人でもぎりぎり可能だ。(大男では辛いが)ふと見た山渓にも
なんとベストバイになっている。極めて同感だ。昔スタンダードだったエスパースは
何処へ消えて行ってしまったのか・・。エスパースの寸法設計には疑問が多かった。
表示の人数では快適に使えない。あと5センチ、10センチの差が使いやすさに
影響する。さて、ヒル君も火葬にしたので残り香の漂うテントでアジの干物を炙る。
しかしU女史はビビッてしまい、その後食欲がなくなってしまった。合掌。
 暴やんが一晩中走り回るので時々起こされたがなんとか熟睡し、翌8時出発。
藤内小屋に9時着。さて、ここからが問題だ。前尾根が何処にあるのか判らない。
 恥を忍んで(?)ベテラン風のおじさんグループに質問する。「あー、前尾根に
行きたいんですけど、どっちですかねえ?」するとおじさんたちは親切に写真などを
持ってきて教えてくれた。よし、大体は判った。登山暦30年の自信を取り戻し、
意気揚々と教えてもらった道を進む。あたりはガスガスで目印の藤内壁も霧の中だ。
 これが前尾根だろうと検討をつけて登っていくとP7と思しき壁でガチャガチャ
音がする。お、これはクライマーの発するあの独特の音ではないか!おーマイゴッド。
神に感謝して音を頼りに進むとおばさん2名とおっさん1名がクラックに取り付いている。
 しばらく観察するが今にも雨が降り出しそうだ。しかも巻き道が明瞭に壁を巻いている。
「巻こう」相方に指示し、巻き道を登るとあっという間にP6の上まで来てしまった。
巻き道はありがたいが、これでは何をしに来たのか判らない。気持ちを切り替え、
登攀装束に身を変え、P5と思しき緩やかな岩尾根を登る。傾斜は緩く、ピンは
少なく、あたりはガスで、岩質はもろい石灰岩のようだ。やすりのように靴がよく

KC3Z0029P4?KC3Z0024P4?KC3Z0032P3上部


ちびりそうだ。初登なので慎重を期してアンザイレンして登る。30mほど行くと
立派なステンのアンカーに到着。ルートを通して、ピンは古く、又少なくほとんど
信用できない。アンカーだけは立派なのが2個、4個と打ってある。中間支点も
整備してもらいたいものだ。P4、P3と超えて、その間にコンテのパーティ抜かされ
たりしながらやがてP2と思しき立塔の岩に来た。これか、通称「ヤグラ」は。
 本で見たより難しそうだ。しかもピンも少ない。クラックは豊富なのでナチュプロ
は使えるが距離があるので使いすぎに注意だ。意を決して取り付くと、クラックの
内部が濡れていて気持ち悪い。カムの小さいやつがビレイしている相方の腰にぶら
下がったいるので一旦取りに降りる。装備満タンで再度登る。しんどい。何故しんどい
のか?判った。ザックを背負っている。中にはコンロやナベ、水、銀マット、リンゴ、
巻き寿司など、重たいものが満載だ。なんとかこれを外したいがどうしようもない。
 こうなったら落ちないように登ろうと、ナチュプロとエイドで誤魔化しながら少しずつ
ずり上がる。上部の乗越しで詰まる。ハーケンが2箇所あるが一つはぐらぐらだ。
 こんなんに命を預けるのはいやだなあと右の方を見ると、ありました。銀のボルトが。
神助ではと感謝しながらこのボルトの利用法を考え、おもむろにもっとも手堅い
アブミの利用を決定する。アブミに立ちこんで乗越し、しばらく上がるとぴかぴかに
光る大きなステンレスアンカーが。この落差は何なんだ? ここからは相方の
引き上げに苦労する。相方の荷物も重い。さば寿司やプリンやら登攀に関係ない
品物が一杯入っているはずだ。相方を力いっぱいで引き上げ、なんとか二人で
上までやって来られた。めでたしめでたし。
 終了点からは踏みあとを10分ほど歩くと、稜線の縦走路に直角にでた。
 ハイカーで一杯だ。15時。そこからは進路を右に取り裏登山道から藤内小屋
へと歩いて戻るが、疲れのためか足が棒になった。最後に湯ノ山温泉「希望荘」
で汗を流し、かやくご飯定食500円を食べてから、四日市経由で約2時間半で
西宮に戻った。

KC3Z0024P3付近KC3Z0022P3KC3Z0034ヤグラ

notes:

 30m毎の終了点には綺麗なステンレスアンカーがあるが、中間支点はぐらぐら
ハーケンや干からびたリングボルトなど、非常にしょぼい。カム、ナッツ類必携。
 今回ガスの中だったが天気が良ければ絶景のはず。昨日は晴天で、取り付きで
は2時間待ちだったとのこと。
 ザックを途中で降ろして効率よく登攀する方法を考える必要がある。ダブルロープ
なら色々応用できそうだが。シングルではなかなか上手い手が思いつかない。
 アイゼンでもよく登られているようで二本爪の跡も多い。いい練習になるだろうと
思われる。
 シュラフの中でヒル君と添い寝せずに済んだのは幸いだった。翌朝悲惨。
 最後に、楽しく登れた相方に感謝!。