冬季クライミング

宝剣岳 サギダル尾根 冬期アルパインクライミング 千畳敷カール バックカントリー山スキー

山行日
山域、ルート
宝剣岳 サギダル尾根 千畳敷カール
活動内容
冬期アルパインクライミング バックカントリー 山スキー
メンバー
藤本、長谷川、三浦 (記録)

宝剣岳

宝剣岳は中央アルプス (木曽山脈) 主稜線上にある2931mの山である。冬でも雪を寄せ付けずに聳立する鋭い岩峰は千畳敷を代表する峰である。北側には木曽駒ヶ岳があり、宝剣岳の北側で東に分岐した稜線は伊那前岳に繋がる。この伊那前岳の稜線と主稜線が千畳敷カールを形成している。南側で分岐した主稜線は三沢岳へと繋がっている。

宝剣岳と千畳敷カール。千畳敷駅から撮影。 宝剣岳 サギダル尾根 冬期アルパインクライミング 千畳敷カール バックカントリー 山スキー
宝剣岳と千畳敷カール。千畳敷駅から撮影。

千畳敷カールとバックカントリースキー

駒ヶ岳ロープウェイによるアクセスの良さもあり、宝剣岳と伊那前岳を含む千畳敷カールは山スキーが盛んである。少し足を伸ばせば木曽駒ヶ岳1や三沢岳もあり、多彩なルートを描くことができる。いくつかのバックカントリールートは駒ヶ岳ロープウェイのウェブサイトで紹介されている。

サギダル尾根

サギダル尾根は信州駒ヶ岳神社を末端とし、宝剣岳の南側の主稜線に繋がる尾根である。冬季アルパインクライミングのルートとして人気があり、短めのルートで難易度も高くなく初心者向けバリエーションとしてガイドブックなどで紹介されている。登攀に時間がかかりすぎて21時間行動になってしまった昨年の奥穂南稜2の反省を踏まえて短めのクライミングルートということでサギダル尾根のクライム&ライドを計画した。

サギダル尾根。千畳敷駅から撮影。 宝剣岳 サギダル尾根 冬期アルパインクライミング 千畳敷カール バックカントリー 山スキー
サギダル尾根。千畳敷駅から撮影。

1月にサギダル尾根を登攀し千畳敷カールをスキー滑降するクライム&ライド計画がもちあがり、メンバーの都合を合わせて山行予定を2月とした。しかし、山行予定日の前日に大量の降雪が予想されたため、雪崩のリスクを考え延期とし、3月に再計画となった。

山行直前、駒ヶ岳ロープウェイのウェブサイトに、千畳敷カールの滑走は控えてください、との記載を見つけた。事前に問い合わせたところ、スキー滑降について制限はしておらず雪崩に気をつけて、とのことだった。駒ヶ岳ロープウェイが千畳敷カールをスキー場として管理する4月より前は、管理できないため口も出さないというスタンスらしい。千畳敷カールには1週間程度降雪がなく、雪崩のリスクは低いと判断し山行を決行した。

宝剣岳 サギダル尾根 冬期アルパインクライミング 千畳敷カール バックカントリー山スキーの山行記録

菅の台バスセンター駐車場からバスとロープウェイを乗り継いで、しらび平経由で千畳敷駅に行ける。混雑時は臨時バスが出るようでバスは3便目だった。次からはルートの渋滞を避けるため、早起きして並んで始発に乗った方が良さそうだ。

サギダル尾根の登攀は、千畳敷駅から信州駒ヶ岳神社の祠まで行きそこから左側に歩き始める。シールは使用せず最初からアイゼン登行した。最初の岩稜帯は左の雪原を登れば簡単にまける。まいた先に見える岩稜帯の末端がサギダル尾根の取り付きである。ハイマツを開始点とした。先行にいた3パーティの順番待ちは2時間近くかかった。朝は晴れていたが、順番待ちの間に少しずつ雲が出始めた。

サギダル尾根取付きに向けて信州駒ヶ岳神社からアイゼン登行。 宝剣岳 サギダル尾根 冬期アルパインクライミング 千畳敷カール バックカントリー 山スキー
サギダル尾根取付きに向けて信州駒ヶ岳神社からアイゼン登行。
サギダル尾根取付き。 宝剣岳 サギダル尾根 冬期アルパインクライミング 千畳敷カール バックカントリー 山スキー
サギダル尾根取付き。
サギダル尾根取付き。 宝剣岳 サギダル尾根 冬期アルパインクライミング 千畳敷カール バックカントリー 山スキー
サギダル尾根取付き。
サギダル尾根取付き。 宝剣岳 サギダル尾根 冬期アルパインクライミング 千畳敷カール バックカントリー 山スキー
サギダル尾根取付き。

1P 藤本

ハイマツのある尾根の先にある岩稜帯に向けて登った。岩稜帯に乗り上げるのが核心か。アイゼンやアックスをかける場所が少なくていやらしい。なんとか登りきり、その先のスラブ状の岩の上部にあったワイヤーでピッチを切った。

2P 長谷川

スラブ状の岩を馬乗りで乗っ越すと2mほどのナイフリッジの雪稜になる。ナイフリッジの先は、最初藪がうるさいがすぐに快適な雪壁になる。そのまま雪壁を登り高度を上げて行くとサギダル尾根の頭に到達した。終了点はハイマツでとった。

サギダル尾根の頭の終了点。 宝剣岳 サギダル尾根 冬期アルパインクライミング 千畳敷カール バックカントリー 山スキー
サギダル尾根の頭の終了点。
サギダル尾根の頭の終了点にて写真撮影。 宝剣岳 サギダル尾根 冬期アルパインクライミング 千畳敷カール バックカントリー 山スキー
サギダル尾根の頭の終了点にて写真撮影。

サギダル尾根の頭につくとすっかり天候は悪化し、雪がパラついてきた。最短で降りられる滑降ルートであるサギダル尾根の北側のルンゼを選択した。サギダル尾根の頭から右側の稜線を進み、最初に右手に見えるルンゼである。ドロップポイントは比較的広く滑走準備には支障ない。到着して思い出したが、このルンゼは2013年の木曽駒ヶ岳北面1の翌日に滑降したことがあった。

滑降準備を整えてルンゼにドロップする。雪はパックパウダーで安心しておりられた。最初の狭く急なところを抜けると千畳敷カールのボトムまでの滑降ラインが見通せるようになる。快適に飛ばしてあっという間に千畳敷駅に到着した。

千畳敷カールにドロップ。 宝剣岳 サギダル尾根 冬期アルパインクライミング 千畳敷カール バックカントリー 山スキー
千畳敷カールにドロップ。
千畳敷カールをスキー滑降。 宝剣岳 サギダル尾根 冬期アルパインクライミング 千畳敷カール バックカントリー 山スキー
千畳敷カールをスキー滑降。

無事山行を終えた達成感と安堵感で満たされつつ記念写真を撮影して、ロープウェイとバスで下山した。サギダル尾根も千畳敷の滑降もお手軽で短めのルートだが、満足できる山行だった。

千畳敷駅まで滑降して記念撮影。 宝剣岳 サギダル尾根 冬期アルパインクライミング 千畳敷カール バックカントリー 山スキー
千畳敷駅まで滑降して記念撮影。
サギダル尾根の登攀ルートとスキー滑降ライン。オレンジが登攀ルート、赤が滑降ルート。 宝剣岳 サギダル尾根 冬期アルパインクライミング 千畳敷カール バックカントリー 山スキー
サギダル尾根の登攀ルートとスキー滑降ライン。オレンジが登攀ルート、赤が滑降ルート。

参考記録

  1. 木曽駒ヶ岳 北面ルンゼ 山スキー 2013年4月
  2. 奥穂高岳 南稜 残雪期アルパインクライミング バックカントリー 山スキー 2022年5月

2023.3.19-21 鹿島槍ヶ岳 北壁 主稜

2023.3.19-21 鹿島槍ヶ岳 北壁 主稜 の記録

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こんにちは、岩瀬たです。
この冬は、「いつか行ってみたいな。」と思っていた場所に行けている。
奥三ノ沢、摩利支天大滝、阿弥陀北西稜、中山尾根、錫杖岳、米子不動、中千丈沢、などなど、、、
有名どころばかりで、どれも良い場所ばかりだった。そして印象深い山行ばかりだった。

今回行った鹿島槍ヶ岳の北壁もいつか行きたいと思いながら、怖くてなかなか行けなかった場所だ。昨年計画を立てたものの天候不良で転戦となり、雨降る大峰の深仙小屋で「残念だなぁ。」と言いながらも少しホッとしていたことをよく覚えている。

以下、山行記録です。

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◎メンバー
長谷川
岩瀬た


◎装備
・60mシングルロープ
・スノーバー x4(3本あれば充分だったかな?)
・スクリュー x6
・ハーケン x3(使わず)


◎行程概要

・3/19 晴れ
7:15 大谷原駐車場 出発
9:30 荒沢出合 尾根に向けて取り付く
15:00 天狗の鼻 テント設営、偵察、泊

・3/20 晴れ
3:00 起床
4:15 出発
4:40 カクネ里
6:15 主稜取付、準備
6:50 1ピッチ目スタート
7:30 2ピッチ目、3ピッチ目
8:00 4ピッチ目アイス
9:30 5ピッチ目ベルグラ
10:30 コンテで登る
15:30 主稜線トップアウト、休憩
16:30 天狗の頭
18:15 テント場 泊

・3/21 晴れ
4:00 起床
6:30 下山開始
10:00 荒沢出合
12:00 駐車場


◎行程詳細

・3/19
元々は18日から入山予定だったけれど、悪天のために1日ずらして19日入山。連休万歳!
大谷原から3回の渡渉を経て天狗の鼻に向けて登り始める。
第一、第二クーロワールは雪もしっかりついて特に問題無く通過。先行パーティがいてトレースがあって楽だった。(とはいえバテた。)

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(荒沢の渡渉)

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(天狗の鼻まであともう少し)

天狗の鼻に着き、しばしベースの良い場所を探して、先行パーティ(18日から入山してたらしい。大雪だったに違いない。タフ。)に挨拶とお礼を言って整地作業。
さあ整地だ!とスノーソーとスコップを握るが、僕は頭が痛くて全然動けなかった。
たかだか2300mくらいだけれど、僕は極端に高所に弱く、おそらく登り中にあまり水分を取らないのが原因なのだが、2000mを越える山の入山日はだいたいいつもベースを張るタイミングで気が抜けるのか調子が悪くなる。食べて眠れば治るのだけれど。
ブロック壁作りに精を出す長谷川くんに甘えて僕は湯を沸かしたり頭痛薬を飲んだりしつつゆっくり過ごす。結局テント設営まで全て長谷川くんがやってくれた。情けないが、心底ありがたい。
テントで少し休むと頭痛も治まってきたので、カクネ里への降り口を見に行く。
北壁へのアプローチは最低コルからのトラバースをする記録が多いが、昨年長谷川くんが1人で偵察に来てくれていて、カクネ里アプローチの方が良いと思うと結論を出したので今回はそれに従うことにした。
昨日の降雪後、今日のうちにあらかた雪が落ちていて欲しいと願っていたが、デブリも無いしたいして落ちているようには見えない。明日大丈夫だろうか。

テントに戻り、ご飯を食べて、予定より出発を1時間早めることにして、明日の準備を済ませて就寝。


・3/20
3:00起床。
1時間以内に出発を目指していたが、結局4:15出発。
お互い距離をとってカクネ里へ降りる。ヘッデンに照らされた薄い表層雪崩の跡がちらほら見える。
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沢床近くまで降り、緊張しながら北壁に向けて雪渓をラッセル。深いところで膝くらい。

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余談だが、カクネ里は2018年に氷河認定されたらしい。
日本の氷河は全部で6つ。長野県ではカクネ里が初の氷河だ。
長さ約790m、幅280m、1番厚い部分で表面の雪約15m下に厚さ30m以上の氷があるとのこと。1年で2.6m動いているらしい。
J-stageに論文が出ているので興味がある人は是非一読を薦める。調査過程が楽しい。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/oam/3/0/3_5/_pdf
さらに余談だが、このJ-stageというサイトはあらゆる論文や考察の記事があっておもしろい。
ちょこちょこ見てみよう。
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少しずつ明るくなってきて北壁の形がぼんやり見える頃合い、谷の中でヘッドライトが動いているのが見えた。信じられないことに、カクネ里で夜を明かした人がいたようだ。スキーヤーだった。北壁の左岸側の小さな尾根に泊まれる場所があるらしい。
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(取り付きまであともう少し。明るくなってきた。)

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(カクネ里)

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(蝶型岩壁と氷のリボン)

6:15、主稜取付のスノーコルに到着。
改めて準備をして登攀開始!

1ピッチ目は僕がいかせてもらう。
スノーコルから壁に向かって右側の、灌木が顔を覗かせているところをズボズボになりながら枝を掴んで登る。結構すぐにロープいっぱいになってしまったので細い木でビレイ。

2ピッチ目は長谷川くんが行く。
ハイマツをこいでから雪面に乗り、少し傾斜が緩まったところでスノーバーでピッチを切る。
その次のピッチは尾根に乗り上げるかルンゼの滝に向かうか選べ、長谷川くんが水など飲んでるうちに3ピッチ目というかなんというか、僕が先に行かせてもらう。
尾根に乗り上げるには少々立っていてなんとなく難しそうだと思うのと、元々ルンゼの滝を登るつもりだったのでルンゼへロープを伸ばす。滝手前の側壁沿いでビレイすることにする。ハーケンでビレイ点を作りたかったがなかなか刺さらないので結局スノーバーでビレイ点とした。
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(滝の手前)

4ピッチ目、滝は長谷川くんにトライしてもらう。
ギアの受け渡しなどしている間に雪や石が滝上からビュンと落ちてくる。いやな感じだ。
さぁスタート。
10mあるかどうかという小ささだが、あとで聞く話では長谷川くんはどうやら結構緊張していたらしい。
滝に取り付くまで結構モジモジしてどこから登るか悩んでいることがうかがえる。
右側から取り付くも、どうにも悪いようで結局最終的に交代。
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(長谷川くんのトライ)

ビレイ点に戻ってきてもらい、次は僕が行く。
見た目に反してなるほど悪いと言った感じだ。
氷が微妙に下の方は崩れていて、形としてはハングみたいな形になってしまう。
おまけに氷はもろく、スクリューを打っても周りごと壊れて打ち直しということが何回か。チリ雪崩も頻発でベチャベチャになり、アックステンションを交えながらどうにか登り切る。思いの外大変だった。
滝を登ったところにある残置スリングが棒みたいになった物とスノーバーで支点を作って長谷川くんを迎える。
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(フォロー長谷川)

5ピッチ目、これも僕が行かせてもらう。
見るからに支点が取れなさそうなベルグラの草付きだ。
取り付いてみると、スクリューは奥まで刺さらないがアックスはよく効くので、氷を選んで慎重に登ればそれほど緊張せず登ることができた。
ロープいっぱい登って灌木を掘り起こしてビレイ。
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(5ピッチ目)

そこからは同時登攀に切り替えて進む。少し立ってるなと思う部分の後ではタイブロックを間に挟んだりして、本番で使うのは初めてだったのでなかなか良い経験になった。
核心のクライミングパートが終わったとは言え、天気が良く、上部がどうなってるかわからないし見えないきのこ雪や雪庇の崩壊が怖いので僕は尾根地形を行こうと言うが、長谷川くんは尾根地形は登りづらそうだしルンゼの方が早く進みやすいのでルンゼ地形を行こうとしたりして何度か意見が食い違う。適当に先頭を交代しながら進む。
結果的にはキノコ雪はほぼ無かったし崩れてきそうな雪庇も無く、ルンゼを進んだところは進みやすかった。
主稜と名付けられてるところに来てるわけだし尾根登ったらええやんと思ってたけど、ルンゼで正解といったところだ。

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(天気良し!良過ぎる!)
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(天気良し!)

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(気持ち良い)

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(最後はハイマツ漕ぎ。雪少ないんだと思う。)

15:30、ようやく主稜線に到着。風は強く無く太陽は眩しく照り付けて暖かい。
いやぁ登れるもんなんだなぁとホッとした。
遠望したり写真で見ていた北壁はぶったっているように見えていたし、憧れでもあったので感慨深い。
長谷川くんと握手して、記念撮影などしつつしばしゆっくり休憩してから天狗尾根を下降。

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(天狗尾根下降。懸垂は2回。)

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(天狗尾根からの北壁。)

18時過ぎにテント場に到着。疲れたー!アンドお腹ペコペコだ!
長谷川くんにいたってはお腹ぺこぺ過ぎて気持ち悪いらしい。僕は意外に元気で、昨日とちょうど逆な感じだ。
カレーを食べて、就寝。お疲れさまー!


・3/21
4時に起きて片付けなどして6:30出発。
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(北壁と長谷川くん。)

荒沢に降り立つところがいまいちわからず懸垂下降などしてそこだけ少し大変だった。そして暑い。
川沿いを駐車地まで歩き、12:00、駐車地に到着。

下山完了!

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以上、山行記録でした。


やってみたかったことを終えて、昼日中の青空の下をブイーンと爽快に帰る途中に聞いたブルーハーツの夢がなかなか良かった。

おれには夢がある。毎晩育ててる。
おれには夢がある。時々ビビってる。
建前でも本音でも本気でも嘘っぱちでも、
限られた時間の中で、借り物の時間の中で、
本物の夢を見るんだ。

良い歌詞だなぁとなんか改めて思う。
いつか死ぬその日まで、本物の夢を見続けたいものです。


2023.2.18 錫杖岳 左ルンゼ

2023.2.18 錫杖岳 前衛峰 北東壁 左ルンゼ の記録

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こんばんは、岩瀬た です。
先々週すっかり魅了された錫杖岳に、今回はOKDさんと日帰りで行ってきました。
ガイドブックの中では最も難易度の低い前衛峰の左ルンゼ。結果はなんと敗退。

前回の雪崩に引き続き、なかなかタダでは帰らせてくれない錫杖岳です。

以下、山行記録です。

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◎メンバー
岩瀬た
OKD


◎行程概要
5:00 中尾高原駐車地 出発
6:30 クリヤの岩舎
7:30 左ルンゼ取付
9:30 グラスホッパー分岐点 左ルンゼ1P目
10:30 下降開始
11:30 取付
14:00 駐車地


◎行程詳細
4:30、眠い目をこすりながら準備して5:00出発。
クリヤ谷のトレースはかなりしっかりしている。
3ルンゼへ伸びるトレースの途中から北東壁側に回り込んで、7:30取り付きに到着。
トイレなどしたかったが傾斜がまぁまぁあって落ち着けなかったので我慢して登ることにする。

出始めは下地が雪なので、ロープは出さなくても良さそうな溝状になった部分を登ってみるが、ザックが邪魔で登りにくかったので荷上げをすることにして空身でトライ。
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(ズリズリ登り。)
登ってみると抜け口が案外悪かったので、荷上げをしてからフォローは一応ビレイして登ってもらう。

その次のピッチもノーロープで上がるが、これまた足場が崩れて若干嫌な感じだったのでロープを放り投げてフォローはビレイ。

そこでグラスホッパーとの分岐点に出た。
左手にグラスホッパーを見て右の滝が左ルンゼの1P目だ。

結氷薄いが繋がっていた。良かった。
ラインは、"1、左側が傾斜が緩いが支点は微妙そうな感じ" "2、正面は立っているが支点は取れそうな感じ"のどちらか選べる感じ。
ここはOKDさんがリード。正面を登るそう。

滝に取り付いて1つ目のスクリューをとって少し登ると左足を乗せてた氷がガバッと大きく剥がれた。
これは焦るだろうと思うも、案外冷静に続けて登って、2つ目のスクリューを打つ。
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(リードOKD)
さらに少し登って「しんどい!!」と言いつつモゾモゾしてると思いきや、グワーと言いつつ落ちた。あー!!残念!!落ち着いてるように見えたし良い感じだったのに!

落ちると同時に、リーシュをつけていたはずのアックスがビレイしている僕の方に飛んできた。
気持ちは「キャッチしてやるぜ!」だったが、身体は正直に避ける体制をとっており、変なポーズでアックスを見送る。
歩いて取りに行けるところでアックスは止まってくれてセーフ。

どうやら、グリップレストの石突にアックステンションをしようとした瞬間に落ちて、墜落の衝撃荷重でグリップレストが折れてしまったようだ。アックスはノミック。
派手に落ちたことと、アックスが壊れたことのダブルパンチでしょんぼりするOKDさん。
ド、ドンマイです、、、、
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(しょんぼりOKD)

なにはともあれ怪我も無くスクリューがバッチリ効いていたので良かったです。

ひとまずアックスを回収して、壊れたアックスで登るのもなんだかなぁということで降りることに。こういう時は素直に降りるに限るのだ。

スクリューを回収するために僕も少しだけ登ってみましたが、正面は普通に結構立ってたので、左側から登った方が良かったかも。
無事にスクリューを回収して、残置の捨て縄など利用しつつ取り付きまで懸垂下降3ピッチ。

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(また来よう)

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(帰りませう)

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(悲しみの前衛峰)

小雪の降る中駐車地まで。

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以上、山行記録でした。

僕もノミックを使っていますが、アックステンションは僕も石突部分にかけていたので、今後は見直そうかなと思います。

OKDさん、また再チャレンジしましょう!!次は左ルンゼがうまく終わったら継続してグラスホッパーもやってみたいです!


2023.2.11-12 御在所岳 2ルンゼ

2023.2.11-12 御在所岳 2ルンゼ の記録

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こんにちは、岩瀬た です。
OKDさんと会外友人がんちゃんと御在所2ルンゼに行ってきました。

本当は大峰で氷瀑調査と思っていたのですが、あいにくの天候が続いたので気持ちの良い結氷は望み薄いだろうということで、これまた望みの薄いながらも氷瀑が無くてもどこかしら登れる御在所岳に変更。
簡単に記録しておこうと思います。

以下、山行記録です。

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◎メンバー
岩瀬た
OKD
がんちゃん


◎行程概要
・2/11
6:20 駐車地出発
7:15 藤内小屋 テント設営
9:00 マイナス滝
10:15 2ルンゼ奥又
13:00 奥又の壁
14:00 奥又の壁のコル(?)
15:30 藤内小屋 テント泊

・2/12
6:00 起床
8:00 下山開始
9:30 駐車地


◎行程詳細
・2/11
凍ってるんかいなと思いながら集合して出発。
OKDさんとがんちゃんは初対面だ。果たして気が合うのかと思いながら運転交代しながら一路鈴鹿へ。

雪のない駐車場で準備をして入山。
ほどなくして藤内小屋に着く。
がんちゃんは藤内小屋に泊まったことがあるらしい。なんと2食付き5700円となかなかリーズナブルなようで、そんなことは全く知らずにテント泊としたことを少し後悔。
まぁでも良い。テントで過ごすのは好きだ。暖かいお布団も好きだけれど。

2ルンゼが凍ってるのかわからなかったので、ダメだった場合は中尾根を登ることにして準備して出発。
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(がんちゃんがドローンを持ってきていたので氷具合の偵察に飛ばすが強風で断念。ドローンおもしろい!)

2時間ほどで2ルンゼ最初の滝のマイナス滝に到着。
結氷薄いがどうにか登れそう。
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(マイナスの滝)

まずはOKDさんがリード。
昨年、OKDさんと長野さんとここに来て、その時もOKDさんがリードしたけれど登れず交代したことがある。そのリベンジマッチだ!(氷結具合は全然違うけれど、、、)

垂直部に差し掛かって少し登るが、やはりだいぶ結氷が薄いのでアンパイをとってチェンジ。残念!
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(もう少しのところでチェンジ!)
「ここ1番は僕に任せろ!」と僕がいかせてもらう。

乗越部分がバランス悪く、岩に乗った氷も足を置くと剥がれたりしたのでスクリューを2本固め打ちして慎重に乗越す。
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(右か左か迷うところだ。左を選択。)
ホッと一息でビレイ点へ。
2人も登ってきて合流。

奥又の滝はだいぶ痩せていたが登れなくはなさそう。
下部はベルグラ登りの良い練習になりそうだ。
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(下部が薄い!)

ここでOKDさんに雪辱を果たしてもらうべく、
「いけそうですよ!傾斜もキツくないし、大丈夫ですよ!」
とリードをオススメするが、結果的に僕がリードをすることになり、改めて壁をじっくり見ると、悪そうに見えてきた。
他人事だとホイホイ勧めることができるが、自分事となるとそうもいかない。不思議なものだ。

そうこうしてるうちに、がんちゃんの知り合いのAさんとRさんがやってきた。噂に聞くタフなギャルのお二人だ。
挨拶をして、結氷悪いねーなどと会話を交わし、飴をいただいた。
ありがとうございました。

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(記念写真)


さて、リラックスしたところでクライミングスタート。
左か正面か選べたが容易そうな正面から行くことにする。

出だしが結氷悪くて叩くとポコポコなる氷に半分しか入らないスクリューで気持ちばかりのプロテクションを取って、壊れるなよぉと思いながらゆっくり壁に立ち込む。
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(慎重に慎重に。)
少し上がって氷が厚くなったところですぐさま2本目。安心できた。
そこからは快適なクライミング。

ここ最近登った氷の中ではかなり柔らかく、柔らかい割にアックスは深く突き刺さらない感じで、こういう氷もあるんだなぁと思いながら登る。
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(出だし以外はウキウキクライミングだ。)

無事終了点に着いてトップロープをセット。
OKDさんとがんちゃんも1本ずつ登る。
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(OKD)

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(がんちゃん)

思いの外早く登れたので、この後どうしようかなぁと相談。
2ルンゼを抜けて登山道に上がるのも良いけれど、滝の右にあるルンゼもなにがあるのかわからず楽しそうだったので行ってみることにする。
(カモシカルンゼだと思っていたけれど、後で調べてみたら違った。奥又の壁を登っていたよう。)

そのルンゼ、出だしは気持ちよく雪を漕いでいく感じだったけれど、岩をのっこす辺りから悪くなってきて、岩壁の基部沿いにトラバースするところからロープを出すことになる。
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(出だしのワクワク感良い感じ)

ここはたまたま先頭だった僕がリードさせてもらう。
トラバースが終わると少し立った凹角。
凹角は良い具合に登れるようになっていて、細い木にランナーを取りつつ登り、登り切ったコルでピッチを切ってOKDさんとがんちゃんを迎える。40mⅢ級くらいのピッチだった。
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(がんちゃん)

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(OKD)
そこからは歩いて進むことができて、ロープを畳んで進むと3ルンゼに向かうトレースに辿り着いた。
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(山頂(なのかな?)が見える)

トレースを下ってテントに戻って今日の行動終了。

夜ご飯にキムチ鍋とチーズリゾットを食べて、気温も全然低く無く快適に眠ることができました。
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(海鮮豚餃子キムチ鍋2回転)

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(チーズリゾット。上手にできました。)


・2/12
この日はどこかでドライの練習でもしようと話していたけれど、2ルンゼと奥又の壁で多少満足していたのと、朝起きると天気もイマイチな感じだったので、朝ごはんを食べて下山としました。

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以上、山行記録です。

今週末はどこも天気が悪そうで、どこ行くか結構迷いましたが近場で登ることができて良かったです。良い山御在所!
サーフィンの格言に、「フィールドに立つことが大事。」というのがあるそうです。

OKDさん、がんちゃん、毎度ありがとうございました!








2023.2.4-5 錫杖岳 3ルンゼ その2



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谷川です.
2023年2月4-5日で,岩瀬さんと錫杖岳の3ルンゼに行ってきました.
時間,装備など詳細は岩瀬さんの記録にあるので,僕は自分が感じたことをそのまま書き連ねます.

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錫杖岳は,漫画「孤高の人」を読んでから憧れの山であった.
北アルプス全山縦走の最後の山で,主人公がフィギュア4も交えたテクニカルなフリーソロで未踏ルートを登っていた.
今回は入門の3ルンゼだけど,それでも憧れの山に取り付けるのは嬉しくもあり,自分の実力が通じるか不安でもあった.

大阪からは5時間ほどのアプローチ.
深夜に槍見温泉周辺の駐車場に到着し,仮眠をとる.
SAエリアのトイレにダウンを忘れ,岩瀬さんをざわつかせるも,結局車内で見つかった.
おっちょこちょい長谷川の2つ名を賜った.

結局ほとんど寝れず,行動スタート.最初はトレースがあったが,北沢出合からは3ルンゼに向かって斜面をラッセルした.
少し平らなところでテントを張ってデポ.
幕営地から見る前衛壁がおどろおどろしく,本当に登れるのか不安だ.
眠いし,お腹減ったし...

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それでも壁に近づいて3ルンゼの中を見ると行けそうだと感じた.
迫力のある側壁と突き上げるルンゼが最高に格好良い.
テンション上がってきたぜぇぇぇぇぇ!!!

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1ピッチ目,2ピッチ目はラッセルと傾斜の緩い氷であったのでフリーで抜けた(ピッチ数は「新版アイスクライミング」と同様に表記しています).

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3ピッチ目,リードでいかせてもらう.中間部のチョックストーンが結構難しい.2回ほど上り下りしてホールドを探る.
最初はチョックストーン直下のハングから突破しようと考えていたが,ハングから左手のフェース出るところが悪い.
初めから左手のフェースを行った方が良さそう.
左手のフェース上をアックスで探り,1つ1つホールド見つける.徐々に登るイメージを固まってきた.
よし,行ける.
1手目,左手ショート順手で1cmほどのカチにアックスをかけ,足を上げる
2手目,右手ショート逆手で1cmほどのフレークにアックスを横がけしてさらに体を上げる.
3手目,チョックストーンの左側のベルグラに左のアックスを優しく刺す.
4手目,チョックストーンと壁の間に右のアックスを差し込む.これで安心!

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4ピッチ目は岩瀬さんリード.岩穴を登って行く.
楽しい!って言いながら登って行くので見ているこちらも楽しい.
でもフォローでは気が抜けて変なムーブして疲れた.というかベルグラで普通に緊張する.
こんなルートを生き生き楽しく岩瀬さん,流石だ.

5ピッチ目は僕リード.チョックストーンの左の氷を登る.厚い箇所なら10cmほどの厚みがあるし,氷結も良いのであまり怖くはなかった.

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(氷はこんな感じ)

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岩瀬さんが格好良い!アルパインクライマー長谷川!とめっちゃ褒めてくれた.
尊敬する岩瀬さんからそんなふうに褒められると口元が緩む.とても嬉しい.おっちょこちょい長谷川でなくなってよかった!

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チョックストーンを超えると,さらに上にチョックストーンが見えた.6ピッチ目のだろう.
このルート,チョックストーンだらけだな.
ピッチを切ろうか迷いながら,とりあえずチョックストーン直下まで行く.
左手は人工ルート,右手はフリーのルートらしいと思い出す.
右いけそうだな.疲労もないからこのまま行こう.
岩瀬さんには申し訳ないけど,でも登りたいという自分の気持ちを大事にしたかった.
壁を目の前にすると怖いと思うことの方が多いのだけれど,今回はとても楽しい.
恐らくチョックストーンはボルダーチックで,普段のジムの感覚と近いのだろう.
しっかりオブザベして,イメージを固める.
右側のルートは,よく見ると3ピッチ目のフェースより良いホールドが多い.
それを繋ぎながら上がっていき,チョックストーンと壁の間にアックスを差し込んだ.
これで安心,さあ上がろうと顔を上げると粉吹雪が顔面を直撃した.やべ,息できなくなる.
一旦顔を下げ,アックスにぶら下がってレスト.バラクラバを上げる.やり過ごしてから登ろうと思ったが,一向に粉吹雪が止まない.
2回目,待っても仕方ないから正面突破!しかし,目が開けられず押し戻され,もう一度アックスにぶら下がる.
3回目,目をつむりながらエイヤで上がろうとすると,左アックスで刺してた氷雪が壊れた.なんとか岩間のアックスで保持し,またぶら下がってレスト.
岩間のアックスのグリップレストにどんどん雪が積もり固まり,握れなくなってくる.次がラストチャンスかな.
4回目,左のアックスをよく分からないところに刺して正面突破を試みる.やっぱり吹雪がきつい.
これ以上はきついので,右の側壁に垂れるスリングでA0した.そのまま雪壁を登り,灌木で終了点とした.
あーあ,やっちまった.けどA0したポイントを見ると,そこだけ竜巻のように吹雪が滞留していた.
フォローの岩瀬さんもアバババババヤバイヤバイ言いながら登ってきた.

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(竜巻のような吹雪がずっと落ち口に滞留していた.なんとか岩瀬さんが這い上がる)

こんな事もあるんだなあ,ゴーグルはすぐ出せるようにしなきゃなあ.
余裕があったらグラスホッパーも継続したかったが,繋がっていなかったので今回はやめた.
でも下部の岩とベルグラのパートを越えれば登れそう.もっと強かったら行くんだろうな.もっと強くなりたい.
グラスホッパーはやはり格好良いルートだな.いつか絶対登ろう.その時は3ルンゼから継続して登りたい.

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(グラスホッパー左ルート?)

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(グラスホッパー右ルート?の取り付き)

2日目は快晴.青空を突く前衛壁の格好良いことよ!!
見ていると,他の山登ってる場合じゃねえなと思えてくる.
岩瀬さんも通いたい!と連呼している.同じ気持ちなのが嬉しい.1ルンゼも2ルンゼもいつかやろう.

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昨日の夜は30cmほどの降雪があり,本日は快晴.普通なら雪崩を警戒するところである.
しかし,昨日会心の登りができたこと,格好良い壁を目の当たりにして新たな目標ができたこと,仲間も同じ志を抱いており会話に夢中になったことですっかり頭が一杯になり,警戒を怠っていた.
そんな状況で注文の多い料理店を見に北沢を登っていたら,案の定雪崩に飲み込まれた.

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飲み込まれる前の数秒で,あ,これは生きれるやつだと感じた.流量はそれほどでもない.
それでも雪に埋もれながらゴロゴロ横回転で落ちていった.視界は完全に雪で覆われていた.
アックスは絶対離さないと握り直す.
腕で顔を覆いエアーポケットを確保する.
この下何もないよな,
などと考えていたら流れがとまり,起き上がることができた.
「大丈夫ですかーーー!!」まずは叫んだ.辺りを見回すと,上方で岩瀬さんが起き上がっており,安心する.
次の雪崩がないとも限らないので,急いでデブリから離れる.
岩瀬さんと顔を見合わせると,感覚が麻痺っているのかお互い笑いが込み上げる.
不謹慎だが,そうでもしないと,やってしまった,また多くの人を不安にさせてしまう,次に同じことがあったらどうなる?という不安で押し潰されそうであった.
岩瀬さんがいてくれて本当によかった.
幕営地に戻り休んでいると,まさに青天の霹靂,雷のような音が鳴り,1ルンゼで雪崩が起こっていた.
あそこは今朝取りついているパーティがいたが,手こずっていたので1ピッチ目にいるはず,雪崩は最終ピッチ周辺,大丈夫だろう.
そう思ったが,岩瀬さんは安全確認,場合によっては救助のために雪崩装備を持って向かうことを提案した.
確かにもしものことを考えると行くべきだ.この人の判断はいつも的確で,早い.
ダッシュで1ルンゼに向かうと,今朝付けたトレースが完全に埋まっていた.
周囲を見渡すと,1ピッチ目の上部からちょうど懸垂用のロープが垂れてきた.
声をかけると,大丈夫,今日は危ないからやめる,とのこと.
無事で本当によかった.
その後の下山中も,1ルンゼは何度も音を立てて崩れていた.
これはトラウマになりそう...1ルンゼの上部氷柱登っている時なんか,このことを思い出して生きた心地がしないだろうな.

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(中央の白い線が1ルンゼ)

下山中,帰阪中はずっと雪崩対策について話していた.
帰阪後,岩瀬さんからお薦めされた「アルパインクライミング考」を読んでみた.
一番最初の話が雪崩の話で,なんとタイムリーなんだろう.
横山さんたちは池の谷ガリーで雪崩にあったそうだが,その時は焦りで思考が一杯だったらしい.
僕らの場合は興奮で一杯で,警戒を怠っていた.どんな感情にしても,それだけで頭が一杯になることは命取りである.

これから家族もできる.
年を重ねるごとに,仕事でも私生活でも責任は増え,何かあった際に被害を被る人が増える.
冬山を辞めた方が良いのではないか.

そう迷っても,気がつけば山のことを調べている.
妻は,辞めなくても良いのではと言ってくれる.

まだ結論は出ないが,いずれにしても今シーズンはやり抜く.
そこで同じことを繰り返さないよう,他の事故も起こさないよう,準備し,気を引き締めよう.

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