冬季クライミング

2025.1.13 堂満ルンゼ中央稜

新人の中村です。
初めて記録を書きます。

中村、須川さん、川さん、橘さんの4人で堂満ルンゼ中央稜に行ってきました。
前々から行きたいと思っていたルートなので行くことができて嬉しいです。天気も悪くなく、4人揃ってナイスなクライミングとなりました。

以下、記録です。


前夜初で夜11時半ごろイン谷口に到着。
橘さんがメルカリで1万円で購入したという4テンで宴会した。
日本酒と焼酎の熱燗をいただく。今度から僕も持っていこう。

僕が持ってきたファミマの冷凍の牛カルビ飯も大好評でした。モンベルのフライパンは、料理するのは手間だけど温かいものが食べたい冬の宴会にもってこいですね。

昨日の酒が残っているようないないような、重い体を持ち上げ出発。
朝イチの長い林道歩きはけっこうしんどいです。
アプローチ











そして中央稜へのアプローチはよくわからないです。スミマセン。

1P下部











取り付きにて

1P 岩稜

出だしが核心で、若干被っている。気持ち程度のカムを決め、思い切り乗っ越した。

スタンディングアックスビレイでセカンドを引き上げるが、シビアな個所があるピッチでは簡易ビレイは心もとない。
須川さんによると、ビレイ点の後ろの大岩にカムで終了点が取れるそうだ。

2P 雪稜
2P











1P目終了点から大岩を右巻きに登りリッジに乗る。快適な雪稜登攀だが、ピナクルのクライムダウンがあり少々面食らう。

3P 雪稜
3P











本来は4P目のチムニーの下のルンゼを登るようだが、今回はその横のスノーリッジを行った。

このリッジは雪があまり付着していないようで、橘さんのラッセルで地面が露出していた。
しかも地面は少々脆く、土にアイゼンを蹴り込む、まるで沢の高巻きのようなクライミングとなった。

4P チムニー
4P











スタンスがほとんど見当たらない。
木の根を頼りにステミング気味で体を持ち上げる、ちょっぴり痺れるクライミングとなった。

橘さんによると、本来は階段状になっているそうだ。崩壊したのか、雪で埋まっていただけなのか...

途中、うっかり浮き石に手をかけてしまった。
幸い落石には至らなかったが、アルパインではこういうところも注意しないといけないな。

5P 雪稜

快適な雪稜。途中、短いナイフリッジが現れる。

6P 岩稜
5P











出だしはスラブで少し気持ち悪い。
写真にある岩場を抜けると立派なスラブがあらわれるが、難しそうなので今回は巻いた。ロープがかなり屈曲するので最後はめちゃくちゃ重かった。上手い人なら直登できるんだろうな。


ここでクライミングセクションは終了となり、安全地帯まで10メートルほど登ってロープを解除した。

帰りは雪も安定していたので1ルンゼから下降する。
30分程度で林道まで戻ることができた。堂満岳まで登っていたらどれくらい時間がかかっただろうか?


以上、記録でした。
初めての堂満ルンゼ中央稜は、年末に小同心クラックを登っていたこともあり、わりと簡単でアルパインの入門にはもってこいのルートだと思いました。とはいえ、同時にクライミング能力もある程度ないと厳しいなとも思ったり。

カムはキャメロットの0.5-3が有効。
スリングは60cmを使うことが多かった。

2024.12.31-2025.1.2 南八ヶ岳 旭岳東稜

あけましておめでとうございます。

はじめまして、新人の川です。


年末年始の連休に南八ヶ岳は旭岳東稜に行ってきました。


自身初のアルパインクライミングだったこともあり詳細な記録を取る余裕もなかったため、
僭越ながら山行を通して感じたことを中心に書き綴っていきます。

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以下は、新人が厳冬の八ヶ岳で洗礼を受けた記録になります。


■1日目(2024年12月31日) ~美しの森から出合小屋まで~

深夜1時に神戸を出発。ガラガラの名神と中央道を経て予定より早く美しの森駐車場に到着。

宴会セットのおかげで26kgを超えているであろうザックが不安だったものの担いでみると何とか大丈夫そう。
直近に歩荷トレを何度かやっておいて良かったと過去の自分に感謝した。


林道を歩き堰堤越えを何度も経て、あっという間に拠点となる出合小屋に到着。
小屋はもぬけの殻で(私たちと同じく旭岳東稜を登攀予定の2人組パーティが後からやってきたのみ)、
4テンでの4人テント泊から小屋での至極快適な宿泊に変更となった。


落ち着いた頃に寄せ鍋と飲酒による宴会が催され1日目は過ぎていった。

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■2日目(2025年1月1日) ~旭岳東稜の登攀~

午前1時過ぎ、目が覚めるとすでに皆起床していたため、そそくさとシュラフから這い出る。
各自朝食を済ませ、予定通り3時に出発。期待と不安が入り混じる2日目がスタートした。

小屋から沢筋の右岸を少し辿り、前日に偵察していた尾根末端に取り付く。
途中1箇所で懸垂下降をこなし、5~10m程度のちょっとした岩場でお助け紐を出してもらいつつ高度を上げていく。


五段の宮直下の急斜面に差し掛かり、小屋で宿泊していた2人パーティが追いついてきたので先頭を譲ると、瞬く間に斜面の上部へと消えてしまった。
それに対して私はというと、落ちれば明らかにアウトな急斜面でアイゼンの前爪がキマっているかどうにも信用ができず、かなりもたついていた。

「こんな斜面でいったい何十分無駄にするつもりだ?」という思いが一瞬頭をよぎるものの、
落ちれば元も子もないので一歩ずつアイゼンとアックスが効いていることを確認しながら慎重に登る。
もはや「怖い」といった感覚ではなく「落ちないよう一挙一動に全集中しよう」という感覚だけが頭を支配していた。

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私にとっての核心部をどうにか抜け、五段の宮の取り付きに這い出る。安堵感と快晴の八ヶ岳ブルーの絶景を前に緊張が途切れ、ただただ眠くなりそうな感覚だった。

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▲五段の宮取り付きから赤岳方面の眺望


その頃、ちょうど先行パーティが五段の宮に正面から取り付くところだった。安定感のある登りで強いクライマーだというのが伝わってくるのと同時に「こりゃ直登はムリだな」と直感する。


10時頃、藤本さんが左側の草付きより五段の宮登攀を開始。
三段目の少し下辺りにある太い潅木でロープをフィックスし、続いて私がアッセンダーでユマーリングのように登っていく。
終了点に辿り着き「こんなとこリードするなんて凄い!」と驚いていると、藤本さん曰く「支点たくさん取れるから簡単やで」とのこと。マジっすか…


2P目を登り終え時計に目をやると、すでに14時40分。日没のちょうど2時間前だった。
私のような不慣れなメンバーがいるとこんなに時間が掛かるのかと申し訳なさでいっぱいだった。


3P目と5P目はお互いコールが届かず、ロープがいっぱいまで伸びる。


5P目終了点で山頂直下に出るもついに日没を迎える。
そこから藤本さんが山頂までロープを伸ばしたところ、簡単なのでフリーで行けるとのこと。
セルフビレイを解除し最後の斜面を駆け登る。


登頂の喜びに浸れると思いきや、山頂に出た瞬間に長野県側から猛烈な風が襲いかかってきた。
そういえば雲の流れめっちゃ早かったなぁなどと思い返しながら、記念撮影の余裕もなく早々にツルネ東稜まで試練の稜線を辿り始める。

暴風で身体が持っていかれそうになり、氷の粒が顔面に突き刺さる。こりゃ厳しい。
快晴微風というこれ以上ない好条件で忘れかけていたけど、厳冬期の八ヶ岳にいるということを嫌でも思い出させられた。


何とかツルネ東稜に逃げ込むと嘘のように風が凪いだ。各々体勢を立て直し下降を開始する。

赤テープ豊富な尾根をダラダラと下り続け、21時頃にようやく出合小屋に帰還。
件の2人組パーティはすでに撤収していた。

もはや夕飯を食べる気力もなく、冷え切った体を温めるために熱燗を煽り、
申し訳程度のツマミを胃袋に収めてシュラフに潜り込んだ。


■3日目(2025年1月2日) ~下山~

7時前に目が覚め、昨晩食べる予定だったカレー鍋を作り始める。
出汁が効いたのか、いくらでも食べられるくらい美味しかった。


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食後一息ついたところで、本日入山してきた2人組が入ってきたのをきっかけに下山準備を始める。
食料を消費したにもかかわらず入山時と重さが変わっていないどころか更に重くなったんじゃないかと思えるくらいザックが成長しており、
下山はお気楽ハイキングだと楽観視していた私の期待は粉々に打ち砕かれることとなった。
(1日目よりは歩行が多少楽だったので実際は軽くなっていたと思う)


下山後は小淵沢IC近くにある「塚治朗」でボリュームのある蕎麦をいただきました。

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■まとめ

今回、旭岳東稜という私にとって分不相応とも言える場所から無事に帰ってこられたのは、
ひとえに経験豊富な先輩方のサポートがあったからであり、自身の実力不足をこの上なく痛感しました。

それと同時にアルパインクライミングの楽しさの一端を味わった気がします。(実際めっちゃ楽しかったです)

ご一緒させていただいた藤本さん、須川さん、岩瀬さん、本当にありがとうございました!

これまで以上にトレーニングに勤しんでまいります!

厳冬期の八ヶ岳 旭岳東陵

八ヶ岳 旭岳東陵
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こんにちは須川雄です。正月山行は涸沢岳西尾根~穂高に行く予定でしたが、年末年始の冬型が厳しい予報でしたので八ヶ岳の旭岳東陵に変更しました。八ヶ岳の旭岳は2671m。旭岳東陵は18年前に滝口さんと岩瀬さんで取付いて敗退したルート。今回は岩瀬さんとエースの大さん、期待の新人の川さんの4人で行ってきました。

 ■メンバー L大さん 岩瀬ひ 川さん 須川(記録) 
▶1日目 20241231
・730分 美しの森到着
・815分 美しの森出発
・1050分 出会い小屋着
連日、日本海側の豪雪のニュースが流れているが八ヶ岳の雪は少ない。美しの森から出会い小屋まで3時間ほど。宴会セットが重くザックが肩に食い込んで辛い。雪のない林道を歩き、途中から川俣川地獄谷に降りる。堰堤をいくつも越えて標高2037mの出会い小屋へ。

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出会い小屋は香港から来た若い二人組の男女パーティーがいるだけで空いている。テントを張る予定だったが、広い小屋を使えて快適。小屋の隣にはトイレもある。
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今日は低気圧の影響で、ずっと雪が降っている。しんしんと降る雪の中、旭岳東陵の取付きまで偵察する。すぐに小屋に戻り、特製寄せ鍋で宴会して早めに就寝。
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▶二日目 2025
11
・1時 起床
3時 出会い小屋発
610分 日の出
820分 雪壁
930分 五段の宮取付き
1000分 1ピッチ目 五段の宮左の草付き
1210分 2ピッチ目 五段の宮(3段目~)
1450分 3ピッチ目 ナイフリッジ
1620分 4ピッチ目 岩稜帯
1712分 5ピッチ目 岩稜帯
1730分 旭岳ピーク
1830分 ツルネ下降路
2110分 出会い小屋着
1時に起床し各自朝食を食べて3時に出発。昨日は一日中雪が降ったが、ところどころトレースが残っている。旭岳東陵は権現沢と上ノ権現沢の出会うところの急登をラッセルしながら登る。尾根はやせていているので、尾根伝いに歩ければルートを間違えることはない。


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標高2150m辺りで尾根が切れ落ちており進めない。ロープを出して懸垂する。ここからやせ尾根が続き両側が切れているために二回ほどロープを出す。2250m地点には少し広い場所があるので、テントを張ることが可能。急斜面が続きアックスを草付きの斜面に刺しながら登る。このあたりで日が昇ってくる。暗闇にオレンジが浮かび上がり、赤い光線が雪面を照らす。
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日の出の瞬間は見れなかったがモルゲンロードで朝焼けに染まった山が美しい。振り向けば富士山が見える。元旦から日の出と富士山で縁起がいい。
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標高2500m辺りは雪壁になり凍った草付きにアックスを刺しながら登る。下が切れ落ちているのでダブルアックスが必要。新人の川さんがアックスに不慣れで苦戦している。このあたりで、香港人パーティーに追い付かれラッセルを代わってもらう。サラサラ雪のラッセルと急な草付きの雪壁。落ちると止まらない緊張感の中で川さんも奮闘。
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標高2550mの五段の宮に到着。まさに岩が5段になっている岩壁で圧巻。大迫力で直登は難しそう。
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先に着いていた香港人パーティーは直登で登っている。プロテクションも取れず厳しそうだ。文献ではⅣ級+。太陽も登り気温も上がり暖かい。晴天の下、赤岳も一望できテンションも上がる。
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ピッチ目は大さんが左の草付きをリード。ハイマツの灌木で支点を取りながらダブルアックスで登攀。下がスパッと切れ落ちていて高度感が半端ない。緊張感が続くクライミングだが、大さんが安定した登りで進んで行くのが頼もしい。一本のロープで終了点にフィクスし、川さんと岩瀬さんがアッセンダーで登り須川引き上げで登る方式なので時間がかかる。
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2ピッチ目も大さんが五段の宮の3段目の少し左からいっぱい伸ばす。ところどころ岩が浮いていて気持ち悪い。先ほどより支点を取る箇所が少ないようだ。岩に着いた雪を落としながら直登してから左上していく。
3ピッチ目はナイフリッジの雪稜で須川がリードする。先行パーティーがトレースを付けてくれているのでなんとか通過できたがトレースがなければ両側が切れ落ちたナイフリッジは気持ち悪い。雪の下に埋もれているハイマツを掘り出してプロテクションを取りながら進む。


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ピッチ目は旭岳の肩までの雪壁。五段の宮のような難しさはないが、滑落すると一巻の終わりで緊張が続く。このあたりで太陽が権現岳の陰になり、急に寒くなる。予想以上に時間がかかっているので日が暮れるまでに安全圏の稜線まで出れるか不安になる。すぐ近くに権現岳のピークが見えているが、旭岳のピークは見えない。
5ピッチ目は肩から頂上直下までの岩稜帯。権現岳が太陽を隠すので、かなり寒くなり風も出てきて焦る。
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ピッチ目終了時点で日が暮れてしまいヘッドランプ着用。旭岳のピークは目と鼻の先。ここからピークまではロープ不要でコンテで通過する。念願の旭岳のピークに到着するが、真っ暗の上に強風で感激する間もなく下山に取り掛かる。

旭岳のピークからツルネ下降の取付きまでは一般縦走路。バリエーションルートのようないやらしさはないが、強風でバランスが崩れる。吹雪ではないだけましだが、旭岳からツルネまでの急なくだりを慎重に下る。
ツルネに入ると風も治まり小休憩する。緊張感が解け一気に疲れが出て座り込んでしまう。行動時間も長くかなり消耗しており、疲労困憊で足が踏ん張れずフラフラになる。ツルネの東陵はトレースがあり、赤テープも豊富にあるので道に迷うことはなかった。なんとか出会い小屋に着いた時には出発から18時間行動していた。香港人のパーティーは下山しており、自分たちしかいない出会い小屋で食事も食べずにそのまま寝てしまう。

 

▶3日目 2025年1月2

730分に外の明るさで目が覚める。疲れすぎて一度も起きなかった。昨日の夕食予定だったカレー鍋を食べる。疲れ果てた体に染みてかなり美味しい。

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重たいザックを背負い、美しの森へ。道の駅こぶちさわの延命の湯で疲れを落とし神戸まで帰る。

 

※今回は天候もよく五段の宮からは先行パーティーのトレースもある好条件。計画よりかなり時間がかかってしまったのは、大さん以外のメンバーの実力不足。これからトレーニングを積み、来年こそは涸沢岳西尾根から奥穂高を目指したい。
個人山行が主体の中で新人育成の山行にご一緒してくれた大さん。長年のパートナーの岩瀬さん。やる気のあふれる新人の川さん。楽しい山行を共にできて楽しかったです。ありがとうございました。また行きましょう!

宝剣岳 サギダル尾根 冬期アルパインクライミング 千畳敷カール バックカントリー山スキー

山行日
山域、ルート
宝剣岳 サギダル尾根 千畳敷カール
活動内容
冬期アルパインクライミング バックカントリー 山スキー
メンバー
藤本、長谷川、三浦 (記録)

宝剣岳

宝剣岳は中央アルプス (木曽山脈) 主稜線上にある2931mの山である。冬でも雪を寄せ付けずに聳立する鋭い岩峰は千畳敷を代表する峰である。北側には木曽駒ヶ岳があり、宝剣岳の北側で東に分岐した稜線は伊那前岳に繋がる。この伊那前岳の稜線と主稜線が千畳敷カールを形成している。南側で分岐した主稜線は三沢岳へと繋がっている。

宝剣岳と千畳敷カール。千畳敷駅から撮影。 宝剣岳 サギダル尾根 冬期アルパインクライミング 千畳敷カール バックカントリー 山スキー
宝剣岳と千畳敷カール。千畳敷駅から撮影。

千畳敷カールとバックカントリースキー

駒ヶ岳ロープウェイによるアクセスの良さもあり、宝剣岳と伊那前岳を含む千畳敷カールは山スキーが盛んである。少し足を伸ばせば木曽駒ヶ岳1や三沢岳もあり、多彩なルートを描くことができる。いくつかのバックカントリールートは駒ヶ岳ロープウェイのウェブサイトで紹介されている。

サギダル尾根

サギダル尾根は信州駒ヶ岳神社を末端とし、宝剣岳の南側の主稜線に繋がる尾根である。冬季アルパインクライミングのルートとして人気があり、短めのルートで難易度も高くなく初心者向けバリエーションとしてガイドブックなどで紹介されている。登攀に時間がかかりすぎて21時間行動になってしまった昨年の奥穂南稜2の反省を踏まえて短めのクライミングルートということでサギダル尾根のクライム&ライドを計画した。

サギダル尾根。千畳敷駅から撮影。 宝剣岳 サギダル尾根 冬期アルパインクライミング 千畳敷カール バックカントリー 山スキー
サギダル尾根。千畳敷駅から撮影。

1月にサギダル尾根を登攀し千畳敷カールをスキー滑降するクライム&ライド計画がもちあがり、メンバーの都合を合わせて山行予定を2月とした。しかし、山行予定日の前日に大量の降雪が予想されたため、雪崩のリスクを考え延期とし、3月に再計画となった。

山行直前、駒ヶ岳ロープウェイのウェブサイトに、千畳敷カールの滑走は控えてください、との記載を見つけた。事前に問い合わせたところ、スキー滑降について制限はしておらず雪崩に気をつけて、とのことだった。駒ヶ岳ロープウェイが千畳敷カールをスキー場として管理する4月より前は、管理できないため口も出さないというスタンスらしい。千畳敷カールには1週間程度降雪がなく、雪崩のリスクは低いと判断し山行を決行した。

宝剣岳 サギダル尾根 冬期アルパインクライミング 千畳敷カール バックカントリー山スキーの山行記録

菅の台バスセンター駐車場からバスとロープウェイを乗り継いで、しらび平経由で千畳敷駅に行ける。混雑時は臨時バスが出るようでバスは3便目だった。次からはルートの渋滞を避けるため、早起きして並んで始発に乗った方が良さそうだ。

サギダル尾根の登攀は、千畳敷駅から信州駒ヶ岳神社の祠まで行きそこから左側に歩き始める。シールは使用せず最初からアイゼン登行した。最初の岩稜帯は左の雪原を登れば簡単にまける。まいた先に見える岩稜帯の末端がサギダル尾根の取り付きである。ハイマツを開始点とした。先行にいた3パーティの順番待ちは2時間近くかかった。朝は晴れていたが、順番待ちの間に少しずつ雲が出始めた。

サギダル尾根取付きに向けて信州駒ヶ岳神社からアイゼン登行。 宝剣岳 サギダル尾根 冬期アルパインクライミング 千畳敷カール バックカントリー 山スキー
サギダル尾根取付きに向けて信州駒ヶ岳神社からアイゼン登行。
サギダル尾根取付き。 宝剣岳 サギダル尾根 冬期アルパインクライミング 千畳敷カール バックカントリー 山スキー
サギダル尾根取付き。
サギダル尾根取付き。 宝剣岳 サギダル尾根 冬期アルパインクライミング 千畳敷カール バックカントリー 山スキー
サギダル尾根取付き。
サギダル尾根取付き。 宝剣岳 サギダル尾根 冬期アルパインクライミング 千畳敷カール バックカントリー 山スキー
サギダル尾根取付き。

1P 藤本

ハイマツのある尾根の先にある岩稜帯に向けて登った。岩稜帯に乗り上げるのが核心か。アイゼンやアックスをかける場所が少なくていやらしい。なんとか登りきり、その先のスラブ状の岩の上部にあったワイヤーでピッチを切った。

2P 長谷川

スラブ状の岩を馬乗りで乗っ越すと2mほどのナイフリッジの雪稜になる。ナイフリッジの先は、最初藪がうるさいがすぐに快適な雪壁になる。そのまま雪壁を登り高度を上げて行くとサギダル尾根の頭に到達した。終了点はハイマツでとった。

サギダル尾根の頭の終了点。 宝剣岳 サギダル尾根 冬期アルパインクライミング 千畳敷カール バックカントリー 山スキー
サギダル尾根の頭の終了点。
サギダル尾根の頭の終了点にて写真撮影。 宝剣岳 サギダル尾根 冬期アルパインクライミング 千畳敷カール バックカントリー 山スキー
サギダル尾根の頭の終了点にて写真撮影。

サギダル尾根の頭につくとすっかり天候は悪化し、雪がパラついてきた。最短で降りられる滑降ルートであるサギダル尾根の北側のルンゼを選択した。サギダル尾根の頭から右側の稜線を進み、最初に右手に見えるルンゼである。ドロップポイントは比較的広く滑走準備には支障ない。到着して思い出したが、このルンゼは2013年の木曽駒ヶ岳北面1の翌日に滑降したことがあった。

滑降準備を整えてルンゼにドロップする。雪はパックパウダーで安心しておりられた。最初の狭く急なところを抜けると千畳敷カールのボトムまでの滑降ラインが見通せるようになる。快適に飛ばしてあっという間に千畳敷駅に到着した。

千畳敷カールにドロップ。 宝剣岳 サギダル尾根 冬期アルパインクライミング 千畳敷カール バックカントリー 山スキー
千畳敷カールにドロップ。
千畳敷カールをスキー滑降。 宝剣岳 サギダル尾根 冬期アルパインクライミング 千畳敷カール バックカントリー 山スキー
千畳敷カールをスキー滑降。

無事山行を終えた達成感と安堵感で満たされつつ記念写真を撮影して、ロープウェイとバスで下山した。サギダル尾根も千畳敷の滑降もお手軽で短めのルートだが、満足できる山行だった。

千畳敷駅まで滑降して記念撮影。 宝剣岳 サギダル尾根 冬期アルパインクライミング 千畳敷カール バックカントリー 山スキー
千畳敷駅まで滑降して記念撮影。
サギダル尾根の登攀ルートとスキー滑降ライン。オレンジが登攀ルート、赤が滑降ルート。 宝剣岳 サギダル尾根 冬期アルパインクライミング 千畳敷カール バックカントリー 山スキー
サギダル尾根の登攀ルートとスキー滑降ライン。オレンジが登攀ルート、赤が滑降ルート。

参考記録

  1. 木曽駒ヶ岳 北面ルンゼ 山スキー 2013年4月
  2. 奥穂高岳 南稜 残雪期アルパインクライミング バックカントリー 山スキー 2022年5月

2023.3.19-21 鹿島槍ヶ岳 北壁 主稜

2023.3.19-21 鹿島槍ヶ岳 北壁 主稜 の記録

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こんにちは、岩瀬たです。
この冬は、「いつか行ってみたいな。」と思っていた場所に行けている。
奥三ノ沢、摩利支天大滝、阿弥陀北西稜、中山尾根、錫杖岳、米子不動、中千丈沢、などなど、、、
有名どころばかりで、どれも良い場所ばかりだった。そして印象深い山行ばかりだった。

今回行った鹿島槍ヶ岳の北壁もいつか行きたいと思いながら、怖くてなかなか行けなかった場所だ。昨年計画を立てたものの天候不良で転戦となり、雨降る大峰の深仙小屋で「残念だなぁ。」と言いながらも少しホッとしていたことをよく覚えている。

以下、山行記録です。

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◎メンバー
長谷川
岩瀬た


◎装備
・60mシングルロープ
・スノーバー x4(3本あれば充分だったかな?)
・スクリュー x6
・ハーケン x3(使わず)


◎行程概要

・3/19 晴れ
7:15 大谷原駐車場 出発
9:30 荒沢出合 尾根に向けて取り付く
15:00 天狗の鼻 テント設営、偵察、泊

・3/20 晴れ
3:00 起床
4:15 出発
4:40 カクネ里
6:15 主稜取付、準備
6:50 1ピッチ目スタート
7:30 2ピッチ目、3ピッチ目
8:00 4ピッチ目アイス
9:30 5ピッチ目ベルグラ
10:30 コンテで登る
15:30 主稜線トップアウト、休憩
16:30 天狗の頭
18:15 テント場 泊

・3/21 晴れ
4:00 起床
6:30 下山開始
10:00 荒沢出合
12:00 駐車場


◎行程詳細

・3/19
元々は18日から入山予定だったけれど、悪天のために1日ずらして19日入山。連休万歳!
大谷原から3回の渡渉を経て天狗の鼻に向けて登り始める。
第一、第二クーロワールは雪もしっかりついて特に問題無く通過。先行パーティがいてトレースがあって楽だった。(とはいえバテた。)

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(荒沢の渡渉)

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(天狗の鼻まであともう少し)

天狗の鼻に着き、しばしベースの良い場所を探して、先行パーティ(18日から入山してたらしい。大雪だったに違いない。タフ。)に挨拶とお礼を言って整地作業。
さあ整地だ!とスノーソーとスコップを握るが、僕は頭が痛くて全然動けなかった。
たかだか2300mくらいだけれど、僕は極端に高所に弱く、おそらく登り中にあまり水分を取らないのが原因なのだが、2000mを越える山の入山日はだいたいいつもベースを張るタイミングで気が抜けるのか調子が悪くなる。食べて眠れば治るのだけれど。
ブロック壁作りに精を出す長谷川くんに甘えて僕は湯を沸かしたり頭痛薬を飲んだりしつつゆっくり過ごす。結局テント設営まで全て長谷川くんがやってくれた。情けないが、心底ありがたい。
テントで少し休むと頭痛も治まってきたので、カクネ里への降り口を見に行く。
北壁へのアプローチは最低コルからのトラバースをする記録が多いが、昨年長谷川くんが1人で偵察に来てくれていて、カクネ里アプローチの方が良いと思うと結論を出したので今回はそれに従うことにした。
昨日の降雪後、今日のうちにあらかた雪が落ちていて欲しいと願っていたが、デブリも無いしたいして落ちているようには見えない。明日大丈夫だろうか。

テントに戻り、ご飯を食べて、予定より出発を1時間早めることにして、明日の準備を済ませて就寝。


・3/20
3:00起床。
1時間以内に出発を目指していたが、結局4:15出発。
お互い距離をとってカクネ里へ降りる。ヘッデンに照らされた薄い表層雪崩の跡がちらほら見える。
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沢床近くまで降り、緊張しながら北壁に向けて雪渓をラッセル。深いところで膝くらい。

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余談だが、カクネ里は2018年に氷河認定されたらしい。
日本の氷河は全部で6つ。長野県ではカクネ里が初の氷河だ。
長さ約790m、幅280m、1番厚い部分で表面の雪約15m下に厚さ30m以上の氷があるとのこと。1年で2.6m動いているらしい。
J-stageに論文が出ているので興味がある人は是非一読を薦める。調査過程が楽しい。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/oam/3/0/3_5/_pdf
さらに余談だが、このJ-stageというサイトはあらゆる論文や考察の記事があっておもしろい。
ちょこちょこ見てみよう。
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少しずつ明るくなってきて北壁の形がぼんやり見える頃合い、谷の中でヘッドライトが動いているのが見えた。信じられないことに、カクネ里で夜を明かした人がいたようだ。スキーヤーだった。北壁の左岸側の小さな尾根に泊まれる場所があるらしい。
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(取り付きまであともう少し。明るくなってきた。)

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(カクネ里)

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(蝶型岩壁と氷のリボン)

6:15、主稜取付のスノーコルに到着。
改めて準備をして登攀開始!

1ピッチ目は僕がいかせてもらう。
スノーコルから壁に向かって右側の、灌木が顔を覗かせているところをズボズボになりながら枝を掴んで登る。結構すぐにロープいっぱいになってしまったので細い木でビレイ。

2ピッチ目は長谷川くんが行く。
ハイマツをこいでから雪面に乗り、少し傾斜が緩まったところでスノーバーでピッチを切る。
その次のピッチは尾根に乗り上げるかルンゼの滝に向かうか選べ、長谷川くんが水など飲んでるうちに3ピッチ目というかなんというか、僕が先に行かせてもらう。
尾根に乗り上げるには少々立っていてなんとなく難しそうだと思うのと、元々ルンゼの滝を登るつもりだったのでルンゼへロープを伸ばす。滝手前の側壁沿いでビレイすることにする。ハーケンでビレイ点を作りたかったがなかなか刺さらないので結局スノーバーでビレイ点とした。
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(滝の手前)

4ピッチ目、滝は長谷川くんにトライしてもらう。
ギアの受け渡しなどしている間に雪や石が滝上からビュンと落ちてくる。いやな感じだ。
さぁスタート。
10mあるかどうかという小ささだが、あとで聞く話では長谷川くんはどうやら結構緊張していたらしい。
滝に取り付くまで結構モジモジしてどこから登るか悩んでいることがうかがえる。
右側から取り付くも、どうにも悪いようで結局最終的に交代。
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(長谷川くんのトライ)

ビレイ点に戻ってきてもらい、次は僕が行く。
見た目に反してなるほど悪いと言った感じだ。
氷が微妙に下の方は崩れていて、形としてはハングみたいな形になってしまう。
おまけに氷はもろく、スクリューを打っても周りごと壊れて打ち直しということが何回か。チリ雪崩も頻発でベチャベチャになり、アックステンションを交えながらどうにか登り切る。思いの外大変だった。
滝を登ったところにある残置スリングが棒みたいになった物とスノーバーで支点を作って長谷川くんを迎える。
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(フォロー長谷川)

5ピッチ目、これも僕が行かせてもらう。
見るからに支点が取れなさそうなベルグラの草付きだ。
取り付いてみると、スクリューは奥まで刺さらないがアックスはよく効くので、氷を選んで慎重に登ればそれほど緊張せず登ることができた。
ロープいっぱい登って灌木を掘り起こしてビレイ。
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(5ピッチ目)

そこからは同時登攀に切り替えて進む。少し立ってるなと思う部分の後ではタイブロックを間に挟んだりして、本番で使うのは初めてだったのでなかなか良い経験になった。
核心のクライミングパートが終わったとは言え、天気が良く、上部がどうなってるかわからないし見えないきのこ雪や雪庇の崩壊が怖いので僕は尾根地形を行こうと言うが、長谷川くんは尾根地形は登りづらそうだしルンゼの方が早く進みやすいのでルンゼ地形を行こうとしたりして何度か意見が食い違う。適当に先頭を交代しながら進む。
結果的にはキノコ雪はほぼ無かったし崩れてきそうな雪庇も無く、ルンゼを進んだところは進みやすかった。
主稜と名付けられてるところに来てるわけだし尾根登ったらええやんと思ってたけど、ルンゼで正解といったところだ。

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(天気良し!良過ぎる!)
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(天気良し!)

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(気持ち良い)

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(最後はハイマツ漕ぎ。雪少ないんだと思う。)

15:30、ようやく主稜線に到着。風は強く無く太陽は眩しく照り付けて暖かい。
いやぁ登れるもんなんだなぁとホッとした。
遠望したり写真で見ていた北壁はぶったっているように見えていたし、憧れでもあったので感慨深い。
長谷川くんと握手して、記念撮影などしつつしばしゆっくり休憩してから天狗尾根を下降。

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(天狗尾根下降。懸垂は2回。)

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(天狗尾根からの北壁。)

18時過ぎにテント場に到着。疲れたー!アンドお腹ペコペコだ!
長谷川くんにいたってはお腹ぺこぺ過ぎて気持ち悪いらしい。僕は意外に元気で、昨日とちょうど逆な感じだ。
カレーを食べて、就寝。お疲れさまー!


・3/21
4時に起きて片付けなどして6:30出発。
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(北壁と長谷川くん。)

荒沢に降り立つところがいまいちわからず懸垂下降などしてそこだけ少し大変だった。そして暑い。
川沿いを駐車地まで歩き、12:00、駐車地に到着。

下山完了!

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以上、山行記録でした。


やってみたかったことを終えて、昼日中の青空の下をブイーンと爽快に帰る途中に聞いたブルーハーツの夢がなかなか良かった。

おれには夢がある。毎晩育ててる。
おれには夢がある。時々ビビってる。
建前でも本音でも本気でも嘘っぱちでも、
限られた時間の中で、借り物の時間の中で、
本物の夢を見るんだ。

良い歌詞だなぁとなんか改めて思う。
いつか死ぬその日まで、本物の夢を見続けたいものです。


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