残雪期登山

2022.4.29-5.1 五竜岳GV稜

2022.4.29-5.1 後立山連邦 五竜岳 G5稜 の記録

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こんにちは、岩瀬た、です。
雪シーズンのシメにOKDさんと五竜のG5に行ってきました。

先週に行った白馬主稜の感じから、この暖かい日が続いた後のGWでもまだギリギリ登れるだろうと思って計画実行。
登攀日の前後は雨の予報で、良い情報としては登攀日だけは晴れて気温も低いっぽいということくらい。
果たしてどうなることやら。と思いながら各々仕事やらなんやらで忙しく過ごしながらもどうにか準備を整えることができ、出発。

以下、山行記録です。

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◎メンバー
岩瀬た
OKD


◎装備(主な物)
シングルロープ60m
スノーバー 2本
デッドマン 1個
イボイノシシ 2本
ハーケン 4枚


◎行程概要
・4/29 曇り後雨
8:15 テレキャビン乗車
11:15 大遠見の少し先 BC設営 泊

・4/30 晴
2:30起床
4:30 出発
4:50 シラタケ沢へ下降開始
6:00 G5 取付 クライミング開始
13:15 G5左肩稜線 クライミング終了
15:15 五竜岳
17:00 BC 泊

・5/1 雨
2:30 起床
4:15 下山開始
6:15 テレキャビン駅に到着、始発待ち
8:30 駐車地 下山完了


◎行程詳細
・4/29
スキーヤーとボーダーに紛れてテレキャビンの始発に乗り込む。
今日は昼から雨予報なので、良いところまで行ってBCを立ててのんびり過ごすために汗をかきかき遠見尾根を歩く。
3年前に、G2をH.Iさんと登りに行った時もこんな天気だったなぁと思う。懐かしい。G2を登った後に、「いつか行ってみたいな」と思ったG5にトライすべく今日はOKDさんとここを歩いているわけだ。
最近H.Iさんの顔を見ていないけれど元気かな?
明日は良い日になると良いな。

大遠見を過ぎたところでBC設営に入る。
長い時間を過ごすから快適なベースにしようと思って丁寧にブロックを出して整地しているうちに雨が降ってきた。
少しだけ濡れてテントに潜り込んで、酒をチビチビしながらダベり、夕方にOKDさんの豚汁定食を食べて、就寝。
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(豚汁定食)


・4/30
2:30に起床。テントの外はなかなかの暴風で、朝ご飯を食べてからしばし風が止むのを待つ。4時過ぎに収まってきたので出発する。
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(BC。今回は贅沢に4テンにした。)

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(遠見尾根より五竜岳)

遠見尾根からシラタケ沢への下降で雪が悪ければ今回は辞めようと思っていたけれど、良い感じにクラストしていたので「よーし、チャンス到来。」と思いながら取り付きまで一直線に進む。
6:00にようやく取付のルンゼに付いて、雪が緩む前にリッジに出るべく早速クライミング開始。

1ピッチ目は僕のリードで、スノーバー、イボイノシシ、立木を中間支点にしながらルンゼを登る。
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(1ピッチ目)

2ピッチ目はOKDさんのリードで雪壁のルンゼをリッジまで抜ける。
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(2ピッチ目)

リッジに出てロープをたたんでしばし雪稜歩き。
やはり時期的には少し遅く、キノコ雪の大きいものが無い代わりにシュルンドがたくさん出ている。
足元が崩れないことをチェックしてからスノーブリッジを渡るということを繰り返す。
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(シュルンドや雪壁を巻いて進んだ)


D沢からのジャンクションピークの手前でノーロープで藪漕ぎに入るも、意外に立っていて、あと少しで雪上に乗っこせるというところで、頼りにしていたハイマツの根もなんか折れそうなものばかりになってきて、ロープ出すためにいったん降りようと思うも、手も足も悪めの枝を使って登ってきてたのでクライムダウンしずらく降りる気になれず、こんな頼りない根っこではセルフビレイも取れずで、やっちゃったなぁ、やべえぞこれ。と思う。
まぁしょうがない。登ろう。と思って気持ちを落ち着かせてから、頭上の雪を切り崩して乗っ越すためのスペースを作り、有るのか無いのかよくわからないハイマツの枝と雪が絡んだなんとも言えない足場を見極めて、一息に乗り越す。セーフ。
スノーバーでビレイ点を作ってOKDさんにロープを投げて登ってもらう。
ここはもっと早くロープ出しとくべきだった。反省。

ジャンクションピークを無事に抜けて、最後の岩壁手前の岩峰の前で小休止。
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(小休止)

この岩峰が、パッと見た感じどこ登れば良いか全然わからない。
左側のハイマツ帯を行くか、正面の露出した岩を登るかの2択まで絞って、とりあえず基部に行く。
基部に残置のビレイ点があって、シュルンドの中に2人が立てるスペースが残っていたので、正面突破することにする。
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(残置のビレイ点)

出だしから1段上がったところに立つとギリギリ手が届くところに残置のハーケンが打ってあったので、それを使ってA0でさらに2、3歩上がり、そしたら棚に手が届いたのでマントルで乗り上げる。残置様様だ。
そこでハーケンを打って、薄く被ったキノコ雪を切り崩して頭上にスペースを作り、エイヤとのっこす。
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(岩峰は正面から登った)

乗っ越した先のスノーリッジで、スノーバーでビレイ点を作ってOKDさんも登ってもらい、その続きのトラバースを最後の壁の基部まで行ってもらう。
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(トラバースOKD)

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(良い景色!)

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(最後の岩壁)

最後の壁は2ピッチ。
雪壁を登って、頭上に被さる小さな雪庇を不安に思いつつ立木でピッチを切り、少し登ると、これまた残置のハーケンとスリングがあったのでありがたく使ってスラブのトラバースをしてからハイマツの藪漕ぎに入り、屈曲で重くなったロープを全力で引っ張りながら主稜線のすぐ手前のハイマツでビレイ。

OKDさんも無事に登ってきた。
この最後のピッチはスラブの一歩が結構悪く、リードの僕は残置支点を使えたけどフォローは回収してからトラバースに入ることになるのでリードよりも難しい局面だろう。
ここのセカンドビレイも難しかった。相手が見えない状態で重くなったロープでのビレイは、トラバースしている相手の状況がわからずどれくらいの強さでロープを引けば良いのかわからなくて不安だったので、OKDさんがひょっこり顔を出してくれた時にはすごく安心した。悪い局面をひょっこりクリアする漢。それがOKDさんである。
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(最後の壁1P目フォローOKD)

稜線の登山道に出て、無事に終えたことを喜んで記念写真を撮ったりししつつ大休憩。
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(G5終了!良い天気!)

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(疲れましたねー!)

あとはG5の頭、五竜岳本峰をバテバテになりながら登って、白岳をトラバースして遠見尾根に移り、明るいうちにベースキャンプに戻ってくることができました。万歳!
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(五竜岳)

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(白岳のトラバース)

夜ご飯は僕の番で、麻婆豆腐ラーメン。
思いの外辛い仕上がりになってしまい、ヒーヒー言いながら食べてぐっすり眠りました。


・5/1
2:30起床。
7時ごろから雨の予報だったので、早起きしてせっせと撤収して、予報に反して早く降り出した雨が本降りになる前にテレキャビンの駅に逃げ混む。
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(ガスガス下山)

屋根のあるところで荷物の整理をしているうちにスタッフの方が通常よりも早くロビーを開けてくれたので暖かい室内で快適に過ごすことができ、始発の降り便で降りることができました。
五竜テレキャビンのスタッフの方々、ありがとうございました。

8:30駐車地到着。下山完了。

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以上、山行記録でした。


今年の冬の後半戦は天気が悪くて計画していた山になかなか行けずにすっきりしない気分で過ごすことが多かったのですが、先週の白馬主稜と今回の五竜G5で良い山行ができたので、結果的にスッキリした気持ちで雪山をシメることができて良かったです。
OKDさん、毎度のことながらありがとうございました!
次は辛過ぎない麻婆豆腐にリトライします!

さて、フリーと沢に切り替えていくぞ!

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(今回登ったルート)

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(今回登ったルート)






2022.4.23-24【白馬主稜】



こんにちは。野間です。
OKDさん、岩瀬た さんと白馬主稜に行ってきました。私は雪のバリエーションルートデビューです。

◎1日目
4:00 二股ゲート
6:00 猿倉 
7:00 白馬尻
9:00 降雨予報のため半雪洞作成(1800m)→寒すぎてテントに変更
14:30再出発
15:30 8峰
17:30 6峰
18:00 幕営地(2350m付近 56のコル?)

◎2日目
3:30 起床
5:00撤収出発
7:20 山頂直下
7:50 白馬岳山頂 8:15
10:20 白馬尻
11:30 猿倉 12:10
13:40 二股ゲート

2:30に二股ゲートに到着し、1時間仮眠を取って出発。
猿倉までの林道に雪は無く、登山口から付いていた。ただしワカンがいるような感じでは無かったので木の枝にデポ。

白馬尻に着くと先行パーティが見えた。また山頂付近にはガスが出始め、10:00ごろから雨が降り出す予報だったので、それまでに停滞しようと決めて尾根に取り付く。太陽がジリジリ暑く、斜度も急なところが続いたので結構キツかった。
また、途中いくつもシュルンドがあり、どうか崩れませんようにと願って登った。
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9:00ごろ、標高1800mを越えたところの斜面で停滞用の半雪洞を作ることにしたのだが、作ってみると3人には狭く、かつ隙間から風が入って寒かったのでやっぱりテントを立てた。
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この時、テントの素晴らしさを再発見。暖かいし広いし、全てが囲まれて安心感があるし。とにかく最高だった。停滞中雨はあまり降らなかったようだが、少し眠れて回復した。

再出発する頃にはスカッとした快晴が広がっていた。稜線に上がると、日も翳り始めて行動しやすく、気持ちのいい稜線歩きを楽しんだ。
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基本的に怖いところは無かったが、6峰は雪が緩く、ロープを出して登った。スノーバー、デッドマンで支点を作る場面を見れて勉強になった。
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6峰が終わった時点でお腹も空いてきたので、少し進んだところの適地にテントを張った。

夜ご飯はOKDさんのカレー鍋と追いチーズリゾット。ペミカンのようにバターで炒めた肉、キャベツやキノコ、他にも沢山の具と、鍋キューブとカレールーを入れたもので、すごく美味しかった。その後のチーズリゾットも最高だった。私はいつも鍋をするときは生野菜を持ってきて、火を入れるのに時間がかかっていたので、今度から参考にさせてもらおうと思う。

2日目の朝は5:00出発で、丁度日の出とモルゲンロートの絶景を見ることができた。
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出発後は美しい稜線歩きが続く。
風も無く、雪も締まっており絶好のコンディションだったので、快適に通過できた。
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最後の雪壁は斜度60度ということだったが、いつもクライミングしているような壁くらいの緊張感があった。表面の雪はシャリシャリだったが、下の層にはあまり刺さらず、前爪で登っていったので、ふくらはぎがつりそうになり、精神的な弱さも相まって、ひたすら自分を上にあげることに精一杯だった。

そしてやっとのことで登り終わるとそこは頂上で、見たことのある石標識と、立山の山並みが広がっていて嬉しくなった。
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少し休憩してから、下りは大雪渓の単調な斜面をひたすら降り続けた。岩瀬さんはシリセードを上手く使ってすごい速さで降りて行った。
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11:30ごろ猿倉に下りるが、デポしたはずのワカンが見つからず捜索。いくら探しても見つかることはなかった。。
ショックを受けながらゲートまでの林道を下っていると路肩に蕗のとうを発見。一気にテンションが上がり元気になった。
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また、岩瀬さんが猿倉から裸足で歩き始めるという実験をされていて、おすすめされたので、途中少しだけやってみたがすぐにリタイア。私は小石が食い込んで耐えられなかったが、岩瀬さん曰く、それは暫くすると慣れるし、なにより無駄な力を靴に分散させることなく歩ける所が良いとのこと。
そんなこんなで、ゲートに着いて山行終了。
下山後は温泉入って、蕎麦を食べ、岡田さんおすすめのおやき屋さんでお土産を買い無事帰路についた。

今回は、はじめての経験ばかりだったが、特に印象的だったのは最後の雪壁だった。とにかく余裕が無くて、早く終わってくれ〜と思いつつ、OKDさん、岩瀬さん初め、これよりもっと厳しいところで登り続けるアルパインクライマー達は本当にすごい!と心から思った瞬間だった。
また、今回天候が不安定だったにもかかわらず、天気を上手く読んで行動したことで、安全にかつ快適に登れたことはすごく勉強になった。
そして何より、ばっちり頭の記憶に残る美しい稜線歩きができたことが嬉しかった。
OKDさん、岩瀬さん、ご一緒させていただきありがとうございました!

2022.04.09-10 鹿島槍ヶ岳北壁偵察


4/9-10に鹿島槍ヶ岳北壁の偵察に行ってきました.
本当はカクネ里のスキー滑降もしたかったのですが,シートラーゲンで天狗尾根を登るのが辛すぎて,泣く泣く1600m地点にデポ.
その後の天狗尾根上や北壁主稜までのトラバースも,終始気温が高く陽光からも逃げられなく,雪がグサグサで厳しい山行でした.
以下に報告の詳細を示します.
なお,主目的はアプローチの偵察であるため,ルート上の注意点等も可能な限り示そうと思います.

4/9
10:30 大谷原(1070m) 入山
12:00 アラ沢出合(1143m)
14:00 スキーデポ(1600m)
15:30 第一クーロワール取付き(2120m)
16:30 第二クーロワール取付き(2270m)
17:30 天狗の鼻(2326m)

4/10
05:15 起床
06:00 出発
09:00 蝶型ルンゼ手前 引き返し開始
10:00 天狗鼻 到着
11:30 下山開始
15:30 アラ沢出合
17:15 大谷原駐車場 下山

4/9 無風快晴
入山は7:30の予定であったが,色々あって3時間も遅れてしまった.
具体的には間違って大冷沢を,西俣出合まで行ってしまって引き返した.
初っ端から盛大にミスってしまった.
言い訳をすると,正規と思われる登山道の入り口が土砂崩れで道とは思えない状態になっていた(にしても方角で気付け…).
駐車場まで戻ると,丁度天狗尾根から下山したと言う男女2人に出会った.
雪の状態が悪く,第一クーロワールで引き返してきたとのこと.それでも2パーティとすれ違ったらしい.
時間的にも雪の状態的にも天狗鼻まで行けないかもしれないが,取りあえず入山した.
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アラ沢出合までは計3回の徒渉を要した.
どの徒渉も水かさは深くても脛の下部くらいで,足場を選べば踝くらい.
徒渉用の袋は持参しているが,スキーブーツであるのでそのまま徒渉した.
アラ沢出合手前の堰からは結構悪い巻き道となる.登山道ではあるが,雪があると沢に落ちる方向に傾斜が出てくる.シートラーゲンなのでバランスも悪く,灌木を掴みながら慎重に通過した.
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アラ沢はデブリだらけ,所々穴が開いており,冷たい水流が覗いていた.
尾根に取り付こうと言うところでスマホが無いことに気が付いた.結局アラ沢出合に落ちていたから良かったが,これによって更に1時間ほどロスしてしまう.

取付きからは急な登りが300mほど続く.ここで体力を大幅に削られた.スキーを担いでいたのはもちろんだが,割りと速いペースで登ってしまったため,枝尾根に合流した頃にはバテバテであった.
枝尾根からはスキーを履ける傾斜になったが,雪が腐ってきて斜登行をしていると表層ごと落ちそうになる.これは危険と判断して,シートラーゲンを継続することにした.
当然ペースは上がらない.これでは天狗鼻に行けないし,天狗鼻まで行けないならスキーがあっても滑るところがない.ということで1600m地点でデポすることにした.折角歩荷したのに…

そんなこんなでなんとか第一クーロワールに到着.
見た感じ意外と行けそう.
確かに雪壁の真ん中は割れていて2段になっているが,厚みはあるし地面とも接しているから落ちないだろう.ダガーポジション,ノーロープで登った.1ヶ所だけ立った雪壁がある.

第二クーロワールは200mほど.
上部に先行パーティを捉えた.
最初は第一クーロワール手前で敗退かもと思っていたが,ここまで来たら天狗鼻まで行ける.
ここも1ヶ所だけ灌木を掴んで登る悪い箇所があるのみで,ノーロープで登った.

計画の1時間遅れほどで天狗鼻に着いた.丁度日の入りくらい.山ではこの薄明の中に居るのが最も感動的な時間だと思う.
浸りたいが,疲労であまりそれどころでなかった.先行者にトレースの礼を言い,ツェルトを張って腰を下ろす.アラ沢出合からのハイペースな登りが効いてる.天狗鼻までは長いので,ゆっくり行って体力を温存した方が良いな.
疲労で胃が食糧を受け付けなかったが,山では食事も仕事の一つと自分に言い聞かせ,無理矢理捩じ込んだ.
天狗鼻には北壁に行くパーティと,北俣本谷を滑るパーティがいた.ここまでスキーを担いできたパーティがいるとは驚きであった.見たところ,自分のスキーの半分くらいの重さだし...と心の中で思いつつも,若干悔しい.
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4/10 無風快晴
目が覚めると丁度日の出であった.昨日と同様雪がグサグサだったら偵察も諦めて引き返そうと思っていたが,少し締まっている.これならいける.手早く準備を済ませて出発した.北壁のパーティは起床時にはもういなかった.

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主稜へのアプローチは2つある.1つは天狗鼻からトラバースで行くルート,もう1つはくの字雪渓からカクネ里に降りて,登り返すルート.今回は最短距離に思える前者で行くことにした.
トラバース開始点はトレースがあったが,すぐ消えた.永遠と雪壁に蹴りと正拳突きを繰り返す.

トラバースを開始すると,カクネ里に北壁のパーティが見えた.一旦降りるルートを選んだようだ.
結論としては,一旦降りる方が良いと思う.トラバースは時間も短縮できないし,精神的にも疲れるし,ルートファインディングも求められる.これは行く前から判明していたことだが,実際にやってみると結構しんどく,降りた方がよかったな...という気分になる.

北壁と言いつつ実際は北東に向いているので,朝から日が直撃する.アプローチは日の出前からした方が良い.
トラバース中から,谷に雪崩の音が何度も鳴り響いて,その度に進退を悩まされた.
雪が次第に緩んできて緊張感も増してくる.ステップは崩れないか?アックスは効いているか?落ちたらどうなるか?雪崩はないか?一歩ずつ自問自答しながら進んだ.
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2時間ほどトラバースすると,蝶型ルンゼ手前で一段と急な雪壁が出てきた.雪も腐ってきているので,ロープを出して通過した.ゲレンデ以外でのロープソロは初めてであったので緊張したが,まあまあ上手くできたと思う.しかし,終了点で9時とタイムアップ.引き返すこととした.
氷のリボンも,岩に隠れて見ることはできなかった.

天狗鼻まで,カクネ里に降りることも考えたが,くの字雪渓の登りがしんどいし,雪崩が怖いのでトラバースを引き返すことにした.
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トレースはしっかりあるがアイゼンに雪が団子になって来るので気は抜けなかった.
天狗鼻に着いてから,幕営装備の撤収と朝飯を摂った.北壁のパーティのコールが聞こえる.どうやら上手いこと登っているようだ.
パートナーがいても取り付くのを躊躇う条件だが,それでも登っている人がいると悔しくなってくる.
来シーズンこそは…!!

下山開始.
雪がグサグサで,尾根も細いので不安定な歩きとなる.ストックは必携だと思った.
ダガーポジションも必要な箇所があるので,ストックとアックスを持ち替えながら下る.ウィペットがあれば楽だと思う.
下山中も谷には雪崩の音が鳴り続け,足元も崩しながらの歩行となり気が抜けなかった.
第二クーロワールはクライムダウンで,第一クーロワールは一回の懸垂下降,アラ沢出合手前で三回の懸垂下降を要した.アラ沢出合に降りる斜面は,スキーを背負っていたこともあるが,単純に非常に滑りやすい状態であった.
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以上です.
ミスが多く,偵察も満足にできず,端から見れば情けない山行だと思うので,正直記録を書くのが恥ずかしいです.
しかし,慣れないソロで鹿島槍でもが気苦しんだことで気付かされる点も多く,個人的には非常に実りの多い山行でした.
1人だとなんか,複数人の時とはリズムが違う感じがしますね.普段しないミスをしたり,どんどんペースが上がってしまいます.

2021.4.10-11 明神岳東稜

長野県 北アルプス 明神岳東稜 の記録

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こんにちは、岩瀬た、です。
5年ほど前、初めて上高地へ行き、景色に圧倒されつつ岳沢から前穂高へ上がったのですが、その道中ずっと見えている明神岳。
地図を見ても登山道が無く断崖絶壁に囲まれているし登れないみたい。残念だ。
その後何度か上高地に行き、明神岳を見るたびに“いつか登ってみたいな”と思っていました。

そう思ってから早数年。明神岳に登ることができました。選んだのはクラシックルート東稜です。

以下、山行記録です。

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◎メンバー
岩瀬た(記録)
長野


◎装備
50mロープx1
2人用テント
ダブルアックス
カムC4#0.3,#0.5,#1
その他登攀具等一式


◎行程概要
・4/10
快晴微風
6:00 坂巻温泉駐車地出発
8:30 明神館
12:00 ひょうたん池
13:00 第一階段
17:30 小ピーク手前2680m地点(泊)

・4/11
快晴無風
6:30 出発
7:20 ラクダのコル
7:30 バットレス
8:45 明神岳主峰
10:00 奥明神沢降り口
11:30 岳沢小屋
13:30 河童橋
16:00 坂巻温泉駐車地


◎行程詳細
・4/10
釜トンネルの開通が16日なので坂巻温泉に駐車して6:00出発。延々とトンネルを歩いて快晴の大正池や上高地を通り過ぎ、久々にジャンダルムや奥穂と前穂の姿を見ながら明神館に8:30到着。完璧に除雪されていたのでチョッパヤだ。目の前には明神岳5峰。
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少し休憩して、信州大学の研究施設の裏からひょうたん池目指して歩く。山と高原地図の破線通りに目印が随所にあって樹林帯の踏み跡もしっかりしている。雪も良く締まっていてラッセル無く歩きやすい。
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12:00ひょうたん池到着。最近まともに体力トレーニングしてないのでヘロヘロだ。反省。
少し休憩の後、装備を整えて第一階段目指して歩く。
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13:00第一階段登攀開始。見た目にも寝ているし、実際階段状で立木もあるので安心して登れる。
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しかし、思ってたよりも長いし浮き石や雪が柔らかい部分もあって登るのに時間がかかってしまう。今思うとどこからどこが第一階段だったかよくわからない。スタカット4ピッチ、最後の方はコンテニュアスしながらダラダラ登りになってしまい、登り切る頃には日没が迫ってきてしまった。
ラクダのコルまで行きたいところだったけれど、僕も長野さんも結構疲れていて目に見えて歩みが遅くなっている。快晴無風とはいえ、どうやら無理しない方がよさそう。
なかなかテントを張れるいい場所を見つけられず、しくったなぁと思いながら少しずつ進んでいき、西日が沈みかけてきた頃に小ピークの手前でテントを張れそうな場所に着いた。小ピークを過ぎればラクダのコルだけれど、次善策としてここで泊まることにする。
堅雪を相手に疲れた体に鞭打ち整地して味噌鍋食べて就寝。長野さんが歩荷してくれてた缶ビールをわけわけして飲んだ。最高!


・4/11
整地を頑張った甲斐あってぐっすり眠れた。
雑炊を食べて片付けして出発。
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小ピークに登ると、明神岳主峰が鎮座ましましている。記念撮影。
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長野さんのポージングは少しチャラチャラしている。
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僕はこういう時はチャラチャラしない。

1時間ほどでラクダのコルに到着し、バットレスの登攀開始。
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たくさん打ってある残置ハーケンとカムでプロテクションをとりつつ、会の昔の記録に書いてあった“荷物を背負ってたら乗越がしんどい”という部分に遭遇。確かにスタンス乏しく少し戸惑う。これで行ってみるかと小さな割れ目にアイゼンの前爪を当てて、思い切りよくよっこらしょ!と無事に乗っこすことができた。
そこを抜けるとあとは雪斜面の登高。程なくして明神岳の頂上。
快晴無風でぐるり360°だ。嬉しい。やったぜ!
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奥穂と前穂をバックに記念撮影などして、奥明神沢のコルに向かう。
途中、残置のフィックスロープが張られていて、状態も悪く無かったのでプルージックで一応確保しつつクライムダウン。
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計画してる時は時間があれば前穂高にも行こうかと思っていたけど、しんどいが先に立ってしまったのと明神岳からの眺めで充分満足してたので素直に奥明神沢を下降。
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出だしはバックステップ交えての下降だったけれど、傾斜がゆるまってきたところからシリセードでびゅんびゅん降りる。
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長野さんは初シリセードだったよう。
雪の状態がちょうど良い感じだったので楽しく降りることができました。

岳沢小屋からヘトヘトになりながら歩き、ようやく着いた河童橋で開業準備に追われて働く人たちを横目にぐったり大休止。
長野さんは「歩くの好きなんすよ」とか言いながら黙々と歩いてカッコよかったですが、それに比べて僕は「車通ったら全力で止めて乗せてもらいましょう。誰か通らないかなぁ。」とチャラチャラ言いながら必死の思いで坂巻温泉まで歩きました。

下山完了。
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以上、山行報告でした。

長年行ってみたいなと思ってたところに行くことができて嬉しいです。
明神岳はウィンタークライマーズミーティングの開催地にもなっているようで、今回見た景色とガイドブックを見比べると、あんな壁やこんな壁を登れるなんて信じられないなぁと思う反面、いつかやってみたいなとも思います。
とはいえ、今回は体力不足が結構顕著に出たので、トレーニングしなくては何も始まらないなという感じです。遠征登山行く前にせめて六甲全縦くらいはしてから行かないとな。反省!

そして、長野さんとは実は初めて一緒に山に行きました。ビールも美味しかったですが、ちょこちょこもらったコーラを飲む瞬間が何より最高のひとときでした。ありがとうございました!!

追記
そして、長野さんは今回インスタントカメラで写真を撮っていたのですが、現像してデジタル化してくれたものを送ってくれたので何枚か追加しました。
まともな写真とれるんかなって思ってましたけど、とっても良い写真がたくさんありました!!
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長野さんありがとう。

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