憎しみにくちづけ、愛に刺しちがえる。

 先帝が崩御し、その皇太子であるウールアン(ダニエル・ユー)は皇后で義母であるワン(チャン・ツィイー)と昔から想いあう仲。後を継いだ先帝の弟リー(グォ・ヨン)は兄を暗殺し、皇后を娶ってウールアンの殺害も企てる。ワンは幾度もウールアンの危機を救い、リーへの復讐心を燃やし機会をうかがう。ウールアンを想うチンニー(ジョウ・シュン)だけが一途で純粋な心のままに行動するがウールアンには届かない。チンニーはワンに身柄を拘束され、それを楯に父と兄がリー暗殺に絡む。ウールアンは他国へ王子同士の人質交換の命を受け途中で命を狙われる。時は来た。偽りのウールアン殺害報告を喜ぶ皇帝リーは盛大な《夜宴》を開く。ワンは皇帝の杯に毒を盛る。それを口にしようとした時、チンニーが現れた・・・

フォン・シャオガン監督の『イノセントワールド天下無賊』を観て映像美に惹かれ、今回監督にとっても初の“悲劇作”を観てきました。
まずやはりというか映像の美しさに驚かせられました
CGの蠍を使ってこのあとに展開していく暗示の恐さが、これまで観たことのない世界を見せてくれそうで期待感が高まりました。
建築物の内装は中国というより和の作りで、中庭の囲む廊下に少し大きな盆栽がいくつもありました。イン宰相の家も和風です。皇后ワンの部屋は意外に質素だけど、オブジェがあったり円形の寝床が中央にあったり面白い作り。
建築物とは逆に衣装は中国でありながら中世ヨーロッパテイストがあり、やはりこの映画の題材が“ハムレット”である証しの一つでしょうか。近衛兵の黒兜と鎧は和と洋の融合に見え、衣装のインパクトがかなり大きく残りました。
ウールアンが最初にいた舞台は、たぶん竹で作られてると思う不思議な形をした建築物とそれを繋ぐ長い長いスロープがとても見事でした!!
この映画の為に作ったのか、最初からあったものなのか分かりませんが見たこともない竹セットでした。その竹の舞台でものすごいアクションが展開し、度肝をつかれましたね。このシーンだけはなくアクションシーン全てと拷問刑のシーンは血しぶき満載でシュピシュピ血が飛び散り、剣が身体を貫通するシーンもたくさんあって手間かかってるなぁ、そこまでしなくても?って感じで。でも後半で思ったのは残忍なシーンとハムレットを意識したストーリーと美術と衣装で豪華で華麗な映像美とが対比し、かえって芸術性が際立ったものになったと思いました
それとアクションシーンにお決まりのワイヤーが多用されていてまさかこんなにあるとは思いもしませんでしたねぇ。ワイヤーアクションバレバレってなんか好きじゃないのダ。
全てが美しい映像で人物達は復讐や猜疑心にさいなまれながら行動するので人物の心の裏を頭におきながら見ないと分かり辛いかも。(裏読みしながら見るの苦手だけど;)逆に自分の気持ちに素直に行動する健気なチンニーの純粋さが引き立ちました。でも素直なぶん回りをヒヤヒヤさせてしまう。結果としてもう少し待てば良かったのでは?と思いました。一途さって時として恐い結果を生むのね
チャン・ツィイーは気が強くて高慢な役が似合いますね。ってかそういう役しか観たことがないんですけどね。段々権力を利用して嫌な女になっていく過程が自然体ですがインパクトとしては弱いかも。似たような役より今度は喜劇に挑戦してみて下さい。
最初と最後に仮面を付け、『越人の歌』に合わせて踊るシーンがあり振り付けは創作舞踊のように変な形をしてゆっくり動くのが正直好きではありません。でも『越人の歌』の詩は素敵で、一部抜粋
    山には木があるように
    木には枝があるように
    君を愛する この心を
    君は知らず 君は知らず

芸術的な映像の美しさに魅了された作品でした。でも感情移入することなく観終わりました。
どの俳優たちもよかったと思います。でも感情移入できないと印象が弱いレベルで、それが勿体無いかなぁ。監督はコメディと思う人はそれでも構わない、と仰ってましたが、無理。コメディとは思えませんでしたよ。


女帝舞踏女帝ワン






2006年/香港・中国  監督フォン・シャオガン
共演 ホァン・シャミン マー・チンウー

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