男は愛車の920号を運転している。車内ではMr.childrenの365日が流れている。
「砂漠の街に住んでても、君がそこにいさえすれば、きっと渇きなど忘れて暮らせるとか言ってるけど、そもそも砂漠の街に住むことってできなくない?」
「そんなこと言ってるから女の子にモテないんすよ。男さんって漫画とかアニメとか見れないタイプですよね。」
助手席に座った青年が適格なツッコミを入れた。この青年は後輩のガマくんである。ガマくんとは、部活の説明会で男がチャンバラの説明そっちのけでラブコールを送った人物である。
「ガマくんってミスチルのファンやったっけ?」
「僕、中学からファンでファンクラブも入ってるんすよ。今年、30周年のライブも行きますし。」
「あとさ、aikoの花火で、夏の星座にぶら下がって上から花火を見下ろして、とかあるじゃん。物理的に星座にぶら下がるのは無理じゃない?」
「だから、男さんみたいなタイプの人に向けた歌ではないんですよ。」
ガマくんは男の疑問に正面から向き合うようなことはしない。愛ある毒を含んで返すツッコミが彼の持ち味である。
「開店10分前なのに、行列なんですね。」
ガマくんが若干驚いた。野郎二人組は以前、Tさんが薦めてくれた金沢の美味しい蕎麦屋さんに来ていた。店内に入ると、落ち着いた空間が男たちを待っていた。
「おぉ…。こんな店、坊ちゃんやマルコは絶対知らんやろうな。」
「偏見ですよ。」
「マルコとか飯行くってなったら〇〇としか言わんからな。」
「確かにマルコの○○狂いはイカれてますね。」
とりとめのない話をしていると、蕎麦が持ち運ばれた。食べてみると、蕎麦の味を最大限に引き出しているように感じた。
「美味いな。」
「美味いですね。」
「ガマくんは、休日に遠出して外食しないの?」
「しないですね…全然関係ないですけど、僕ら(21代目)が一番多く行った店って餃子の王将なんですよ。」
何とも悲しい。今度、金沢の食の魅力についてプレゼンしてあげよう。男は蕎麦をすすりながら心に誓った。
男は会計を済ませ、蕎麦屋近くの喫茶店に来ていた。ガマくんはコーヒーを注文し、男はそれに加えて甘すぎるパンケーキを注文した。余談だが、以前、Tさんと来た時に、ほぼチャンバラの話と部活の今後という話題だけで3時間滞在していたことを併せて記しておく。女子高生がサイゼのミラノ風ドリアとドリンクバーだけで6時間滞在するのとほぼ同義なのかもしれない。
話し足りないので、喫茶店に来たわけだが、とりとめのない話を際限なく続けるだけである。阪神の話(昨年終盤の打線は壊滅的でしたね。→近本3番、糸原5番は地獄やな。)、チャンバラの話(この間合いで相手の重心が後ろにあれば、飛び込みが確定で入るんですよ。→感覚的すぎて分からないです。)、恋の巡査部長の話(要するに付き合っているかどうか判別するのは一緒にいる頻度の問題でもあるんですよ。→そんなんじゃ分からんよ。私たち、付き合ってますよって恋の巡査部長に書類で届け出るべきだと思うんよ。)、ブログの話(何で叩かれるのか分からん。→20代前半の女性を3人称でおばさんと表現するからですよ。)、等々、数え出したら枚挙にいとまがない。
勿論、そのような話ばかりだけではない。男はガマくんの今後について独占取材することに成功した。
「僕、金大を卒業して地元のK大の大学院に行くんですよ。」
ガマくんが語りだした。男は飲もうとしたコーヒーカップをそっと置いた。
「まだ勉強もしたいですし、大学院で取得できる教職の資格も取りたいんで。なので、残念ですが、金大でチャンバラすることはもうないかもしれないですね。」
男は少なからずショックを受けていた。かつてチャンバラをしていた仲間がポツポツといなくなっていくことに寂しさを感じていたのである。その一方で、その仲間が夢に向かって走り出したことを男は誇らしく思っていた。
「そうか。地元に帰っても頑張れよ。」
「はい。」
男とガマくんは920号に乗り込み、帰路についていた。道中、車内ではMr.childrenの旅立ちの唄が流れていた。
「自分が誰か分からなくなるとき、君に語りかけるよ、って歌詞あるやん。まず、君に語りかける前に病院で診てもらうべきだと思うんだよね。」
「またですか。」
男とガマくんは談笑していた。離れても、今のように信頼できる仲間のままでいられるのではないだろうか。
男はなぜかそんな気がした。
「砂漠の街に住んでても、君がそこにいさえすれば、きっと渇きなど忘れて暮らせるとか言ってるけど、そもそも砂漠の街に住むことってできなくない?」
「そんなこと言ってるから女の子にモテないんすよ。男さんって漫画とかアニメとか見れないタイプですよね。」
助手席に座った青年が適格なツッコミを入れた。この青年は後輩のガマくんである。ガマくんとは、部活の説明会で男がチャンバラの説明そっちのけでラブコールを送った人物である。
「ガマくんってミスチルのファンやったっけ?」
「僕、中学からファンでファンクラブも入ってるんすよ。今年、30周年のライブも行きますし。」
「あとさ、aikoの花火で、夏の星座にぶら下がって上から花火を見下ろして、とかあるじゃん。物理的に星座にぶら下がるのは無理じゃない?」
「だから、男さんみたいなタイプの人に向けた歌ではないんですよ。」
ガマくんは男の疑問に正面から向き合うようなことはしない。愛ある毒を含んで返すツッコミが彼の持ち味である。
「開店10分前なのに、行列なんですね。」
ガマくんが若干驚いた。野郎二人組は以前、Tさんが薦めてくれた金沢の美味しい蕎麦屋さんに来ていた。店内に入ると、落ち着いた空間が男たちを待っていた。
「おぉ…。こんな店、坊ちゃんやマルコは絶対知らんやろうな。」
「偏見ですよ。」
「マルコとか飯行くってなったら〇〇としか言わんからな。」
「確かにマルコの○○狂いはイカれてますね。」
とりとめのない話をしていると、蕎麦が持ち運ばれた。食べてみると、蕎麦の味を最大限に引き出しているように感じた。
「美味いな。」
「美味いですね。」
「ガマくんは、休日に遠出して外食しないの?」
「しないですね…全然関係ないですけど、僕ら(21代目)が一番多く行った店って餃子の王将なんですよ。」
何とも悲しい。今度、金沢の食の魅力についてプレゼンしてあげよう。男は蕎麦をすすりながら心に誓った。
男は会計を済ませ、蕎麦屋近くの喫茶店に来ていた。ガマくんはコーヒーを注文し、男はそれに加えて甘すぎるパンケーキを注文した。余談だが、以前、Tさんと来た時に、ほぼチャンバラの話と部活の今後という話題だけで3時間滞在していたことを併せて記しておく。女子高生がサイゼのミラノ風ドリアとドリンクバーだけで6時間滞在するのとほぼ同義なのかもしれない。
話し足りないので、喫茶店に来たわけだが、とりとめのない話を際限なく続けるだけである。阪神の話(昨年終盤の打線は壊滅的でしたね。→近本3番、糸原5番は地獄やな。)、チャンバラの話(この間合いで相手の重心が後ろにあれば、飛び込みが確定で入るんですよ。→感覚的すぎて分からないです。)、恋の巡査部長の話(要するに付き合っているかどうか判別するのは一緒にいる頻度の問題でもあるんですよ。→そんなんじゃ分からんよ。私たち、付き合ってますよって恋の巡査部長に書類で届け出るべきだと思うんよ。)、ブログの話(何で叩かれるのか分からん。→20代前半の女性を3人称でおばさんと表現するからですよ。)、等々、数え出したら枚挙にいとまがない。
勿論、そのような話ばかりだけではない。男はガマくんの今後について独占取材することに成功した。
「僕、金大を卒業して地元のK大の大学院に行くんですよ。」
ガマくんが語りだした。男は飲もうとしたコーヒーカップをそっと置いた。
「まだ勉強もしたいですし、大学院で取得できる教職の資格も取りたいんで。なので、残念ですが、金大でチャンバラすることはもうないかもしれないですね。」
男は少なからずショックを受けていた。かつてチャンバラをしていた仲間がポツポツといなくなっていくことに寂しさを感じていたのである。その一方で、その仲間が夢に向かって走り出したことを男は誇らしく思っていた。
「そうか。地元に帰っても頑張れよ。」
「はい。」
男とガマくんは920号に乗り込み、帰路についていた。道中、車内ではMr.childrenの旅立ちの唄が流れていた。
「自分が誰か分からなくなるとき、君に語りかけるよ、って歌詞あるやん。まず、君に語りかける前に病院で診てもらうべきだと思うんだよね。」
「またですか。」
男とガマくんは談笑していた。離れても、今のように信頼できる仲間のままでいられるのではないだろうか。
男はなぜかそんな気がした。

