2025年3月に出たばかりの本だ。縦26センチ横21センチ厚さ2センチのオールカラー456頁で、定価は税込4950円だ。サブタイトルは「世界の国々イラストマップ」である。世界197の独立国と11の地域の全てが原則見開き2頁(例外はアメリカ合衆国が6頁、日本と中国が4頁)の絵地図で紹介されている。地図の形も現実の国土に忠実で、山地・平野・河川・湖沼なども細かく書き込まれている。殆ど全てがイラストで描かれており、写真は本書全体で(小さなものが)100枚以下しかない。一応、子供向けの本だとは思うが、(私が頻繁に使うフレーズだが)大人が読んでも十分(いや十二分)に満足できる充実した内容だ。地図上には観光名所や地域の特産品・名物料理が紙面の許す限り掲載されている。テレビや新聞やインターネットで聞き慣れない国の名前が出てきたら、本書を紐解けば即座に、その国のイメージが掴めるだろう。お世辞抜きで「日本中の一家に一冊」と強く勧められる良書だ。ちなみに、私が過去に訪れた国と地域は(訪れた順に)、タイ、シンガポール、香港、アメリカ合衆国、イギリス、ギリシア、イタリア、ドイツ、スイス、フランス、カナダ、大韓民国、である。
「坂田アキラの 物理基礎・物理の解法が面白いほどわかる本」(KADOKAWA)
2023年9月に出た本だ。2色刷り848頁で、定価は、紙版が3630円、電子版が3267円、である。私は、つい最近電子版を買った。私は今年だけで、アマゾンで144回、商品を購入しているが、そのうち104回は電子書籍である。電子書籍率は実に72%を超えている。過去12年で1721回も電子書籍を購入している。もし、これらを全て紙の書籍で購入していたら、180×80×26センチのスチール製本棚7台分になり、とても自宅の空きスペースには保管できない。本書の話に戻そう。著者の坂田氏は「(これ以上ないほど細い途中式を明記した)懇切丁寧な解答解説」で知られる数学講師である。本書でも、物理現象の解説は割と簡潔だが、265題もある例題の解答解説は正に「坂田流」を数学同様に徹底している。数学や物理が苦手(あるいは嫌い)な人は、案外この辺で挫折している場合が多いのだ。物理現象の詳しい解説が読みたいのなら、同じKADOKAWAの「漆原晃の物理基礎・物理[力学・熱力学][電磁気][波動・原子物理]」が面白いほどわかる本」(←全部で3冊)が、お薦めだ。漆原氏は物理学者から予備校講師に転身した本格派である。この漆原&坂田コンビで高校物理の基礎は万全になると思う。私も今年で65歳になり、まあ、この後も税理士を続けてゆくのだろうが、もし本当に生まれ変われるのなら、医師や弁護士ではなく「超絶イケメンの天才物理学者になり」「30歳代前半でノーベル物理学賞を受賞し」「莫大な特許料収入で大富豪となり」「数多くの女性と健全な恋愛を楽しみ」「怪我や病気とは無縁で天寿を全うする」ような人生を送りたいと思う。
「民法1~7」(有斐閣ストゥディア)
民法学の入門書である。2018年に「4債権総論」、2021年に「1総則」「3担保物権」、2022年に「5契約」「6事務管理・不当利得・不法行為」、2023年に「7家族」、2024年に「4債権総論(第2版)」、そして、2025年3月に「3物権」が発売されて、シリーズが実に7年越しで完結する。私は法解釈学の入門書は、①新しい②網羅的③分かり易い④コンパクト⑤アカデミック、なものが良いと考えている。このシリーズは正に、この条件に当てはまる。なお、私が2025年現在、理想的と考える法解釈学入門書は(民法以外では)以下の通りだ。安西=巻=宍戸「憲法学読本(第4版)」(有斐閣)、櫻井=橋本「行政法(第7版)」(弘文堂)、「商法総則・商行為法(第4版)」(有斐閣アルマ)、田邊宏康「手形小切手法講義(第3版)」(成文堂)、高橋=笠原=久保=久保田「会社法(第4版)」(弘文堂)、和田吉弘「基礎からわかる民事訴訟法(第2版)」(商事法務)、小林憲太郎「刑法総論(第2版)」「刑法各論」(新世社)、「基本刑事訴訟法Ⅰ手続理解編」「基本刑事訴訟法Ⅱ論点理解編(第2版)」(日本評論社)、「リーガルクエスト倒産法」(有斐閣)、水町勇一郎「労働法(第10版)」(有斐閣)。全てが令和になってからの発売であり「新しさ」は申し分なしだ。会社法と民事訴訟法は「コンパクト」とは言い難いが、両科目とも複雑で難解なので懇切丁寧に解説してある両書が良いと思う。刑事訴訟法も「手続」と「論点」の二段階の方が理解しやすいだろ。
岩沢雄司「国際法(第2版)」(東京大学出版会)
2023年9月に出た本だ。本文が754頁、定価は紙版が4,848円、電子版が4,743円、である。私は2024年の12月に電子版を購入した。著者は現在、ハーグにある国際司法裁判所の判事である。本書の初版は2020年3月に出ていて、私は、こちらは紙版で購入している。初版の本文は770頁だったので、第2版では(出版後に著者が気が付いた)冗長な記述を削ぎ落したのかもしれない。私は現役の法学部生ではないし、外交官試験や司法試験の受験生でもない。故に、本書を通読したわけではない。しかし、関心のある部分(20箇所くらいか)を拾い読みしてみた。結論から言えば、本書は「教科書として通読する」にも「体系書として辞書的に使用する」にも、非常に使い勝手の良い本だ。目次を見れば一目瞭然だが、章立てが詳細かつ緻密である。それゆえ、本文は簡潔かつ明瞭である。とにかく、国際法に興味のある人には必携の書だ。国際法では他にも、2024年12月に出たばかりの「概説国際法」(有斐閣)も、お薦めだ。こちらは9人の学者の共著である。本文は447頁で、紙版の定価は4,400円だ。全部で16章あり、それぞれの学者が得意な分野を執筆しているのだろう。国際(公)法は法解釈学というよりも一般教養的な要素が強いような気がする。それゆえ、法学部以外の文系の人や、理系の人にも、案外取り組みやすいのではないだろうか。
「東京の教科書」(JTB)
2021年11月に出た本だ。176頁オールカラーで、紙版は税込1980円、電子版は税込1350円、である。私は電子版を、2024年の11月に購入した。令和時代になって、私は年間500冊ほど書籍を購入しているが、その内、400冊くらいは電子書籍である。そして、紙の本は(新版や改訂版が出た場合には旧版を、あるいは、全く読まなくなった古いものを)年間100冊くらいは処分しているので、「紙の本の置き場に困る」という長年の悩みは解消した。さて、本書の話に入ろう。本書は「大人のための地元再発見シリーズ」の中の1冊だ。他にも「北海道、宮城、群馬、千葉、神奈川、埼玉、愛知、大阪、兵庫、広島、福岡、長崎」が出ているらしい。私は、1960年5月1日、小金井市に生まれて、小平市、国分寺市、日の出町、豊島区、新宿区、府中市、と転居しているが、これ全て東京都内である。都会人かどうかは別として、正真正銘の東京地元民である。全体を、理科・社会(歴史)(地理)・美術・家庭科・音楽・国語・算数、と小学校の教科別に解説している。ただ、「大人のための」とあるように小学生には内容が難しいと思う。しかし、大人が手軽に地元のことを総合的に知るためには最適の本である。特に、東京の地形解説の図や、全市区町村の人口・世帯数・面積、財政、地価の一覧表は、非常に興味深く参考になった。ただ、東京(都心)の華やかさに憧れて地方から上京した若者にとっては全く面白くない本だろう。地方出身で今現在は山の手に住んでいる人たちの中には、下町や多摩地区を明からさまに馬鹿にしたりする人が少なからず存在する。しかし、私たちのような東京地元民は生まれ育った土地に(誇りを持っているかどうかは知らないが)愛着があるので、そういう軽蔑の言葉は(ほとんど)気にならないものだ。
「日本一成績が上がる魔法の歴史総合ノート」(KADOKAWA)
2023年3月に出た本だ。私は、つい最近購入した。B5サイズの全ページフルカラー160頁、定価は税込1540円である。著者の鈴木悠介氏は、1986年生まれの新進気鋭の世界史講師である。鈴木氏の「すずゆうチャンネル」はネットでも(割と)有名である。近現代の世界史と日本史を70のテーマで「見開き読み切り」で掲載している。世界史51テーマ、日本史19テーマ、となっている。世界史の比重が多いのは、著者が世界史講師だからではなくて、これは学習指導要領通りである。左頁は普通の活字で話し言葉で説明されている。そして、右頁は、より詳しい内容が丁寧な手書きノート形式で書かれている。この部分が本書の最大の魅力だろう。ただ、ノート部分は鈴木氏の自筆ではなく、教え子の女性が書いたらしいが、それはそれで別に良いだろう。鈴木氏は「はじめに」で「この科目は、近代以降の日本史と世界史を分断することなく一つの歴史として学習するという点で、日本の教育史上、非常に画期的なものです」と高く評価している。この科目で、他にも薦められるものとしては、「理解しやすい歴史総合」(文英堂)と「明解歴史総合図説シンフォニア」(帝国書院)がある。前書は527頁もあり、市販されている中では最も詳しい参考書だ。後書は世界史資料集の中で断トツのシェアを誇る「最新世界史図説タペストリー」の姉妹書で、その信頼性は高い。2025年からの新課程入試では「日本史探究(のみ)」「世界史探究(のみ)」ではなく「歴史総合と日本史探究」「歴史総合と世界史探究」という出題範囲が課される大学が多いと聞いている。少子化で推薦入試全盛の中、一般入試に挑む少数派の受験生を私は陰ながら応援している。
飯城勇三「本格ミステリの構造解析」(南雲堂)
2024年7月に出た本だ。478頁で、定価は3850円(税込)である。著者は1959年宮城県生まれ、東京理科大卒で、1960年生まれの私と(ほぼ)同世代だ。エラリー・クイーン研究家として有名で、私も著者の「エラリー・クイーンの騎士たち」(論創社)「エラリー・クイーン完全ガイド」(星海社)「エラリー・クイーン パーフェクトガイド」(ぶんか社)は既に所有している。本書の目次は、序章、第一部・奇想の迷宮(1~6章)第二部・叙述の迷宮(7~12章)第三部・推理の迷宮(13~18章)、終章、となっている。内容的には、海外のみならず国内の本格ミステリも詳細に考察している。さらには、小説のみならず、テレビドラマも扱っている。私が特に興味深かったのが、第十章・叙述と映像のための叙述-「刑事コロンボ」の語りと騙り、第十五章・対人ゲームの推理-「ギリシア棺の秘密」を例に、である。「刑事コロンボ」は私の小中高時代にNHKで放送され、現在は「新・刑事コロンボ」を含めて、全作のDVDを所有かつ視聴している。また、「ギリシア棺の秘密(謎)」は、私と弟が1987年に生まれて初めての海外旅行(バンコク・シンガポール・香港)をした際に、私が飛行機の中や宿泊先のホテルで夢中で読んだ(読了したのは帰国してから)本である。本書は有名本格ミステリのネタバレのオンパレードなので、国内外のミステリを相当数読破しているミステリ中上級者向きである。また、内容は読みやすいがハイレベルなのでミステリ上級者でも十分に満足できるはずだ。ちなみに、私自身はミステリ中級者だと思っている。
大塚裕史「名誉毀損罪における真実性の錯誤」(日本評論社)
これは単行本ではなく、「法学セミナー2023年3月号」(日本評論社)の113~122頁の記事である。「応用刑法Ⅱ各論」というタイトルで54回に渡り連載された、その最終回である。この連載の殆どは、2024年4月に1冊の単行本として刊行された同名の書籍に加筆・修正され収録されている。しかし、この最終回は(何故か)単行本未収録である。上記の論点は多くの法学部生に「難解」と認識されているものだ。私自身も漠然とした理解のまま法学部を卒業してしまった。だが、この記事を熟読して「そうか、そういう事だったんだ!」と約40年ぶり完全理解した。10頁の記事だが、単行本にしたら20頁以上にはなりそうなボリュームである。内容は(1)230条の2の法的性格(2)「真実性の錯誤」の意義(3)錯誤論からのアプローチ(4)違法論からのアプローチ(5)過失論からのアプローチ(6)まとめ、となっている。法律の専門家は別として、一般社会人が「名誉毀損罪における真実性の錯誤」について、ここまで理解していたら、周囲の人から「すごーい!」と一目置かれるはずだ。興味のある方は、バックナンバーを購入するなり、図書館でコピーするなりして、読んでみてほしい。
「浅草キッドの週刊アサヒ芸能人」(徳間書店)その2
1992年から2024年まで32年間、1500回以上、「週刊アサヒ芸能」(徳間書店)に見開き2頁で長期連載された人気コーナである。だが、今年の8月8日号で遂に連載終了となった。私が、この連載を知ったのが1994年頃である。それから、毎週火曜日は近所のコンビニで、この連載を(時には購入もしたが)立ち読みするのが長年の習慣になっていた。内容は、有名人(芸能人、スポーツ選手、文化人、政治家、など)のスキャンダルやウイークポイントを痛烈に皮肉ったフェイクニュースを読者が投稿し、浅草キッドの二人(水道橋博士と玉袋筋太郎)が感想コメントを付加するというものだ。投稿やコメントのレベルが非常に高く、正に「人間の愚かさや弱さや悲しさや可笑しさの大博覧会」のようであった。私は1960年生まれで今年64歳である。この連載は私の人生の丁度半分の期間を占めている。1992年と言えば2週間のヨーロッパ旅行(ロンドン、アテネ、ローマ、ハイデルベルグ、ローテンブルグ、ミュンヘン、グリンデルワルト、パリ)をした年である。私が32歳、弟が29歳、叔母が64歳、だった。それから32年の歳月が流れ、叔母は96歳で、今も元気に八王子の老人ホームで愛犬と暮らしている。そして、私と弟も府中で一緒に税理士をしている。
「合格点を取るための“でる順”日本史の要点整理」(ごま書房新社)
2024年7月に出たばかりの本だ。256頁で定価は税込1500円である。「実況中継」(語学春秋社)を数回通読して「一問一答」(山川出版社)「時代と流れで覚える!」(文英堂)を暗記した、中級レベル以上の受験生に向いていると思う。本書の最大の特徴は「大学入試に頻出する時代順に記述してある」ということだ。具体的には(1)江戸時代(2)明治時代(3)大正時代(4)昭和時代(5)奈良時代(6)平安時代(7)戦後史(8)鎌倉時代(9)室町時代(10)安土・桃山時代(11)古墳時代(12)原始、となっている。内容的には「盲点チェック」という感じで、予備校の入試直前講習のテキストのような雰囲気である。とにかく、日本史初学者は手を出すべきではない。早くても夏休みくらいから手を付けるべきだ。そして、入試までに何度も読んで内容をマスターすれば試験当日良い事があるかもしれない。それから、歴史好きの社会人にも2種類いて、多数派は「源平」「戦国」「幕末」という日本の特定の時代のみに関心がある人だ。私は少数派で「(世界史を含む)全時代」に関心がある。所謂「広く浅く派」である。そういう人にも本書は推薦出来ると思う。