●「2015年のテレパソ」をチェックする

 かつて「テレビ付きパソコン」は、国内大手PCメーカーにとって花形製品だった。単に日本のテレビ放送を受信できるチューナーを内蔵しただけでなく、市販のレコーダー顔負けに高機能の視聴/録画/管理ソフトウェアを搭載することで、高付加価値を演出して高単価に販売でき、しかも低価格攻勢をかける海外メーカー製PCが追従しにくい分野ということもあり、各社がこぞって注力していたものだ。

 しかし2000年代後半から、地上デジタル放送移行に伴う録画データの編集自由度低下(当初のコピー制限など)、市販テレビの高機能化や低価格化、ネットを利用した動画配信サービスの充実化、よりシンプルで安価なPCを求めるユーザーニーズ増加、スマートフォンの台頭など、複合的な要因が重なり、こうした「テレパソ」は数を減らしている。

 とはいえ、自室や寝室などのセカンドテレビ兼PC用、単身者のオールインワンPC用など、以前ほどではないにせよ、テレパソを欲しいという声が今でも聞かれることは確かだ。メーカー各社のラインアップを見ると、テレビ機能付きPCはすっかり少数派だが、スマホやタブレット、クラウドサービスとの連携、ハイレゾ音源対応など、テレビ+αの提案で時代に即した進化を遂げている点に注目したい。

 今回は富士通のフラッグシップモデル「FMV ESPRIMO FH77/UD」で、イマドキのテレパソがどうなっているのかチェックしてみた。

 富士通の「FMV ESPRIMO FH」シリーズは、PCとしての基本的な用途に加えて、テレビ、レコーダー、オーディオといったエンターテインメント面が充実したオールインワン構成の液晶一体型デスクトップPCだ。

 今回入手したFH77/UDはその最上位機であり、2015年PC夏モデルとして登場し、Windows 10無料アップグレード対応モデルとしてこの冬も継続販売されている。量販店での実売価格は19万円台半ば(税込)だ。

●スマホ/タブレット連携も可能なテレビ機能

 FH77/UDは、地上/BS/110度CSデジタル放送対応のダブルチューナーを内蔵する。ダブルチューナーは1基が視聴専用、もう1基が視聴および録画用だ。裏番組の録画に対応するのはもちろん、ウィンドウ表示でテレビを楽しみながらPCで作業するといった「ながら視聴」が手軽に楽しめる。付属のリモコンを使えば、家電のテレビ感覚で操作可能だ。

 ディスプレイは、1920×1080ピクセル(フルHD)表示の23型ワイド液晶を搭載(タッチパネル非搭載)。高輝度で広視野角、発色もPC向け液晶パネルとしては不満がなく、1人でカジュアルにテレビを楽しむぶんには十分な画面サイズと表示品質だ。実測での照度は356ルクス(液晶ディスプレイの仕様表に使われるカンデラ/平方メートルではない点に注意)と、十分な明るさだった。

 録画番組は2Tバイトと大容量のHDDに保存したり、BDXL対応Blu-ray DiscドライブでBDメディアに書き出せる。視聴/録画アプリは「DigitalTVBox」を搭載し、電源オフからの予約録画、外付けHDDへの録画、録画番組の自動チャプター設定やチャプター編集、スキップ再生、早見/スロー再生など、テレパソとしての基本はしっかり押さえている印象だ。目新しいところでは、テレビとWebの連携サービス「Hybridcast」にも対応する。

 実際にDigitalTVBoxを使ってみたが、各種機能の操作性は悪くない印象だ。ただ、テレビの起動に時間がかかるのは気になった。アプリ起動からテレビ視聴が可能になるまで、実測で約50秒かかってしまう。残念ながら、旧機種に搭載されていた約1.5秒起動のクイックテレビ機能は省かれている。

 さらにイマドキの機能としては、別途ピクセラ製のアプリ「StaionTV」(無料、リモート視聴プラグインは有償)や富士通独自のアプリ「My Cloudプレイ」(一部機能は有償)をダウンロードすることで、スマホやタブレットから視聴中もしくは録画した番組のストリーミング再生ができるなど、多機能化が進んでいる。

 これらを利用すれば、家庭内だけでなく外出先でスマホやタブレットから自宅で受信したテレビ放送を楽しむことも可能だ(LTEでも利用できるがデータ通信量は要注意)。StaionTV/My CloudプレイはWindows、Android、iOSで利用できる。

●ハイレゾ対応「Sound by Pioneerスピーカー」の実力は?

 テレビだけでなく、オーディオ面もイマドキの進化が見られる。FH77/UDはパイオニアと共同開発した「Sound by Pioneerスピーカー」を内蔵し、別途ハイレゾ音源を購入すれば、PC単体でハイレゾ楽曲を手軽に楽しめるのだ。これは旧機種にはない強化ポイントとなる。

 この2Wayスピーカーはボディ前面の下部に配置。左右のユニットは、それぞれボックス化して、ブラックアウトした金属メッシュの奥に内蔵されている。中をのぞくと、それぞれがツィータ―×1とウーファー×1で構成され、小型ながら吸音材も備えていることが分かった。同社によれば、ツィータ―の振動板を支える部分に磁性流体(液体状のもの)を採用し、不要な振動を抑え、高音域がクリアになっているという。

 最初に音楽CDを試聴してみると、確かに一般的なPCに比べて明らかに中~高音域がよい。スリムでコンパクトなボディに内蔵したスピーカーにしては健闘している。しかし、ミニコンポなどオーディオ専用機と比較するとパワー不足で、特に低音域が弱い。ここは価格や本体サイズとトレードオフなので仕方がないところか。

 次にハイレゾ音源を視聴してみた。サンプルとしてe-onkyo musicからflac 96kHz/24ビットの楽曲をダウンロードし、CDと聴き比べてみる。アプリはWindows Media Player 12とfoobar2000 v1.3.8を用いて、内蔵スピーカーから出力した。

 結果は内蔵スピーカーでもハイレゾ音源の優位性は明確で、高音から低音まで全体に広がりが出て、音の深まりが感じられる。ハイレゾ対応のオーディオ専用機には及ばないものの、筆者のほか周囲の2人にもブラインドテストしてもらった場合、2人ともCD音源とハイレゾ音源を言い当てられるくらいには差がある。より高音質を求めるならば、別途好みのヘッドフォンをつないで楽しむとよいだろう。

 なお、この内蔵スピーカーは、PCの電源がオフでも利用可能だ。デジタルオーディオプレーヤーを別売のケーブルで接続するだけで、FH77/UDのスピーカーから音楽を楽しめる。また、電源オフUSB充電機能により、音楽を再生しながら、デジタルオーディオプレーヤーなどの充電も可能だ。この辺りの使い勝手はよく作り込まれている。

●狭額縁スリムボディに豊富なインタフェースを搭載

 ボディは狭額縁のシンプルな外観だ。このデザインはFH77/UDから採用した。ボディカラーは富士通が「オーシャンブラック」と呼ぶ光沢のあるブラックで、スタンド部と側面をシルバーのフレームがぐるりと囲み、デザインのアクセントとなっている。全体的なフォルムは直線を基調とし、エッジ部分には丸みのあるラウンド形状を用いた。余計な装飾を排した飽きのこないスタイルで、スリムな印象を受ける。

 画面のチルト角度は、9~22度の間で無段階に調整可能だ。写真立てようなスタンドなので、マイナス方向や0度(垂直)にはチルト角度を調整できないが、利用時の正しい姿勢や目の負担を考慮すると、通常は画面を少し見下ろす位置に合わせるので、実用上問題ないだろう。

 本体サイズは最小傾斜時で544(幅)×158(奥行き)×418(高さ)ミリ、最大傾斜時で544(幅)×229(奥行き)×395(高さ)ミリ、重量は約7.2キロだ。狭額縁デザインに奥行きの短いスタンドを組み合わせているため、多機能な液晶一体型デスクトップPCながら、単体の23型ディスプレイとほとんど同じ占有スペースで設置できるのは見逃せない。非使用時は、スタンドの間にキーボードを収めてすっきり片付けられる。

 機能面では、前面にUSB 3.0やSDメモリーカードスロット、電源ボタンを配置し、従来機より使い勝手を向上させた。ただし、むき出しの端子やカードスロットが前面にあるのは、テレビっぽいシンプルな外観のノイズになってしまっている。ここはうまく隠してほしかったところだ。

 インタフェース類は4基のUSB 3.0(前面×1、右側面×1、背面×2)、2基のUSB 2.0(右側面×1 ※電源オフUSB充電機能付き、背面×1)、SDXC対応のSDメモリーカードスロット、マイク/ラインイン兼用端子、ヘッドフォン/ラインアウト兼用端子、テレビアンテナ入力端子、miniB-CASカードスロットを装備。通信機能は、1000BASE-Tの有線LAN、IEEE802.11a/b/g/n/acの無線LAN、Bluetooth 4.0を標準搭載している。

 付属のACアダプターは、実測でのサイズが147.72(横)×56.64(奥行き)×32.84(高さ)ミリで、ケーブル込みの重量が428グラムだ。やや大振りだが、据え置き利用の製品なので特に問題ないだろう。

 付属の無線式キーボードは、日本語108キー仕様だ。単三電池1本で駆動する。キー間隔が離れたアイソレーションデザインを採用し、キーピッチは実測で19.0(横)×19.1(縦)ミリ、キーストロークは実測で2.7ミリとゆとりがある。キートップは、ステップ型で球面シリンドリカル形状だ。つまり、各キーを階段状に傾斜させ、中央をわずかにへこませている。実際、長文入力でも手が疲れにくく、ミスが少なく打てた。

 付属の無線式レーザーマウスは、2ボタンでスクロールホイール付きだ。裏面のセンサーは、右側に設けられている。つまり、右手で操作すると、親指と人差し指の間にセンサーが来るため、直感的な使い勝手が得られる。ボタンのクリック感はしっかりしていてレスポンスがよい。こちらも単三電池1本で駆動する。

 その他、富士通WEB MARTのカスタマイズメニューでは、「ワイヤレスタッチパッド」が用意されている。

●4コアCPUのパフォーマンスが良好

 FH77/UDの基本仕様は、4コア/8スレッド対応の第4世代Core i7-4712MQ(2.3GHz/最大3.3GHz)、8Gバイトメモリ(PC3L-12800/8Gバイト×1)、2Tバイトの3.5インチHDD、CPU内蔵のIntel HD Graphics 4600、64ビット版のWindows 8.1 Updateといった内容だ。もちろん、Windows 10への無料アップグレードに対応している。ただ、FH77/UDはタッチパネル非搭載なので、タッチ操作を前提としたアプリが楽しめない点は注意したい。

 定番のベンチマークテストを実施した結果は、デスクトップPC向けの4コア/8スレッド対応CPUを採用していることから、CPUパフォーマンスの高さが目立つ。ストレージ性能の影響を受けやすいPCMarkなどは、SSD非搭載なのでスコアが振るわないが、ホームPCとしての実力は高いレベルにある。2コアCPUのノートPCと比較して、動画編集などの用途もパワフルにこなせるだろう。

●静音性、放熱性も満足できる

 静音性も高い。本体背面から約5センチの場所に騒音計を設置して計測したところ、アイドル時で39.4デシベル、FF14ベンチ2回実行時で46.7デシベルだった(暗騒音32.5デシベル)。高負荷時でも、耳障りなファンノイズはなく、静かに回転していることが分かる程度だ。空調が動作している部屋ではファンの存在を感じないくらいだった。

 動作中の発熱もほとんど気にならない。FF14ベンチ2回実行時に、本体背面の各部を放射温度計で計測したところ、最高温度は中央上部で40.4度、最低温度は右下で25.9度だった(室温は25.0度)。HWiNFO64でCPU温度も確認したところ、CPUパッケージの最高温度は68度と表示された。Core i7 4712MQのT-junction(最高動作温度)が100度なので、余裕ある放熱設計と言える。

●新時代のエンターテインメントPC

 FH77/UDは、省スペースで洗練された狭額縁デザインのボディに、テレビ、レコーダー、オーディオ、ホームPCといった1台4役の多機能を高次元にバランスした新時代のオールインワンPCと言える。

 スマホやタブレットとの連携にも配慮したテレビ機能、手軽にハイレゾ楽曲の購入、再生、管理を本体だけで行えるオーディオ機能、4コアCPUをはじめとする余裕のPCハードウェアを備えており、イマドキのエンターテインメントPCとして多目的に活用できる実力を持つ。「Made in Japan」のPCという点にも注目だ。テレパソ最盛期ほどの勢いはないが、国内大手メーカー製のエンターテインメントPCならではの魅力は確かにある。

 20万円近い実売価格から幅広いユーザーが気軽に購入できるモデルではないが、愛用していたテレパソの買い換え候補を探している人や、多機能な液晶一体型デスクトップPCを求める人は、こうした選択肢もチェックしていただきたい。

 日本マイクロソフト株式会社は11日、11月の月例セキュリティ更新プログラム(修正パッチ)に関するセキュリティ情報12件を公開した。脆弱性の最大深刻度は、4段階で最も高い“緊急”が4件、2番目に高い“重要”が8件。事前に情報が公開されていた脆弱性もあるため、マイクロソフトではできるだけ早急に修正パッチを適用するよう呼び掛けている。

 最大深刻度“緊急”のセキュリティ情報は、「MS15-112」「MS15-113」「MS15-114」「MS15-115」の4件。

 「MS15-112」は、Internet Explorer(IE)に関する25件の脆弱性を修正する。脆弱性が悪用された場合、特別に細工されたページをIEで表示した際に、悪意のあるプログラムを実行させられる可能性がある。現在サポートされているすべてのIE(IE 11~7)が影響を受ける。

 「MS15-113」は、Microsoft Edgeに関する4件の脆弱性を修正する。脆弱性が悪用された場合、特別に細工されたページをMicrosoft Edgeで表示した際に、悪意のあるプログラムを実行させられる可能性がある。影響を受けるOSはWindows 10

 「MS15-114」は、Windows Journalに関する1件の脆弱性を修正する。脆弱性が悪用された場合、ユーザーが特別に細工されたジャーナルファイルを開いた場合に、悪意のあるプログラムを実行させられる可能性がある。影響を受けるOSは、Windows 7/Vista、Windows Server 2008 R2/2008。

 「MS15-115」は、Windowsに関する7件の脆弱性を修正する。脆弱性が悪用された場合、ユーザーが特別に細工されたドキュメント開いた際や、埋め込みOpenTypeフォントが含まれるウェブページを開いた場合に、悪意のあるプログラムを実行させられる可能性がある。影響を受けるOSは、Windows 10/8.1/8/7/Vista、Windows RT 8.1/RT、Windows Server 2012 R2/2012/2008 R2/2008。また、修正した脆弱性のうち1件は、事前に情報が公開されていたことが確認されている。

 このほか、最大深刻度“重要”のセキュリティ情報として、Officeに関する「MS15-116」、NDISに関する「MS15-117」、.NET Frameworkに関する「MS15-118」、Winsockに関する「MS15-119」、IPSecに関する「MS15-120」、Schannelに関する「MS15-121」、Kerberos認証に関する「MS15-122」、Skype for BusinessおよびLyncに関する「MS15-123」が公開された。このうち、「MS15-116」「MS15-120」「MS15-121」で修正する脆弱性については、事前に情報が公開されていたことが確認されている。

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