高岳堂Blog

上方落語を愛す

きのう放送のNHK「上方落語の会」の録画を観る。
まず桂咲之輔の「いらち俥」。
クスグリを工夫しているようで、新鮮さを感じる部分がある。アピールは韋駄天車夫の疾風感で、45度・45度の回転のあとの90度回転。結句、ヘトヘトになって降りる、という演出。若くなければできない。
二席めは桂雀太の「粗忽長屋」。
彼らしいねっちょりした語り口が、常識人側の正統性に疑問を呈し、不条理の男に正統性があるのではないかと思わせる。
事の成り行きを面白がる傍観者の擁立が新しい。
舞台は浅草から天神さんに移っている。
終了後、平成28年度NHK新人落語大賞の受賞についてのインタビュー。賞金は後輩との飲み会に使ったと言い、二葉デザインで作った「サッパリワヤデスワ」の手拭いを披露。

16日のABCラジオ「日曜落語 なみはや亭」をタイムフリーで聴く。桂きん枝師で「不動坊」。今年1月21日の収録で、当日ならよかっただろうが、放送日の季節には合わない。
冒頭は、長屋の連中を集めた場面から。事の経緯、銭湯での利吉の様子を遡り、筋違いの意趣返しの相談。利吉は幽霊騒動にしか登場しない。
太鼓を引き上げる件りでは、ラジオだから形態所作が見えず、クスグリ効果は半減。
一番の笑いどころは、やはりあんころの件り。
幽霊役が井戸に落ち込み、サゲは「こんなしょうもないことに、わしがはまると思うたんかい」「はまったんはこちらのほうでございます」。

4月10日放送のNHK「プロフェッショナル」の録画を観た。春風亭一之輔師の回。
密着取材だと、表向きの印象と随分異なることに驚かされる。高座ではあれほど陽気で客を笑わせてくれる一之輔師が、高座を降りると客にウケないことを恐れ、迷い、不安に悩む。芸の高みを追求する噺家はそうであるのかも知れないけれど、その苦悩を目の当たりにすると、噺家はつくづく孤高であると気づかされる。
高座風景は、「初天神」と「鰍沢」と新作「手習い権助」。師が新作を物するのも驚きだった。高座ごとのセリフの進化、持ちネタ帳面のページ、新作の習作の様子や稽古の場面も大変興味深い。
「目の前ですね、一席一席だな。常連さんや初めて来るお客さんに笑ってもらう、その責任を果たすだけ」と、目の前の一席に全力を注ごうとする姿勢は、高座からも窺える。
プロフェッショナルとは、の問いには、「涼しい顔をしながら、すごいことをやる人、かな」。「これ、お金出るんですか? それもプロフェッショナルですよね」も芯を突いている。
プライベートを写すシーンでは3人の子どもたちがかわいい。近著の「いちのいちのいち」を思い起こすと、なおかわいい。

NHK「演芸図鑑」は、堺すすむ、瀧川鯉昇。ゲストは湊かなえ。
鯉昇師は「持参金」。
借金返済の督促の金高は10万円。嫁候補の容姿容貌は初めて聴くパターンがぞろぞろ。演者にしてみれば遊び甲斐があるところだろう。
カット割りが頻繁。3台のカメラが正面と上下(かみしも)からカットをころころと変える。最悪のカメラワーク(カメラ自体が悪いわけではなく、スイッチャーの指示の仕方だが)。

ABCラジオ「日曜落語 なみはや亭」をタイムフリーで聴く。三代目桂春團治師の「野崎詣り」は1969年4月6日の録音。
三代目にしては珍しくマクラがあって、二代目に関すること。
噺のほうは「相も変わりませず」。「杭持って気張れ」の件りでは客席から手がくるが、その原因は当の場にいなければわからない。そういう点、一期一会だしライブ重視の芸である。
ゲストは小佐田定雄氏で、氏と前田憲司氏がプロデュースする「第5回いけだ落語うぃーく」の告知。いろんな趣向があっておもしろい会の数々。

桂文枝師がナビゲーターの、けさのNHK総合「演芸図鑑」は、ニッチェと古今亭志ん輔師。ゲストは湊かなえ。
志ん輔師は「宮戸川」。
半ちゃんとお花さんは、言葉ぶりからすると、お花さんのほうがふたつ三つ年上のように思える。このあたりは演者の心積もりでいかようにもできる。霊岸島の叔父さん夫婦の馴れ初め話も、詰めてもいいだろうし、拡がりをもたせることもできる。
濡れ場が佳境に至るや、袖から声がかかった態で「え?、お時間でございます」で降りる。こういうサゲ方もこういう噺ならではで洒落ている。
湊かなえのインタビューもおもしろい。来週も観たくなる。
(今回、「も」が多い)

4月3日に放送があったNHK Eテレでの「超入門!!落語THE MOVIE」の再放送を(録画して)観た。
去年10月のNHK総合で放送された第1回、春風亭一之輔師の「かぼちゃ屋」と古今亭菊之丞師の「お見たて」。改めて一之輔師のクスグリのおもしろさと前田敦子の口パクのうまさを思う。
今回のEテレ版では、「江戸に聞く」と題した江戸時代の風俗に関するワンポイント解説が入る。今回は「かぼちゃ屋」に出てきた長屋の兄貴が「なぜかぼちゃを唐茄子というか」と「江戸で人気のかぼちゃ料理は?」に答える。うーん、わざわざ設けるコーナーかどうか。

土筆を採りながら、ABCラジオ「日曜落語 なみはや亭」をタイムフリーで聴く。土筆はもはやかさが開いて、遅い。彼岸の頃がよかったのか。帰ってからのはかまの掃除が邪魔くさいけれど、旬のものをいただけるうれしさが勝つ。
落語は桂春蝶師で「紙入れ」。
貸し本屋の新さんはごく気弱な色男の風情。女将さんは、前半は純情(表面上は、だけど)、後半はやり手。サゲの旦那の「男の情けなさ」に至るまでには、やや威厳に乏しい面もあるけれど、結句女将さんのしたたかさが強調されるには、一面の頼りなさも必要か。
春蝶師は外見上も若く、新さんがメインのキャラクターとなざらるを得ないし、またマッチもしてこの噺に似つかわしい。全体的に上方らしいコテコテ感があって、東京との雰囲気の違いがはっきりと出ていたと思う。

ABCラジオ「ラジオわろうてい」の後継番組は「ラジオ演芸もん」。
進行の桂沙綾アナが言うには、伝統芸能に敬意を表しつつ、現代の演芸にスポットを当てる番組らしい。
桂アナだけでは心もとないということで、各回に演芸アドバイザーなる人物を招いて進行。今回は放送作家の小林仁氏。
大きくはふたつのコーナーがあり、「演芸もん図鑑」では演芸アドバイザーが推す芸人のネタとインタビュー。今回は藤崎マーケット(2週分を収録しているようだ)。
Wikipediaでのプロフィールが荒らされていて、ウソの履歴が更新され続けているという。
もうひとつのコーナーは「演芸こぼれ話」で、これも演芸アドバイザーが披露する。
今回は明石家さんま。さんまが言う「仕事で落ち込んだことがない」は、「自分を過大評価しすぎない」ことの結果で、自分の実力を冷静に客観視する姿勢であると評する。また、「ほんまのことはどうでもええねん」は、番組がおもしろくなるならば「洒落で」事実と異なることもいとわないという姿勢で、高く評価している。
初回を聴いた限りでは、基本的には落語は対象にならないようで、今後も聴くかは様子見。

日経新聞朝刊の文化面で、上方演芸研究家・古川綾子氏の「上方落語の舞台-十選」が連載されている。けさの分で8回め。上方落語の演目のあらすじと、同時にそれにまつわる絵画を写真入りで紹介している。
3回めくらいに連載に気がついて、すべてを読んだわけではないのだが、あらすじは簡潔にして要点がわかりやすく、挿入される絵画も趣きのあるものが多い。昨日の「天狗裁き」「天狗刺し」絡みで紹介された耳鳥斎の「天狗寿老鼻頭くらべ」もまさに「滑稽な画風」でおもしろい。
古新聞を漁って、切り抜いてスクラップしよう。

3月26日のABCラジオ「日曜落語なみはや亭」をタイムフリーで聴く。
まず桂ざこば師のゲストトーク。平成28年度芸術選奨大衆芸能部門文部科学大臣賞を授賞したこと。他部門の大臣賞には橋爪功や庵野秀明、宮藤官九郎、鈴木雅之、秋本治らがいる。
「贈賞理由」は、抜粋すると「上方落語四天王亡き後、圧倒的な存在感と実績で、米朝流の巧みさと枝雀流の爆笑を併せ持ち、感情に正直なパフォーマンスは多くの人に愛され高く評価されている。ピッコロシアターでの独演会の『崇徳院』と『強情』は、巧みなストーリー展開の合間にお茶目なくすぐりを連発し、落語の楽しさを見事に演じ切り、客席をうならせた」というもの。誰が審査員だったか興味のあるところ。また、大衆芸能部門での落語家の候補者はあと5人いたとかで、ざこば師も言っていたが誰だか知りたくなる。
他はピッコロシアターでの独演会の告知、大阪松竹座での芝居の告知。独演会では「厩火事」と「笠碁」を演るという。
トークのあとの落語は、SPレコードから五代目笑福亭松鶴「口合根問」。録音状態がよくないところに持ってきて、口合の洒落自体がもうひとつよくわからないので、なかなか笑えなかった。

愛川晶「神楽坂謎ばなし」読了。
シリーズ1作めだが、3作めを先に読んでしまい、そもそもを遡る形。
主人公が落語や寄席事情の超初心者という設定から、演目は勿論、業界の符丁など皆目理解できないことになっているが、とは言え世間的にはある程度普及していることも知らない態で、言わずもがなとも思える件まで疑問に思うので少々まどろっこしいところもある。世間一般にはこれでちょうど良いのか。
主人公の環境には表面上隠されている部分が多々あり、徐々に謎解きされる過程はミステリではある。出生の秘密が明かされて、寄席の席亭の代理を勤める羽目になるのは、上司のみならず幸か不幸か、とも思う。
当然2作めも読まざるを得ない。

けさのABCラジオ「ラジオわろうてい」のトークゲストは、兵庫県立歴史博物館学芸員である桂米朝師の子息・中川渉氏で、先週に続く2週め。
先週の日曜はちょうど米朝師の三回忌に当たり、姫路で行われた「特別展」の話など、今週は家庭の中での米朝師のことなど。
氏の双子の兄は教員で、表現者、師匠、研究者の役割を子息三人で分担して、米朝師のDNAを受け継いでいる格好。逆に言えば、高いレベルでそれらすべてをひとりで成し遂げた米朝師の偉大さが際立つ。
渉氏は学年は違えど大学の同窓で、当時キャンパスでよく見掛けたことを思い出す。写真で見る若い時の米朝師の容貌そっくりで、すぐに子息とわかったものだ(双子のどちらかはわからなかったけれど)。
米朝師がかつて出演していたABCテレビ「和朗亭」をオマージュしたというこの番組も今週が最終回。ABCには関西の大衆芸能を広める番組を今後も続けていってほしいものである。

日曜日のTBSラジオ「ラジオ寄席」をタイムフリーで聴く。出演は、おぼん・こぼん、ケーシー高峰、桂歌春。
歌春師は「強情灸」。
ラジオだから、苦しみながらも精一杯虚勢をはる表情や仕草を欠くとやはりもったいない。材料や調理法が同じだからと言って、盛りつけに頓着しない料理は不味い気がするのと同様。損と言わざるを得ない。噺によってはそういうこともある。

きょうのNHK Eテレ「日本の話芸」は、柳亭市馬師の「粗忽の使者」。
自分の名前も忘れてしまう地武太治部衛門氏の粗忽ぶりは、呆れてしまうほど常識はずれである。「そんなアホな」ではあるが、であればあるほど馬鹿馬鹿しくておもしろくもなる。
ひとつ不審な点は、エンマと呼ぶ釘抜きで地武太氏の尻を捻ろうと画策する留公なる大工は、身分を隠すために衣装を着替えさせられるわけで、そうなると持参したエンマを田中三太夫氏に知られずどう持ち込んだのか。要らぬ心配だけど。

愛川晶「はんざい漫才」を読了。
武上希美子が主人公の「神楽坂謎ばなし」シリーズの三作めだが、一作め二作めはまだ読んでいない。
希美子は寄席・神楽坂倶楽部の席亭の娘だが、勤務する出版社から「出向」という形で席亭代理を務めている。シリーズの題材は、前作は手妻や太神楽だったが、本作は漫才と音曲で「はんざい漫才」と「お化け違い」。
「お化け違い」の方では過去の落語界の「協会クーデター事件」が背景にあり、直接的には関連性は窺えないが、モデルを詮索するのもおもしろい。
また、愛川氏の「神田紅梅亭寄席物帳」シリーズの登場人物である山桜亭馬春や弟子の福の助も絡んでいて、兄弟シリーズのリンクも興味深い(福の助は真打になっていて、三代目山桜亭馬伝を襲名していた。五作め=「茶の湯」の密室をまだ読んでいないが、ここで昇進しているようだ)。

日曜日のTBSラジオ「ラジオ寄席」をタイムフリーで聴く。出演は、U字工事、江戸家小猫、三遊亭遊雀。
遊雀師は「熊の皮」。
この噺は二度め。初めてはこみち姐さんだったと思うが、頼りない甚兵衛さんはやはりそこそこの年齢が出ないと「らしく」ない。逆に高圧的に言うだけではない女将さんを可愛く演じたこみち姐さんの口演は得がたいものがある。比較文化論だが、だからこそ見えてくる良さもある。

きょうのNHK Eテレ「日本の話芸」は、瀧川鯉昇師の「茶の湯」。
道具の名前を一通り、色付けに絵の具。お作法や飲んだ顔つきは、やはり映像がなければおもしろくない。
無知の茶道事始め、お茶菓子騒動、店子のはた迷惑が三大骨子だが、それぞれに盛り上がりがあるため、つなぎの部分や次の展開になってからダレが生じやすいことが、この噺の宿命的な難しさではないだろうか。

文化放送「志の輔ラジオ 落語DEデート」のゲストは、作家の谷村志穂。新刊の「ききりんご紀行」の宣伝を兼ねて。
落語は六代目三升家小勝師の「弥次郎」。1964年9月のTBSラジオの音源(当時の小勝師はTBSの専属だったらしい)。
出だしからご隠居さんが「よう!ウソつき!」と呼ばわる。弥次郎さんは虚言癖があるとレッテルを貼っているので、端からそのつもりでお話を聞くことになる。聴く方も自然、大言壮語のレベルの高さを期待する姿勢になり、こういう手もアリだなと思う。
猪の件で、「そこが畜生の浅ましさ」「何を言ってやがる」でサゲ。

NHK総合テレビ「演芸図鑑」の演芸は、アンガールズ、三遊亭笑遊、ナビゲーターは林家正蔵、対談ゲストは橋爪功。
笑遊師は「がまの油」。
前半の口上をどう聞かせるか、可笑しいところはない代わりに興趣のおもしろさで引き込まなければならない。ごく正統な語り口調が、居酒屋に行くところで一転、片膝立ちにまでなって大きく動き、二度めの口上は過剰な酔っ払い方ではないけれど、伏線からの逸脱が激しく落差が可笑しい。噺全体としても緊張と緩和の法則がはっきりしている。
対談の橋爪功氏は、青山高校在学時に2年先輩に柳家小三治師がいたらしい。その縁もあってかどうか、「ま・く・ら」の朗読劇をしていて、一部実演してみせる。なるほど、高座のテキストを文章化したものを改めて口演するという試行は、速記を基にした落語そのものとも言える。

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