2013年06月

2013年06月30日

トカラ列島の畜産 歩く旅人

トカラの畜産は、残された数少ない原野の土地資源と温暖な気候を利用した周年放牧を中心とした低コストによる肉用子牛の生産である。共販体制の確立により公正な市場での適正評価による販売が可能になったことで生産者の意欲が向上し、優良な子牛が出荷されている。120戸ほどの農家が肉用子牛の生産に従事し、年間焼く500頭の子牛が生まれ、350頭ほどが鹿児島県中央家畜市場に出荷され、年間売上1億円を超える産業となっている。トカラで飼育されている牛種は黒毛和牛である。生後半年ほどの雄牛は1ヶ月に1度のセリに合わせて鹿児島県中央家畜市場へ出荷される。南の島の温暖な気候と豊かな緑の中で育った黒毛和牛は、全国屈指の畜産県鹿児島産蓄肉の一翼を担って、全国の消費者の元へ送られている。その肉質は柔らかく、無駄な脂肪がないため、ステーキ、すきやき、しゃぶしゃぶ等多彩な料理に使え、プロの料理人も絶賛するほどである。トカラのある十島村では、畜産が将来ともに重要な産業であるという認識のもと、全島挙げて新技術の導入に努め、よりよい肉牛の生産を目指している。沖縄などでの山羊料理用としての山羊の飼育も忘れてはならない畜産のもう一方の柱である。
放牧中の黒毛和牛飼育される山羊

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2013年06月29日

トカラ列島の漁業 歩く旅人 

トカラ周辺の海は東シナ海でも有数の好漁場である。トカラで漁業の中心となっているのは「トビウオの流し刺し網漁」である。毎年5〜7月に漁が行われ、この期間に年間の水揚げをしている。これらは鮮魚としてただちに鹿児島へ送られる。他に、一夜干し、干物にも加工され、出荷されている。また、トカラならではの漁に、「ホロ引き漁」も行われている。「ホロ」とは、九州南部の方言で「羽毛」のことである。
羽毛で作った毛ばり(擬餌針)での1本釣りのことを「ホロ引き漁」という。”飛行機”と呼ばれる30cmほどの木製の浮きを長い縄に付け、その”飛行機”に釣り糸を結び、それに「ホロ」を付けて漁船で引っ張るのである。1隻の船で3本の「ホロ」を引く。「ホロ引き漁」の対象魚は、カツオ、サワラ、シビ、シイラなどの中・大型魚である。伊勢エビ、夜行貝、甲イカなどを狙った、昔ながらの「素潜り漁」も盛んに行われている。
ホロ引き漁加工される大物漁伊勢エビ漁

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2013年06月28日

トカラ列島の農業 歩く旅人

トカラは日本で最後まで焼畑農業が残っていた地域である(1955年まで行われていた)。畑で栽培されていたのは、サツマイモ、麦、ウリ、スイカ、それに稗、粟といった雑穀だった。現在でも、主要農産品はサツマイモ、スイカ、田イモ(タロイモ)など変わっていない。粟などの雑穀は今ではほとんど栽培されることはなくなっている。稲作(戦前から水田耕作されていたのは宝島のみ、他の島では細々と作られていた)も行われているが、田んぼにする土地が少ないのと、住民の高齢化のため本格的には行われなくなってきている。現在では「フェリーとしま」が鹿児島から運んでくる米を買う家庭が多い。どの農産物も自給自足の域を出ないものだが、その中でも唯一現金収入の可能性のあるものとして、「シイタケ栽培」「早出しトカラビワ栽培」「サンセベリア(別名:トラノオ)」が脚光を浴びている。どちらもまだ端緒についたばかりだが、栽培法を勉強するための見学会を催したりして住民の期待は大きい。
田イモ畑トカラビワ出荷光景サンベリア出荷光景

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2013年06月27日

トカラ列島の固有の生物群 歩く旅人

タモトユリ(鹿児島県指定天然記念物)
タモトユリ
口之島にだけ群生する。「最も高貴なユリ」という学名をもつ。
他のユリが花弁を下に向けて咲くのに対し、「タモトユリ」は空に向かって咲く。強く上品な香りと、純白の花が特徴。ユリの代表種とされる「カサブランカ」は、この「タモトユリ」と他のユリとを交配させて作られたものである。「タモトユリ」は日本国内よりも海外で人気が高く、戦後の貧しい時代に乱掘されて園芸業者に売られ、絶滅の危機に瀕した時期もあった。現在では、県天然記念物に指定され、長崎大学などで種の保存のための栽培が為されている。江戸時代には、毎年12本ずつ幕府に献上されたと古文書にあり、平家の落人伝説も持つ、悲しい花である
アカヒゲアカヒゲ
ツグミ科の小鳥。種子島、奄美大島、徳之島に留鳥として分布。清流のある深山の林に生息。翼長7cm。オスは背面が濃暗赤色、胸腹面は白く、のどの部分だけ黒色。メスには、黒色部分はなく、全体に暗色。習性は近似種のコマドリに似ている。林内の地上で食物をとる。羽色が美しく、飼い鳥にされるが、保護鳥である。トカラ列島(十島村)の村鳥でもある。トカラファンの中には、この鳥の美しさに惹かれてトカラに通いつめている研究者もいる。
トカラ馬トカラ馬(鹿児島県指定天然記念物)中之島でのみ飼育されている。県の天然記念物に指定されているとはいえ、現在20頭ほどしかいないため、絶滅の危機が去ったわけではない。日本馬の原種といわれている。以前はごく普通に農耕馬として使われていたが、農機具の発達と共に使われなくなり、現在では純粋に種を守るためだけに飼育されている。



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2013年06月26日

宝島ってどんなとこ? 歩く旅人歩きます

小宝島同様、隆起サンゴ礁でできた島である。鹿児島から船で8時間、奄美からだと3時間。トカラ列島最南端の島である。 スティーブンスンの小説「宝島」のモデルとなった島。島内には、海賊キャプテンキッドが財宝を隠したと伝えられている鍾乳洞もあり、国内外から多くの探検家や賞金稼ぎが訪れたといわれている。文政7年(1824年)には、実際にイギリス船の侵略(食料として牛を奪うため)があり、翌年徳川幕府が発布した「異国船打払令」の一原因ともなった。島には、熱帯、亜熱帯の植物が海岸に茂り、海の深い紺碧の青やサンゴ礁の白と絶妙のコントラストを見せている。島の北側には、広大な砂丘が広がっているし、鍾乳洞もたくさんある。中には、幅10m、奥行500mのものもあり、観音像が祭られていたりする。子供の頃に戻って、忘れていた冒険心を掻き立ててくれる島である。
宝島大籠海水浴場白砂が恋しい大間海岸









荒木崎から東シナ海を望むイギリス坂記念碑荒木崎灯台遠景

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2013年06月25日

小宝島ってどんなところ? 歩く旅人歩きます

隆起サンゴ礁でできた周囲4kmほどの小さな島である。一番高い所で標高103mという平坦な島で、30分ほどで島を一周できてしまう。島は、アダンやソテツが生い茂り、道路脇にはハイビスカスの真っ赤な花が咲き乱れている。立神と呼ばれている多くの奇岩が海岸線に聳え立っている。中でも、赤立神、ウネ神、オオグチなどは見ごたえがある。平家の落人が隠れ住んだといわれる大岩屋の洞窟なども存在する。
島の東部にはサンゴ礁の割れ目から湯が湧き出している露天風呂もある。漁船を頼んで、隣の無人島「小島」に渡ってみるのも面白いような気がします。
宝島中西の赤立神赤立神遠景










城之前の岩山小島を挑むウネ神

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2013年06月24日

平島ってどんなとこ? 歩く旅人が歩きます

トカラ列島の中央部に位置し、平家の落人がトカラ列島に最初に流れ着いた島とも伝えられている。その為か、東部海岸の崖下には、平家伝説ゆかりの史跡「平家の穴」と呼ばれる洞窟があり、島内の数ヶ所に監視望楼の名残りと言われるものも残されている。島内の原生林はほとんど人の手が入っておらず自然がいっぱい、ガジュマルやビロウなどの亜熱帯植物が生い茂り、樹齢1000年を超えるガジュマルもある。トカラの中でも、昔ながらの習俗が最も守り続けられている島でもある。祭りなどもすべて旧暦で行われ、中世の頃から続いている成人の儀式(元服の儀式)が今でも当時の形式をあまり変えずに行われているのも、ここだけである。
平島穴口(平家の穴)出瀬












ガジャマルの老木東之浜海岸「東之浜海岸」

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2013年06月23日

悪石島ってどんなとこ? 歩く旅人が歩きます

悪石島は周囲を断崖絶壁に囲まれた島で、仮面神「ボゼ」に象徴される神々のしまであり、温泉の島でもある。島内各所に神々が祭られている。島内の鬱蒼とした亜熱帯植物の森は大切に保護され、「神山」として聖地の扱いを受けている。 第二次世界大戦も終戦に近い頃、沖縄から本土鹿児島に疎開する学童を乗せた輸送船「対馬丸」が、アメリカ軍潜水艦の魚雷によって沈没し、1000人以上の学童が犠牲になった。「やすら浜港」近くの「対馬丸沈没慰霊碑」は、学童の遺体を海から引き揚げ手厚く葬った島民のてによって、その霊を慰めるために建立されたものである。こんな秘境の島にも戦争は影を落としていたのである。悪石島は、トビウオやタケノコの代表的な産地としても知られている。トビウオは梅雨の頃、鮮魚のままか、干物として出荷されている。島根県の「トビウオの燻製」は全国的に美味として有名だが、この「トビウオ燻製」こそ、トカラにあこがれ、悪石島にきていた島根の人が、悪石島の「トビウオの干物」からヒントを得て作り出したものである。彼は、故郷の島根に帰ったのち、この「トビウオの燻製」を売り出し、全国的に有名となったものである。

悪石島悪石島の全景御岳からの眺望









やすらはま港ノンゼ岬灯台悪石島の夕日は特に美しい

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2013年06月22日

歩く旅人が 歩く諏訪之瀬島ってどんなとこ?

諏訪之島は十島村のなかで2番目に大きな島。島中央に活火山の「御岳」(799m)があり、今なお活発に噴煙をあげている。御岳は文化10年(1813年)の大噴火で島の東西にあった50あまりの人家は消滅し、全島民が避難のため、隣の悪石島、中之島に島を捨てて、移住した。その後、70年間無人島となったが、明治になり、奄美大島出身の「藤井富伝」らが入植し、開拓が始まった。現在は住民は奄美大島と県外からの出身者で構成されている。元の諏訪之瀬島住民はほとんど島には戻って来なかったのである。1960年代にはヒッピーが大挙押し寄せ島民とトラブルを起こしたこともあったが、彼らも島の生活に溶け込み、今では島に欠かせない働き手となったといる。北西部の溶岩台地には手付かずの自然のままの「マルバサツキ」が日本でも有数の規模で群生しており、5月初旬から中旬にかけての満開の頃には、一面がピンクの絨毯を敷いたようになる。塩見岬の海水浴場では、干潮時に潮干狩りができる。豊富な量と種類の多さが自慢である。南の島にしかないものもあり、自分で採集した貝殻でペンダントやブローチを作る女性観光客も多い。
諏訪之瀬島上空から御岳を眺む作地温泉












ヤマハ飛行場マルバサツキの群落

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2013年06月21日

歩く旅人が歩く中之島ってどんなとこだろう

中之島は面積、人口ともに十島村最大の島。村役場の支所も置かれ、トカラ列島の中心的な役割を担っている。島の中北部にトカラ列島最高峰の御岳(979m)があり、「トカラ富士」の名前にふさわしい美しい稜線を見せている。登山もでき、頂上から眺めるトカラの島々の美しさはまるで絵に書かれたものを見ているようである。御岳の麓の高原には、天然記念物の「トカラウマ」が放牧されている。ゆったりと草を食べる姿は、のどかさを感じる。島には、九州でも有数の60cm反射望遠鏡をそなえた天文台もあり、澄んだ空気と相まって素晴らしい天体ショーが観測できる。近くには、トカラ列島の自然、歴史、文化などが一目で分かる「歴史民俗資料館」がある。海岸線には、海水浴場をはじめ、3つの温泉もあり、いつでも無料で入浴できるとても素敵な島です。口之島セリ岬の奇岩御岳頂上付近

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