2009年08月07日

自涜

老人「人間にはそれぞれ相応しい場所ってもんがある。あんたは、ここでこんな仕事をなさるべき御人じゃない」
僧「運命は天によって定められているのです。人は運命の命じるままに動くしかありません」
老人「いゃあ、確かに。しかしどんな生き方をするか選ぶ自由も人間にはある。どうも矛盾しているようだが、両方とも真実だ。ふふ、わしにはよく分からんが」
僧「あなたは心が広い。清の国の心のように」


当時の僕の性は・・・やはり弧絶だった。
カノジョも女友達もいない。
人並みの性欲はあっても、土台対象との縁があまりに隔絶している限りは、燃え盛る機運も起こらない。
童貞喪失以降、風俗に通いたくてもカネはない。
ナンパなんて、矜持や自信や好奇心以上に、そんな余裕の意欲もない。
結局、覚えたての自涜で済ませるしか術はないようだった。
だった・・・というのは、そんな記憶が今となっては希薄だからだ。
あの頃の僕は六畳の独り部屋。
しかし毎日毎晩、毎朝毎時?オナニーにハマっていた思い出は全然ない。
偶然の動作でその効能を知ったのは、大学三年の時。
けれど、一般的に言う、サルのごとし、ほどに躍起になった覚えがまったくない。
僕の性は早くから枯れていたのだろうか。
やはりSMなんぞから出発したあたり、僕の本能は屈折していたのだろうか。
SMクラブなんて風俗を知ったのは、多分世の中にさまよい出てから・・・。
僕には大学生としての青春さえなかった。
性を生に重ね合わせる人間らしい若さすら、僕はとっくに見失っていた・・・・?

kohe000 at 13:28|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2009年07月29日

冷たい性

僧「先生、あの少年は入門者でもないのに、なぜここに?」
老師「わしが村から連れてきたのだ。あのように体が不自由なうえに、口もきけず心無い者にいじめられておったのでな」
僧「生まれながらに、大きな不幸を背負っているのですね」
老師「なぜ不幸だと思うのだ?あの子には雀や子羊や、優しい仲間が大勢おる。あの子は物の言えぬ口と、ねじれた手足をもって産まれた。しかし自然は、生き物と心を通わせ合うという、素晴らしい力を与えた。それは富や名声よりも、王侯貴族となるよりも、遥かに素晴らしいことではないか」


僕の未熟な性は、どうなったか・・・。
彼女はいない。後輩からも慕われない、先輩からも可愛がられない。
僕の上のある部長は先輩の女子から愛されてリーダーに抜擢された。
僕のある後輩は、やはり先輩の女子の部屋に押しかけ、いつの間にか部長になった。
別の後輩は、さらに下の後輩に精神的にも経済的にも支えられて、今なお役職に祭り上げられている・・・。
僕はいつ童貞を失ったろうか。
記憶が曖昧だ。
オナニーが先だったか、セックスが最初だったか・・・。
ただはっきりしていることは、僕が風俗で童貞を喪失したことだ。
値段は確か、三万円。
当時の僕には無論、大金だったが、僕は射精まで辿り着けなかった。
多分、射精という快感行為をまだ知らなかったゆえの、あえない轟沈だったのだろうが。
別に惜しいことをしたとは思わなかった。
初めての女体に、鮮烈な興奮なども大して覚えなかった。
女性と違って、世界も歩き方も、何も変わらなかった。
薄暗い照明で、未踏だった乳房も陰部も、確認できなかったので、別段強烈な思い出にも、ましてトラウマなどにも無縁だった。
相手の顔すら覚えていない。
ただグロテスクで悪趣味な印象しか残らなかった、その淫靡な部屋の造りだけが・・・時折反吐につながるか・・・。
必死な一人相撲の大学時代だった。
性も愛も、そのためだったかどうか、僕には不毛だった。
僕の意識下には、早くも全ての人間的営みに対しての諦念と冷視が蓄積し始めていたかもしれない。
あらゆる人間に向かっての敵視と剥離、それはいじめられっ子の、どうしょうもない巡り合わせだったのかもしれない。
僕は、優しさを知らない、無力だった・・・。



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2009年07月25日

童貞

囚人「へへ、年中腹ペコで、昔から腹の減ってねぇ時なんて一度もなかった」
僧「何を思い出す?」
囚人「妹は俺のことを笑わなかった、一度もだ。けど、他の奴は・・・」
僧「笑うようなことをしたのか?」
囚人「俺は何もしやしねぇ」
僧「きっと皆を怖がらせたんだ」
囚人「俺は馬鹿で、頭も弱いんだ。だけど力はある。だから俺のことを笑う奴は容赦しねえんだ」
僧「稲を植えれば、稲が実る。恐れを植えれば、恐れが実る」


僕は孤独だった。
部活と、映画三百本を見ることだけに熱中し、そこに迷いはなかった。
学科の方は、もっぱら創作。
下らない小説を書いた。
団鬼六にかぶれたあげく、「縄師」なんかを主人公にした妄想を書き綴った。
僕は緊縛の職人で、しかし周囲からは軽く扱われ、女達からは忌み嫌われ、そしてインポで・・・そんな話。
まるでAV男優じゃないか。
10年近く後の自分を、こんなところで予感、いや予言している体たらくじゃないか。
そのくらい女の子には相変わらず縁がなかった。
女子の方が多いくらいの部活ではもちろん、学科でもさっぱり女の子との縁など生まれなかった。
積極的に動く自信もなかった?
かもしれない。
だが、とにかく僕はハズレていた。
恋愛にも、友情にも、そもそも人間という輩にも・・・。
僕はSM小説の中だけで女性を支配した。
実際は、全然モテない、頼りにもされていない、だからハタチ過ぎても当然、童貞のダサ男だった。
オナニーをやっと覚えたのは、まだだったろうか?
僕には思い出せない。
キャンパスライフなんて、屈折の青春なんて・・・僕にはありえなかった。

kohe000 at 11:36|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2009年07月09日

セックスを・・・

少年「ねぇ、そうやってあちこち旅して歩いて、寂しくないの?」
僧「ひとりが好きなのさ」
少年「そう、俺もさ・・・でも、時々やっぱり寂しいよ」
僧「若いからだ」


僕は一応予備校に籍は残したものの、まったく行かなくなった。
朝、家を出て町の図書館に直行し、そこで一人受験勉強した。
もっとも実際は荷物を図書館に置いたまま映画館へ直行。
要するに進学すらも無意味でしかない、という上京までの時間稼ぎでしかなかった。
映画、それも邦画ばかり見ていた。
特に日活ロマンポルノ、それと名画座でたまにかかる独立プロの芸術映画。
地方まで届かない話題作、問題作は沢山あった。
それが見れるというだけで、僕には東京への憧憬があった。
映画監督であれ作家であれ、東京で独学しながらでも、なれる。
何の根拠もない自信と目標だった。
それくらい、結局僕は長い長いイジメから解放されて、自由と可能性を満喫していたらしいのだ。
その結果、いやそのあげく・・・だろうか。
図書館の前で毎朝ギターの練習をしていた若い女性と親しくなった。
別に好みのタイプとかどうとかは関係なく、ただ声をかけやすくて、かけてしまったら意外と仲良くなれて・・・それだけの結果だった。
そんなつかの間の出会いを、独立者気取りでいい気になっていた僕は、ある日踏みにじった。
唐突に、何の進展もなさそうな関係だったのに、僕は彼女にセックスを申し込んだ。それも手紙で・・・。
ナンセンス極まりない。
まったく軽率で馬鹿馬鹿しく、ガキだったとしか言い様がない。
彼女にはもちろん断られた。
せっかく、風のように、はかなくも淡くて自然な付き合いをお互い保っていられたのに・・・。
若さ、だろうか。
セックスという未知の行為への、無謀で邪知な欲求だったのだろうか。
そのために相手の意思も人格も無視して、結局自分も関係も、思い出さえも壊してしまう。
甘えだったのかもしれない。
ひとり、だったから。
セックスはおろか、気軽に自由に会って話せる、そんな誰かさえ、18年生きてきて、ひとりもいなかったから。
イジメのせいで・・・だから許される、甘えさせてくれる・・・きっと、きっと・・・あの子なら・・・あの子しかいないから・・・とりあえず・・・・。
愚かな奴だ。
最低のクズだ。
それからもずっと、僕はこんな、なのだ。


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2009年07月01日

裏側からの性

詩人「裏切りより産まれし愛は、生きながらえるより、死に絶えるべし」


僕がセックスというものを理解したのは高校二年の頃である。
それまでは、まったく何のことか想像も出来なかった。
テレビドラマや映画で、裸の男女が布団の中に入っていても、ただそれだけで愛し合っている、それこそ子供も出来る・・・そんな幼稚園児レベル?の知識しか持ち合わせていなかった。
大体、学校で性教育の時間なんてなかったし、あの団鬼六ですら、ソフト以上に曖昧模糊とした描写しかされていなかった呑気な時代?
70年代である。
日活ロマンポルノ全盛である。
僕は全然子供だった。
自分にも付いているこの突起が、女性の股間にあるらしい暗い穴の中へ突っ込めば・・・どうなるのかなんて、そこまでも分かっていなかったのだから、まったくどうかしている未熟児か・・・。
SM小説を読んでいた。
こっそりドキドキでマニア雑誌「SMセレクト」を買っていた。
「O嬢の物語」を書店のレジに出すまで一時間もかかっていた。
学校は共学だったのに、女子高生にはてんで興奮を感じない。
唯一、夏休みにスクール水着の同級生と偶然すれ違って、こっそり教室まで付いていったくらいが・・・。
僕の性は逆の意味で屈折していた。
セックスより、生身の女性より、小説上の、活字の形の、動かない写真の中の、女奴隷に陶酔していた。
現実には100%無縁な嗜虐の幻想だけが、僕の蒼い性の全て・・・。
今もそのままだ。
だから僕は、死に絶えるしかない・・・。



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2009年06月19日

内なる芽生え

老師「己自身を空しくする者が、内なる力を得る」


小学校時代の楽しみは、当たり前に漫画だった。
「オバケのQ太郎」、「パーマン」、「サイボーグ007」、「巨人の星」、「いなかっぺ大将」、「もーれつア太郎」・・・。
今でもあるのか?当時はもっぱら小学館の学習雑誌とやらを年度に合わせて愛読していた。
その中で意外に影響を与えてくれたらしいのが、むしろ女の子向けのバレエ漫画。
プリマを目指す薄幸のヒロインの受難物語で、僕にとっては初めて熱心に魅せられた大人の?ドラマだった。
レオタード姿に夢中だったろうか?
いや、当時の僕はオナニーはおろか、勃起を意識したことさえない、ただのガキでしかなかった。
ヒロインへの様々なイジメ。
僕が魅了されたのは、この部分だ。
それも意地悪な同性からの陰湿なイタズラ、サディズム・・・もちろんそんな横文字は知る術もない。
ただヒロインが恥辱に耐えて、涙をこらえて健気に踊る姿、半裸で舞う被虐の美しさ・・・小学生の僕はそんな作品世界に、わけもなく心酔していた。
いじめられっ子だったくせに。
ガールフレンドも、憧れのお姉さんとかも皆無だったのに。
20年後、僕はAV女優というヒロインを、あの漫画のように、嫉ましくイジメていた。
可虐という責めに耐えるM女の美しさを、絵ではなく映像の中で描き込んでいた。
僕は夢想の果てに、こんな世界へ辿りついたのだろうか。
プリマを求めて。
幻惑の舞台に想いを託して。
僕にとって彼女たちは永遠の女神なのだ。
一生を捧げて己を空しくしてきた、憐れな嗜虐の下部、それが今もなお僕の性であり続けるのだ。


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2009年06月13日

響き合う

僧「愛とは何ですか?」
老師「愛とは調和だ。響き合うことだ」

多分、小学生にはなっていただろう。
僕は性に目覚めた。
生まれて初めて、性という言葉も知らぬまま、性的なる興奮を秘かに憶えた。
幼馴染の女の子に対してではない。
学校の同級生に、でもない。
テレビのコマーシャルだった。
その中に出てくる、若い女性タレントに、だった。
顔も名前も憶えていない。
アラレか何か、菓子のCMだった。
ハンモックに寝転がって若い娘が袋入りの菓子を食べている。
それを地面に落としたので、下に手を伸ばして拾おうとする。
そして落っこちるのだ。
スカート姿の若い女性が、その長いスカートを翻すようにして芝生の上に落下・・・で、ストップモーションとなり、そのコマーシャルは終わる。
たった、コレだけだ。
足も肌も、無論下着も、まったく映ることもないのだ。
こんなものに僕は興奮した。
いや、興奮の一歩も二歩も手前の・・・まさに興奮ゴッコだった。
勃起したわけでもない。
夢精・・・は、それ以前から寝覚めの布団で何度か経験していたが、オネショか何かと思って、誤魔化しの無関心だった。
けれど、僕の手はテレビの前でズボンの中へ伸びていた。
コタツの奥で、パンツを探り、自分の性器を初めて意識していた。
理由も言葉もあったものではない。
CMへの興奮。
テレビへの勃起。
愛などカケラもない、性との遭遇。
女性の困惑している姿に、その映像に陶酔するとは・・・・まだ10年も生きちゃいないガキだったというのに・・・。
これも僕の、愛の萌芽だろう。
僕はこんなものにしか調和出来ない、そんな出生だったのだ。
響き合える相手は、もとより不毛でしかない、それが僕の、AV男優へと伝う虚しい原点だったのだ。

kohe000 at 12:59|PermalinkComments(0)TrackBack(0)