中学校時代

2009年06月25日

強さ・・・

老師「戦さでは、慎重さを失わぬ者、怒りにかられることのない者が勝つ。しかし最も賢い者は、戦わずして勝ちを収める者だ」
僧「でも先生、怒りを抑え、戦いを避けることが大事ならば、このように体を鍛えるのは何のためですか?」
老師「これは戦うための力ではない。弱い者が強い者に打ち勝つための手立てだ」


運動が苦手だった。
泳げないし走っても遅いし、スタミナもなかった。
別に虚弱体質だったわけではない。
持病も入院も無縁で、せいぜい年に何回か平凡に風邪をひくくらい。
体力から逃げていた。
運動を避けていた。
イジメのせいだ。
カラダに訴える、つまり戦うことに最初から臆していたのだ。
授業で柔道や剣道をやらされた。
相撲もプロレスも見ていたし、ブルース・リーの映画には当たり前に熱狂した。
けれどどうしても、強さへの憧れは湧き出してこなかった。
イジメに支配されていたのか。
自分の相応を悟ることで、無駄な抵抗への労苦を棄て、かろうじて壊れかかりそうな己の弱い自意識にしがみついていたのか・・・。
僕は慎重にイジメから身をかわそうと毎日苦吟していた。
怒りにかられることは、なぜか生まれつき、ほとんど無いのだった。
僕は戦わなかった。
しかし無論、勝ちには程遠い、にがい誤魔化しの延長だった。
強さはまだ遠かった。
僕の中学時代は、こうして灰色に沈んで、果てた・・・。







kohe000 at 15:38|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2009年06月24日

魂の好意

老師「目が見るものは消える。魂が見るものは、消えることはない」
僧「死が瞬きする時、魂は召しいるのではないでしょうか」
老師「いや、魂は常に見ておる」
僧「でも、肉体は死にます」
老師「太陽は、死ぬか?」
僧「夜は輝きません」
老師「輝いておる。どこかで。お前に見えぬだけだ」


僕に初恋などと呼べるものがあったろうか?
小学校の頃、若い女の先生に少し憧れた。
その先生とすれ違いたくて、渡り廊下の掃除に時間をかけた。
担任には一度もなってもらえず、声をかけられたのも二度か三度・・・。
やはり中学時代のあの子になるのだろう。
陸上部で活躍する活発な子だった。
ショートカットで、いつも真っ黒に日焼けしてて、他の男子はやや敬遠しているような、少年っぽい子だった。
そんな健康的で積極的な女の子が、何を思ったのか、ある日「勉強、教えて!」と僕に近づいてきた。
僕の成績は彼女より少し上だった程度。
体育は駄目。もちろんイジメられっ子。
そんな腐ったようなイジケ男子に彼女はどうして?何が良くて?
分からなかった。
全然理解できないまま、僕は多少の勉強を教え?とうとう帰り道が一緒なった。
彼女はずっと笑顔だった。
何を話したか、まるで憶えていないが、はちきれんばかりの彼女の元気でうれしそうな表情だけは、今なお記憶しているのだ。
僕にとって彼女は、女の子ではあっても、異性ではなかった。
彼女の体つきも、まして胸のふくらみや、素肌の萌芽も、僕には一切意識の外だった。
今でも、あの時間は僕の中で止まっている。
彼女の好意は、親しみは、その若々しい笑みは、僕にとって永遠の不思議であり、褪せることのない輝きなんだ。
僕は彼女を15歳の魂で見ていたのだろう。
消えることは、ない。
これまでも、これから先も、彼女は僕だけの、こんな荒んだ僕の空でだけ微笑み続ける、小さな灯だ。
こころの温もり・・・淡い・・・。

kohe000 at 13:26|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2009年06月23日

映画という力

僧「先生、内なる力は、どのようにすれば得られるのですか?」
老師「すべての他者と一体になることによって得られる」
僧「敵対する者には、どのようにするのですか?」
老師「炎と氷が相対したら、どちらが勝つかな?」
僧「氷です」
老師「炎は消えるが、氷も溶けて、水になるのではないかな」
僧「では、炎ですか?」
老師「相手の力を知ろうとしない者は、すなわち負ける。未知のものを怖れるところに、危険が生じる。怖れがなければ、危険も存在しない。虎と人が別々の存在ならば、人は虎に襲われて死ぬだろう。しかし、虎と人がひとつのものなら、すなわち怖れはなく、危険もない。虎が己とひとつのもの、すなわち己自身を襲うはずがないではないか」

中学二年の時、映画に目覚めた。
それまでもテレビの洋画劇場でそれなりに見てはいたが、本格的にハマったのは、14歳の頃だった。
きっかけは一本のアメリカ映画。
タイトルは「いくたびか美しく燃え」。
そのまんまのメロドラマである。
ファザコンのセレブ娘の恋の遍歴物である。
何が面白くて魅了されたのか?
愛も嫉妬も、不倫もファザコンもどうでもよかった(というより当時はまだ全然理解できていなかった)。
結局、主演女優デボラー・ラフィンにマイッたのだ。
理屈抜きに好みの彼女が、ただスクリーン上で笑ったり泣いたりしてくれてたら、それで満足だったのだ。
初めてのファン体験?
幼稚なものだった。
ドラマの中身など、とんと無関心無頓着のまま、スターだけに熱中する単細胞的映画ファン。
しかも彼女の映画はたったそれ一本しか見ていない。
結局、完全にキッカケ、トッカカリ、回転ドアの受付嬢でしかなかったようだ。
事実、その後の僕は映画雑誌を毎月買い、テレビでの放映作に目を光らせ、行ったこともない繁華街の映画館に通い始める日々が用意されていたのだから。
デボラー・ラフィンへの無条件の憧憬が、僕を映画へと導いた。
それは生涯続いている僕という人間の文化的内なる力となった。
僕は映画そのものと一体化することで、無意識のうちに孤高と自尊心を育んできたのだ。
デボラー・ラフィンであれ誰であれ、僕にとって他者(ひと)とは、元より溶け合うことも、交わりえることも叶わない、そんな恐怖であったのだ。



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2009年06月22日

無力

保安官「あんたには自分の持ち物の他は何も考えられんのか?」
ならず者「それが俺の全てだ。俺が力で得たものだ!」
保安官「力で?力について何を知ってるっていうんだ?あんたは自分の強さを自慢する。だが、その強さとは一体なんだ?例えば、賭けをして、馬を両手で持ち上げるとか、あるいはまた、人より早く銃を撃てるとか、せいぜいそれくらいのことだ。そんなものに一体なんの値打ちがある?そんなものは強さじゃない。本当の強さとは、打ちのめされ、どん底に落ちた時、初めて出てくるものだ」

中学生の頃、僕に何か夢があったろうか?
勉強は苦手だった。
いつも試験に追われていた。
体育も駄目。走るのは遅い。力もない。球技なんて最悪。
だから余計にイジメられた。体育の時間は、まったく拷問だった。
芸術関係にも無縁。
読書も適当。
テレビか歌謡曲か・・・。
カスのような日々だった。
頭の中は、ただただイジメから逃れる心配と恐怖だけで、それ以外の日常は、平穏無事でありさえすれば、何も望むものはなかった。
将来の目標も希望も皆無。
ただ生きてるだけだった。
何の自覚も意識もなく、歳月に任せているだけだった。
友達もいない。
カノジョなんて、もちろん夢にさえ浮かばない。
空白だった。
虚無の澱みだった。
僕はまだ何も持ってはいなかったのだ。
それを守るだけの、誇るだけの、なんの力も有していなかったのだ。
なんの値打ちもない若さ。
どん底の手前でビクビクと、誤魔化しとへっぴり腰にかしずいているだけの、卑しい十代。
僕はいじめられっ子という現実の自分からも毎日逃げていた。
本当の自分など、見据えるだけの蒼さもない、まさに早すぎる"晩年"そのものだった。




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2009年06月21日

独り路

保安官「わしは知ってる」
僧「何をですか?」
保安官「死が終わりだってことだ。苦労して年をとって、死ねばすべて終わりだ、なんにもないんだ。棺桶の中は、真っ暗闇の世界だ。わしは、ここまで逃げてきた。ところがそいつは、わしの目の前にニッコリ笑って、待ち構えていたんだ」


中学に入っても何も変わらなかった。
ネズミ講のようにいじめっ子たちは増殖し、体が成長した分、イジメはキツく、苦痛を増した。
教師たちの無関心にも変化はない。
僕に出来ることは、逃げるだけ。
毎日、文字通り、学校から逃げた。
逃亡こそが、僕の中学時代のほとんどだった。
通学路は山を切り開いた、ちょっとした田舎道。
遠くの団地が見えた。
駅やバス停に続く、藪の奥の細い道もあった。
けれど僕は立ち止まって感傷にふけるヒマなんてない。
後から前から、いじめっ子どもに出会わないよう、緊張して歩かなければならなかったから。
とにかく同じ制服の姿を避けて避けて、僕は一本の短くない道を歩いて帰るしかなかったから。
当然、一人だ。
たとえいじめっ子でなかろうと、イジメから守ってくれない者は、僕にとって敵でしかなかった。
彼らはいじめっ子でも仲良くする。
僕を引っ張り込み、結局僕はまたひとりイジメられる・・・。
誰に何を話しても無駄。
僕は確信と共に歩いていた。
毎朝毎夕、孤独だけを救いに、時間を踏み消して歩き続けた。
いつかこの道を歩かなくてすむようになる。
月日さえ経てば、いじめられることのない、大人になれる。
僕に希望なんてなかった。
逃げるだけの少年期だった。
それのどこが悪い?
誰にわかる?
生も死も感じ取れるより以前に、歩くしか路はなかった・・・。

kohe000 at 13:18|PermalinkComments(0)TrackBack(0)