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 せっかくいろいろな人に見てもらえるチャンスなのでちょっとここでちょっと海運の話を。たいした話は紹介できませんが、いくらかでも海運に興味を持って頂ければ幸いです。


海外との貿易・外航海運
 まずこれはよく言われることですが、日本の海外との貿易の99%以上は船で行われています。ただしこれは輸送量の話。金額ベースでは商船の比率は約7割まで落ちます。商船が石油や鉄鉱石などを運ぶに対して航空機では製品などの付加価値の高いものを運ぶので。

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(日本の海運2015-2016より)

 ちなみに上記の海外との海上輸送のうち、日本商船隊(便宜置籍船含む)が担っているのは6割とのことです。またそのほとんどを外国人船員で動かしています。実質自国の海外との貿易のほとんどを外国人に頼っている現状なのですね。
 なので有事や災害の際でも、彼ら外国人船員が日本の輸送業務に従事してくれるのかといえば、あまり期待できないかもしれませんね・・・海外から物が入ってこない状況になると食料自給率とか大事。


世界でもめずらしい内航海運国、日本
 そしてもう一つ、こちらはあまり注目されませんが日本の国内輸送も4割は船舶で行われています!

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(日本の海運2015-2016より)

 といいつつ、これもちょっとからくりがあるのですが、トンキロベース、つまり輸送量と距離を乗じたデータ。
 単に輸送量で考えるとその船舶のシェアは1割程度にまで落ちてしまします。これは自動車が多くの荷物を運んでいるとはいえ短距離の輸送が多いという事ですね。

 とまあちょっとケチはつけてしまいましたが、しかしながら下図の通り日本における海上輸送は他国と比べて非常に大きな位置を占めていて異質です。 他の先進各国の海運の輸送分担率は非常に低く、おそらく地理的条件も大きいのでしょうね。(すみません、古いデータしか見つけきれなかったです。)
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にもかかわらず少ない日本人船員

 海運が重要な位置を占める日本、しかしながら下図の通り、外航船員は非常に少なく、また内航でも高齢化が進んでいます。現在内航においては完全に売り手市場といえるのかもしれません。人がいなくて船が動かせなくなり廃業する会社もあります。

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(海時レポート2015より)

 なので船員にとって、就職活動は一般にすごく楽です。陸上の人たちが40~50社受けているときに1~2社しか受ける必要がありません。私も新卒時は1社目で決まりましたし、転職時も探し出して2週間ほどで転職先が決まりました。だいたいそんな感じで決まる人が多いと思います。
 インターンシップである会社にお世話になったのですが、インターン中、オフィスでよく寝落ちしておりました・・・そしてその会社が採用してくれました・・・、本当にいいのかなあと(^^;。
 なのでと言っては変ですが、ぜひたくさんの人たちが内航、外航問わず船員を目指してくれればと思っています。(もちろん労働条件が悪い会社もあるので、会社選びは慎重に!)


商船を動かしている仕組み
 船の種類とかそういう話は結構どこでも紹介されていますが、下記のような話はあまりどこでも出ないのでぜひ紹介したいと思います。
 まず内航、外航問わず船は一つの会社で、船を保有し、管理し、船員を雇い、貨物を集め、運航する、ということは少ないです。たいていの場合は1隻の船にいろんな会社が関わっています。こんな感じに・・・
基本


 正直何が何やらわかりませんよね(^^;この他にもいろいろな形態が・・・。私も学校の座学で習った時はいまいちピンときませんでした。例をいくつか紹介します。


・ある国内フェリーの場合
 自分の会社で船舶を保有し、船員を雇用し、船を管理し、集荷し、運航しています。とてもシンプル。一般の人が考える船の運航形態はだいたいこういうイメージだと思います。


フェリー


・ある内航タンカーの場合

 船主は自分で船を保有し、管理し、船員を雇用しますが荷物を集荷する能力はありません。そこで船を傭船者に貸し出して運航してもらいます。(船を貸りる事を傭船、チャーターといいます。)
 そして傭船者は船を荷主にさらに貸し出して荷主が船に運航指示をだし荷物を運ばせます。

内航タンカー


 船主は船の貸出料金(傭船料、ハイヤー)で儲けます。傭船者にとっては、船を建造すると非常に高いので、借りてくることで自分で大きな投資をせずに商売をすることができるメリットがあります。
 しかも傭船者は何か問題が起きたら傭船をやめてしまえばよいのです。リスクヘッジをするとともに船舶建造に伴う負債がないため財務状況も良く見せることができます。

 大手内航タンカーでは自社で船をもちつつも、このように傭船者として船主から船を借り、運航していたりもします。例えば鶴見サンマリン、昭和日タンが運航している船は自社の船もありますが傭船で他社から引っ張ってきている船がほとんどです。
 そしてファンネルマークも船主のものではなく傭船会社のマークになってたりして見分けがつきません(^^;
 例えば鶴見のファンネルマークだからと言って、鶴見の持ち船で鶴見の船員が乗っているとは限らないわけですね。


・ある外航バルクキャリアの場合
 船会社が自分で船を持ち、管理していますが船員は安い外国のマンニング会社から派遣を受けます。(マンニングはフィリピンが多いですが、韓国、インドネシア、ミャンマー、インド、東欧と多岐にわたります。)
 次にいくらかの節税や船員の配乗条件が厳しくない等の目的で船を外国籍にします。(フラッグアウトといいます、FOC船(Flag of Convenience)=便宜置籍船)
 そしてフラッグアウトしたその船をペーパーカンパニーから元の船会社自体が借りてきて、荷主に貸し出します。荷主は船社から借りた船で荷物を運びます。

外航バルク


 最初のフェリーの例と大きく違ってくるのは自社の日本人船員ではなく、安い期間雇用の外国人船員を使い、また船籍を外国に便宜上移して運航しているところですね。
 ちなみに外国人船員は安いといっても、私が知ってるところはフィリピン人三等航海士で月収35万前後、フィリピン人船長なら年収1000万円前後はありました。人手不足から内航船への外国人配乗の話もちらほら聞こえますが、外国から日本への旅費その他もかかるし、職員については内航船で雇うのはどこまでメリットがあるのか・・・。


・ある外航タンカーの場合
 相当複雑になってきますが、よくある構図です。例えば日本の地方のある船主さんが船を作りますが管理能力も集荷能力もありません。
 そこでまず管理は管理会社に委託します。管理会社はマンニング会社から安い船員を派遣してもらいます。ちなみにドックでの建造の監督も管理会社にやってもらう船主さんも多いです。管理能力がなければ建造能力もない場合が多いですよね・・・
 そして節税その他の目的で船を外国籍にします。そしてそのペーパーカンパニーから船会社など(郵船、商船三井、etc・・・)に船を貸し出して使ってもらいます。そして船会社も集荷能力のある会社に船をまた貸ししたりします。そうして末端の傭船者が船に荷物をつけます。

外航タンカー


 外航タンカーの場合は荷主のひとつのメジャーオイル(シェルやらBPなど)の要求が非常に厳しく船舶管理が難しいです。なので船主が自分で管理できず外部委託する構図は非常に多いです。(注1)


 船によっては前述のように日本郵船や商船三井などの船会社が自前ですべてやる船もありますが、全ての運航船舶を自前で作るとなると、その投資額は非常に大きいため、外部の船主に船を作ってもらってその船を傭船して動かしたりする事が多いのです。
 場合によっては下図のように社外の船主に金だけ出させて船を造らせて、管理も運航も船会社自身でやる形態もあります。(赤字で囲ってあるのは船会社のグループ会社)
生かさず殺さず

 これはもう船について何もわかっていない船主に金だけ出させてるような構図という見方も出来ます。実際そういうこともあります(^^;
 船会社はこうすることで、船舶建造に伴う自社の負債が発生せず、市況が悪くなれば傭船を解除すればいいし、自社の財務状況をよく見せることができます。ある船会社営業さんが言っていた言葉に「船主は生かさず殺さず」という言葉が・・・おそろしい。とは言え船会社も船主さんは必要なのでそこまでむげにもしません。

 上記とスキームはちょっと違いますが、最近の第一中央汽船破綻で記者会見の際、経営陣が船主に謝っていましたね・・・船主から船を借りて動かしていましたが、市況が悪く傭船料を下げに下げてもらった挙句、最終的には破綻してしまったということで。船会社のみならず船を貸している船主さんも本当に大変・・・

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 他にも裸傭船とかいろいろあるのですが、この辺にしておきます。以上のように船の運航スキームは複雑怪奇です(^^;
 なので今回の貨物船クルーズのコンテナ船についても同じようなことが言えます。上の写真のようにMOLのコンテナ船だと思っても、船主は海外企業だったり、管理は日本の会社がやっていたり、マンニングはフィリピンの会社がやっていたるするのかもしれません。


(注1)シェルやBPなどのメジャーオイルの荷物は、彼らの検査を受けなければ運ぶことができません。(メジャーオイルインスペクション) さらには船の管理会社も検査を受け、管理会社が検査に落ちると、その管理会社の管理する船はみな彼らの荷物を運べなくなったりします。