読みました。
面白かったです〜

海賊の経済学 ―見えざるフックの秘密
海賊の経済学 ―見えざるフックの秘密
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海賊というと、漫画『ONE PIECE』や映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』を連想する人も多いでしょう。
そうした作品の元ネタである、17〜18世紀頃に活躍したカリブの海賊(バッカニア)についての本です。


これを読むと、通俗的な海賊のイメージとは裏腹な実態がわかります。

・海賊というと、強権的で残忍な船長に率いられていると思われがちだが、海賊の船長は平等な選挙で選ばれ、横暴だったり無能だったり臆病だったりするとすぐに解任されてしまう。

・海賊というと、無法者の集団で各自身勝手な行動をしていると思われがちだが、彼らはメンバー全員の合意に基づく厳格な掟を持ち、もめ事は極力起こさず一致団結して行動した。

・海賊というと、女好きで下品な連中だと思われがちだが、船には女性や少年は乗せてはいけない決まりだった。

・海賊というと、骸骨の旗印を掲げ、残虐非道の限りを尽くしていたと思われがちだが、骸骨の旗印で威嚇することによって流血や戦闘は最低限に抑えようとしていた。

・海賊というと、サディスト揃いと思われがちだが、拷問を行うにはそれなりの理由があり、時には悪質な船長を懲らしめる「正義」の制裁も行った。

・海賊というと、無理矢理さらわれて海賊にさせられた者も多かったと思われがちだが、彼らは志願者しか仲間に加えず、実際に海賊になりたがる船乗りも多かった。

・海賊というと、ひどい待遇で奴隷をこき使っていたと思われがちだが、海賊の仲間には黒人も少なからずいて、他の仲間と平等に扱われていた。


海賊って、実は悪党どころかすごい良い奴ばっかりだったんだ!

…という話では全然なく、彼らは私利私欲に走り、利益を最大限にしようとした結果、こういう一見先進的で良心的な社会を営むようになったんだ、という話です。

そのメカニズムを経済学の考え方でわかりやすく、ユーモアも交えながら解説してくれています。


彼らは民主主義の理想や友愛の精神に導かれていたわけではまったくなく、ただひとりひとりがより多く儲けるにはどうしたらいいかを追求していくと、自然と、リーダーの横暴を防ぐ仕組みや、仲間同士の争いを禁じるルールや、仕事(襲撃)への士気を損なわない環境ができてきた、というのがこの本の趣旨です。

だから「見えざる手」ならぬ「見えざるフック」なんですね。


ただ、「海賊」と言っても広い意味ではいろいろで、たとえば倭寇とかヴァイキングとか現代のマラッカ海峡の海賊などにも当てはまるかというと、たぶんそうではない。

それは環境条件が違うから。

いわゆる「バッカニア」と呼ばれる17〜18世紀のカリブ海を中心に活動した海賊たちの、独特の環境があればこそ、こういう面白い社会が生まれたのでしょう。


逆に、海賊ではないけれど16〜17世紀頃にヨーロッパで活動したスイス傭兵団や「ランツクネヒト」と呼ばれたドイツ傭兵団などは、ある種民主的な共同体組織を作っていた所などが似ているなと思ったり。


国家に所属しないアウトローたちの社会というものを考えさせてくれる面白い本でした〜