『乙女戦争』のキーアイテム「ピーシュチャラ」についてちょっと解説します。

『乙女戦争』01話_0020


《火薬》は中国で発明されたと言われており、イスラム圏を経て、13世紀頃にはヨーロッパにも伝わっていたと考えられています。

14世紀には火薬で砲弾を飛ばす《大砲》が戦場で使われ始め、14世紀の後半には大砲の小型軽量版である《銃》が登場しています。「ハンドゴン」とか「パイプガン」とかいろんな呼び名がありますが、ピーシュチャラもそうした初期の銃の一種です。

「ピーシュチャラpišťala」とはチェコ語で「笛」という意味があり、「ピストルpistol」の語源だとも言われています。

資料を見るといろんな形状があったようで、規格も統一されていなかったのかもしれませんが、『乙女戦争』の中ではドイツのタンネンベルク城跡から出土した現存最古の銃、通称「タンネンベルク・ガン」をモデルにしています。
(※ちなみにタンネンベルクの戦いが行われた現ポーランドのタンネンベルクとは別の場所です)

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(画像はゲルマン国立博物館のHPより)

砲身は約32センチ。口径15〜6ミリ。青銅製の鋳造の筒で、火薬と弾を込めて、根元の小さな穴から火縄などで着火するという非常にシンプルな構造です。


↓使い方はこんな感じ

 



作中でも語られているとおり、飛距離や威力や発射速度の点で当時主力の飛び道具である弓や弩には全く敵わない貧弱な武器だったようです。
実際フス派軍でも銃よりはるかに多くの弩を装備していました。

それでも銃に利点があるとすれば、まず操作に腕力が必要ないこと(弓も弩も引き絞るのにかなりの力が必要だったが、銃は構えてさえいれば良かった)。

それから操作が比較的簡単であること(この点では弩も同等。弓は熟練が必要だったが、その代わり圧倒的に連射速度が速かった)。

こうした点から非力で未熟な女性や子供でも使える武器でもありましたが、女性専用の武器として使われたというのは『乙女戦争』での脚色ですのであしからず…(ただしフス派に多数の女性兵士がいたのは確かです)。

『乙女戦争』01話_0010

作中では見たことない新型武器であるかのように語られていますが、先にも述べたように、14世紀の後半には大砲も銃もチラホラ登場し始めていたので、1420年頃の傭兵ならば存在くらいは知ってておかしくなかったと思います。

ただ、当時はまだマイナーな武器だった大砲や銃を、組織的・本格的に戦場で活用したのはジシュカ率いるフス派軍が最初だったと言われています。

15世紀以降、銃も大砲も飛躍的に性能が向上していき、甲冑に身を固めた騎士を戦場の主役の座から引きずり落としていきますが、フス戦争はその先駆けになったと言っていいでしょう。


銃を使って女の子が戦う話は漫画作品などにたくさんありますが、ピーシュチャラで戦うシャールカは設定上最古の《ガン・ガール》かもしれません☆