2006年11月02日

円覚寺6

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「あすこが老師の住んでいられる所です」と宜道は比較的新しいその建物を指した
(夏目漱石の小説「門」より)
円覚寺妙香池3






















二人は蓮池の前を通り越して、5,6級の石段を上って、その正面にある大きな伽
藍の屋根を仰いだまますぐ左へ切れた。(夏目漱石の小説「門」より)
5,6級の石段を上ってくぐるのは、下の写真の正続院の門です。
円覚寺正続院






















その正面にある大きな伽藍と言っているのは、下の写真の国宝舎利殿のことです。
円覚寺舎利殿






















老師というのは五十格好に見えた。赤黒い光沢のある顔をしていた。その皮膚も筋
肉もことごとくしまって、どこにも怠りのないところが、銅像のもたらす印象を、
宗助の胸に彫りつけた。ただ唇があまり厚すぎるので、そこにいくぶんのゆるみが
見えた。そのかわり彼の目には、普通の人間にとうていみるべからざる一種の精彩
がひらめいた。(中略)「まあなにから入っても同じであるが」と老師は宗助に向
かって言った。「父母(ぶも)未生(みしょう)以前本来の面目はなんだか、それ
を一つ考えてみたらよかろう」(夏目漱石の小説「門」より)
釈宗演



















この老師は釈宗演という禅僧で、円覚寺の管長でした。禅を世界に紹介した鈴木大
拙も師事していました。鈴木大拙は、「門」に以下の形で登場します。
宗助はそれから二、三日してその居士を見たが、彼はひょうきんな羅漢のような顔
をしている気楽そうな男であった。(夏目漱石の小説「門」より)
鈴木大拙



















この写真は20代の鈴木大拙です。居士とは在家の修行者を言います。鈴木大拙は
東大の学生でしたが、学校にはほとんど行かず、円覚寺で修行をしていたようです。
後日釈宗演のお供をして米国に渡り、そこでの釈宗演の口演を英語に訳して出版し
ました。この時漱石に校正をたのんでいます。これが鈴木大拙が禅を欧米に紹介す
る仕事の発端となりました。ただし、鈴木大拙はこの時の漱石を評して「たかが一
週間くらい参禅した位で何かをつかめる訳がない」と言っています。修行者は一つ
の公案と何年も格闘するそうです。鈴木大拙ははいくつかの公案を突破したようで
す。理屈で考えている間は、答えを得られず、座禅により無念無想の修行をする中
である日パッとひらめいたと言っています。

「父母(ぶも)未生(みしょう)以前本来の面目はなんだ」は、臨済宗で禅修業す
る人に出す公案です。これは7世紀の中国の高僧の言葉を、江戸時代の臨済宗の中
興の祖白隠禅師が公案にしたものです。人間のもともとの本質は何かと言った感じ
の問いです。漱石は、この時これに満足な回答を出せなかったようです。

この面前に気力なくすわった宗助の、口にした言葉はただ一句で尽きた。「もっと
ぎろりとしたところを持って来なければだめだ」とたちまち言われた。「そのくら
いなことは少し学問をしたものならだれでも言える」(漱石の小説「門」より)

晩年漱石は、「則天去私」という心境に至ったと言いますが、これでもまだ天と私
が別物として意識されている点で、だめだと言われるのではないでしょうか。
鈴木大拙は、親友の哲学者西田幾多郎(戦前の旧制高校生のカリスマでした)の中
心思想「絶対矛盾的自己同一」の方が禅の悟りに近いと言っています。


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koike631 at 23:57│Comments(13)TrackBack(0)鎌倉−円覚寺 

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この記事へのコメント

1. Posted by kamekiti-tv   2006年11月03日 03:44
円覚寺は好きなお寺のひとつです。
なぜだかはわかんないんですけど、なぜか好きなんです。
2. Posted by siawasekun   2006年11月03日 07:12
円覚寺の素敵な景色、楽しみました。

今、ブロランキング30位ですね。
応援しています。
3. Posted by 理彩也   2006年11月03日 21:47
日本の建物は素晴らしいです^^
特にお寺は細工が独特でいいですね♪
4. Posted by nakamura   2006年11月03日 22:46
こんばんは。
今日は、随分難しい話ですね・・・(笑い)。

円覚寺をエントリーされているから当然ですか??。
禅も、哲学も、小説も、行き着くところは同じかも知れないと感じます。ホンモノは、結局「おなかの底」のところで相通ずるはずです。
5. Posted by ikkikurisan   2006年11月04日 09:42
3 こんにちは〜 確かに今日は難しい話でしたね(笑)


ポチ!
6. Posted by ときめき   2006年11月04日 11:12
大拙と漱石との関わり、興味深く読ませて頂きました。
円覚寺とのつながりがゆく分かりました。
郷土石川の偉人、西田幾多郎の「善の研究」も読みましたが、なかなか難しいことを言っていますね。
貴重な話、ありがとうございます。
7. Posted by ゆーしょー   2006年11月04日 19:11
5 こんばんは。ゆーしょーです。
写真も素晴らしいし文章もいいですね。
いい勉強になりました。
1枚目の写真、素晴らしいです。私の好みです。
ポチ!
8. Posted by ゆーしょー   2006年11月04日 19:18
5 こんばんは。ゆーしょーです。
写真も素晴らしいし文章もいいですね。
いい勉強になりました。
1枚目の写真、素晴らしいです。私の好みです。
ポチ!
9. Posted by eos44   2006年11月04日 21:43
小池さんこんばんわ。
ほんとに勉強になるといいますか・・・
すごいですよね。
僕の頭では全部入りきりません。^^;
こんな難しいこと、全然覚えられません〜。(笑)
10. Posted by enzz3121   2006年11月05日 00:14
「絶対矛盾的自己同一」ですか・・・
う〜んなんとも^^;
ポチっとして出直してきます^^;ハハ
11. Posted by ccrkasago   2006年11月05日 14:31
今日は 鎌倉には私も良く行きます、
今年は毎月一度訪れました、
特に光則寺の海棠の咲く時期から長谷寺と光則寺はセットで回ってます、
今年見た海棠は綺麗でした、これからもよろしくお願いします、
12. Posted by ゆーしょー   2006年11月05日 19:41
こんばんは。ゆーしょーです。
今夜は、ポチだけして帰ります。
ポチ!
13. Posted by How to last longer in bed   2011年12月17日 12:46
面白い
ありがとう

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