裸祭りのポスターが「胸毛がセクハラにあたる」としてJRに掲出を拒否され話題になった日本三大奇祭の「蘇民祭」が13日から14日未明にかけて執り行われた。
 参加者の男衆は下帯ひとつの姿で「蘇民袋」に入った「小間木」と呼ばれる護符を奪い合うのだが、その蘇民袋を切り裂く「親方」という役目の人は全裸になるしきたりだ。今回のJRの騒動に影響されて、地元警察が「全裸は公然わいせつにあたる」として現行犯逮捕の可能性を示唆したことでも有名になった。
 そんな騒動に巻き込まれたばかりに、一千年の伝統を誇る神聖な祭りは、悲しいかな「セクハラか、わいせつか」という好奇の目に晒されながら開催されることになってしまった。

 蘇民祭はセクハラか?わいせつか?・・・もちろんそのどちらでもない。これはあくまで儀式でありセクシャルなことを目的としているのではないから当然だ。
 ではJRや警察の過剰反応か?それも違う。蘇民祭への理解がまったくない地域の人々に見せる画として適切かどうかを審査するのは、公共の場を管理するものの義務であり、公衆の面前で全裸になるのは法律上してはいけないことである。両者の対応は至極まともであるといえる。

 では、なぜこんなことになるのか。問題の本質はこの祭りをビジネスにしようとする地元行政、経済人の「未熟」にあると思う。そもそも祭り自体は観光目的で開催されるものではない。いまだに全裸になっているぐらいだから、主催者自身はむしろ積極的に見に来てもらおうというつもりもないはずだ。
 しかし、地元行政や観光産業にしてみれば、なんとかこの祭りで町おこしをと考えるから、あの手この手の広報を展開する。胸毛の写真もなんとか観光に来てもらいたいという一途な思いの現れだ。ただ、地元の人が当たり前に共有している感覚を、他地域の人も共有できるとは限らないということをすっかり忘れてしまっているために、配慮に欠けたコミュニケーションをしてしまった。ちょっと気をつければ良かったのに、それを怠ったばかりに神聖なる儀式を「セクハラ」呼ばわりされてしまった。本当に広報は繊細だ。

 結局、今年はクライマックスに境内の照明を消して、親方はしきたり通りに全裸になって蘇民袋を切り裂いたそうな。かくして伝統は守られた。めでたし、めでたし。

蘇民祭