インドネシア進出サポート

中小企業の皆様のインドネシアへの進出を、ゼロから水先案内人としてお手伝いします。連絡先はkojiono@inh.co.jpまたは090-7866-9343まで。詳しい情報はホームページhttp://www.inh.co.jp/~kojiono/index.htmlからご覧になれます。

メーカーでの14年間に及ぶインドネシア工場駐在経験と、サプライチェーンマネジメントのコンサルティング経験を基に、進出前の企画、会社設立、事業運営をサポートします。連絡先はkojiono@inh.co.jpまたは090-7866-9343まで。詳しい情報はホームページhttp://www.inh.co.jp/~kojiono/index.htmlからご覧になれます。

 アメリカの団体であるAPQC(American Productivity and Quality Center)から無料で公開されている資料にPCF(Process Classification Framework)というものがあります。これは企業経営に必要な全ての業務を階層構造で表現したもので、12項目からなる一番上の第一階層から約1,000項目に及ぶ一番下の第四階層で構成されているものです。あらゆる物事を分解することでその本質を探究しようとする西洋文化の一つだと思いますが、企業経営の実体験の無い社員が、現地法人の社長として派遣された時に、企業経営とは何をすることなのかを短期間で理解する上では大変役に立つものであると確信しています。また、企業経営の勉強だけに限らず、日常業務のチェックリストや幹部社員の教育、そして職務分掌の設定などにも役立つノウハウです。原本は英語ですが、それを著者が日本語に翻訳して、さらに検索しやすいようにエクセルシートのデータツールを使って日本語と英語の併記で下図のように編集したものを基にその概要を以下に説明します。
0日本語


















第一階層

 第一階層は以下の五つのオペレーティング・プロセスと七つのマネージメントおよびサポート・プロセスで構成されます。
オペレーティング・プロセス
  1.0 ビジョンおよび戦略の開発
  2.0 製品およびサービスの開発とマネジメント
  3.0 製品およびサービスのマーケティングと販売
  4.0 製品およびサービスの納入
  5.0 顧客サービスのマネジメント
マネージメントおよびサポート・プロセス
  6.0 人財の開発およびマネジメント
  7.0 情報技術のマネジメント
  8.0 財務資源のマネジメント
  9.0 資産の取得、構築、およびマネジメント
 10.0 環境衛生および安全(EHS)のマネジメント
 11.0 外部との関係のマネジメント
 12.0 ナレッジ、改善、および変更のマネジメント

第二階層~第四階層
 上記の12項目は第二階層、第三階層、第四階層と展開され細分化されていますが、ここでそれら全てを説明するのは無理ですので、それぞれの概要をかいつまんで説明したいと思います。

オペレーティング・プロセス
1.0 ビジョンおよび戦略の開発
 自社の強み・弱み・機会・脅威を抽出し、それぞれの組み合わせから今後の事業戦略を編み出すSWOT-CROSS分析が有効ですが、何を対象に分析するのかが大事です。簡単な例としては人・物・金がありますが、他にもサプライチェーンの基本プロセスである調達・生産・出荷をそれに加えることも可能ですし、PCFの12項目を対象にすることも考えられます。自社の特性に適した項目は何なのか良く考えなくてはなりません。そして、その戦略を実現するために3年間または5年間の、販売、投資、人材、損益、原価、資金繰りの各計画からなる中期事業計画を作ることになります。全ての日々の業務はこれを基に進めなくてはなりません。日本企業はもの作りの分野では長けているが、長期戦略では弱いと言われるのはこの作業を疎かにするからです。

2.0 製品およびサービスの開発とマネジメント
 どんな商品やサービスが売れるのかを検討し企画することから始まり、それらの製品およびサービスの設計を行います。試作品が出来たところで関係者の評価やテストマーケットを行い、問題がなければ生産準備に着手します。ここではコスト・品質・納期の評価が大事になりますが、安くて良いものを早く、と言った古めかしい格言からは脱皮して、少し待ってもらっても欲しいと思われる良いものを、しかも高く売れる様な商品やサービス開発したいものです。

3.0 製品およびサービスのマーケティングと販売
 どの商品あるいはサービスを、どこの市場で、どんな価格で、どんな販促活動を行って販売するのかというマーケティング戦略を立案します。その戦略に基づいて、具体的な顧客開拓と受注活動を展開します。ここで気を付けて欲しいことは、マーケティングと販売活動を一緒にしないことで、いわゆる営業活動と言われるものは後者の方です。

4.0 製品およびサービスの納入
 いわゆるサプライチェーンのマネージメントです。サプライチェーンを計画して、資材調達活動、生産活動、納入活動を進め、それぞれの活動における物流管理を行います。サプライチェーン・マネージメントについて更に詳しく分析・可視化・改善を行う場合は、サプライチェーンカウンシルが発行しているSCOR(Supply-Chain Operations Reference)モデルを参照すると良いでしょう。

5.0 顧客サービスのマネジメント
 アフターセールスサービス、クレーム対応、そして顧客満足度調査を行うところです。これらの情報は上記1.0から4.0の各プロセスにフィードバックすることは言うまでもありません。返品に関する体系的な詳しい対応については上記のSCORモデルを参照すると良いでしょう。

マネージメントおよびサポート・プロセス

6.0 人財の開発およびマネジメント
 どのようにして人財を開発するのかという計画立案から始まり、採用、活用、信賞、配置転換、情報管理までを範囲とします。インドネシアにおいては特に優秀な幹部社員の確保が難しい状況にあるため、給与レベルだけで人財を繋ぎ止めようとするのではなく、本人が納得出来るような会社人生全体のサポートシステムが望まれます。これは実は日本の高度成長時代に、終身雇用や年功序列と言った慣習の名の下で実施されていたことで、本来は日本企業の強みだったと思うのです。

7.0 情報技術のマネジメント
 情報システム技術(IT)を関係企業との連携、顧客管理、BCP(事業継続計画)、リスク管理、企業情報管理に如何にして役立てるのか、そのためのシステムをどのようにして開発し維持するのかを範囲とします。これらの前提として、全ての業務をプロセスで可視化し、どのプロセスをどのようなITで管理するのかを俯瞰出来ていることが必要です。決して部門別とか担当者別に計画導入してはいけません。

8.0 財務資源のマネジメント
 予算管理および原価管理の管理会計、顧客別与信管理と売掛金管理、一般会計と財務報告、固定資産管理、給与支払い、経費管理と買掛金管理、資金運用、内部統制、税務管理、国際取引と連結会計を範囲とします。インドネシアは10%を超える高金利と税務調査がビジネス上の大きなリスクとなります。この分野には最優先でスタッフおよびITの手当が必要と思われます。

9.0 資産の取得、構築、およびマネジメント
 生産活動に直接的に使われる資産、間接的に使われる資産の調達、維持、保全、改造、廃却または売却を範囲とします。インドネシアにおいては資産の額により増資申請が必要となります。また、増資で輸入調達する際には恩典として輸入税の免税措置も受けられます。資産の用途によっても日本製、台湾製、韓国製、中国製の中からコストパフォーマンスを検討した上で選択することが大事です。

10.0 環境衛生および安全(EHS)のマネジメント
 環境の評価、安全衛生施策開発、関係者の訓練、監視、法律遵守、問題発生時の対応を範囲とします。インドネシアの環境規制は州単位で異なり、日本以上に厳しい分野もあります。また、インドネシア人の国民性として危険予知に対する意識は非常に低いと思われます。

11.0 外部との関係のマネジメント
 投資家、政府機関、業界団体、取締役会、法律事務所、地域社会、メディアとの関係管理を範囲とします。インドネシアの場合は法律の新設、変更、廃止が頻繁に起きるため、特に関連する政府機関との関係を良好に保つとが大事かと思います。また、インドネシア社会は多様な宗教と民族から構成されているため、特定の宗教団体や民族組織と偏った関係を持つことは危険です。

12.0 ナレッジ、改善、および変更のマネジメント
 スタッフ部門においては業務をプロセスで可視化して、時間とコストをベンチマークすることで効率を上げることです。生産現場においては改善提案制度などを導入して、技能を顕在化して共有出来るように工夫することです。日本企業は現場改善は得意ですが、スタッフ部門の効率化は苦手ですから前述のSCORモデルを参照すると良いでしょう。

 以上、概要を説明しましたが、実際にPCFの対訳エクセル版を使ってみたいと思われる方には、そのエクセルファイルを10,000円で提供します。下記の銀行口座に代金を振り込みの上、kojiono@inh.co.jp宛にメールでお知らせ頂ければ即日メール添付で返信します。メールには以下の情報を記載して下さい。

代金振込先
銀行名 みずほ銀行
支店名 浜松支店
口座番号 1565217
口座名義 オノ コウジ
銀行手数料はご負担願います。

申込メール記載事項
氏名
住所
携帯電話番号
所属組織名
購入目的

 img01_01昨年までは日本のレンタルサーバーを出発する空港で受け取って、インドネシアでも日本のスマホやパソコンがインターネットに繋がるようにしていましたが、今では普通になった4Gのレンタル料金は各社1,000円/日前後と高額で、契約しているインドネシア側のサービスが受けられる地域が限定されるなど、不満が多いものでした。
 そこで今年の1月に試しにジャカルタのPlaza Blok Mにあるスマホ販売店でSmartfrenのFi-Serverを購入してみました。機器自体は約3,000円で、初回のサービスとして3,000円分のPulsa(通信量)が付いていましたが、余裕を見てさらに3,000円分を追加しました。
 翌月の出張の際にも問題無く使えて喜んでいたのですが、翌々月の出張の時に何故か使えなくなりました。Pulsaが無くなったのかもしれないと思い、近くのコンビニで購入したのですがそれでも使えないため、原因を究明するためにサービスセンターに持ち込んだところ、インドネシア以外の地域で電源を入れたため、初期設定が無効になっていると言われました。修理に時間がかかると言うので仕方なくもう1台の機器を購入してその出張はなんとか凌ぎました。
 そして1ヶ月と少し経ってからのインドネシア出張で、ジャカルタ空港で電源を入れたのですが、繋がりません。色々と調べたところ、どうやらPulsaの有効期間は30日のため、前回の購入日が30日を超えると新たに購入しなくてはいけないことがなんとなく分かりました。
 出張の都度、あるいは無くなった都度慌ててコンビニ駆け込んでPulsaを買うのも面倒だと思い、日本からネットで購入出来ないかとか、空港のATMで購入出来ないかとか色々と試してみたのですが、インドネシアの銀行が発効したクレジットカードでないと対応してくれないことも判りました。
 ということで、ジャカルタ空港に着いてからホテルに移動する途中で、コンビニに立ち寄ってPulsaを購入するしかないとと言うのが現状です。しかし、コンビニのPulsa販売機前はどこも長蛇の列で嫌なのです。

 今回の出張ではLippo CikarangにあるAXIA Hotelに宿泊した。ここは豊田通商が経営していると聴いているが、泊り客のほとんどは日本人で、周辺の工場に短期あるいは長期にわたり出張して来ている人たちち思われる。

 この類のサービスホテルは他の日系工業団地にもいくつか存在し、渋滞が酷いジャカルタからの移動を避けて、工場近くに宿泊できる出張者には大変便利な施設と思われる。

 ホテルのレストランで多くの日本人宿泊者と和食の朝ごはんを食べている時にふと思ったことがある。

 密入国と不法労働をしている中国人は論外として、実際は日本人よりはるかに多く滞在していると言われる韓国人は一体どのような所に宿泊しているのだろうか。私の知らない韓国人専用の同様のサービスホテルがあるのだろうか。私は聞いたことがない。

 40年前はインドネシアに出張して来ている日本人も韓国人も同じようなところに滞在していた。韓国のことは良くは知らないが、この40年間で日本人の滞在環境は随分良くなったものだとしみじみ思った。

 インドネシアに進出する際の三大リスクを上げるとすれば、本シリーズの第13回で述べた労働組合問題、税金対策、そして安全衛生になると思います。ということで、安全衛生については別に述べるとして、ここでは税金対策について述べたいと思います。

 税金対策というと節税の方法かと思われるかもしれませんが、そうではなくて、如何にして税務署から無体な要求を突き付けられないようにするのかというお話です。

 まず最初に理解しておかなくてはいけないこととして、税務署から見れば、日系企業は経営がしっかりしているから利益を出しているのが当然で、もし赤字であるとすれば、それは本社に利益が出るように経理上の操作をしているに違いない、とされてしまう可能性が高いことです。

 もし年度決算が赤字になりましたと申告すると、日本の本社から材料や部品を輸入しているとすれば、その輸入価格が相場に較べて高過ぎるのではないかと疑われます。また、日本の本社に製品を輸出しているのであれば、その輸出価格は相場に較べて安過ぎるのではないかと疑われます。

 特に気を付けなくてはいけないのは、輸入時に支払って来た法人税の前払分を返還申請する場合です。税務署の各担当部門には上から非常に厳しいノルマが課せられていますから、払えないばかりか返してくれと言われると、彼らはあの手この手でそれを却下するための方策を振りかざして来るでしょう。私自身、返還申請額の数百倍の追徴額を要求され、その対処に地獄の様な日々を送った経験があります。

 今にして思えば、当時の公認会計士のアドバイスに従って返還申請は見送る方が利口だったように思います。しかし、会社の方針として不合理な要求に対しては断固戦うという選択肢もあります。但し、裁判のための時間とお金が要りますのでその余裕がない場合は公認会計士のアドバイスに素直に従った方が無難でしょう。

 インドネシアの労働組合法では、10人以上の従業員が同意することで企業内労働組合を結成することが可能となり、会社側はそれを拒絶することは出来ません。また、労働者は会社に対して事前に通知することでストライキを行う権利を労働法で保証されています。

 『我が社では労働組合を作らせないし、従業員もそんなものは必要ない』と主張している日系企業の社長さんを時々見かけますが、もしこれを実践すると労働組合の結成を保証している労働法に違反しているだけでなく、ある日突然組合を結成され、さらには突然のストライキを打たれて大変な打撃を受ける危険性を孕んでいます。

 インドネシアの企業内労働組合は地域の産業別労働組合連合のいずれかに属することになり、その連合はさらにその上の連合組織に、そしてその連合組織はさらにその上の連合組織という具合にピラミッド構造になっています。これらの組織の運営資金は労働組合法で定められている組合員からの上納金で賄われるているため、仮に従業員が労働組合の結成を望んでいなくても、その地区の上部組織が放置しておくことはありません。

 会社側、特にインドネシア語がまだ不自由で従業員とのコミュニケーションが上手く取れていない日本人の知らないところで、社外からのオルグや時には脅迫めいた圧力が従業員に及び、従業員の発意でないとしても突然のように労働組合が結成される危険性があります。

 仮に労働組合がまで出来ていないとしても、従業員として送り込まれた活動家に扇動されてストライキを打たれ、長期に亘って操業に支障を来し、取引先からの仕事を無くしてしまう危険性もあります。

 このようなリスクを避けるためには、いつかは労働組合が誕生することを前提に、従業員代表との月一回程度の定例的な情報交換会みたいなものを開催し、普段からコミュニケーションを取っておくことが重要です。そのためにもインドネシア語の習得は大事なことであると言えます。

 10年以上前にサプライチェーン・カウンシルというアメリカに本部を置くNPOの活動に関わっていました。この団体では企業が付加価値を生みだすいわゆるバリューチェーンをマーケティング、研究開発、顧客営業、サプライチェーンの四つの大きなプロセスで捉えていました。

 それぞれのプロセスを簡単に説明すると、マーケティングは新規市場の開拓、研究開発は新商品の実現、顧客営業は受注拡大、そしてサプライチェーンは商品の生産と納入です。

 マーケティング:インドネシアではまだ知られていない商品やサービスを現地の市場に持ち込んで、手付かずのブルーオーシャンでパイオニアプロフィットを享受することが出来ます。ブランド名が商品の一般名称になることもあります。例えば水道ポンプの名称になった『サンヨー』、カメラの名称になった『コダック』があります。

 研究開発:世界最先端の技術で新商品を発明することではありません。インドネシアにあるリソース(材料、人材、設備、インフラ等)を活かして、インドネシアで売れる商品やサービスを研究開発することです。金型をほとんど使わずに、現地で調達出来る鋼板を折り曲げて車体を作り、従来のものに較べてはるかに安い価格で自動車市場を席巻したトヨタキジャンがその代表例かと思います(キジャンはインドネシア語で鹿の意味)。

 顧客営業:市場は既に存在し、競合他社もあるが、合弁パートナーの人脈や日系企業からの信頼という優位性などを武器に新規参入して、マーケットシェアを上げて行くことです。もちろん、既存の商品に対して品質、価格、納期の面で僅かでも優位性をアピールしなくてはいけないので、なかなか厳しい面もあります。

 サプライチェーン:材料調達、生産、納品の一連のプロセスを通じて品質、価格、納期の面で、現地の顧客にとってのメリットを提供出来る仕組みを作り上げます。最もシンプルな例は現在は輸入している取引先のある商品のユニットを現地で生産するために進出することです。

  さて、あなたの会社はインドネシア進出に際してどのプロセスで付加価値、すなわち儲けを生み出そうとしているのでしょうか?材料費とか人件費の比較も大事ですが、もっと高所大所から俯瞰してみることが大事です。

 日本は戦後の昭和の時代に高度成長を遂げて先進国の仲間入りを果たしました。定量的なマクロ経済で見るとインドネシアはその当時の日本に良く似ていると思われます。中国経済の停滞の煽りを受けてここ数年は景気が悪いと言われていますが、それでもGDPは5%台の成長を続けています。業界によって成長のスピードは異なりますが、何よりも都市部の活気の中にいると経済成長を肌で感じることが出来ます。

 忘れてはいけないこととして、日本が高度経済成長を遂げた背景には終身雇用と年功序列があります。新卒で採用された人材は定年まで雇用を保証される代わりに、社内で身に付けた能力を会社のために発揮することを当たり前として来ました。ここでは企業の成長に必要な人材投資が長い期間にわたり効果を出して来ていました。

 しかし、80年代後半からのバブルとその崩壊を境に、このような日本企業独特の慣習はあたかも悪い事であるような扱いを受けて、構造改革や規制緩和の名の下に終身雇用の正社員は派遣社員に置き換えられ、企業の短期的な収益は改善されるものの、人材投資とその効果が無くなってしまった企業は成長の力をどんどん失って来たように見えます。

 インドネシアに進出する日系企業にとって、戦後の日本が辿って来た足跡の中に、実は成功例ならびに失敗例がたくさんあるのです。幸いなことにインドネシアの人達は素直に日本に学ぼうという気持ちを持っています。どうか日本が平成になってから犯した失敗例を導入しないように願って止みません。

デフレが続く日本での需要不足による経営難を克服するために、経済発展を遂げている東南アジア諸国に新たな市場を求めている中小企業の社長さん達から相談を受けて来ました。

 私の専門はインドネシアへの進出支援ですから、相談を受ける際のテーマはインドネシア進出に際してのアドバイスです。

 まず最初に、何故インドネシアを選んだのですかと聞いてみるのですが、答えは人口が多く消費市場として可能性が高い、資源が豊かで材料が安く手に入りそうだ、平均年齢が低いので労働力が豊富にある、親日国家で仕事をしやすい環境にある等々です。

 その根拠は何ですかとさらに聞いてみると、色々な機関によるセミナーでの情報、視察団に参加して現地を訪問してみて感じたこと、インターネット上で調べた情報等が答えとして返って来ます。

 しかし全般的に感じることは、定量的な情報よりも定性的な情報が多い、色々な機関の情報や訪問先の情報を鵜呑みにしている、体系的な国別の比較評価が行われていない等の傾向があることです。

 進出先国の選定に当たっては、以下の全ての項目について調査することは必要ありませんが、自社の置かれている状況に鑑み、必要な項目を選択し優先順位を付けて、出来るだ定量的に比較評価することが望まれます。


1.操業コスト
1.1 賃金
1.2 輸入コスト
1.3 電気料金
1.4 水道料金
1.5 通信料金
1.6 スタッフコスト
1.7 駐在員コスト

2.投資条件
2.1 外資規制
2.2 最低投資額
2.3 許認可手続
2.4 用地取得
2.5 投資優遇策

3.環境規制
3.1 排水規制
3.2 排気規制
3.3 廃棄物規制
3.4 騒音規制

4.税金制度
4.1 法人税
4.2 所得税
4.3 その他税
4.4 減価償却

5.労働事情
5.1 雇用条件
5.2 労働組合
5.3 外国人労働規制

6.カントリーリスク
6.1 自然災害
6.2 労働争議
6.3 政変・テロ
6.4 戦争・内戦
6.5 金融・通貨危機

7.サプライチェーン
7.1 現地調達
7.2 外注管理
7.3 輸送業者
7.4 通関手続
7.5 船・航空便

8.産業インフラ
8.1 空港・港湾
8.2 道路・鉄道
8.3 電力供給
8.4 上下水道
8.5 通信網
8.6 工業団地
8.7 産業機械・設備

9.社会インフラ
9.1 銀行
9.2 損害保険
9.3 警備保障
9.4 情報技術
9.5 ジェネコン
9.6 設備工事
9.7 法律事務所
9.8 監査法人
9.9 電子政府

10.人的資源
10.1 経営陣
10.2 管理職
10.3 専門職
10.4 一般事務
10.5 作業者

11.国内市場
11.1 人口
11.2 購買力
11.3 マーケットシェア
11.4 特殊性

12.生活環境
12.1 衣料
12.2 食料
12.3 住居
12.4 教育
12.5 医療
12.6 娯楽
12.7 気候
12.8 言語
12.9 宗教
12.10 治安
12.11 交通機関
12.12 対日感情

 英語が出来る日本人にインドネシア語を勉強しない傾向が多く見受けられます。確かに大学を出たインドネシア人は英語を使えるから、敢えてインドネシア語を新たに勉強しなくても仕事に支障は無いと思われるかもしれません。本当にそうでしょうか?実はここに大きな落とし穴があります。
 日本人もインドネシア人もお互いに英語が完璧に出来るならば問題はないのでしょうが、果たしてあなたの英語は完璧で、しかもインドネシア人の社員も英語は完璧でしょうか?完璧でない者同士が難しく込み入った経営問題などについて議論して果たしてどれくらい意思の疎通が出来るのでしょうか?
 私自身の体験でも、インドネシア人のエリートは外国人である私に気を使って英語で会話をしてくれます。私はインドネシア語の方が良いですよと予め断っているのですが、それでも英語で話して来る方が圧倒的に多いのが現実です。しかし、話の内容が複雑になるに従いお互いの主張に理解出来ない部分が多くなり、インドネシア語で話してもいいですかと折れて来るのが通常です。
 高校卒業の社員も果敢に英語を話して来ますが、少し込み入った内容になるとポカンとしてしまい、話はそこで終わりです。無理に話を続けられても意味不明な会話になってしまうだけです。彼らと意思疎通を行うには英語ではなく、インドネシア語でなくてはならないと確信しています。
 大きな日系企業の社長くらいになると専属の通訳を雇っていることも良く見かけます。この方たちはある程度年配ですので、今から新しい外国語を勉強するのは大変で、その時間も惜しいと考えているのかもしれません。しかし、この通訳は自分の言いたいことを本当に正しく伝えてくれているのかと疑問に思ったことはありませんか?
 私の持論ですが、その国の人達の心を理解するにはその国の言葉を理解することが前提だと思います。なぜならば言葉にはその国の歴史、文化、風習といったものが凝縮されているからです。真にその国のDNAと言ってもよいでしょう。それを理解しないでどうやってその国の人達を理解出来るのでしょうか?
 インドネシア語を全く知らない日本人にとってはとても難しく思えるかもしれません。しかし、インドネシア人にとっての日本語の難易度を100とすれば、日本人にとってのインドネシア語の難易度はせいぜい10くらいです。また日本人にとって英語の難易度を100とすれば、インドネシア語の難易度はやはり10くらいでしょう。なぜならば、綴りはアルファベットで発音は学校で習ったローマ字発音で十分に通じるからです。また、文法も非常にシンプルで、単語さえ間違えなければ多少前後しても理解してもらえるからです。
 英語でインドネシア現地法人を経営するのは服の上から痒い所を掻くようなものです。

 初めてインドネシアの地に立ったのは1980年で、ハリム空港でした。丁子入煙草と椰子油の臭いの中とオレンジ色の街灯の下を、ヘッドレストもシートベルトも無いトヨタコロナに乗って案内され、最初に泊まった所はクバヨランバルーのホテルクマンで、とにかく強烈にかび臭かったのを覚えています。まだ高速道路はジャカルタとボゴールの間だけで、ジャカルタ市内の大通りは街路樹が立派でした。1980年当時のジャカルタ

 この時はまだ出張ベースで、インドネシア語もほとんど分からなくて、ホテルのレストランで朝ご飯でを食べる時に卵焼きが欲しいけれど、英語も上手く通じなくて困っていると、同行していた年配の人が鶏の鳴き声を真似したところ、ボーイはOKと言って卵焼きを作ってくれました。いまでも忘れられない楽しい思いでの一コマです。

 一年後に赴任した時は暫く単身でしたが、結婚したばかりで寂しい毎日でした。ある日の帰りは雨が降っていたのですが、カーラジオから流れていたBunga Sedap Malam(直訳すると夜の快い雨)と言う歌が心に染みて、それからは毎日のように通勤の車の中で聴いていました。夜の雨の中、オレンジ色に照らされた街路樹の下、この歌を聴きながら新妻のことを想っていた時代がとても懐かしい。

 週末は同僚と一緒にコタ(中華街)にある日本式のカラオケキャバレーに良く出掛けました。当時のコタは不夜城の如く賑やかで、コタ地区に入っただけで気分が高揚したものでした。行き付けのお店のお姐さんは気を利かしてくれて、もう来なくなった他のお客のボトルの中身を私のボトルに移してくれていて、私のボトルはいつも一杯でした。

 当時はまだショッピングモールもなく、日本食材もほとんどありませんでした。しかし、どことなくほのぼのと思い出が多い時代でした。

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