kouyou11月25日(土)
(ようやく紅葉・新宿御苑)

「トリ」が寄席ボキャだったなんて、知られているようで知られていない。よく知られ、使われているのは「ヨイショ」、メジャーなところでは「セコい」。「ヨイショ」は寄席ばかりじゃなく、花柳界が職場のたいこもちなども使った芸人一般の隠語だ。お世辞を言ったり、おだてたり、ときにはまるで心にもないことを言って相手の機嫌をよくしておいて、うまく乗せてしまうことだ。「ヨイショッ」と、囃し言葉、掛け声のように使われているね。
語源は重い物なんか持ち上げるときの「よいしょ」という掛け声、相手の重い気持ちを軽く持ち上げてその気にさせる。さっき言った「乗せる」意味合いだろう。

寄席の世界で「ノセル」といえば飯を食うことだ。本格的な食事でなくても、ある程度まとまった量を食べるのを「ノセル」というんだ。「昼だね。どっかでノセようか」って具合に使う。「セコい」は粗末なこと、拙劣なこと、陳腐なこと、見所がないこと、きたならしいこと―、とにかく、いい意味には使われない。値段が安いことにも言う。ただしお買得の安さには言わず、安かろう悪かろうの場合に使うのだね。
 
もともとは仲間内で「あいつの芸はセコいね」とか、興行業者を目の前にして芸人同士が「ちょっとオタロがセコだよな」と内緒の相談をするなどの場合の隠語だった。オタロは金銭、ギャラのことだ。「セコタロ」といえばひどい報酬、低賃金のことさ。「セコタレ」はブス。「タレ」は女の人だから。

むかしは寄席がテレビのようなメディアの役をしていた。こんなに寄席ことばが外部で広まったのはわりあい近年のことで、落語家がタレントと一緒に仕事をすることばが多くなって、隠語を覚えたタレントがメディアで粋がってしゃべり、だんだん広まったのだろう。 しかし、実際の寄席の楽屋では、必要がない限り隠語は使うものではない。むしろ落語オタクが好んで使う言葉だから、決してほめられるものではないね。