2008年02月15日

全力少女 20

政宗→女子高生
小十郎→サラリーマン
元親→政宗の同級生
佐助→カフェバーの店員
慶次→物産会社の甥

苦手な方はご遠慮ください。


まだまだ寒い日が続く2月。その日の朝も元親の目の前に政宗からタッパーが差し出された。中身は茶色い物体。

「政宗…これってまさか…」

「いいから食え!」

「勘弁してくれよ…」

うな垂れる元親はそう言いつつもタッパーの中身の茶色い物体を口にする。そしてさらにうな垂れ、言葉数が少なくなっていく。その様子にため息をつく政宗。

「俺もがんばるから、明日も頼むぞ。」

「気持ちはわかるが、俺の健康のためにも無理するな…」

なんだかんだ言いつつ元親はタッパーの中身を完食した。
ここ数日、政宗の日課は学校帰りに佐助のカフェバーに寄る事だった。そう、目の前に迫った2月14日、バレンタインに向けてチョコ菓子作りの特訓をしていたのだ。元親が食べていたのはその練習作、試作品という名の実態が失敗作であった。料理だけは苦手な政宗は佐助の手ほどきを受けても一向に上達する様子はなかった。

「俺、だめだなぁ…」

「心を込めたらだんなだって喜んでくれるよ政宗ちゃん。」

「今日、元親保健室から胃薬貰ってた…」

「あら。」

決定打だった。落ち込む政宗にどう言ってあげれば良いやら頭を抱えてしまう。政宗の下手さは尋常ではない。チョコを刻もうとしては指を切ってしまうのは毎回の事、湯せん用のお湯をひっくり返す。失敗は上げればキリがない。それでも意地で佐助の手を借りずに作っている。そして繰り返す失敗作。バレンタインまであと1日となってしまっている。

「じゃあ、これなら本当に簡単だから作ろう。」

そう言う佐助が教えてくれたのはチョコブラウニーの作り方だった。大雑把に作ってもどうにかなってしまうケーキなら政宗でも出来るだろうと思った最終手段だった。

「俺、がんばる!」

終電近くまで小十郎のためにがんばる政宗とその姿を応援する佐助がいた。
バレンタイン当日、それまで味見役をなんだかんだ言ってもしてくれた元親にはちゃんと買ったチョコと胃薬を渡す。

「俺が手伝ってやったんだからな、ちゃんと出来たんだろうな。」

「All Right!」

指の絆創膏がそれまでの努力を語っていた。

「元親、お客さんだ!」

クラスメイトが元親を呼ぶ。扉の影に隠れるように下級生の女子がいる。席を立つとそこへ向かう。話している声は政宗には聞こえないがだいたいの内容は予想できる。赤い顔で、元親にキレイな紙袋を手渡していた。

「へっへ〜、また貰っちまったぜ。」

「よかったな。」

貰ったチョコをその場で食べるわけでもなく丁寧に鞄に入れる。

「来月が大変だな〜」

「せっかく、俺にくれたんだからよ。お返しするってもんが礼儀だろ。」

そんな感じで今日一日、元親は忙しかった。下駄箱に入っているものもあれば、呼び出しを受け校舎裏、屋上、学校中移動しまわっていた。しかも相手の気持ちも考え会いに行く時は必ず手ぶらで行った。他の女子から貰っているとわかっていてもちゃんと手ぶらで貰ってくれる元親の気遣いが彼の人気の1つでもあった。そして、毎年のように聞かれるのが…

「伊達さんとお付き合いしているんですか?」

という質問だった。
否定しつつも、付き合って欲しいと言う言葉に首を縦には振らない元親だった。それだけもてていても彼女を作らない元親には政宗も首を傾げる。
小十郎に早く、手渡したいと思いつつ帰ろうとすると見覚えのあるRX-8が止まっていた。

「…慶次、てめぇ何しに来た。」

「やだなぁ、政宗。もちろん、バレンタインのチョコ貰いにさ。」

「ねぇよ。」

睨みつける政宗にひるまず笑顔の慶次。仕方なく鞄の中に手を突っ込む。

「おらっ、手ぇ出せ。」

慶次の大きな掌に小さな飴玉が落とされた。それでもうれしそうな慶次。

「ありがと政宗。」

「ふん。来月、ちゃんと返せよ。」

そう言うと、慶次に振り返りもせずに歩いて行く。
小十郎とは佐助の店で待ち合わせしている。いつになく落ち着きがない政宗の姿に笑いが抑えられない様子の佐助。

「ちゃんとだんな来るんでしょ、ちょっとは落ちつきなよ〜(笑)」

「お、落ちついてるよ!」

(政宗ちゃん…全然落ちついてないんですけれども…)

ドアの開く音がして小動物が物音に反応する様な勢いでその方向を見る政宗。小十郎は政宗の様子がおかしい事に気付いた。どう見てもそわそわして落ち着きがない。

(あぁ…今日はあの日だったな。)

政宗の顔を見て軽く笑う。

「な、何笑ってんだよ小十郎!」

「わかりやすいんだよ、お前は。」

「うっ…ほ、ほら今日バレンタインだろ。」

赤くなりながら鞄の中からラッピングされた袋を取り出す。中身は前日に佐助の最終作戦として伝授されたチョコブラウニー。小十郎は受け取るが肝心の政宗が一向に手を離さない。

「政宗、このままじゃ俺はこれを食べる事ができないぞ。」

「やっぱ、ダメだ失敗してるかも…」

「味見したんだろ?」

頷く政宗。そんな政宗の頭を撫でる。

「大丈夫だから、な?」

ようやく手を離す。それからじっと小十郎の顔を見る。今にも泣きだしそうなほど不安そうな顔していた。包みを開けると中身のチョコブラウニーを政宗の目の前で口にした。

「あー!!俺の前で食べんなよぉ!」

「うまいぞ、胡桃も入れたんだな。」

「さ、佐助さんに教わったんだ。」

「政宗ちゃん、すんごくがんばったんだよ、だんな。俺は一切手出ししてないからね。」

「見ればわかるさ、こんなに絆創膏巻いて…一生懸命作ってくれたんだな、ありがとう。」

絆創膏だらけの政宗の手を取る。たったそれだけの事なのにいつもよりも恥ずかしく感じてしまう。鼓動が伝わる。

「元親に試食手伝ってもらった甲斐があったな。」

満足そうな政宗だがその言葉に不満の色を見せる小十郎。それに気付き焦る佐助。

「政宗、家に寄ってくか?」

「いいのか?行くよ。」

うれしそうな政宗。何か嫌な予感がする佐助。

「だ、だんな…ほどほどにね。」

「わかってる。」

そう言いつつも政宗にマフラーを巻いてやる小十郎の表情は柔らかかった。店を出ると雪が舞っていた。

「雪だぁ。」

子供の様にはしゃぐ政宗の手を取ると抱きしめる。いつもの煙草の匂いがした。目を細めその匂いに酔いしれる。雪と一緒に降ってくる口付けを小さな唇で一生懸命に受け止める。

「寒いか?」

「小十郎がこうしてくれるから平気だ。」

白い雪がはらはらと2人を飾っていく。幸せそうにしているが小十郎の中には小さな棘が生まれていた。
その棘によって政宗の身に降りかかった事態はご想像にお任せします。


ー*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*−*
バレンタインの巻です!
14日にできなかった…OTZ
真面目な要素全く無しで作成しました。
幸せ、幸せな感じで書くのが楽しいです。
元親は意外とモテモテな感じにしてみたんですけど、なんで彼女を作らないのかは謎です。てか、謎のままにしたいです。


kojyuma at 01:57コメント(0) 
全力少女(*注 女体) 

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