1年に2回、国内外から400名以上のIT系ベンチャーの経営者が集う、IVSことInfinity Ventures Summitが、今年も本日から札幌のSheraton Hotelにて開催されます。

最近非常に注目度が大きいIVSの目玉イベントが、LaunchPadという1社6分の新サービスプレゼンコンテストです。シリコンバレーで行われているスタートアップ企業のプレゼンテーションコンテストの形式を日本のイベントに導入したもので、大企業から起業したてのベンチャー起業までが同じラインで勝負する白熱のイベントになっています。

この記事では、前回のInfinity Ventures Summit 2010 fall in Kyoto のLaunchPad で、史上初の満点優勝を頂いた時のプレゼンテーションを作成するまでの裏側をご紹介しつつ、LaunchPadでのプレゼンのコツ等をご紹介したいと思います。

まずは、前回の優勝時のプレゼンテーションを御覧ください(6分)


自分で振り返っても、「ご支援お願いします!」と頭を下げて3秒後に6分がぴったりと終わるという、完璧に近い狙い通りの出来のプレゼンテーションでした。このイベントがきっかけで、NHKのクローズアップ現代でも大きく取り上げていただきました。

今回は、後のプレゼンテーションの仕方で何かご参考になればと思い、このプレゼンテーションが完成するまでを時間軸に沿って振り返ってみます。

■最終審査前
LaunchPadは、事前の書類審査を通ったサービスのみが最終審査に通り、最終審査では、本番同様の6分間のプレゼンテーション審査があります。まずは、そのための準備をしないといけません。

デモントレーションできる場面が全く無い
私が発表した株ロボットは、毎日朝と夕方に、人工知能のロボットが株式(日経225先物)の売買指示をメールで送信してくるのみのサービスです。ですので、機械のロボットが舞台上で踊るとか、画面上で面白いWEBサービスを操作してみせる、といういわゆる見せ場となるデモンストレーションを出来る要素が全くありませんした。新サービスプレゼンコンテストなのに。。。。

実際のサービスのデモンストレーションとして使える画面は、Gmail上での朝の売買指示のメールの画面と、同じく夕方にその日の取引結果報告のメール画面のみ。
従って、実は、見せ場自体が殆ど無いサービスだったのです。

プレゼンテーションすべきのポイントを端的に箇条書きにする
まず行ったことは、プレゼンテーションすべきポイントを整理し、素材を集めること
・サービスのコンセプトは?一言でいうと何か?
・ターゲットする市場は?その規模は?
・このサービスの何が凄いのか?セールスポイントは?技術は?他社との違いは?
・デモ
・まとめ サービスへの期待やアピールや発売時期等
どう表現するかはおいておいて、まずはポイントを箇条書きのテキストで書きだしました。

ポイントをストーリーに組み立てながら、ポイントを端的でインパクトのある表現で箇条書きにする
素材を単純に順番にプレゼンテーションするだけでは、つまらないので、その素材をどういうストーリーとして組み立てるのか?を考えつつ、同時に、個々の素材をどういう表現で表すとインパクトを持って表現できるのか?を工夫しました。

例えば、今回の株ロボットの例でいうと、
ストーリーの部分では、
・「クチコミから株式市場を予測できる」というといかにも眉唾な感じがするので、あえて、米国の競合論文の事例をもって、技術のリアリティを加えたり、
・クチコミによる運用成績をそのまま発表するとリアリティが伝わらないので、「バックテスト期間」「フォローワードテスト期間」そして「実運用結果」と、3回段階でじわじわと盛り上げて行ったり、
・海老根さんや、審査員の方々をプレゼンの中にいれて、参加意識を持ってもらったり、
という工夫をし、

また、表現の部分では、
・「クチコミを網羅的に収集・分析する技術です」というところを、「この技術の本質は、宇宙にある人工衛星から、日本に住んでいる人の頭の中を覗き見るリサールウェポンです」
・「ターゲット市場は金融業界です」というところを、「アメリカが世界をリードする金融工学の分野に(殴りこみをかけます)」
とインパクトがでるようにし、
・「データ収集量は日本最大です」というところを、「ブログの収集量は、Googleのブログ検索やYahoo!のブログ検索をしのぎます」と、できるだけイメージしやすい具体例で表現したり、
というところを工夫しました。

特に表現に関しては、実際にプレゼンテーションする段になると、誰もが自分のサービスに思い入れがあるので、どうしても気持ちが入り、説明が長くなるので、この段階でポイントを完結かつインパクトのある表現としてまとめておくことは、最終段階でプレゼンテーションを6分で完結させるためにはとても重要です。

伝えたいイメージが端的に伝わるイメージ画像を選ぶ
次には、イメージ画像をとにかく貼って、イメージで訴える戦略を取りました。言いたいことを端的に言い表す画像を、Googleの画像検索探し、パワーポイントの画面全体に貼りつけたのです。

例えば、
・「この技術の本質は、宇宙にある人工衛星から、日本の住んでいる人の頭の中を覗き見る・・・・」の下りでは、「地球」というキーワードでGoogleで検索し、最も印象的な画像を選ぶで、パワーポイントのスライドの画面一杯に貼りつける。
・「アメリカが世界をリードする金融工学の分野・・・」の下りでは、「NASAQ」というキーワードで画像検索して、NASDAQっぽいイメージが伝わる画像を画面一杯に貼り付ける。
・技術の説明の処では、「人工知能にクチコミと株価のデータを入力して学習させる」という部分は、技術説明としてではなく、「ロボット」と「クチコミ」と「株価ボード」というキーワードで画像検索して、その画像の組み合わせを貼り付ける。

後から見ていただくと分かると思いますが、私のプレゼンテーションでは、文字はほとんど使わず、かなりの部分が、Googleの画像検索で見つけた画像をパラパラめくるだけで作られているのです。

実はこれは最初から狙ってやったわけでは無かったんです。最終審査の直前まで、どうやってインパクトのあるプレゼンをすべきかがまとまらずほとんど手が付けられなく、最終審査のプレゼンテーションの前の数時間でプレゼンテーションを作成せざるを得なかったのです。

従って、数時間つくるためには必然的に画像の貼り付けでごまかすしか無かった、というのが別の理由だったのです。
しかし、結果的には、スティーブ・ジョブズのプレゼンっぽくなっていませんか?
画面の文字を読ませることで伝えるのではなく、インパクトのあるイメージを伝えながら、内容はトークで伝える、というプレゼンテーションになりました。

感情を揺さぶるために音楽・効果音を活用する
近年のLaunchPad は、プレゼンテーションのレベルがかなり上がってきており、プロの制作者に依頼したのではないか?と思える程の質の高い動画などがプレゼンテーションに組み込まれていたりする。そういう映像を見ていてすごいなぁと思うところは、やっぱりバックに流れる音楽だ。背景の音楽一つで、会場がワクワクしたり、盛り上がったりする。なので、どうしても音楽なり効果音を入れたかった。
僕は、音楽にはかなり疎く、自宅で聴く音楽も、10年前に買ったCDをずっと効いていたりして、iTunesで購入したことのある音楽は3曲程しかない。そういうこともあって、とりあえず、僕でも知っている曲(=会場にいる誰でもが聴き知っている曲)で、かつ、ワクワク&感動する曲「ロッキーのテーマ」と、「プロジェクトXのテーマソング」を使うことにした。その他、効果音として、雷の音や、その他いろいろなフリーの音源をダウンロードしてパワーポイントに埋め込んだ。

■出発前
HTLの全メンバーからフィードバックをもらう
実は、IVSに出発する前日に、HTLの全メンバーの前で、6分間のリハーサルプレゼンテーションを行った。その際にもらった改善点は、
「そこの言葉は、この言葉にしたほうが印象に残る」
「聴衆の共感を呼ぶ例えに変えた方が良い」
「プレゼンの声のトーンに抑揚がない」
「音楽は、◯◯の音楽の方が良い」
「この表現は、金融商品取引法の関係で危険だ」
「・・・・」
などなど、20以上の改善意見を出してもらった。HTLは少人数の会社ではあるが、それでも数十人からの意見を集約すると、相当なパワーになる。

実は、事前に全メンバーにプレゼンし、改善点を指摘してもらうことは、プレゼンテーションの品質を上げるという面のみならず、優勝した際に全員で喜びを分かち合えるという点でも、非常に重要なポイントだったと思う。僕自身メンバー全員の力をもらってプレゼンテーションしている、という気になるし、メンバーも自分もプレゼンテーションに参加している、という一体感を創ることができるのだ。
そして、この時にもらった、「聴衆の共感を呼ぶ例えに変えた方が良い」という指摘は、プレゼンテーションの直前まで改良を続けさせる重要なポイントになったのです。

■前日と当日
土壇場でのストーリー大転換
この時のIVSは、「日本のベンチャー企業がどうやって世界に出て勝っていけるのか?」ということが主要なテーマでした。
日本のITベンチャーだったウノウが、Zingaという世界最大のFacebook上のゲーム提供会社に買収され、グルローポン系サービスを日本で最も早いタイミングでスタートさせたQpodが、グルーポン系サービスの大御所であり大本であるグルーポンに買収された直後のタイミングだった。

日本のベンチャーがグローバルで闘うには、まずは、黒船が日本に来襲した明治維新の頃のように、世界で勝っている企業に買収されて、とにかく学び追いつかねばならないくらい遅れているいるかもしれない、と皆が感じさせられるような状況だった。

そんなIVSのテーマのセッションに参加している間に、15年前に僕らが日本で最初期の検索エンジンを開発した後、Yahoo!、Inforseek、Lycos、そしてGoogleに至り、世界のサービスに屈した時の悔しさを僕に思い出させた。そして、今また、世界の最先端の技術を持っていながらも、日本という枠組みの中でやろうとすることで、ウォールストリートの狂気のような渦に入れず、結局追い越され、取り残されていってしまうのか?という焦りを強く起こさせた。
僕だけではなく、日本から参加していた数百名の参加者全員が、グローバルで勝っている企業のセッションに参加し、グローバルの凄さにある意味圧倒させつつ、どうやったら世界で勝っていけるのか?を真剣に考える空気が作られていた。

実は、LaunchPadの最終審査の時の審査員の反応で、プレゼンテーションの品質に関してはかなり手応えはあったのだが、出発前日にHTLの全メンバーの前でプレゼンした時にもらった指摘事項の一つであった、「聴衆の共感を呼ぶ」というところに、どうしても引っかかるものがあり、もう一工夫したいと思っていた。
そこで私は思った。プレゼンテーションのストーリーを0から作り変えようと。

プレゼンテーションの素材は、基本的には同じだ。「コンセプト」、「技術」、「運用成績」「デモ画面」等。しかし、それらの素材をどういう風に紡ぎ上げ、一つのストーリーにするのか?は、いくらでもパターンがある。
そこで、「世界の舞台で闘いたいという強い想いと苦悩」という、前日創り上げられた会場の空気とぴったり合致する形にストーリー作りをやり直した。
このストーリの修正作業を始めたのが、前日の22時位から。

ストーリーがうまく紡ぎあげられるように素材の順番を何度も並べ替え、説明する際に使う単語表現一つも、「世界の舞台で闘いたいという強い想いと苦悩」に合わせて微調整した。そして、最後の締めくくりでは、そもそもLaunchPadに出ようとした目的である、「優勝したいのではなくみんなを代表して世界と闘いたいので力を貸して欲しい!」で締めくくるというストーリーにした。

6分ぴったりのプレゼンになるよう極限まで表現を洗練させ、削る
ストーリーの作り直しに納得がいったのが、午前2時か3時位。翌朝は6時過ぎからリハーサルが始まる。後数時間しかない。

部屋の中で何度もプレゼンテーションの練習をする。どうしても「想い」が強くなり、しゃべる際に説明を追加してしまうため、どうしても6分を超えてしまう。しゃべらなくてはならないポイントがそれなりにあるので、どうしても無駄な説明をしている余裕ない。

そこで、2番に挙げた「ポイントを端的でインパクトのある表現で箇条書きにする」を改めて行い、箇条書きにされた文章・フレーズしかしゃべらないでプレゼンをやってみる。それだとやっと5分を切れるくらい。それに、最小限の表現を加えることで、6分まで伸ばしていった。6分という短い時間の中でとことんプレゼンテーションを洗練させると、予定外の余分なフレーズ一つしゃべっている時間はないのだ。

繰り返し練習
後は、その洗練されたプレゼンテーションを何度も繰り返す。6分のプレゼンテーションを何秒のところでどのシートを話終わらなければならないかをメモし、プレゼンテーション画面の隅っこに、目立たないようにそのタイムを入れておいた。

本番では、僕の出番は一番最後だったのだが、他の人がプレゼンしている間は、スタートの合図に合わせて、ぴったり6分で自分のプレゼンテーションが終われるかを何度も繰り返した。

全メンバーと共に
LaunchPadは、Ustreamでも中継される。そこで、ホットリンクでは、社内の壁にプロジェクターでUsreamの画面を映しだし、スピーカーを繋いで、全メンバーが会場の様子をリアルタイムで見られるようにしてくれていた。
僕が出番待ちでドキドキしているのと同様、全メンバーが一緒にドキドキして待っていてくれたのだ。
IVSのUst視聴中2

結果発表で1位だと発表された時には、社内は物凄い高揚感と一体感があったという。
社長が優勝した瞬間

このような一体感が生まれたたのも、事前に全メンバーにプレゼンテーションし、フィードバックをもらい、一緒につくりあげた、というプロセスがあったからだと思う。
今後LaunchPadに出席される会社の方には、ぜひお勧めしたいプロセスの一つだ。


ざっと振り返ってみたが、かなり長くなってしまった。
今後の何かの参考になれば幸いです。

尚、今回のイベントでも、明日の朝8時45分からLaunchPadが開催される。Ustreamでも公開されると思いますので、ぜひご覧下さい。

PS. お詫びとご報告
前回のLaunchPadで発表したサービスは、このプレゼンテーションのおかげもあり、たくさんのみなさんがご支援を申し出て下さり、また、ある金融系の会社より数億円規模での運用依頼のお申し出も頂きました。

その金融系の会社とビジネスのフレームワークを検討し、現在、小会社を設立し、金融庁への申請手続きなどを行なっております。機密事項が多いため、ご支援をお申しでて下さいました皆様に対して途中経過をお知らせすることが出来ずに申し訳ございませんでした。きちんと手続きが整い次第、改めてご報告させていただきますので、今しばし、楽しみにお待ち下さいませ。